■初野晴

2017/07/24

『ひとり吹奏楽部 ハルチカ番外篇』 初野晴

カイユ、芹澤、マレン、成島の4人にフォーカスしたハルチカシリーズ番外編。『惑星カロン』のレビューで次回作はキャラクタ掘り下げの短編集だと読みました。物語的にはまたもや足踏みですが~などと書きましたが、3年生引退から新入生入学までおよそ半年間ぶんの物語を一気に、深めに読ませてもらいました。とても面白かった。

個人的ベストは芹澤×片桐の「風変わりな再会の集い」が好きです。ふたりのやりとりがいい。決して友人になれるとは思わないけれど、少し遠いところから聞き耳を立てるなら芹澤さんは最高におもしろいです。ちょっとした謎(再会の集い)の出来も一番良かったですよね。

成島×???の表題作「ひとり吹奏楽部」も良い。リアリストは芹澤かと思ってました、すみません。それぞれの物語が少しずつ繋がっているニヤリ感が良いのですが、意外と近くにいる???と成島がいつか出会えますように。

3年の夏が終わればハルチカも終わってしまうことはわかるのですが、やはり彼らがどこにどうやって着地するのかを早く知りたいです。そして草壁先生の過去も。そう言えばハルチカは最初三角関係のお話でしたっけね。

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2016/05/12

『惑星カロン』 初野晴

アニメに続き映画化も決まったハルチカシリーズ第5弾。

シリーズ当初のももたろうorブレーメンの音楽隊のような、仲間が増え目標に向かっていく展開が好きなので最近の足踏み状態は少し残念。でも、草壁先生の過去が少し明らかになったのは良かった。恩師か恋人…恩師をあくまで山辺富士彦だとするならば亡くなったのは恋人ですよね。草壁先生が恋人の死に絶望し、公演をすっぽかすとは思えないのですがきっとまだ明かされていない情報があるのでしょう。シリーズ続刊に期待。

物語的ベストは表題作「惑星カロン」として、キャラクタ読みベストは芹澤&山辺の運動会にも遠足にも参加できなかったコンビがいい味出してる「ヴァルプルギスの夜」でしょうか。芹澤さんがピアノを叩き鳴らしたシーンが好きです。

最もミステリっぽかったのは「理由ありの旧校舎」ですが、スウェーデンのヤバいお土産と言えばアレしかありませんよね。物語としては全開事件からもう一段階オチがありましたが、そちらはおまけでしょうか。もちろん日野原さん伝説のおまけです。本当にむちゃくちゃな元生徒会長ですこと。

なにかで読んだ初野氏のインタビューで次回作はキャラクタ掘り下げの短編集だと読みました。物語的にはまたもや足踏みですが、なんだかんだでやはり楽しみです。

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2013/03/28

『千年ジュリエット』 初野晴

ハルチカシリーズ第4弾、今回はたのしいたのしい文化祭のお話。

今回はどの作品も読みどころがあって好き。「エデンの谷」で明かされた遺言には思わず笑ってしまったし、解錠の後、知った真実には胸が熱くなったし、なにより草壁先生の過去に少し踏み込んでくれたのが嬉しい。あとは日野原会長と萩本兄弟のやりとりがたまらなく好きです。

ミステリ的観点なら「決闘戯曲」を推したいところ。右目が見えず、左手も使えないという圧倒的不利な状況で決闘に勝つことができたのは何故なのか。「決闘法で三つのルール改定が通れば、盾が守ってくれる」とはどういう意味なのか。脚本担当の一年生が姿を晦ましたのは何故なのか…とまあ、こんなお話なのですが、決闘に勝てた方法というのがくだらないけれど巧いんですよね。そもそもの戯曲のおもしろさと演劇部の面々の濃い味が相まって読み応えのある一作。

それでも「失踪ヘビーロッカー」の巧さには負けるけれど。この作品、なにが巧いってタイトルが巧いんですよね。読了後ににやりとできる名タイトル。この「失踪ヘビーロッカー」が表題作「千年ジュリエット」に繋がるわけですが、そこは個人的には微妙かな。

そうそう、『千年ジュリエット』はまだ文庫化していないのでハードカバー版を表示しているわけですが、文庫版よりハードカバー版の装丁の方が素敵だと思いませんか?

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2013/03/22

『空想オルガン』 初野晴

『退出ゲーム』『初恋ソムリエ』に続くハルチカシリーズ第3弾。今回もミステリの成分は薄め。4作収録されているうち、謎らしい謎を解決したのは2作。あとはハルチカが勝ち進む吹奏楽コンクールの様子…かと思いきや、それらの描写は極力抑えるって宣言しているのが斬新。

正直に申し上げると惹かれた作品が一作もなく。うすーく描写されたコンクールの様子が一番楽しめました。草壁先生が壇上で魅せた笑顔とかね。

間違いなく狙ったであろう表題作「空想オルガン」の○○トリック(?)は気付いてしまったので楽しめなかったのだと思いたい。これで○○トリックが使われてなかったら作品として締まらないわ…とか思いながら読書をするのは作品を純粋に楽しめない(驚けない)から良くないなあ、と改めて。

最後に新たな仲間を手に入れたハルチカにどんな未来が待ち受けているのか。これからが楽しみなシリーズであることは間違いないです。片桐先輩、お疲れ様でした。

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2013/03/08

『初恋ソムリエ』 初野晴


私が高校生だった頃、周りにこんなウィットに富んだ会話ができる友人がいたかどうかを考えて想い出に浸ってみる。『退出ゲーム』に続くハルチカシリーズの第2弾です。

ミステリというよりは青春もの、恋物語よりはブレーメンの音楽隊といった感じで当初の狙い(あらすじとして紹介されるような物語)からは遠くへ来てしまったような気がするけれど、夢中になれるものがあって、ともに目標に向かって歩んでくれる仲間がいて、そんな仲間がどんどん増えていって…のサクセスストーリーは大好きなので大歓迎です。

本作に収録されているのは4作。いずれもちょっとした謎を扱ってはいるけれど、読者に推理をさせようというものではないので突然の解決シーンには少し拍子抜けするかも。ミステリ的観点から好きなのは表題作の「初恋ソムリエ」で、物語として好きなのは「周波数は77.4MHz」かな。あのラジオは必聴だわ。

きっともっと増えていくだろうハルチカの仲間たち。シリーズ続刊でどんな破天荒なキャラが登場しているのかとても楽しみ。ハルチカが身を置く三角関係については…うん、ちょっと背伸びしたいことってあるよね。若人、頑張れ。

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2009/03/21

『1/2の騎士』 初野晴

1/2の騎士 harujion (講談社ノベルス) Book 1/2の騎士 harujion (講談社ノベルス)

著者:初野 晴
販売元:講談社
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戦う私の側には、いつもサファイアがいてくれた

サファイアがいてくれたから、私は頑張れた

だから、どうか、消えないで

『退出ゲーム』で新境地を拓いた感のある初野晴氏、講談社ノベルス進出作品です。本作は『退出ゲーム』ほど軽くなく、『水の時計』『漆黒の王子』ほど重くなく、でも、悪くない。

物語は、とあるマイノリティ代表のマドカとサファイアとの出逢いから始まる。サファイアに懐かれてしまったマドカが、生粋の正義感でドッグキラー、インベイジョン、ラフレシア、グレイマンから街を、仲間を、自分自身を守るために戦う…もちろん戦うと云っても本作はファンタジーであってもファイター(戦隊)モノではないので、その戦い方はミステリ。

個人的には序盤戦・ドッグキラーとの戦いが好きかも。大切な人を守るために沈黙を守る少女と、大切な人を守るために吸入器を握り締め走り続ける少女と。思うように走れない自分自身に戸惑いながら、サファイアとの関係にも戸惑いながら、試行錯誤で辿り着いたドッグキラーの言葉「言葉が通じないのは、お前ら多数派のほうなんだよ」

マジョリティとマイノリティ。人は誰しもマイノリティたる一面を持っていて、その部分だけを切り取れば誰しも独り。それを強烈に強固に強靭に強行してしまった狂人が本作の犯人たちで。

って、全く意味のわからないレビュー。この作品、表現するのが凄く難しい。ミステリなんだけれど、登場するのは猟奇殺人犯なんだけれど、主人公であるマドカは全能の探偵ではなく。サファイアをはじめとする仲間がいて、運を味方にすることができて、初めて真相に到達できる。マドカとサファイアと…登場人物全員の成長の物語。

だから、後半になればなるほど冗長に感じるのは残念。マドカの騎士としてのサファイア、その秘密が明らかとなったときに少しだけ感じた感動と絶望。マドカの戦いはこれからも続く。でも、きっと大丈夫だよね?

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2009/03/10

『退出ゲーム』 初野晴

退出ゲーム Book 退出ゲーム

著者:初野 晴
販売元:角川グループパブリッシング
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高校生活には事件がいっぱい

だけど、わたしは逃げない投げ出さない

だって

ハルタはわたしの最大のライバルなのだから

評判があまりに良すぎてちょっと懐疑的だった初野晴氏『退出ゲーム』が本日のレビュー。初野氏といえば『水の時計』『漆黒の王子』両作に共通する「深く暗く黒い闇の中に一筋の“幸福”という名の光」というイメージだったのですが(もの凄く私的なイメージを詩的に表現してみました)本作は脱皮というか真逆な作風で驚き。分類するならば米澤穂信・坂木司ラインです。米澤穂信はもう“まんま”と表現しても良いでしょう。古典部を読んでいる感覚に何度陥ったことか。

作中では4つの事件(?)が描かれていて。個人的には表題作「退出ゲーム」が好きなんですけれども。退出ゲームやってみたいけれども…いちゃもんをつけるのは得意だけれどもアドリブの利かない私には難易度高いわ。とにかく予想外の展開でミステリスキーを愉しませてくれる「退出ゲーム」。「ガチャピンをはねた日」で電柱から巨体をはみ出させるムックも見たかったですけれども(笑)あれでサックス奏者をゲットするのはまず無理でしょう。

「エレファンツ・ブレス」に登場したマッド・サイエンティスト萩原兄弟も最高でした。どんだけレパートリーあるんですか土下座。

うーん、やっぱりミステリとしての評価よりもキャラ小説としての評価が先に立つような気がします。チカ&ハルタをはじめ、前述の萩原兄弟といい生徒会長の日野原とか…有象無象海千山千ですね。そして、チカとハルタの三角関係。冒頭で「すわ、恋愛小説か?」と思わせておいて殆ど回収していないところを見ると、このシリーズまだまだ続けるおつもりのようで。草薙先生が挫折した理由も明らかになっておりませんしね。

これまでの初野氏らしさは成りを潜めて。愉しい時間を頂戴しましたが、それが少し哀しい。このまま≒米澤穂信にはなって欲しくないです。だから、もう少し暗黒を、もう少し挫折を、そこから少しの希望を。初野氏のこれからに期待しています。

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2009/02/28

『漆黒の王子』 初野晴

漆黒の王子 Book 漆黒の王子

著者:初野 晴
販売元:角川書店
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砂の城の哀れな王に告ぐ

私の名はガネーシャ

王の側近と騎士達の命を握る者

『水の時計』が素敵だった初野晴氏。読みたい読みたいと思っていながら…フォント小さめ2段組400頁超に挑む前から心が折れて、手を出せていなかった『漆黒の王子』。表紙に違わず重苦しい1作。それでも、全体像把握できなかったけど、おもしろかった。

「上側の世界」と「下側の世界」。ふたつの世界、ふたつの物語を交互に描き、ひとつに纏め上げる。正直申し上げて、ひとつに纏まった世界を私は見通すことができなかったのだけれども。“王の側近と騎士達の命”を狙った人間とその意図は汲み上げることができました。その手法も、その武器も認識しました。そして、王の世界が破綻してゆく様も目撃しました。

けれど、ひとつだけ理解できなかったこと。それはガネーシャが暗渠で過ごした時間、出逢った人々、出逢った≪王子≫…それは実際にあった出来事なのか、そうでないのか。ガネーシャが意識を失っていた数時間の間に見た夢に過ぎないのか。脅迫メールに潜ませた≪王子≫≪時計師≫≪ブラシ職人≫…をなぞるように、彼らの人生を夢に見たのか。けれど、その割りに彼らと過ごした時間と思い出はリアルで。

あの場所には廃棄物不法投機に関わったホームレスの死体が埋められている。あの場所には彼らの無念が漂っていたから…その無念を偶然とはいえ晴らす形となったガネーシャに共鳴したのか。こうしてレビューしながらも考えているのですが…わからない。ただ、ガネーシャの時計の歩みは酷く遅かった。それだけは事実。

ちなみに帯に「超本格ミステリ」と銘打ってありますが、誇大広告です。むしろ「ミステリ」と書くことで読者層が狭められてしまうので取り払った方が良いのでは?と思ったり思わなかったり。終盤に突如現れた水樹の友人が、いきなり暗号解読(?)からカーチェイスまで始めたときには苦笑しました。

『水の時計』もそうでしたが、初野氏は「幸福の王子」が好きなのでしょうね。オマージュ。

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2006/03/13

『水の時計』 初野晴

水の時計 Book 水の時計

著者:初野 晴
販売元:角川書店
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医学的には脳死と判断されていながらも、特殊な装置によって生かされている少女。

月明かりの下、装置からもれる彼女の本当の望みとは。

第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作。

装丁の美しさとタイトルの響きに惹かれて読んでみました。

横溝正史の名を冠するミステリ大賞にも関わらず、ミステリミステリしてはいませんが、その筆力は圧巻。

脳死状態の彼女の望みを叶える少年の動きが、途中からバッサリと消えてなくなってしまうのが残念。途中から視点が入れ替わり、いくつかのショートストーリーが展開しますが、ちょっぶつ切り感がありました。行間を読めってことですかね。私の一番苦手な作業だ。

ただ、うまく行間をつかんで、隠されている(描かれていない)ストーリーを想像して補うならば、素晴らしい感動が詰まっております。

こういう切ない話は好きです。

途中から横溝正史ミステリ大賞受賞作だなんてことは、すっかり頭から消えてしまいました。どういう趣旨の作品賞であるかなんて、関係ないくらい良い作品。なんとしても受賞させなくてはならないと感じる作品。

また、『幸福の王子』との結び付けが最高なんですよ。あの『幸福の王子』の記述があるからこそ、あのラストでも納得することができるんですよね。

もうちょっと少年の内面が描かれていれば、もうちょっと少年の動きが描かれていれば、きっと号泣したことでしょう。それが本当に残念。

初野氏の他の作品を是非読んでみたいなぁと思いました。

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