■深水黎一郎

2016/03/14

『ミステリー・アリーナ』 深水黎一郎

2016年本ミス1位、このミス6位の多重解決ものの力作。

多重解決ものとはひとつの事件を異なる視点で解き明かすことによって何通りもの解決がある(ように見える)作品のことで、推理合戦的な手法で用いられることが多いですね。『毒入りチョコレート事件』が有名。

その多重解決、本作に用意された解決は…ってネタバレもネタバレなので具体的な数字を挙げることは避けますが、多いです。多すぎです。正直、中には無理筋もありますが性別トリックや人数誤認トリックの中には唸らせてくれるものもあります。ミステリをよく読む人ほど「そうだ、その手もあったか」と楽しめるはず。ミステリをあまり読まない人だとテキストを捏ね繰り回してるようにしか思えないかも。難しいところですね。

(ここから本筋に関するネタバレです)
参加者の回答によって正解がスイッチするというミステリー・アリーナ(推理闘技場)に仕掛けられた罠は看破したのですが、参加者全員が仲間だとまでは思っておりませんでした。随分偏った見方をする偏狂的なミステリヲタばかり集ってるな…とは思ったのですが(笑)

個人的にはとてもとてもたのしめました。エンタテイメントミステリの名作、そう言って過言でないと思います。

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2015/07/06

『花窗玻璃 シャガールの黙示』 深水黎一郎

芸術探偵シリーズ第3弾。花窗玻璃は「はなまどはり」でステンドグラス。理姆斯大聖堂を彩る夏卡爾の花窗玻璃が引き起こした殺人事件のお話…と書いて紹介するのがきっと相応しい。フランスが舞台なのにカタカナを使わずに(すべて漢字に置き換えて)書かれている作品です。

その趣向を瞬一郎が語ったときには「読み難そう」としか思えませんでしたが、たっぷりふられているルビのおかげですらすら読める。それでも瞬一郎がシャガールのステンドグラスの前で感じた酩酊感を追体験することは私には出来ませんでしたが。ちょっとズルしちゃったからね。秘儀、蘊蓄部分ななめ読み。

『エコール・ド・パリ殺人事件』ほどの緻密なミステリとは言えず、『トスカの接吻』『ジークフリートの剣』 のような劇的な場面があるわけでもない。芸術ミステリとしてもちろん成立はしているけれど言ってしまえば普通な1作。

とりあえず、「あんた……一体何者なの?」がわかり過ぎる。瞬一郎の天才設定だけでご飯3杯食べたい。

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2014/11/11

『トスカの接吻』 深水黎一郎

芸術ミステリシリーズ第2弾。テーマはプッチーニのオペラ「トスカ」。オペラに関する蘊蓄は丁寧にわかりやすく、そして楽しく披露されます。異化(オストラネーニェ)に関する解説を少年探偵団シリーズでやってくれたのはおもしろかった。

肝になるミステリ、オペラの演出を利用し舞台上でバリトン歌手の命を奪ったのは誰か?に関しても謎の有り方、提示の仕方はとてもとても魅力的。なだけに、解決で肩透かしを食らったのが残念でなりません。個人的にはアンフェア。ノックスの十戒()に抵触しているかな。驚きを以て十戒をねじ伏せてくれるとブラボーなのだけれど、今回はちょっと…事件というより事故ですよね?つまりは犯人に相応しい人物がいない。

瞬一郎の嫌みのない天才っぷりが今後どう昇華されていくのかも気になるので、第3弾『花窗玻璃 シャガールの黙示』も楽しみ。個人的には探偵は止めた方が良いと思う(笑)

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2014/03/01

『エコール・ド・パリ殺人事件』 深水黎一郎

芸術ミステリシリーズ第一弾。『ジークフリートの剣』の先読した際に探偵役を果たす瞬一郎のキャラクタが掴めず(というか、探偵役だと思わず)突然の登場に唖然としたわけですが、なるほど天才キャラだったのか大好物です。

本作で描かれているのはエコール・ド・パリと密室。しかも「読者への挑戦状」付きという本気さ。「読者への挑戦状」との出会いはいつだって気分を昂ぶらせますね。

エコール・ド・パリに関する蘊蓄はあっさりとしていて読み易い。しかも、蘊蓄の垂れ流しではなく事件を解き明かす鍵としてしっかり機能するのだから驚き。いや、それが当たり前なんですけど、そうじゃない(なくなっていった)某シリーズがね、あるんですよ()

我儘を言えば、作中に登場した絵画をカラーで添えて欲しかったかな。文字だけではイメージしずらい…というか、想像できてしまったら絵画の面目丸潰れですよ。エコール・ド・パリがどんな作風の一派なのか一言で語ることができないのならば尚更、コレクション・ダカツキの作品だけでも写真を挟んで欲しかったものです。

芸術ミステリシリーズは第二弾『トスカの接吻』の評判も高いので楽しみ。瞬一郎の厭味のない天才っぷりも好感が持てるし…『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』からは想像もできなかった、当たりシリーズかもしれない。

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2013/11/20

『ジークフリートの剣』 深水黎一郎

読書メーターの評価が高かったので読んでみました。深水作品は『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』しか読んだことがなかったためバカミス覚悟で読み始めたのですが、なんだかとってもしっかりしてる…まさか「芸術ミステリ」という分野を確立し、本作もシリーズものの一作だったとは。

あ、でも、本作も「ミステリです」と大きな顔しては言えないような気がしますね。

なんせ、謎が謎として登場したのがラスト50ページ切ってからですから。それまで謎のなの字も登場しませんで、ワーグナーのオペラについての蘊蓄があれこれ。結構読み易かったので案外楽しく読ませていただきましたが、苦痛な人は苦痛かと。

謎解きに関しては「ふむふむ」という感じで特に感慨はなし。なにせ、さっきまでそれを謎と思ってなかったので。これまで何作も読んできたミステリですが、探偵に突撃される第三者の気持ちが本作のそれでしょうか。っていうか、婚約者が死んだと言うのにすっかり第三者になってしまっている主人公ェ…。まあ、それも作者の狙い通りなのですが。

そして、さらに作者の狙い通りなのがラスト。どんなオペラになるのだろう…と引っ張って引っ張ってきた舞台で起こる奇跡。圧巻です。本当に、このラストのために書かれた作品なのだろうなあとすんなり納得できる、納得せざるを得ない。できることなら観客として観たい、そう思わせただけで深水氏にとってはしてやったりなのでしょうか。

芸術ミステリ、他のシリーズ作品も読んでみたいものです。

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2009/02/04

『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』 深水黎一郎

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著者:深水 黎一郎
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読者が犯人

眉唾モノのトリック

それが…ついに成立したと言ったら貴方は信じますか?

消化すべく、今日は初読。

えっと…

犯人は私だぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

とかフォント最大にして叫んでおけば良いのかしら(毒)

本作は眉唾も眉唾、ミステリ界最後にして最強の不可能トリック“読者が犯人モノ”に真っ向から勝負した1作です。いろいろ云いたいことはあるのですが…

成立していると云えるかもしれない

そのためには、とある前提をまるっと丸呑みしなくてはならないんですけれど。ネタバレ必至でレビューを続けますが、自らの(稚拙な)文章が不特定多数の人間に読まれることで精神(体)に偏重をきたし、死に至る…ってそんなのアリですか?トリック成立の根幹に、いきなり殴り込みをかけてみました。ご本人がそうだと云うならば、そうかもしれないのですが…もう少し読者に「あるかも」と思わせる仕掛けを混ぜ込んで欲しかった。

もちろん、超能力研究の第一人者・古瀬博士の件がそれに該当するのでしょうが。あの種類の超能力(サイ能力)って、発信者と受信者が居てなんぼだと思うのですが如何でしょうか?もちろん香坂は超優秀な受信者なのでしょう。けれど、発信者(新聞を読む不特定多数の人間)は超能力なんてマスターしていない。えっ?誰しもが奥に仕舞い込んでいる古い脳にその発信装置が眠っているって?それってどこかで証明されましたっけ?

作者である深水氏の書きたかった主題取り組みたかった主題はもう充分すぎるほど理解しているつもり。どんな結末に落ち着くんだろう、「読者が犯人」なんて放り出して香坂の事件に終始してしまうんだろうか、このポエムに意味はあるのか…いろいろ心配しながらも楽しい読書をさせていただきました。だから、成立しいていると云えるかもしれないことは認めます。

「読者が犯人」のトリックが正しくいちゃもん付けられる隙もなく成立してしまったら、きっとミステリ界は終末を迎えてしまうと思う。だから、いつか来てしまうかもしれないその日まで、こういうチャレンジスピリットに溢れた作品を読み続けたいと思います。

ところで、『ウルチモ・トルッコ』ってどういう意味ですか?

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