死体にスプレー缶で色を着けてまわるペインタ殺人事件が発生。
赤、緑、黒、白と次々に死体が彩られてゆく。
Vシリーズ最終巻にして、衝撃のラスト。
ラスト5!!
ついにVシリーズ終焉まで辿り着きましたか。『四季』四部作については一段組な上、息もつかせぬスピード展開で、あっと云う間もなく読めてしまうことが実証済ですので、もうゴールテープが見えてきたと云っても過言ではないでしょう。今週末中に…は勿体無いから止しておこう。
さて、この『赤緑黒白』は衝撃的な出来事が多数起こっておりますので、そのあたりは後程、ネタバレ警告をしてからたっぷり語りたいと思います。たっぷり。このネタバレがやりたくて、ここまで読んできたと云い切っても良いです。
森博嗣作品は、シリーズ1作目と10作目がリンクするという特徴があります。S&Mシリーズの『すべF』と『パン』はかの天才が、Vシリーズでは特定の人物ではなく殺害の動機がリンクしています。殺してみたいという衝動がすべてのきっかけで、その衝動を一般レベルに広く理解させるためになされたオプションがぞろ目やペインタ。そもそも、そんなオプションを付けなければ、衝動的な殺人を続けていけば、彼等は一生捕まることなく快楽を享受することができたのに、なぜそのような理由付けをせずにはいられなかったのか。『デルタ』ではその理由を「自分自身を抑制するために」、『赤緑黒白』では「自分の存在が有益なものであるとアピールするために」と表現されております。この理由付けを考察するたびに、彼等ふたりの殺人者は「天才ではなかった」んだな、と思います。真の天才ならそんな理由付けすら必要ない。一般に理解してもらう必要は無いのです。かの関根朔太がそうでした。そして真賀田四季がそうなります。理由付けをしてしまう時点で、彼等の思想は一般レベルにまで堕ちてしまっている。「自分自身を抑制するために」…なぜ抑制しなくてはならないのか。「アピールするために」…アピールなどしなくとも、気付くべくして気付く真の天才が居るでしょう。彼等は柵を超えてしまったけれども、柵の向こうは必ずしも天才ではない。ならば天才とは一体なんなのか。森作品を読むと、どうしても天才について考察せずにはいられないようです。
さて、よくわからない考察で行数を稼ぎましたので、そろそろネタバレの時間を開始しましょうか。これで、当ブロ愚を開いた瞬間にネタが読めてしまうという心配はないでしょう。配慮が必要なほど、この衝撃は直に感じて欲しいものです。では、ネタバレです☆
犀川先生の少年時代が読めて、私は幸せでございました!
貴方の歪んだ人格もとい捻くれた…って、全く褒め言葉が思い浮かびませんが、とにかく犀川先生の人格形成に大きな影響を与えたであろうこの時期。そりゃ、両親が離婚して、引き取られた母親があんな奇天烈斎な人だったら、あんな風になるわ。喜多先生という友人が犀川先生に出来たことは、まさに青天の霹靂。最高の出会いだったと思います。
というわけで、へっ君=犀川先生。衝撃のラスト、林さんが持ってくる入学祝いに書かれた“○川 林”。○はもちろん犀。犀川林…『デルタ』で紅子さんが仰った「林さんって、変わった名前でしょ」の意味がここで!変わりすぎだよ!これまでの私の人生で、林さんというファーストネームの御仁にお会いしたことはございません。
シリーズを通してこのへっ君=犀川先生に気付くポイントは、瀬在丸紅子のイニシャルがC・Vなのに対し(『六人の超音波科学者』)へっ君が使っていたサッカーボールに書かれたイニシャルはS・S(『朽ちる散る落ちる』でしたか?)。瀬在丸のCでも、林のHでもないSって名字はなんなんよ?ってところでしょうか。
そして、Vシリーズの時代設定が過去であることについて。これは登場人物全員が携帯電話を所有していないことや、『超科学』『ちるちるちる』などで描かれる科学が古く、既に実現しているものがいくつか含まれていることなどで察することができます。つまり、シリーズで常に孤独な作品で有り続ける8作目『捩れ屋敷の利鈍』のみが現在。ダンディズム・保呂草☆と絶叫した私ですが、保呂草さんはあの作品のときに50歳くらいのおじさまだったことになります。そして、『捩れ屋敷』で登場した保呂草さんの古い友人とは犀川先生のこと。20歳近くお歳が離れておりますが、保呂草さんとへっ君の仲の良さはこの『赤緑黒白』でも証明されておりますし、これからレビューする『四季』でも描かれております。
この衝撃のトリックを私が知ったとき(『捩れ屋敷』のあとネットで)は、あまりのことに一晩寝られず、既刊のVシリーズを一気読みしました。指摘されてみると、どれもこれもおかしい。そんなこと全く気が付かなかった自分に嘲笑。皆様はVシリーズのどのあたりでこのトリックに気付いたのでしょうか?ぜひ、お聞かせください。
というわけで、愛しの保呂草さんが阿漕荘を去り、その後どのような世界を見てまわったのかはまた別のお話。『四季』に保呂草さんがメインで登場したときは衝撃だったなぁ。しかも彼女と一緒だっただなんて。れんちゃんとしこさんについても『レタス・フライ』収録の「刀之津~」で語られておりますので、彼等のその後が知りたい方は是非。
この大トリックと保呂草さんの存在が、私の中で「S&MよりもV!」と云い切るすべてになっております。是非、皆様もVシリーズ10作をお楽しみください。
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