■小野不由美

2013/11/03

『ゴーストハント 7 扉を開けて』 小野不由美

ゴーストハント、完結。

シリーズ通して張られていた伏線が見事に回収されていて、とても気持ち良い。ナルの正体にはただただ驚き。まさかね、そんなところまで伏線だとは思わなんだ。

そして、麻衣の恋模様ですが…

ナルじゃないと自覚する(させる)ところが凄い!

普通の少女向け小説なら「夢で助けてくれた彼はナルじゃなかったけど、でもナルにも良いとこあるし」的な感じでナルと麻衣をくっつけようとするのが定石なのに。きちんと「夢で助けてくれた彼=ジーン」が好きなのだと、そういう描写を最後まで貫いてくれたのが嬉しい。とりあえず、ずっと勘違いしたままでジーンとナルと呼んでいたこと、「そんなふうにしか、彼を呼ばなかった」と後悔する麻衣に胸が切なくなりましたとも。そして、

ジーンが言っておきたかったことっては何なんだ!!!

確かに謎の全てが解かれるわけじゃないってのはわかるんだけどさ!それが人生だって言われればそうなんだけどさ!物語の中でまでそんな殺生な!!でもそれが、麻衣とジーンが再会する伏線…にはならないでしょうね。それはそれで興醒めだもの。

とりあえず、純粋な本作の感想を述べるのなら、仲間が次々と子どもたちにとって代わられる描写がとにかく怖い。めちゃくちゃ怖かったよ。

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2013/11/02

『ゴーストハント6 海からくるもの』 小野不由美


綾子が活躍する日が来るなんて…!

これに尽きる一冊。前作『ゴーストハント5 鮮血の迷宮』レビューで綾子のことをこき下ろしたばかりだったのでもう、素直に謝罪するしかない。本当、ナルが無能をいつまでもチームの一員にしているわけないよね。そう言われてハッとしましたとも。まぁ、そんなナルは今回お荷物さんだったわけですが…!

ナルなし、完全なるチーム戦ってのもたまには良いなあと改めて。とりあえずぼーさんのリーダーシップったらないわね…惚れてまうやろ!まあ、私の好みは安原くんなわけですが(言動一致の自信家はたまりません)はてさて、麻衣(と真砂子)の恋の行方は?

次で最終巻なんですよね。ようやくナルの正体が明らかになりましたが、最終巻はそのあたりをメインに据えたお話になるのでしょうか?これまでナルは自分の力を隠してきたわけですが、今回ラストでその力を解放したことでナルを捕まえに来る輩が登場すると予想。それを麻衣を筆頭にしたチームで助けに行くんですよね?ってゴーストをハントするお話はどこに?

今回は(も?)幽霊というよりはバイオハザードなお話でしたが、登場人物の豹変ぶりが幽霊よりも怖かった。人間がなによりも怖い、そんな風に思うわけです。

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2013/10/30

『ゴーストハント5 鮮血の迷宮』 小野不由美


安原くんやっぱり再登場のゴーストハント第5弾。

毎度毎度違うネタで怪奇現象を演出してくれるのが嬉しいわけですが、今回はまさかの○○○○○。しかも、戦力差を冷静に分析して戦略的撤退をかますとか元ティーンズハートとは思えない一作。だってティーンズ(あるいはジュブナイル)と言えば正義が勝つのが当り前でしょう?

それにしても麻衣の夢の怖いことったら。あんな夢を見てしまったら、もうあの館には居られなくなること必至。麻衣は強い子だなあ(棒)あと、やっぱり学校は言った方が良いと思うよ!

そういえば、私はいつか巫女さんが活躍してくれるものだと思っていたのですが、彼女の活躍の場は来そうにないですね。まさか本当に実力不足だとは。それに比べて坊さんは思ったよりも知識も豊富で良いお兄ちゃんでなかなか。博士のことはまあ、ご愁傷さまでした。

いや、絶対偽物だと思ったけどね!!

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2013/10/20

『ゴーストハント4 死霊遊戯』 小野不由美



毎日のように増し、移動する怪奇現象の裏には生徒の間で大流行中のヲリキリさまの存在が。果たしてヲリキリさまとは何なのか、ヲリキリさまを始めた人物の真の狙いとは…?なゴーストハント第4弾。

生徒会長・安原くんが有能すぎて、途中まで生徒会の陰謀説を捨てられずにおりました。生徒会が主導して松山を嵌めようとしてるんだと思いましたとも。やっぱり論理的に怪奇現象を解決して欲しい願望が止められない。無理なのもわかっているけれども。だって、怪奇現象のスケールがどんどんと大きくなっているんだもの。

それにしてもリンさん大活躍の1冊でした。あれだけの人数の○○をつくり、そこにうまく誘導するとかなかなかやりおるわい。そして、麻衣は少し落ち着くべきだと思う。下手しなくても死ぬわよ。

そういえば、麻衣って学校どうしてるんだろう?の疑問に回答が寄せられておりましたが、全く回答になってないあたりがティーンズハートだと思いました()

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2013/10/19

『ゴーストハント3 乙女ノ祈リ』 小野不由美


女子高で頻発する怪奇現象。おかしなことが起こり始めたきっかけを聞き込めば、スプーン曲げの少女に辿り着き。脅威を増してゆくすべての怪奇現象は彼女が仕組んだことなのか…ゴーストハントシリーズ第3弾です。

今回は物語…犯人当ての難易度としては「易」です。明らかに怪しい人物がひとりしかいない。だとすれば動機を当ててみろって話になるわけですが、こちらは情報不足ですね。推測はできるかもしれないけれど…って、そういう読み方をするシリーズではなかったか。

個人的には『ゴーストハント1 旧校舎怪談』 のように怪奇現象を論理的に解決するお話が好きで、読みたい。けれど、今回張られた伏線、ナルの正体や麻衣の能力、ナルとリンの関係などを考えると、今後そっちの路線に戻るのは期待できなさそうですね。おそらく超能力方面に舵が切られるのではないかと予想しますが合っているでしょうか。いや、ネタバレはノーセンキューなんですけれども。

とにかく、ナルの正体という謎だけで充分に魅力的ですので次巻もものすごく楽しみです。

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2013/10/03

『ゴーストハント2 人形の檻』 小野不由美


ポスターガイストの頻発するお屋敷に調査のためやってきたSPR一同。そこで彼らを待ち受けていたのはお馴染みの巫女と坊さん、そして、かなり強力な悪意。果たして彼らはその悪意からひとりの少女を護ることができるのだろうか…なゴーストハントシリーズ第2弾。

前作『ゴーストハント1 旧校舎怪談』 のレビューで巫女やら坊さんやらエクソシストやらは再登場するのかしら?と書いたわけですが、心配ご無用、全員仲良く再登場してくれましたとも。そしておそらく、これからも登場するのでしょうね。なにせなかなかのチームワークでしたもの。人に得手不得手があるように、ゴーストハンターにも得手不得手がある様子。今回は(も?)巫女さんの活躍がいまいちでしたので、次回以降に期待。

それにしても、前作とは打って変わって完全ホラーでしたね。いや、ホラー度は前作の方が上のように個人的には感じたのですが、前作は不可思議現象を科学的に解明しよう!という趣旨でしたが、今回は最初から最後まで霊的なものが起こす現象として描かれておりました。果たして幽霊の正体は何者なのか?どんな理由があってポルターガイストを起こしているのか?そして、真の目的とは?を楽しむほどにミステリミステリしているわけではないのだけれど、一気に読ませていただきました。

ところで、裏表紙に描かれている青年はいつ出てくるのだね?と思っておったわけですが、もしかしてこれって坊さんなのだろうか?新キャラが出て来なかったということは、そういうことだよねえ。あはは。

本作で明らかになったナルの本名。ただ、真砂子との間にどんな関係があるのか…増えてしまった謎。次回作にも期待でございます。

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2013/09/26

『ゴーストハント1 旧校舎怪談』 小野不由美


基本的にホラーは苦手。小野不由美かつリライトされなかったら読もうとも思わなかったであろうゴーストハントシリーズ。元はティーンズハートなので懐かしさも覚えつつ、やっぱり怖かったとも。

ゴーストハンターと言えば巫女やら坊さんやらエクソシストやらを思い浮かべて当然だけれども、本作は怪奇現象を論理的あるいは科学的に解明しようというスタンス。幽霊の正体見たり枯れ尾花的な解説はどれも納得いくもので、小野不由美イズム(本格ミステリイズム)を感じるのだけれど、正体を知っても怖いものは怖いのよね。作中でも巫女のお姉さまがまさに同じことを言っていたけれど、この怖いものは怖いという感覚こそがホラー作品の醍醐味なのでしょう。私にはわからないけれど。

ちなみに、最後の最後でサイキック終わりになってしまったのだけはやや納得いかん。もちろん、シリーズ全体通しての伏線になっているのは承知だけれど、最後まで論理的に解決して欲しかった…と思うのは、ミステリスキーの性でしょうか。

シリーズ7作、ゆっくり読んでいくつもりだけれど、本作に登場した巫女やら坊さんやらエクソシストやらは再登場するのかしら?エクソシストはいい人過ぎるので裏があるに違いないと思っているけれど()どうでしょう?とりあえず、ジョンに関西弁を教えた人は出てくるに違いないね。私はそう信じているとも。

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2013/03/20

『鬼談百景』 小野不由美

百景と言いつつも収録されているのは九十九の怪物語。どうやら『残穢』と合わせて百物語が完成する趣向になっている様子。百物語はきちんと終わらせないと良くないことが起こるんだったような…と思いながら、読書中もあまり怖いと思えなかったのは一編一編が短い所為か。描かれているその先、恐怖に辿り着くのに想像力が必要になるんですよね。私、想像力が皆無で良かった。

九十九の物語、読んではすぐに忘れたものの方が多いわけですが、個人的に「軍服」と「たぶん五匹」が好きかな。どちらの作品も怪奇話に若干のユーモア…物語的おもしろさを足した印象。どんなに短い作品であっても、物語として読ませる工夫があるものに惹かれます。

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2009/03/01

『くらのかみ』 小野不由美

くらのかみ (ミステリーランド) Book くらのかみ (ミステリーランド)

著者:小野 不由美
販売元:講談社
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子どもの育たない家

行者の祟り、座敷童子

夏休みの思い出

ミステリーランド再読中。本日は「ミステリーランドってなぁに?」状態のときに出逢った小野不由美女史『くらのかみ』。「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」というコンセプトだけ伝えられて既出作品のない中…小野不由美女史の試行錯誤が窺えます。

面白半分に始めた「四人ゲーム」が全ての契機。「四人ゲーム」とは部屋の四隅に4人が散らばり、ひとりずつ壁伝いに移動しぐるぐるぐるぐる…遭難時睡魔対策として有名なアレです(この説明だけで理解できた方は凄いわ)。当然このゲームは成立しないので、だからこその怪談なのですが、この物語でも成立しちゃったんですね、成立させてくれたのはくらのかみさま=座敷童子。増えてしまった子ども。居なかった子どもは誰?

この増えた子ども問題とは別に、田舎の旧家に起こる相続争い。御家を繁栄させるために、御家の存続のために、子どもを持つ親が相続権を持つ。けれど、一度当主になってしまったが最後…子どもには恵まれない運命が待ち受ける。だから御家は続かない、だから良くない噂が広まる。

内容はバキバキの本格ミステリ(アリバイ崩し?)なのですが、難易度は「かつて子どもだったあなたには普通、少年少女には難しめ」でしょうか。それもまぁ…ミステリを解こうと思えば、ですけれども。少なくとも私はそんな気持ちさっぱり起こりませんでした。なんででしょう、記述がもの凄くわかり辛いんですよね、登場人物多すぎる所為だと思うのですが。「最後に犯人の名が明かされれば誰であっても良い」と本気で思っていた。

まぁ、少しトリックも用意してあるのですが。子どもを持つ親が相続権を持つことは先程お伝えしました。では、その子どもを持つ親の命を狙うのは?ヒントはひとつ、ひとり座敷童子が化けた子どもが居るよ。

ミステリーランドにしては、ちょっとおどろおどろしい雰囲気あふれ過ぎかな?もうちょっとドキワクが欲しい…そんな1作でございました。

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2006/11/02

『華胥の幽夢』 小野不由美

華胥の幽夢(ゆめ)―十二国記 Book 華胥の幽夢(ゆめ)―十二国記

著者:小野 不由美
販売元:講談社
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長編でしか語ることのできない物語があるのなら、

短編でしか語ることのできない物語がここに。

十二国記珠玉の短編集。

“10000HIT御礼 十二国記レビュー”もこの『華胥の幽夢』レビューで終了でございますか。読み始めたら止まらない十二国記シリーズ。頁を捲る手を止めることができずに、レビューだけが遅々として進まないというなんとも申し訳ない結果に終わってしまいまして、大変申し訳なかったです。どこが“御礼”なんだ…自分が楽しいだけじゃないか…という至極真っ当なご意見が聞こえてくる前にレビューを。

この『華胥の幽夢』は十二国記シリーズ(今のところ)唯一の短編集。収録されている作品は「冬栄」「乗月」「書簡」「華胥」「帰山」の5作品です。今回は1作品毎にレビューを。

「冬栄」

舞台は戴国。『黄昏の岸 暁の天』に詳しい戴の惨劇が起こる前のお話。泰麒が幸せの絶頂に居たころのお話。泰麒が笑顔で居られた短い時間のお話。

泰麒は主・驍宗から大任を授けられる。それは“使節として漣国を訪問すること”。驍宗から大役を任せられたことの嬉しさと、驍宗と一時とはいえ離れてしまうことの寂しさの間で揺れ動く心。そんな泰麒の不安を取り除くのは農夫・廉王。

漣国主従、プラトニック過ぎます!!

戴国が舞台と書きましたが、ある意味この作品の舞台は漣国です。廉麟が「本当にもう、困った方ね」と廉王を叱れば、廉王は“子どものように、ごめんなさい”ですからね!のんびり過ぎる!!王様業は仕事ではなくお役目だよと笑う廉王は、美味しい実(野菜)が生ると廉麟が喜んでくれるのがとても嬉しいと泰麒に告白します。廉麟ががっかりするだろうな、と思うと踏ん張って頑張らずにはいられない。自分を見守っていてくれる廉麟の目が一番の励みになると…うわぁ、究極だ。この廉国主従が私大好きです。『月の影 影の海』に登場した功国主従のように、その関係が破綻し切ってしまった国もありましたが、やっぱり王と麒麟は一蓮托生、切り離せないものなのですね。

そして、泰麒の子守(笑)・正頼も私の愛してやまないキャラクタのひとりです。あの泰麒に話しかけるときの優しすぎる言葉遣いが私のツボです。私の妄想の中で正頼は、20代後半で黒髪セミロング、例えて云うなら「アンジェリーク」のセイラン(おぉ、腐女子全開)的なイメージだったのですが、結構なおじいさんらしいですね(よよよ)。そんな正頼の戴国に訪れた災厄の中で生死不明とのこと。お願い、生きていて正頼。

そして、漣国から戻った泰麒に思い掛けないご褒美が。漣国主従に学んだ“自分のお役目”を一生懸命果たそうと誓う泰麒。泰麒が一番幸せだった時間が切り取られた「冬栄」。好きです。

「乗月」

舞台は芳国。慶国で現在下官を務める祥瓊がかつて公主だった国。主人公は祥瓊からかつて「簒奪者」と罵られた月渓と、役人に追われた祥瓊を助けた桓魋。そのふたりが膝をつき合わせて語る主題はやはり…祥瓊。

『風の万里 黎明の空』をお読みの方なら、祥瓊がいかようにして成長し、かつての自分をどれだけ恥じていたかお解かりかと思いますが、その様子を生で見ていない月渓にとってはまさに寝耳に水。信じられるわけが無い。ましてや、祥瓊の大切な父=先王を自らの手で討たねばならなかったことを、未だに悔やみ続ける男なら尚のこと。

でも、私は芳国次期国王に月渓が選ばれるような気がしてならないのですよね!月渓は峯麒が自らの前で膝を折ったときに、果たして「許す」と云うことが出来るのか。云えば完全に王たる地位を簒奪することになると、再び悶々と悩んでしまうのではないかと。そんなことより、麒麟は蝕に巻き込まれ過ぎというツッコミポイントが有ったのでした…。

「乗月」で私の一番好きな言葉は桓魋のこの言葉。

「王が玉座にある朝を日陽の朝だとすれば、王のいない朝は月陰の朝じゃないかな。月に乗じて暁を待つ-」

珠晶の「委細構わず叩き出す」も捨て難いのだけれど。

「書簡」

舞台は雁国。主人公は変なものをついつい拾ってしまう星の下に生まれた巨大ねずみ。楽俊です。陽子との文通が主題のこの作品。陽子にとって大切な、この世界で始めてできた友人だからこそ、空元気を貫き通す。互いに空元気であることはわかっていても、心配させたくない…違うな、頑張る自分を見ていて欲しい、見守っていて欲しいという気持ちでちょっとだけ真実を隠した手紙をしたためる。

雁国の大学に首席で入学した楽俊。「一番で入学して、卒業できた奴はいない」そんな伝説を覆して、自分の新しい道を切り開くために楽俊は耐える。半獣であることで馬鹿にされることもある。書物を齧る…そんな偏見を受けても、いつでも優しくいれる彼。やっぱり、楽俊は最高です。

楽俊が功国の次期国王になる…そんな妄想を膨らましてみたこともありますが、同じ姓の国王が続くことは無いんですよね。もし半獣の彼が国王になったら…朝は荒れるでしょうね。雁国や慶国の後ろ盾があったとしても。そんな中、楽俊はどんな国を創ってゆくのか見てみたい気がします。でも、慶国で冢宰クラスの官吏になるっていうのも…アリですね。

楽俊がこれからどんな成長を遂げるのか。十二国記は成長の物語。坂道を転げ落ちるように出番の減ってゆく彼ですが、いつか彼メインの物語(長編)が読めることを期待しております。

「華胥」

短編集タイトルにもなっている本作。舞台は才国。一国が滅んでゆく姿が描かれた作品です。才国の宝重・華胥華朶はそれを枕辺に差して眠れば、理想の世を、華胥の夢を見せてくれるという。皆に望まれて采王となった砥尚であったが、国は一度も富むことなく沈もうとしている。采麟の夢見る華胥の夢と采国が一度も重なることのないまま。

この「華胥」は若干ミステリテイストです。密室の中発見された死体と、密室から消えた人物。果たして密室から消失を成し遂げた人物がその殺人事件の犯人なのか?十二国記にミステリ的なものは特に求めていないのですが、小野不由美主上はこのミステリの中に国の崩壊と自我の崩壊を投影させたのだと思ってます。

才国は「風の万里 黎明の空」で鈴が助けを求めた国として登場しますが、登場するのは采王・黄姑と采麟だけですので、どんな国なのかいまひとつはっきりしないなかった一国です。この「華胥」では最後にちょっとした驚きが潜んでおります。そうきますかっ!と。このオチで「乗月」レビューで書いた月渓の次期国王説もあるな…と勝手に思ったのですがいかがでしょう?

それにしても、麒麟の失道というのは辛いですね。自らが選んだ王によって、自らの命と精神を失うことになる麒麟。王と麒麟は一心同体、その摂理を再確認した一作です。景麒あたりなら「やはり…」とか憎まれ口を叩きそうなものですが、無垢な少女そのものの采麟があのように変貌してしまう姿は見たくない。現才王・黄姑が華胥華朶を使うことなく、才麟に華胥の夢を見せてあげられることを願いつつ。

「帰山」

物語の舞台は柳国。しかし、登場するのは雁国縁の人物と、奏国縁の人物。共に気の向くまま風の向くまま放浪を繰り返す人物…といえば、あの二人しかおりませんね。名付けて帰山コンビ。

二人は沈みかけた柳国の街で偶然…むしろ必然のように出逢う。そして始まる国の終焉談義。奏国の御仁は云う、雁国が沈むときは「延王がその気になったとき」。民も官も台輔も残らず、徹底的に雁国は無に還る。雁国の御仁は云う、奏国が沈むときは「風来坊の太子が、この世に繋ぎ止められるのに飽いて、宗王を討つ」ときだと。

奏国はまだ笑い話だとしても、雁国は本当に起こりそうで怖いよ!

「死なない王朝はない」と、時々怖くなるという奏国の御仁。「永遠のものなどなかろう」と冷たく云い放つ雁国の御仁。どちらも国の中枢にあって、国が沈むときは自らの命が断たれるとき。その想いが彼らを前に奔らせる。

十二国記は本当にキャラクタが魅力的で、どこの国の主従・官吏も素敵な人間ばかりです。だからこそ国が前に進む、豊かになる、続いてゆくのでしょうが、彼らにもいつか終わりがくることを思うと、いつも胸がザワザワとします。それは、十二国記シリーズにもいつか終わりがくることを惜しむ気持ちと同等。このまま十二国の時が止まれば、彼らはいつまでも終わることなく生き続けるのかと思うと、それを望んでしまう自分もどこかに居るんですよね。本当に不思議な気持ちにさせるシリーズです、十二国記。

そうそう、「帰山」で最後に奏国の御仁が語る慶国の様子にいつも嬉しく思います。奏国の御仁に「今度の慶は、いい感じだ」と云わしめる景王・陽子。やっぱり彼女は良い女王になるよ。

陽子の活躍、泰麒のこれから、愛すべきキャラクタたちとの再会をいつか果たしたときに、またこの“十二国記レビュー”に新たな記事が追加されることを願いつつ。“10000HIT御礼 十二国記レビュー”を締めくくりたいと思います。読んでくださってありがとうございました。また皆様とお逢いできる日を楽しみにしつつ、さようなら。

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