□有栖川 国名シリーズ

2007/02/18

有栖川国名シリーズアンケート

右サイドバーに設置しておりましたアンケートを新企画用に差し替えたため、本文内(企画内)に収納させていただきました。投票は引き続き可能でございますので、レビューをお読みの後に是非一票を投じていただけると幸いです。

アンケートにご協力ください
好きな有栖川 国名シリーズは?
ロシア紅茶の謎
スウェーデン館の謎
ブラジル蝶の謎
英国庭園の謎
ペルシャ猫の謎
マレー鉄道の謎
スイス時計の謎
モロッコ水晶の謎

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2007/01/15

『モロッコ水晶の謎』 有栖川有栖

モロッコ水晶の謎 Book モロッコ水晶の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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助教授の誘拐に始まり、連続殺人鬼の暗躍、殺人を予測できなかった占い師まで。

心躍る主題を料理するのは、有栖川有栖。

さぁ、国名シリーズ第8弾を召し上がれ。

本作『モロッコ水晶の謎』で“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”企画も終焉でございます。読了のスピードにレビューが追いつかず、リアルな感想をお届けできなかったのが残念でございます。でも、やっぱり企画モノは好きです。楽しいです。またやりたい。次こそは「お館様!」こと綾辻氏の館シリーズですね。

いつ開催されるかわからない次の企画モノはさておき、『モロッコ水晶の謎』レビューです。本作は中編クラスの作品が3品と掌編が1品。それでは、どうぞ!

「助教授の身代金」

すわっ、火村誘拐!?

とタイトルだけで愕然とされた貴方、お仲間です。火村が誘拐に遭い、電話口で火村が遺した謎の暗号にアリスが挑む…というストーリーが一瞬にして出来上がった私ですが、もちろん火村がそんなドジを踏むわけが無く。誘拐されたのはテレビドラマの当り役から“助教授”とあだ名された元・有名俳優です。

誘拐を扱った作品は、本格ではなく社会派ミステリに多いので、あまり読んだことの無いジャンル。東野圭吾氏の『ゲームの名は誘拐』か貫井徳郎氏の『悪党たちは千里を走る』くらいしか思い浮かばないのですが、これらだって純粋な誘拐モノじゃなかったし。虚構の中でも成功し得ない、リスクの大きすぎる犯罪なのでしょうね。

本作で最も印象強いのが火村の次の言葉。引用しましょうか。

「一時間前に自分が話したことぐらいはっきり覚えている。あんた、他人がしゃべることばかりに興味を持つから、自分が何をしゃべったか忘れてしまうんだ」

すごい言葉ですね。犯人特定に至った火村の閃きは、かなり美しい。でも、一時間前に自分が話したことをはっきり覚えているだなんて、かなり特殊だと思います。私はこのレビューを書く間にも、上から下まで何往復してるかわからないというのに。

「ABCキラー」

アガサ・クリスティ『ABC殺人事件』へのオマージュ作品として生まれた本作。クリスティの『ABC殺人事件』を読んだのはもう数年前。「なんか納得いかねー」というあまり良くない印象だけが残されております。でも、クリスティのベスト3にこの作品を押す向きもありますよね。私的には『そして誰も』『アクロイド』『(不本意ながら)オリエント』という為るべきベスト3なのですが。

って、クリスティ談義はともかく、この「ABCキラー」も途中で謎解きの筋が入れ替わるという「なんか納得いかねー」な作品。判り易くできているのですが、やっぱり最初から最後まで一本道であって欲しいと思うのが本格ミステリファンとしての願い。でも、本家へのオマージュ感はたっぷりでしたので、嬉しい。

でも、実際にこんな事件が起こったら、どれだけの恐怖が社会を襲うのでしょうか?私も名字と市町村の頭文字が一致しちゃっているので、自分の番が来るまで恐恐として過ごすことでしょう。でも、Aから始まるアリスの「あがっちゃった感」はよくわかる。私もきっと、自分の番がくるまでは、興味津々でワイドショーに齧りつくのでしょう。

「推理合戦」

この掌編は好き。朝井女史がラストで電話を取り落とすシーンなんて最高。アリス、一矢報いる。

自分の子どもとも云える作品の登場人物に、どんな名前を付けるか。有栖川氏は自分の子どもに自らの名前を与えましたが、読者が嫌な思いをすることが無いようにと、犯人や被害者には実在しそうに無い名前を付けることにしている…と語った作家は誰だったでしょうか?思い出せない。私も母親を殺されたことがございますが(作品名は忘れました)なんとなくむずむずした思いを抱きましたね。

「モロッコ水晶の謎」

オーラスレビュー。でも、なんとなく好きじゃない本作。犯人の信念には感服いたしますが、そんな風に美しくないトリックは嫌です。

ある人物の協力を得て、犯人を嵌める火村。犯人を破滅させ、自白させるの好きね。極悪。しかし、犯人のように占いに全幅の信頼を置くことってできるでしょうか?私も占いは好き(星占いや血液型占いなどの大雑把なものは全く信じておりませんが。だって、恋愛運なんて同じグループに属してないと成立しないじゃないですか)なのですが、あくまでも指針や方向性を示す程度のものであって、そこから運命をどう切り開くかは自分次第ではないでしょうか。その一般論を逆手にとったのが、本作の面白いところなのですが、無茶苦茶やな…という第一印象は否めません。

ただ、あとがきで有栖川氏の語る「ありそうで、ない。なさそうで、ある。」そんな味わいは充分に感じられました。

というわけで、本作を持ちまして“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”は終了!国名シリーズが発売されましたら、随時追加してゆきたいと思います。それは一体いつの日か…。次の国名シリーズの題名当てなんて、なかなか楽しそうなので、ちょっと思案した後追記しておこうと思います!!

それでは皆様、アデュー☆

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2007/01/14

『スイス時計の謎』 有栖川有栖

スイス時計の謎 Book スイス時計の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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作者・有栖川有栖をして「どこから見ても本格ミステリ」と云わしめる4作品を収録。

美しい論理をとくとご賞味ください。

有栖川 国名シリーズ第7弾!!

“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”も本作『スイス時計の謎』と次作『モロッコ水晶の謎』で終了。既に『モロッコ水晶』も読了しているのですが、8作品しか無いにも関わらず、一月半ばになっても企画終了していないところが情けないですな。そうはいっても、残り2作品、張り切って参りましょうか!!

「あるYの悲劇」

本作はアンソロジー『「Y」の悲劇』のために書き下ろされた作品。『「Y」の悲劇』も所有しておりますが、あのアンソロは有栖川氏と法月氏の作品がかろうじて読める…といった感じでしたね。二階堂氏の作品なんて…アンチミステリとも云えない。

「Y」と読むことのできるダイイング・メッセージを扱った本作ですが、もちろん「Y」と読むのが正解!とはゆきません。この「Y」は別の文字記号を表しているのですが…あとがきで有栖川氏が述べているように、書き方はあれでOKでも、瀕死の被害者の手が一画目よりも上に上がったとはどうしても思えないですねぇ。でも、この作品の本質は「どこに書いたか?」ですから、まぁいっか。

この作品の被害者はバンドマンなのですが、彼を死に至らしめた凶器が“フライングV”(イメージが湧かない方は是非ググってみてください)だという、そのこだわり様に脱帽。まさに「Y」の悲劇。

そうそう、この作品は34歳独身者の独白から始まるのですが…アリスですよね?最初、この独白がアリスによるものだとは思わず、犯人によるものだと思ってました。だって、一瞬でもアリスがナンパを考えるだなんて!!寂しいなら、迷わず助教授に電話しなさい。休講にしてでも、彼はやってくるでしょう。

「女彫刻家の首」

この作品は死体から切り取られた首の消滅を扱った作品です。先程のダイイング・メッセージといい、主題からして本格の彩りですね。

さて、ミステリで死体の首が切られる場合、被害者の誤認や入れ替えを考慮するのが常套手段であり、大抵は“雪の山荘”か“嵐の孤島”が舞台で、警察が介入できないように意図されているものです。でも、本作は早々に警察が被害者を特定!では、撲殺に使われた凶器が特殊なもので、凶器の特定=犯人検挙か?というわけでもありません。凶器、転がってますから。というわけで、みなさんも犯人が首を持ち去った理由を推理くださいませ。

私はこの解釈、好きですねぇ。ただ、犯人が○○なんですよ。むしろ○○だったから、計画に綻びが生じたときにストップがかけられない。浅はかですこと。

「シャイロックの密室」

本作はタイトルからして本格。タイトルに「密室」と付く作品は、どんなにダサいと云われようと果てることが無いと私は信じております。スマート。

“ノックスの十戒”か“二十則”の中に、「一般生活で必要とされない特殊な知識や能力を用いたミステリは禁止(かなり意訳です)」というのがあるのですが、この作品はこれに抵触しているかも。しかも、解決編までその知識が登場することはないし。でも、この作品は倒叙形式(犯人視点で描かれている)だから、火村&アリスの推理の過程を覗けない→だからセーフってことなのかな?いまさら“十戒”や“二十則”を守っていては、ミステリは書けないとはいえ、やっぱりコンプされた作品を望んでしまうのが本格ミステリ好きなのです。

でも、こういった専門知識をふとしたきっかけでしったミステリ作家は、「これで一作書ける!」と神が舞い降りるが如く興奮するのでしょうね。私にもいつか神が降りてくることを祈って(ミステリを書こうと思ったことは一度もありません…悪しからず)

「スイス時計の謎」

表題作でござい。「ロシア」から「モロッコ」まで8作の表題作の中で、この「スイス時計」が個人的にいっとぅ好みです。最も本格、最も論理的ですよね。

それが端的に表現された箇所がこちら。引用です。

「いくら考えても火村先生のロジックは崩れないんだ。将棋で言えば詰んでるし、チェスで言うならチェックメイト。お前が犯人だ、と俺も思う。あの推理だけで裁判に懸けられるかどうかは疑問であるにせよ、俺にとっては動かぬ証拠に等しい」

最高ですね!!

物的証拠が無い中での犯人指摘。でも、あまりにも美しい論理は、動かぬ物的証拠に等しい。何度でも云いましょう、最高ですね!!本作で火村が披露した論理は、本当に美しいです。この論理だけで、国名シリーズ表題作中ベストだ!と云い切れるほど。是非、この美しい論理のフルコースを召し上がってください。

さて、本作では恋だの愛だのに無縁も無縁だった、アリスの忘れられない過去の恋愛に触れることができます。プロローグとエピローグで描かれるアリスの心情。この事件の中でどうやって変化していったのか。アリスはこれからも書き続けることができるのか。これもまた見所。

本格ミステリたる要素が詰まりに詰まった『スイス時計の謎』。『ペルシャ猫の謎』が番外ベストならば、本作は正統派ベストですね。

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2007/01/13

『マレー鉄道の謎』 有栖川有栖

マレー鉄道の謎 Book マレー鉄道の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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旧友との再会に喜ぶ火村&アリスの前に立ちはだかったのは…

やっぱり殺人事件!!

日本だろうが、マレーシアだろうが、犯罪は彼らを休ませてはくれないのだ!!!

「日本推理作家協会賞」に輝いた、バリ本格作品。と、とにかく厚い!!作家アリスシリーズ最長不倒ではなかでしょうか?そして、こんなに厚いのに、本棚で見つけることのできなかった私って…というわけで、わざわざ書店に向かい文庫版を購入して挑む本レビュー。ノベルス版が本棚のどこかに眠っているはずなのに…。

というわけで、『マレー鉄道の謎』を読むのは今回が2度目です。本棚のどこに収納してあるのかもわかりませんし、犯人が誰だったのかもトリックがどんなだったのかも、誰が殺されるのかもさぱーりです。初読の心持ち。でも、日本を脱出しても火村&アリスは殺人事件に見舞われるわけね…と哀れに思ったことだけは、鮮明に思い出せます。

今回、火村とアリスは大学時代の旧友・大龍がキャメロン・ハイランド(マレーシアの軽井沢)で経営するホテルに婚前旅行へ向かう。見慣れぬ景色と新しい出逢いにリフレッシュする間もなく、遭遇するのは殺人事件。しかも、旧友・大龍が犯人として目されたとあっては、火村&アリスは黙っちゃいられない!!密室の謎に、飛び立つ飛行機というタイムリミット、ふたつの枷が彼らを束縛する。果たして、火村は旧友を助け、犯人を裁くことができるのか?

という内容です。まず、火村&アリス夫婦に共通の友人が居たとは驚き。彼らはもう、自分たちのコミュニティでよろしくやってたと勝手に思っていたので(これまで、アリスの作家友達は何人か登場しましたが、大学時代からの共通の友達というのはお目にかからなかったものですから)ちゃんと大学生ライフを楽しんでいたとは。まぁ、恋だの愛だのとは無縁だったご様子ですが。

さて、今回の火村の推理ですが…結構泥臭かったですね。犯人挙げるまで、難産でしたし(それじゃなきゃ、こんな厚さにはなるまい)。死体の発見されたトレーラーハウス内がガムテで目張りされていて…というオーソドックスな密室だったのですが、このトリックは容易に想像できました(きっと、前回読んだ際の記憶が奥底にあったためだと思いますが)。このトリックは手を変え品を変え、いくつかの作品で発表されておりますよね。一番印象深いのは三毛猫ホームズのアレです。アレは無茶苦茶だけど忘れられない。

そして、犯人と対峙し、最大のピンチを迎える火村&アリス。犯人の構える銃がモデルガンだと知りつつも飛び掛らずに、とにかく犯人を追い込んで追い込んで追い込んだ火村。あの姿勢こそ、犯罪あるいは犯罪者に対して、火村が取り続けてる狂気的なスタンス。火村は一体、どんな罪に苛まれているのでしょか?

そうそう、この『マレー鉄道の謎』は異国の地で起こった事件を扱っておりますので、登場人物の会話の約半数が異国語です。もちろん、異国語表記されているわけではないので普通に楽しめるのですが、なんとなく火村に(そしてアリスにも)後光が射している様に見えるのは、英語すらまともに習得できない私のやっかみでしょうか?いいもん、日本から出ずに一生を終えるもん。

というわけで(どういうわけだ?)、やっぱり作家アリスシリーズは短編だな…と、再確認した一作。美しすぎる推理に酔いしれたいヒムラーな私としては、もがき苦しむ助教授(アリスが助教授という英単語が浮かばず、プロフェッサーに勝手に昇格させた件が好きです)なんて、見たくない!本企画も『スイス』と『モロッコ』で終了。この2作は名推理目白押しですので、楽しみだがん!!

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2007/01/09

『ペルシャ猫の謎』 有栖川有栖

ペルシャ猫の謎 Book ペルシャ猫の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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正統なる国名シリーズにして、番外編色強き第5弾。

「買いなさい。損はさせないから」

私は既刊の国名シリーズの中で、この『ペルシャ猫の謎』が一番のお気に入り。しかも…むにゃむにゃむにゃ。この先は各作品レビューで!

「切り裂きジャックを待ちながら」

なんかもぅ、このタイトルだけでご飯三杯イケます!みたいな秀逸さ。タイトルだけで傑作!みたいな雰囲気漂う本作は、内容もイケてます。

本作は有栖川氏と法月綸太郎氏、綾辻行人氏が競演し、それぞれの原案をミステリドラマ化するという夢のような企画のために描かれた作品。このドラマ、リアルタイムで見た記憶があるのですが、綾辻氏の「意外すぎる犯人」の印象が強過ぎて、他の2作品をまったく覚えておりません。綾辻氏の「意外すぎる犯人」はいろんなところでリメイク(?)され、違う役者が登場するものを3回くらい見たような気がします。最初はテレビ局でしたよね?あとは無人島と…とにかく、物語が始まった瞬間に「これかぁ~」という感じ。

って、すっかり「意外すぎる犯人」話に!そうそう「切り裂きジャックを待ちながら」のレビューでした。この作品は死体の登場から火村の登場までの描写に鳥肌が立ちます。有栖川氏の作品の中で、シーン毎にランキングをつけるならばベストかも。そのくらい気に入っております。

そして、火村は犯人を追い詰めるシーンも圧巻!「Mary!」と犯人が叫んだシーンでも鳥肌立ちます。まさに舞台や映像化向け。

「わらう月」

本作も『英国庭園の謎』に収録されていた「完璧な遺書」と同じく、犯人(今回は共犯者か)サイドより事件を捉えた作品。しっかし、容疑者と対面する際の火村は極悪人ですねぇ。まぁ、犯罪者の肩を持つこともないのですが。ちょっと可哀想になります。

しかし、本作で共犯者を追い詰める(嵌める?)火村のキザ台詞には参りました。い、云われてぇ!ちゃんと(ちゃんとか?)女性を褒めることもできるんじゃないですか。なぜ彼女(妻)ができない。やっぱりアリスが…。

そうそう、この「わらう月」の中に、学生アリス・作家アリスの関係性を解き明かす重要なヒントが!作家アリスの作品には『月光なんとか』という作品が多いそうな…『月光ゲーム』ですね!でも、『月光』と名の付く作品は『ゲーム』しかないので、これからどしどし発表されるのでしょうか?『海奈良』の中でも、作家アリスの作品タイトルがひとつ明かされてましたよね?『セイレーンなんとか』だったように記憶しているのですが、それはいつ出るのでしょうか?(←きっと出ないと思ふ)

余談ですが、私は小さいころから月が大好きで、夜道、どこまでも付いてくる月が頼もしかったものです。

「暗号を撒く男」

朝井小夜子女史登場!私は朝井女史が登場し、ちょっとしたミステリバトルの起こる作品が大好き。確か『モロッコ水晶の謎』にも掌編が収録されておりましたよね。『モロッコ』の中では、あの掌編が一番好みだった気がする…なんちゅー作家泣かせな。

本作の中では朝井女史の「人殺し関係です」発言がとにかく好き。自分の職業を問われて、こんな素敵な切り替えしをしてみたいものです。

って、こんなに朝井女史の話ばかりをするのは、ミステリとして語るところが少ないからです。

「赤い帽子」

『ペルシャ猫の謎』最大の番外編(なにせ、火村もアリスも登場しない!)にして、私が本短編集の中で最も気に入っている作品(←おいっ!)それが「赤い帽子」。

本作は“はりきりアルマーニ坊や”が主人公。しかも、発表媒体が大阪府警…社内雑誌(笑)で有栖川氏の作品が読めるんですか!(そういえば、東野圭吾氏の昔働いていた会社の社内広報誌に連載していたことがあったみたいですね。うちの会社からもミステリ作家が誕生してくれないかしら)とにかく羨ましい。

というわけで、「赤い帽子」はアルマーニ坊やの活躍がふんだんに描かれております。作家アリスシリーズに登場する警察関係者の中では、アルマーニ坊やが一番好きですね。野上刑事部長の、あのつっけんどんな感じも捨てがたいけれども。鮫やんも好きです。そんな鮫やんがアルマーニ坊やをスカウトしてくれた…なんて件にしあわせなものを感じました。

そして、森下が犯人にどんどん肉薄していく様に、こちらまで興奮。「こいつが犯人だ!」と雷に打たれる瞬間に、私も出逢ってみたい…って、その前に本物の殺人事件と出逢わないと…それは嫌だな。

「悲劇的」

この「悲劇的」は完全なる番外編、ショートショートです。ある学生が火村に提出したレポート。そのレポートの最後に火村が付け加えた18文字。火村の最初にして最後の執筆作品です。

火村の無神論者ぶりは、数々の作品で描かれておりますが、この作品もそんな火村の一面を知ることのできる一作。火村くらい徹底していると気持ちよいものがありますね。苦しいときの神頼み…いるかいないかわからない神に祈る時間があるならば、苦しみから脱却する努力に努める。それが合理的なことは良くわかっていても、そこまで思い切れないのが人間ですよね?

「ペルシャ猫の謎」

表題作にして問題作。あとがきで有栖川氏自身も語っておりますが、この結末を読まされた読者は、一体どうしたら良いものか。これを表題作にしちゃうっていうんだから、有栖川氏も図太くなったものです(あくまでも本人談です)

というわけで、ミステリとして成立していない本作。でも、私の愛するシャーロック・ホームズの決め台詞「あり得なかった仮説を消し去っていって、最後に残ったものは、どれだけありそうになくても真実だ」がうまいこと(弁解として?)用意されております。でも、この決め台詞は“偶然という奇跡”が作用したときに、効果を発するものだと個人的に思っているので、心霊現象までカバーしてくれないと思うのですが(でも、コナン・ドイルも心霊現象好き?だったからなぁ)

「猫と雨と助教授と」

ボーナストラックとして収録されている本作。語るべきポイントは唯一つ。

「婆ちゃん。猫、もう一匹増えてもいいかな」

もう、これだけ。猫を猫可愛がりする火村も見物です。犯罪を憎む助教授も、猫の前では形無しです。もしも、猫が犯罪を起こしたら(三毛猫ホームズクラスの天才猫)火村は果たして犯猫を裁くことができるのか?(笑)

やっぱり『ペルシャ猫の謎』が私の中で国名シリーズのベスト。国名シリーズは未読でこれから読もう!という方は、もちろん『ロシア紅茶』から読むのがベストだと思いますが、とりあえず一冊…と仰るならば、是非『ペルシャ猫』を手に取ってくださいませ。

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2007/01/08

『英国庭園の謎』 有栖川有栖

英国庭園の謎 Book 英国庭園の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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不思議の国のアリスよろしく、英国庭園を彷徨えるアリス&火村。

ジャバウォッキーまで登場し、まさにアリス尽くしの一冊。

有栖川 国名シリーズ第4弾!

この『英国庭園の謎』は有栖川 国名シリーズでも異質な一作。何故って?それはタイトルの国名が日本語表記だからですよ!イギリス庭園とせずに、英国庭園と表記するあたり、私の超好みです。では、その内容はというと…?

「雨天決行」

この作品はタイトルからして読者をミスリードしておりますねぇ。有栖川氏の作品はかなりの数を読んでいて、タイトルを読んだだけでは内容を思い出せないものも幾つか存在しますが、この「雨天決行」は別ですね。

しかし、被害者の白石女子。めちゃくちゃこだわりもってますねぇ。この手のこだわりは、森博嗣のお得意とするところなのですが(私もかなり森作品の影響受けております)テレビはテレビじゃないとゾワゾワっとしませんか?

あとね、この作品に登場するぬかるみに遺された足跡の件なんですが…必要でしたか?火村の推理のとっかかりも、足跡とはまったく関係ないところからだったような気がするのですが?まさに蛇足だったような気が致します。

「竜胆紅一の疑惑」

この作品は有栖川お得意の犯人指摘しない系ですね。私は結構、こういう結末も好きなのですが、ズバットやってくれないと気持ち悪い方もいるのではないかなぁ?と思います。

本作のアリスの役割はとにかく不憫。火村を紹介して欲しい-ただそれだけのために駆り出された哀れな推理小説家。アリスの存在意義(雑学データベース?)が発揮された作品をそろぞろ読みたいものです。

でも、好きな作家の新作が読みたい!という読者の気持ちは本当によくわかります。有栖川氏の学生アリスシリーズの新刊を待ちに待ち望んで早○年。もうすぐ二桁に到達しようか…年上だったアリスたちがすっかり年下に。江神さんは…まだセーフ?でも、彼らは大学生ですからねぇ、ウラヤマシイ。新刊を待ち望んでいるといえば、小野不由美氏もそう!せめて自分が死ぬまでにシリーズ(十二国記)の完結を!!

「三つの日付」

アリスがその存在意義を~と書いたばかりですが、この「三つの日付」がありましたか。この作品はアリスが容疑者のアリバイ証人で…というかなり異色な作品。鬼・火村の追求を受ける犯罪者や共犯者の気持ちが少しはわかりましたか?アリスよ。

この作品には今は亡き赤星氏が登場しており、『海奈良』も再読しないとなぁと思わせた一作。火村シリーズは短編の方が好きなので、角川系の『海奈良』『ダリ繭』『朱色』あたりは国名シリーズに比べて読みが浅いんですよね。でも、レビューコンプのためにも、しっかり時間を作らないとね!

というわけで、アリスのように曜日にとらわれない生活に憧れます。毎週毎週、サザ○さんが怖いという今の生活からは早くおさらばしたいものです。

「完璧な遺書」

『英国庭園の謎』の中では、この作品が一番好きです。この作品は古畑系の倒叙形式でもって書かれているのですが、犯人側から見た火村がいかに怖いかが存分に描かれてる作品。犯人の考えたこと、為したこと、そのすべてが見破られる恐怖ったらないでしょうね。

しかも、最後に火村がかますハッタリ。私のPCは「こうさつ」と入力すると「絞殺」が一番最初に変換されるという、どういう生活送ってるわけ?PCなのですが。少し前に携帯の記憶機能バトンが流行りましたが、そんなおっそろしいバトン、受け取れねーっす。丸裸じゃないですか!!でも、「もりひろし」と入力して、きちんと「森博嗣」と変換してくれるこのPCは、やっぱり愛おしいです。そろそろ寿命ですが…。

「ジャバウォッキー」

実はルイス・キャロルのアリスシリーズをちゃんと読んだことの無い私。小学生のころにジュブナイル版で大抵の作品は読んでしまったので、いまさら感がどうしても拭えないのですよ。でも、ジャバウォッキーのジャバウォッキーぶりが知りたければ、ちゃんとしたの読まなきゃですよね。

さて、本作はかつて火村に捉えられたジャバウォッキーが、復讐あるいはSOSのために再度交信してくる…というお話。私はジャバウォッキーの思考回路、好きです。壊れていないのならば、是非ともコピーして欲しい。あの思考の飛躍は魅力的です。

そうそう、本作もアリス大活躍の回でしたね。ちゃんと、存在意義を示しておりましたアリス。でも、携帯で通話しながら暴走運転だなんて、今の世の中じゃ捕まっちゃうよ?アリス。しかも、千円札を投げつけて、改札を突破だなんて…アリスもなかなかやるわね。あとで火村にいっしょに謝ってもらってください。大の大人がふたりして、ペコペコ頭を下げる様…見物です。

「英国庭園の謎」

表題作。やっぱり表題作がラストだと落ち着きますね。国名シリーズ読んでるぞ!って感じで。

ただ、表題作は正統派であろうとする姿勢の現われか、如何せん地味な作品が多いのも事実。本作はポエティックな暗号モノなのですが、暗号解読のいくつかのパターン(ひとつ飛ばしとか、文字を削除して読むとか)を一通り試してゆけば正解に辿り着けるでしょう。電撃で打たれるかの如く、突如として脳裏に閃いた暗号の美しさにはやはり負けます。

本作も火村が犯人を嵌める型のオチが用意されているのですが、犯人は誰かわからないけど、この罠に嵌った人間が犯人だ!という解決の仕方は好きです。もっと臨場感があれば尚良し。アリスがお約束をかましてくれましたが、犯人と対峙しない名探偵だなんて勿体無くって。アリス、よくやったぞ。

というわけで、どんどんレビューという名の随筆の様相を為してきた企画レビュー。この『英国庭園の謎』で丁度折り返しでございますか。後半戦は『マレー』が厚いので、そこで数日を要するかもしれませんな…。

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2007/01/07

『ブラジル蝶の謎』 有栖川有栖

ブラジル蝶の謎 Book ブラジル蝶の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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最早お馴染みの火村&アリス夫婦が出逢った、風変わりな事件が集められた宝石箱。

その箱から今回飛び出すは…数々の蝶々。

美しい蝶と論理に酔う、国名シリーズ第3弾!

昨日はお休みさせていただきました“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”企画でございますが、早くも飽きた…わけではございません。今日も一作一作丹念にレビューさせていただきますよ!

「ブラジル蝶の謎」

有栖川氏の短編構成は表題作がラストにくるものが多いような気がするのですが、本作は“蝶サンド”を果たすため、敢えてトップバッターにこの「ブラジル蝶の謎」が。

本作は瀬戸内海の小島に独りで暮らしていたロビンソン・クルーソーが、19年ぶりに本土に戻ってきたところ、蝶の舞う部屋で殺害され?というストーリー。犯人を指摘する火村の推理は、悪く無いけれども抜け穴も存在するよね?という感じで、ちょっと物足りない。19年と云えば、生まれたばかりの赤子が大学に入学するに至るほどの長い月日ですので、人も社会も大きく変わってしまうでしょうね。その変化が本作の推理の鍵です。

そうそう、蝶が天井に貼り付けられていた理由は非常にオーソドックスで、トリックがどんどん複雑化している中で、こういう作品を読むと原点に戻った感がして安心できます。

「妄想日記」

この作品は有栖川氏が創造した創作文字が面白くて好きです。この創作文字をなんとか解読しようと、数分にらめっこした過去が私にはございますが、まさかミスリードだとは…。しかも、床に描かれた○○○は、どうにらめっこしても浮かび上がってこないし。ぎゃぼ。

「妄想日記」は死体に何故火をかけねばならなかったのか、大オチのその理由が印象深いです。焼却された死体が登場するミステリは、被害者の身元を割れにくくするためか、犯罪自体を無かったものにするため、大抵この辺りが理由だったりするのですが、これは新説です。消えなかったのか?という疑問は敢えてスルーで。

「彼か彼女か」

この作品は『ブラジル蝶の謎』の中で一番気に入っている作品。それは何故って?もちろん<ミスター・マリリン>の蘭ちゃんですよ!私も「彼か彼女か」を読んだときには、有栖川氏に新キャラ出来たね☆と思ったものです。蘭ちゃんが<ミスター・マリリン>にやってきた訳ありな客の悩み事を快刀乱麻に解決する。そうね、シリーズ名はマリリン・シリーズでよろしいかと。有栖川氏、是非よろしく。

というわけで、本作のトリックは男性作家ならではないでしょうか?少なくとも女性はなかなか考え付かない(はず)。こういう、ちょっとしたとっかかりから、真相に辿り着く系のミステリって好きです(何度目だ、ナウシカ)。

というわけで、蘭ちゃんと資本主義と家父長制のふしだらでいかがわしい相互依存関係について、いつか蘭ちゃんと火村が語り合う様が見たいと願う一作。

「鍵」

この作品も好きですねぇ。ミステリの犯人どうこうでなく、被害者のそばに残されていた鍵は一体なんの鍵だったのか?という点に主題が置かれた本作。その鍵が玄関の鍵だったり、ただの宝石箱の鍵だったりしないのが有栖川流。最後にアリスがつまらない見栄と負け惜しみで横文字で解答するのが、夫婦っぽくて好き。そんなことで怒ってちゃ、夫婦生活やってけないわよ?

というわけで、火村は旅する先々で事件に遭遇しすぎではないかと思ったり思わなかったり。犯罪学者が犯罪を離れて、羽休めすることはできないのでしょうか?だって、次に控える「人喰いの滝」でも旅先でお呼びがかかってだたでしょ?最新作の『乱鴉の島』だってねぇ?ちょっと火村が不憫になってきました。

「人喰いの滝」

本作は漫画化されたものを読んだことがあって、ラストで犯人を嵌めた火村が極悪風だった(私がそう見えただけです~。漫画家さんに罪は無いです~)のが印象的でした。名探偵が犯人を嵌めて自供させる作品は数多くありますが、これって犯人が違うトリックを使ってたらどうするつもりだったんでしょうねぇ?だって、そんな大量の○○を購入している不審客がいたら、警察の足を使った捜査で浮かび上がってくるはずだもの。

でも、アリスの「人喰いの滝が、喰ったものを吐き出し始めたんです」は決まってましたね。火村に大抵美味しいところを持っていかれるアリスですが、そのセンチメンタルな物云いにうっとりさせられることもしばしば。

そうそう、トリックにも触れなくては。ネタ自体は『スウェーデン館の謎』と同じなのですが、こちらの方がスマートに感じるのは私だけ?人喰いの滝の精度の点だけリスクがともないますが、過去の実績から信頼おけるでしょう。

「蝶々がはばたく」

本作が“蝶サンド”のラスト作品。このトリックは一際印象に残りますね。ネタは人間消失モノなのですが、その現象が○○的なものでなく○○の力で為されたというところに、そのすごさを感じます(って、このフセ字はトリック知っている方もわからないのではないだろうか)今日みたいな日にも、そんな不思議な力が働きそうですよね。

しかし、今回もふたりで旅行ですか。三十路もとうに過ぎ去った大人が、そんなにそんなにいっしょには出掛けません。だーかーらー、あらぬ噂が立つんですよ。でも、蟹は私も食べたい。是非、ご一緒したい。

ラストの締め方がいかにも有栖川!なのですが、そこに書かれている情景はあまりにも重くって、読む度に胸がきゅんとします。

というわけで、これぞ!という光る作品が若干少ないかなぁと思ってしまった『ブラジル蝶の謎』。でも、安定したクオリティこそが有栖川スタイルなのかもしれません。

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2007/01/05

『スウェーデン館の謎』 有栖川有栖

スウェーデン館の謎 Book スウェーデン館の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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次回作の取材のため、雪深い裏磐梯を訪れたアリス。

かの地で出逢ったのは、美しくも儚いルシアと、魅力的なカイバル海豹。

起こった犯罪のすべてを知るのは…降り積もる雪のみ。

“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”第2作目はもちろん『スウェーデン館の殺人』でございます。国名シリーズは既に8作出版されておりますが、うち6作が短編、2作が長編となっております。やっぱり有栖川を読むなら、長編は江神さん(学生アリス)、短編が火村(作家アリス)ですね。学生アリスの方が執筆スピードは速いけれども、作品としての完成度は職業作家のアリスが上手でしょうか。

って、学生アリスシリーズは作家アリスが執筆した作品群で、作家アリスシリーズは推理小説家を目指す学生アリスが執筆したものだというパラドックス説はどこまで本当なのでしょうか?私はかなり信じているのですが、有栖川氏がオフィシャルでこのお話をされてるのを読んだことないものですから。情報求ム。

さて、肝心の『スウェーデン館の謎』レビューです。既にここまでお読みの方ならお判りかとおもいますが、火村モノの長編って苦手なんです。火村の怪傑ズバットぶりがうまく活かされていないような気がして。ただ、本作は物語の半分過ぎてからの登場ですから、中編として読むことも可能かも。

しかし、アリスの「きてくれ。嫌な予感がする」って呼びかけに、大の大人が何コマか講義休講にして駆けつけるかね?(休講にしたって記述はなかったような気がしますが、遣りかねないものですから)だから、あらぬ噂が立つんですよ。ねぇ?

さて、トリックのお話。本作はミステリの王道も王道、足跡の密室(?)を取り扱った作品なのですが、うまくまとまっている反面、リスクが大きすぎるような気がします。離れのログハウスと本館(スウェーデン館)をつなぐ足跡だけでなく、林なり森なりへと逃げる足跡でも偽装しておけば良かったのに。ログハウス内に明らかな他殺体があるんだから、その方が自然でしょう。あるべき足跡が無いから、本館の人物が必然的に疑われるわけです。って、そこまでのミスリードはいらないのか。

そうそう、作中に挿入されているパズルは皆さん、解けましたでしょうか?私はこういうのからっきしダメなんですよ。とにかく奇抜な解答を狙おうとしてしまって。あの微妙な違いがパスラー的なのでしょうね。

って、やっぱり長編はレビューがのらない。読むのにも時間かかったもんなぁ。せっかくの企画レビューでございますが、このくらいで許してください。

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2007/01/04

『ロシア紅茶の謎』 有栖川有栖

ロシア紅茶の謎 Book ロシア紅茶の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

犯罪臨床学者・火村英生とミステリ作家・有栖川有栖の夫婦コンビが挑む新たな謎は…

エラリィ・クイーンのひそみに倣った“国名シリーズ”!

期待するなってのが、もう無理!!

あけましておめでとうございます!

年末年始はトドのように“食っちゃ寝読書しちゃ寝”を繰り返し、読了本と体重を順調に増やしてまいりました、まじょ。です。今年こそはミステリブロ愚の名に恥じないように、精進を重ねてゆく所存でございます。

皆様、今年も宜しくお願い致します!!

というわけで、新年一発目のレビューは有栖川有栖の『ロシア紅茶の謎』でございます。新年&そろそろブロ愚一周年企画ということで、“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”を開催!企画モノ、本当に好きねぇ。もちろんバナも作成しました(ブロ愚タイトル下に企画ショートカットとして使用中)。本当はどこぞの国の国旗を使ったバナを作成したかったのですが、そういうのはなにかの権利にひっかかるのでしょうかね?どちらの素材サイト様でもお見かけしなかったものですから。

というわけで、企画レビューは短編一作毎に細かくレビューしてゆくのが慣わし。カンパリマス。

「動物園の暗号」

有栖川作品に結構な頻度で登場する○○○トリック。『マジックミラー』あたりがその代表格かな?と思いますが、その○○○トリックをちょっと捻った形で披露しているのがこの「動物園の暗号」でございます。私は○○○を片手にバーチャル旅行(あっ、旅行って云っちゃってるよ!)をする趣味は無いのですが、地理専攻の友人にそんな崇高な遊びで淋しい夜をやり過ごすという剛者がおりました。でも、百聞は一見に如かずだとやっぱり思うんですよねぇ。でも、○○○とにらめっこして、「ひとつ暗号できたぞ!」と喜ぶ有栖川氏は可愛い。

でも、この暗号、とても印象に残ります。最後のオチはどうかな?やりすぎでは?と思いますが、センチメンタル・アリス(作中の有栖川有栖はカタカナ表記で)にはぴったりかも。私は道産子なもんですから、北海道の地名(あっ、地名って云っちゃってるよ!)について勉強させられた(能動的)ことがあるのですが、地名にはしっかり由来が存在するんですよね。だから、最近の統廃合で市町村がころころと地名変更を繰り返すニュースを見ると、なんだか哀しくなります。その土地の情景やら、かつての意義やら、互いの関係やらを端的に現した地名。そんな地名がこんなに素敵に連鎖した暗号。うん、印象深いです。

というわけで、まったく作品の内容に触れてないわりに、ネタだけはバラすという最低のレビュー。

「屋根裏の散歩者」

この作品は秀逸!『ロシア紅茶の謎』に収録されている作品の中で一番好きです。ミステリ好きなら、そのタイトルを見ただけで触手が動くってなもんです。江戸川乱歩へのオマージュもオマージュ、その設定を借りて有栖川氏が新たに創造する「屋根裏の散歩者」。本作は現代の郷田三郎が作り出した暗号を犯罪臨床学者が解く(解いてないかもしれない)ことが主軸となっているのですが、私は散歩者のユーモア溢れるそのセンスが好きですね。下品だけど。

そうそう、アリスと火村が並んで美容室カット…って構図はなかなかおもしろいものがありますね。三十路をとっくにまわったおじさん(『スウェーデン館の謎』で火村自身がそう云ってるからセーフですよね?)ふたりが美容室…せめて床屋にしてくれ。でも、このさりげなく挿入された美容室も重要なファクターになるっていうんだから、二度美味しいぞ、有栖川氏。

「赤い稲妻」

この作品も好きです。最後に火村があがく犯人を追い詰めるために切り出す“事実”が好き。このカード切られたら、もうぐうの音も出ないわ!っていう詰みをみせてくれる作品はいつでも好きです。

トリックも面白い。この作品は「いかにして密室は創られたのか?」が推理のキーとなりますが、トリックを解いて犯人を追い詰めるのではなく、トリックを推理の糧にして犯人を追い詰めるという、その構造が好きです。でもね、客人が来てるのにドアチェーンはやっぱり無いと思うの。

「ルーンの導き」

どんどんと作品毎レビューが短くなっているのは、ご愛嬌で(笑)

この作品は私が火村英生をヒムと呼ぶようになった記念の作品です。ただ、私のヒムは愛称のヒムではなくて「him」なんですがね。わかる方だけ、楽しんでください。

さて、この暗号は無理矢理ですねぇ。私、就職するのにまったく使えない資格をいくつか所有していて、その中に図書館司書ってのもあるんですが、暗号を解くための知識を所有していても、閃きがそこに存在しなければ暗号は解けない(無理矢理だとしても)という典型的作品。未読の方は、司書資格というヒントも頭の隅に置いて取り組んでみてくださいませ。

そうそう、この作品を読んで久しぶりにタロット占いに行きたいなぁと思いました。気に入った絵柄のタロットに出逢ったら、いつか買おうと思って早○年。

「ロシア紅茶の謎」

表題作です。この作品の火村はいつにも増してキザったらしい(トリックを明かしたあとの決め台詞が)のですが、そんなヒムも素敵。でも、すでにトレードマークとなりつつある白いジャケットについては、いつもどうかと思います。

さて、この作品は毒殺に用いられた青酸カリ容器はどこに消えたのか?という、ミステリ的お約束ネタです。でも、斬新。私が犯人なら怖くてできないところです。だって、容器の保管場所の○○によっては…ねぇ?最近、異常気象ですし。私は生まれて初めてこんなに雪の無いお正月を過ごしました。

そうそう、DNA鑑定の件なんですが、私の認識では○○ではDNAの検出ってできないはずですよね?血液型は検出可能ですが。火村の仕掛けた罠。その罠に犬猿の野上刑事が阿吽の呼吸でのっかった、あの瞬間が私は好きです。

あと、有栖川氏も仰っているように、あの歌詞はダサいと私も思います。作家は作詞には向いていないのでしょうか?森博嗣氏の『詩的私的ジャック』で披露された歌詞も超微妙だったし。

「八角形の罠」

レビュー、最後の作品です。本作はミステリーステージツアーと銘打たれた犯人当てゲームのために書き下ろされた一作。う、うらやましい。一度はミステリーツアーに参加したいと常日頃願っている私。ちょっと前には名探偵コナンのミステリーツアーなんてのもありましたよね。超参加したかった。関西の方が、そういった企画が多いような気がしませんか?是非、北海道でも。

というわけで、私としては作中アリスの執筆した「八角館の殺人」(探偵役は江神さんじゃなくて島田潔ですか?)にも興味ありありなんですが(笑)

本作のネタは「消えた凶器」です。私の嫌いな○○ネタなのですが、しっかりと口封じしてくれている(それでもって、ボロを出す)という王道なので許す。でも、凶器が跳ね返ってピックアップできなかったらどうするつもりだったんだろう?とこの作品を読むといつも思ってしまいます。まぁ、解けなかったひがみでしか無いんですけれど。

というわけで、えらく長いレビューとなってしまいました。次回『スウェーデン館の謎』は長編なので、息抜きにさっぱりとしたレビューにしよう。そうしよう。それでは、皆さま、スパシーボ!!

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