2008年5月25日 (日)

『青年のための読書クラブ』 桜庭一樹

青年のための読書クラブ Book 青年のための読書クラブ

著者:桜庭 一樹
販売元:新潮社
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薄絹のようなヴェールに包まれたお嬢様学校で

ひっそりと、その存在すら忘れられた

読書クラブ

ミステリスキーであって文学スキーではない私は、本作で引用されているような王道文学とお付き合いしたことは無く。けれども、その素敵引用にミステリ道を逸れてしまいそうになる『青年のための読書クラブ』が本日のレビュー。

舞台は薄絹のようなヴェールに包まれたお嬢様学校。政治家の娘が生徒会に、スター性のある華やかな容姿の娘が演劇部に、ニコンを構えゴシップを狙い撃つインテリヤクザが新聞部に所属し政権争いを繰り広げる中、世の喧騒から逃れるようにナポレオン・アパートでひっそりと過ごす読書クラブ。華やかな世界から遠ざかり、客観性を保持するから見えるものがある。読書クラブのクラブ誌は、学校が隠滅した過去の大事件を綴ったたったひとつの正史。

そんな正史(クラブ誌)で明らかになる真実は、実に阿呆らしくユーモアに溢れていて。王道文学から選りすぐられた引用が、これまた素晴らしい。「マクベス」の台詞が実生活の中ですらすら口から出てしまう女子高生がいたら閉口ですけれども。

本作は起こる騒動を愉しむだけでなく、騒動を語る言葉遊びを如何に愉しめるか…読者の力が試されている作品かと。文学の世界に傾斜し、文学と現実の世界の境目が解らなくなった、世間知らずのお嬢様たちが織りなす新しい文学。いや、そこに居るのはもうお嬢様ではなく青年なのだけれども。

女の世界を書かせたら最早、右に出るものは居ないかもしれない桜庭嬢。男性読者は桜庭作品を読んで何を思うのか。やっぱり女は解らない?これだから女は?でも、「男はバカのくせに頭のいいふりをするけど、女は頭がいいのにバカのふりが出来る」ことをお忘れなく(ライアーゲームからの引用だったりする)

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2007年4月10日 (火)

『少女七竈と七人の可愛そうな大人』 桜庭一樹

少女七竈と七人の可愛そうな大人 Book 少女七竈と七人の可愛そうな大人

著者:桜庭 一樹
販売元:角川書店
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辻斬りによって生を受けた少女・七竈。

彼女は“たいへん遺憾ながら”美しく産まれすぎたために、諦めなくてはならないことも多かった。

そんな少女の喪失の物語。

『少女七竈と七人の可愛そうな大人』と『赤朽葉家の伝説』を両手に思案すること5分。同じ“女の物語”ならば、少しライトなもので助走をつけようと、選んだのがこちらでした。あら、『Sweet Blue Age』に収録されていた「辻斬りのように」の続きじゃない?と嬉しくなってみる。

本作は「辻斬りのように」で複数の男性と関係をもった女から産まれた少女・七竈の物語。母の辻斬りは七人の男を相手にした後も、終わること無く。定年退職した祖父と定年退職した犬と、鉄道模型に囲まれて暮らす七竈。母の所業は小さな旭川では有名で(旭川はそこまで小さくないやい!というツッコミを道産子の私はしてみる。あと、北海道では県立高校ではなく道立高校と呼びます)、友だちも居ない七竈。そんな七竈の唯一の楽しみは…同じく“美しく生まれすぎた”雪風とのひととき。

父親を知らない七竈。決して美しくはなかった母親。美しかった過去を持つ雪風の父親。まるで兄妹のように似てくる雪風と七竈。好きに愛してはならないヒト…。

うぉぉぉぉ、切ない!!

まさか桜庭作品でこんな気持ちになろうとは。時代錯誤の言葉を駆使し、妖しげな雰囲気を醸し出す美少女・七竈には、腐女子として邪に好感を持ちました。その七竈の屈折した母親への想いと、雪風への想い。好きだから愛しているから、好きだからこそ愛しているからこそ、離れなくてはならないふたり。これ以上いっしょの時を過ごして、現実を目の当たりにしてしまうのが怖いから。美しいすぎるという個性を没個性とするために、旭川という生まれ育った場所から離れることを決めた七竈。

なんでしょう、私の妄想心をくすぐるのに充分な作品でございました。これまでの桜庭作品は、実はよくわからなかったのですが…本作は良いと思った。七竈の喪失の哀しみが、そうとはっきり描かれているわけでは無いのに、どしーんと伝わってきた。これは『赤朽葉家の伝説』も期待できますね!

本作は装丁のイラストも素敵で、読者のイメージ(私の場合、妄想)を助けるのに充分役立っていたと思います。七竈と雪風の美しさ…出逢いたい。

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2007年2月17日 (土)

『Sweet Blue Age』

Sweet Blue Age Book Sweet Blue Age

著者:有川 浩,角田 光代,坂木 司,桜庭 一樹,日向 蓬,森見 登美彦,三羽 省吾
販売元:角川書店
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7人の新鋭作家が送る青春小説群。

甘く切ない物語を召し上がれ。

有川浩氏と坂木司氏、そして装丁に惹かれて手に取った本作ですが…有川氏の作品は『クジラの彼』に収録されていた春の物語ではないですか!?残念。これは、坂木氏『シンデレラ・ティース』の番外編とも云える「ホテルジューシー」に期待するしかないわ!と思ったのに…これまだ残念な出来で。ぎゃぼ。

そんながっかり模様を醸し出した本短編集でございますが、もちろん良かった作品もございます。一番良かったのは桜庭一樹氏の「辻斬りのように」でございましょうか。動物園でお馴染みの旭川市を舞台に(道産子ですので旭川はお馴染みの都市でございます)辻斬りの如く男性と関係を持つ主人公。こういう抽象的な物語は普段の私なら、もっとも苦手とする作品なのですが…他の作品がそれ以下だっただなんて、とてもじゃないけど云えない。

でも、桜庭氏の作品が良かったのはホント。名も知らぬ男性と7度の関係を持ち、最後には誰が父親かわからぬ子を孕んでしまう主人公。七竈の香りが主人公をそうさせたのか、これは七竈の呪いか。この七竈を使いたかったから舞台が旭川なのかと納得。旭川の市民の木は七竈ですからね。

あとは角田光代氏の作品が「さすが(この作品集の中で最も)ベテラン」と思わせる出来でした。しかし、こんなsweetな装丁なのに、報われた作品がひとつもないのが残念なところ(おいおい、有川氏の作品を忘れてるぜよ?)。日向蓬氏の「涙の匂い」も良かったですよ。保少年の想いが一瞬でも判り易い形で報われてくれれば、ロマンティック馬鹿な私はさらに満足だったのに。

今話題の森見登美彦氏「夜は短し歩けよ乙女」は、ごめんなさいよくわかりませんでした。もっとスマートに落ち着くかと思っていたものですから。この作品が表題作になっている単行本が売れているようですが…どんな出来なのでしょうか?ちょっとレビュー巡りをしてみようかしら。

というわけで、なにが一番良かったですか?という質問には「装丁」と断言してしまうであろう、私。どうもすみません。

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2006年5月 9日 (火)

『少女には向かない職業』 桜庭一樹

少女には向かない職業 Book 少女には向かない職業

著者:桜庭 一樹
販売元:東京創元社
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「中学2年生の1年間で、人をふたり殺した。」

そんな強烈な帯に包まれた、少女たちの闘いの記録。

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を読んだあと、ちょっと塞ぎ込みモードに陥ってしまったため、なんとなく避けていた桜庭一樹氏の『少女には向かない職業』をようやく読むことができました。映画化の話をどこかで読んだので(調べたら映画化じゃなくてドラマ化だった模様。しかもGyaOって…)、その前に読んでおかないと…という強迫観念が半分、いよいよ読む本が無くなってきたという現実が半分。

結果…良かったです。想像していたよりも良かった。ただし、塞ぎこみモードに突入しそうな気配ではあります。

読んでいてふと感じたのですが、私はこういった虐待とかいじめとか現実的な痛みに非常に弱い。ミステリにおける殺人事件は非日常非現実的。名探偵の登場なんて、その最たるものであって、たとえ本格ミステリの中で連続殺人事件が起ころうと私は痛くも痒くもないのですね。ただ、桜庭氏の作品はプチ現実的な痛みを読者に抱かせてくる…それが辛いのです。

健全な人間なら一度は考えるであろう「殺してやりたい」という感覚。これを実行に移すか移さないかで、本当に健全であるかそうでないかを量るバロメータになろうかと思いますが、この『少女には向かない職業』に登場するふたりはそのラインをふとしたきっかけで踏み外してしまう。

この踏み外した方が非常に痛々しくて、まさに転がり落ちてしまった感じ。終わり方があれで良かったのかどうか、未だに私自身の中で判別できていないのです。読者としての私の希望が「あのまま逃げて欲しかった」であるのに対し、人間としての私が「あぁ、良かったねぇ」と告げる。この浮遊感に戸惑っております。

なかなか考えさせる作品で、久しぶりに良いものを読んだ気がします。この落ち込みモード突入さえなければね…。

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2006年2月11日 (土)

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』 桜庭一樹

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない Book 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

著者:桜庭 一樹
販売元:富士見書房
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戦う手段としての実弾を持つことを願う少女と、自分を人魚だと主張する少女。

このふたりが出会ったとき生まれるものは?

あらすじの文句をお借りすると、この作品は“青春暗黒ミステリー”だそうです。

この作品を読むきっかけは、「このミス2006」。ランクインした『少女には向かない職業』に興味を持って、ハードカバーはちょっとねという理由から別の作品を読んでみよう、と思い立ちました。

「かつくら」で綾辻行人氏が印象に残った一冊に『砂糖菓子の~』を挙げていたのも要因のひとつかしら。

さて、問題の“青春暗黒ミステリー”といカテゴリについて。

すんごい文句のカテゴリ…。青春と暗黒って相反するべきものなのに。堂々と煽っちゃってますよ。ただ、乙一氏あたりにはぴったりくるカテゴリかもしれない。

ただね、私の理論から言えば、この作品はミステリではないんですよ。このミステリ理論は『容疑者Xの献身』にみられる本格か否か論争のように、個人の主観によるものなのですが、少なくとも私のなかではミステリにはカテゴライズされないんです。悪しからず。

ただ、この作品の“テーマ”は充分に重いし、考えるべき問題だと思います。

私個人としてはこの手の“テーマ”は苦手です。先述のミステリ理論と併せて言えば、この作品はミステリではなく非常に文学的な作品。ライトノベル形式で発表されていなければ、どこぞやの文学賞(文学賞に対して否定的観点)にノミネートされそうな。

実弾を望む少女と砂糖菓子の弾丸を撃ちまくる少女。

現代の少女たちは常に戦っていなくてはならないのでしょう。問題の大小は問題ではなく。

ページ数や薄さに関係なく、最期まで一気に読ませる作品だったことが高評価です。『少女には向かない職業』で、どこまでミステリを読ませているのかに非常に期待。

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