■古野まほろ

2016/11/21

『背徳のぐるりよざ』 古野まほろ

 

文庫化の際に改題しているようなのでふたつ並べてみました。九条キヨ好き。

シリーズ第2弾ですが、時系列としては『セーラー服と黙示録』より前です。フーダニットの島津今日子、ハウダニットの古野みづき、ホワイダニットの葉月茉莉衣がそれぞれの持ち味で殺人事件を解決する女学校モノですが、今回は春期合宿と題して学園を飛び出します。そして待ちうけるのは落ち武者伝説、隠れキリシタン、正直者の村にクローズドサークル。ミステリ的ガジェットてんこもりですね。

正直、村の因習・因縁・因果の説明が続く前半は読むのがキツイです。語り口はもちろんいつもの古野ワールド。けれど、この部分が後半の謎解きの肝になってくるので頑張って読んでいただきたい。(ここからネタバレします)まあ十戒が改変(作中の言葉を借りるならコピーミス)されていることだけ察すればあとは…むにゃむにゃむにゃ。

そして三人娘の推理ですが、個人的にホワイダニット(動機論)がもっとも楽しめました。スタートということもあり推理の鍵となる事実が語られるのでその後の筋道というか展開が開ける感じがしてとても好きです。みづきの出番は少し少なかったかな。今日子のフーダニットは魅せ方というか罠の張り方が良かったですね。ただ指摘するだけではつまらない。正直村の皆さんが一斉に立ち上がったところが好きです。

とりあえず、飯塚くんの出番がもっと欲しかったのと、焙煎の尼の正体が最大の驚きポイントだということをここに記しておきます。

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2016/03/23

『ストリート・クリスマス Xの悲劇’85』 古野まほろ

『命に三つの鐘が鳴る』 『パダム・パダム』に続く二条シリーズ第3弾。

テロリストに占拠された特高の中と外。見えぬテロリストの目的と不可思議な状況で起こった殺人事件。果たして犯人は銃を所持していたテロリストか、拳銃技術を持った仲間のひとりか…なんてお話ですが、

事件が起こるまでの135頁が本当に辛かった

正直、アウトライン(省庁間で陣取り合戦をやっている)さえ把握しておけば読み飛ばしていいと思います。私も途中から単語だけ拾う形にしましたが、事(黒幕が描いた青写真)の真相については理解できたので大丈夫。

そして肝心の殺人事件。犯人は誰か、そして(ネタバレですが)内通者は誰かの論理は綺麗です。ただ、中と外の両方を鮮明に把握できる読者は二条よりも推理の難易度が下がっていることが残念でしょうか。内通者及び黒幕の存在は肝ですが、その存在がすけすけなのがとても気になります。あとは殺害(?)現場がトイレじゃないことはわかりましたが、どうやって死体を運んだんでしょうねえ。

黒幕の描いた計画が結構ザルな気もするので他省庁相手取ってそこまでうまくいくとは思えないのですが、ザルになってしまったのはあくまで二条というアンタッチャブルの所為ということでよろしいでしょうか。それにしてもテロリストに動機を与えたのが外田警部ってのがまほろスキーにとってにやりポイントですね。

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2015/12/08

『身元不明 特殊殺人対策官 箱崎ひかり』 古野まほろ

古野まほろ講談社復帰作。

帯に「元警察官僚がついに手掛けたリアル警察小説」って書いてありますが、決してリアル警察小説ではない。どこまでも古野まほろ流警察小説。でも、世界観は天帝ではないですね。

とにかく展開が早い。次々に登場する死体。陰陽道に見立てた装飾がなされているのは探偵小説シリーズに対するなんらかのアピールか。ただ、死体と装飾がずらされている意味は明白なので、犯人のひとりは確定。そして共犯者。これはミステリのセオリーで行くと○○でしか有り得ないので読めちゃう。残念。

箱崎ひかりの秘密を根にしてシリーズ化するのかしらん?図書館員と聞くとどうしても有川浩の図書館シリーズを連想せずにはいられないので、ネーミングはなんとかして欲しかった。キャラクタは古野作品らしく魅力的。個人的には綾瀬警部補。脳内で映像化するときは少し美化して修正しております…。

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2015/07/22

『セーラー服とシャーロキエンヌ 穴井戸栄子の華麗なる事件簿』 古野まほろ

『セーラー服と黙示録』で魅力を振りまいていた飯塚くんの探偵物語が読めるとそれはそれは楽しみにしていたのです。助手という立場が探偵を出し抜くとかなんて麻耶雄嵩とか思ってたんです。

まさかの助手が古野まほろ…!

飯塚くんの出番ほとんどないの。これ、聖アリスガワシリーズ(っていうのかしら)の番外編じゃなくて、天帝シリーズの番外編ですよね。というか、

裏表紙が飯塚くんなのってちょっとした裏表紙詐欺ですよね

栄子の魅力が少しも理解できなかったことと、勝手な期待が外れたことで読むのにとても時間がかかってしまいました。収録作は4編ですが、どれもあまり印象にない。ホームズ作品へのオマージュ部分(ホームズ作品をベースに物語を構築)はまあまあ楽しめました。「獅子座連盟」が良かった…かな。

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2015/04/10

『外田警部、カシオペアに乗る』 古野まほろ

まほろワールド控えめな一冊。見た目は農協の経理担当者、けれどその実態は全国優秀捜査官に認定される凄腕刑事…という外田警部が鉄道にまつわる事件を4つ解決する倒叙もの。というか、コロンボもの。

個人的には「外田警部、市内線に乗る」が好き。単純に将棋ものだからですが()犯人の在り方、投了の姿がいちばん潔くて潔くなかったように思います。

それにしても、もっとも侮れないのは砂糖蟻夫なわけですが、外田警部が砂糖を捕まえる日は来るのでしょうか。とりあえず、既に刊行されている次作『外田警部、TGVに乗る』でも捕まえられなかったに一票。

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2015/02/16

『セーラー服と黙示録』 古野まほろ

まさに古野ワールド。受け入れられるかられないか、明暗はっきりと分かれそうな1冊。私はもちろん大好きです。

三河湾に存在する孤島に建設されたミッション系・聖アリスガワ女学校。このアリスガワ女学校というネーミングにネタをぶっこんできているわけですが、まさかの水村英夫、妾腹の娘まで登場()くどいと飽きますが、このぐらいのユーモアならどんどん来て欲しい。閑話休題。この聖アリスガワ女学院がヴァチカン直轄の探偵養成学校で、探偵士という国家資格が存在する世界観ってもうなんて素敵なのでしょう。

探偵士になるために最終特別試験に臨むふたりの女生徒。そこで起こるふたつの密室殺人事件。奇跡にも思える現象をハウダニット、ホワイダニット、フーダニット…3人の探偵がそれぞれ解き明かすという変わった趣向。個人的にはホワイダニットを解き明かした瞬間にそのあとの展開がひらけた感覚がたまらなかったです。

事件そのものは収束しているけれどシリーズとしては序章にすぎない1冊。続編が楽しみ。
そうそう、ジョヴァンニ飯塚くんがとにかく好みです。

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2014/12/11

『名探偵だって恋をする』

タイトル詐欺甚だしいアンソロジー

名探偵が恋をした作品はひとつもありません。名探偵と恋という組み合わせに惹かれて読んだのに。ついでに言えば表紙のイラストっぽいお話もない。表紙詐欺だ。

そんな中で個人的ベストを上げるならば森晶麿氏の「花酔いロジック」でしょうか。まさかの甲類。

次点は相変わらずのまほろワールド全開の「消えたロザリオ」。ミステリよりもやはり世界観に引き込まれた感がありますが。『セーラー服と黙示録』シリーズですよね。気になっていたので早急に読みます。

収録作品に魅力は感じなかったけれど(まったく恋が絡んでこなかった驚き)椹野道流のローウェルシリーズも気になっていたので読みたい。恋が絡まなかったと言えば宮内悠介氏の「空蜘蛛」もファンタジーだと思えば悪くない。アンソロジーに収録されると意外と楽しめるタイプの作風か。

とりあえず、いますぐタイトルに沿ったアンソロジーを出してください。それが読みたい。

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2014/02/01

『パダム・パダム Eの悲劇'80』 古野まほろ

『命に三つの鐘が鳴る』に続く悲劇シリーズ二条サイド、第二幕。うん、今回も良かった。悲劇シリーズに今のところ外れなし。

跳梁跋扈するシリアルキラー「眼喰鬼(アイ・イーター)」を逮捕すべく、警察署長として京都に赴任することとなった二条実房。着任早々、身内である警察官が四人目の犠牲者となり果て、面目を潰される形となった二条であるが、直ぐさま英国仕込みの臨床捜査心理学を駆使して眼喰鬼に迫る。果たして眼喰鬼の意外な正体とは?みたいなお話。

正直、最初の70ページ、京都に入城するまではツライ。古野ワールドにおける警察組織の在り方やルールを説明してくれているのだけれど…目がすべるすべる。けれど、ここをしっかり読めるかどうかが後の推理に納得出来るか否かの境目なので是非とも頑張っていただきたいところ。そして、京都に入ってからの加速感がたまらない。眼喰鬼の捕縛まであっという間でございました。

ところで、被害者の名付けについては先方に許可を取っているのでしょうか?にやにやが止まらない。

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2013/03/12

『絶海ジェイル』 古野まほろ

『群衆リドル』に続くイエ先輩シリーズ第2弾、舞台は絶海の孤島、世界から隠蔽されたその島で行われる脱獄劇の再現。果たして八重洲家康は幻のショパニストである己の祖父を超えることはできるのか。

というわけで、その独特な世界観にすっかり中てられてしまいましたとも。脱獄劇の再現、只のゲームかと思わせておいて本気なんだもの拷問が。でも、現代と懐古が入り混じる古野ワールドの中でならこういう特殊環境もあり…なわけがないけれど、強引に読ませてしまう辺りがさすがといったところでしょうか。

肝心の脱出劇については…前作の○に続き○○○○○についてはいただけないかなあと思いましたが、ひとつの無駄もない行動、言動、思考、それまでばら撒かれ続けていた伏線が自然と回収されゆく様は爽快にございました。実現性はともかくとしてね。
 
今回もイエ先輩の過去は明らかにされず。それどころかイエ先輩とユカの仲も進展…してないですよね? 酔い止めごときで満足する私ではありませんことよ。まだまだ謎の多い本シリーズ、天帝シリーズに比べれば一般向けなはずなので、これからも展開してくれることを願って。

ところで、なにがどう「Kの悲劇」なんですかね?

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2013/02/26

『命に三つの鐘が鳴る』 古野まほろ

『群衆リドル』でイエ先輩に惚れ、タイトルからしてイエ先輩シリーズに違いないと手に取った本作ですが、イエ先輩シリーズどころか天帝シリーズ番外編、新本格どころか刑事モノでした…が、とても良い作品でした。

本作の主人公は天帝シリーズに登場した二条警視正、その若かりし頃なのですが、正直天帝シリーズのことはあまり覚えておらず二条警視がどんな御方だったか記憶が定かではなのですが、本作で親友と愛した女を亡くした彼が歳を経たのなら、きっと素敵な男性になっていることでしょう。天帝シリーズ、再読してみようかしら。

そして、そんな彼が今回直面した試練とは「愛した女を殺した親友から動機を引き出すこと」なのですが…ここに極左セクトだの内ゲバだの学生運動だのが絡んでくるわけですよ。正直こういうのは嫌いじゃない。二条刑事と親友と愛した女と、三人の三角関係がこの物語の鍵になるわけですが、この運動やら思想やらそれぞれの立場やらを理解するのはとても重要かと。物語がより深くなる。

最後に二条刑事が手にした真相は…まあ、想定の範囲内ではありましたが、それってしっかり手掛かりがばら撒かれていたってことですよね。新本格好きとしては嬉しいことです。そして、真相を暴かないことが被害者の為であるか否か、それを巡ってふたりの男が静かに闘ったわけですが、私は真相を暴くことが是であったと読了後に思ったことだけをここに記しておこうかな。

期待していたイエ先輩モノではなかったけれど、とても楽しい読書の時間でした。古野ワールド抑え気味だったけれど、このくらいの方が読み易いかなあ…なーんてことを言ってみるわけです。

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