■西澤保彦

2014/02/04

『殺意の集う夜』 西澤保彦

ノベルス版帯裏によると東野圭吾さんの『鳥人計画』を読んで以来、自分も一度はこの「事件の犯人自身が推理する」という趣向を試みてみたいと思っておりましたとのことで、6つの命を奪った大学生の独白から始まる物語。合間にもうひとつの殺人舞台を挟みつつ、その日、その嵐の山荘でなにが起こったのかを描いているわけですが、

もちろんやられました\(^o^)/

まさか「事件の犯人自身が推理する」という言葉が最大にして究極のネタバレだとは…というわけで、ここからのレビューもネタバレですが、作中で語られるふたつの事件(園子が部屋で殺されていた事件とホステスの智恵が殺された事件)それぞれの語り部(探偵役)がもう片方の事件の犯人という趣向です。つまり、万里は前夜にもうひとつ殺人を犯していた…え?それっておかしくない?だって万里は女子大生だったはずじゃ?

ってことで、叙述トリックも仕掛けられてますよ

一人称作品は叙述トリックを疑えってのは定石ですが、西澤作品は一人称作品多いしなあ…と言い訳してみる。言われてみれば万里ちゃんが長身だったり(刑事の七座より背が高い)「変態ヤロー」と声を掛けられたりしてますが…やっぱり万里ちゃんサイドの物語だけで気付くのはちょっと無理かな。だって万里ちゃんが完全に乙女なんですもの。

とにかく昔の作品らしくサービス旺盛な一作。なにせバカミス要素まであるのよ。なぜ彼らがあの日、あの別荘に集まることになったのか…そんな馬鹿なと言わざるを得ないでしょう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/11/27

『七回死んだ男』 西澤保彦

西澤保彦の最高傑作と名高い『七回死んだ男』。文庫版あとがき(1998年)で西澤氏自身が「西澤保彦の代表作といえば未だに『七回死んだ男』を推す向きが多いのも」と書いているけれども、大丈夫、15年経ってもその向きは変わっておりません。だって、名作は名作。

反復落とし穴、という1日を9回繰り返す不思議な体質の持ち主キュータロー。そのキュータローが殺されてしまった祖父を助けるためにあれやこれやと孤軍奮闘するお話。あらすじにしたらたったこれだけのお話なのだけれど、西澤氏らしい軽快な語り口と細やかな伏線が相まって読んでいてとても楽しい1冊に仕上がっております。

とりあえず、

タイトルからしてミスリード

ってことで良いのかしら?だって、本当は「もしかしたら八回死んだ男」なんですものね?友理さんがキュータローのことをヒサタロウと呼ぶことで謎解きが始まるんだろうなあ、というのは大方の予想通りで、友理さんもまた特異な体質の持ち主なのだろうと思わせるところまで西澤氏が計算していたかどうかはわかりませんが。とにかく、友理さんとキュータローのあの日の会話は間違いなく「有った」と前提すること、これが謎を解く第一歩でございます。

そこからどう推理するかは人それぞれですが、とりあえず私はこの反復落とし穴を自由に操れる人物がいて、キュータローはそれに引きずられている(付き合わされている)のだと予想。その人物とは被害者である零治郎祖父そのひとなのだけれど、祖父は反復落とし穴で自分を殺しに来ないものを後継者として指名するつもりなのでは?それが能力持ちのキュータローと友理で、ふたりが後継者として指名されてめでたしめでたし…そう考えたこともありましたとも。

登場人物たちの名前が今でいうDQNネームなのがおもしろいなあ…と、どうでも良い事まで考えて、いつかこの名前が当たり前のものになる頃まで(そんな日は来て欲しくないけれども)名作は名作で有り続けるのだろうと願うわけです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/09/22

『必然という名の偶然』 西澤保彦


『腕貫探偵』シリーズの番外編扱いなのだけれど、腕貫探偵のことをちっとも覚えていなかったので番外編として楽しめなかった自分のトリアタマが憎い。どうやら大富豪探偵やらオヤカタやらケージがシリーズキャラらしいのだけれど、全く印象に残ってないのよね。これは腕貫探偵再読か。

収録されているのは6作。連作ミステリーなんて紹介されていたけれど、舞台が櫃洗市ってだけで特に繋がってはいなかったような?5つの物語がラストの1作で繋がるのかと思ったけれどそうでもなかったし。

個人的ベストは「突然、嵐の如く」かな。こういう後味悪いのは好きです()っていうのは軽い冗談だとしても、事件Aについて推理・検証していたら事件Bの真相を暴いちゃいました…って、なんというお得感でしょう。

全体として小粒ながらもしっかりしたミステリが味わえる、そんな短編集でございました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/09/20

『腕貫探偵、残業中』 西澤保彦

腕貫探偵、残業中 Book 腕貫探偵、残業中

著者:西澤 保彦
販売元:実業之日本社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

悩める市民の相談事を一手に引き受ける

それが、市民サーヴィス課

腕貫探偵、今回は残業までして市民の悩みを解決する!

『腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿』がいつの間にかシリーズ化しておりました。しかも今回は残業!もちろん残業代は出ないのでサーヴィスですサーヴィス。

悩める市民の相談事を没個性で聞き出し(まるでロボットに話しているかのような感覚に陥るのでしょうか?)怪傑ズバット。それがこの「腕貫探偵」シリーズの特徴です。本作『~残業中』ではどうも聞き上手な感じはしませんでしたが(相談する前、した後にバッサリ分かれてしまっているの残念)よくもまぁ、こんな奇天烈斎な相談に応えられるな、と。

個人的には「流血ロミオ」が好きです。私も相談者もすっかり忘れていたある人物から推理を連ねてゆく過程が本格!後味が悪いところも本格(って、それ間違った認識だから!)タイトルも好きです。

あとは…実はもう光る作品はなかったり。ラストの「人生、いろいろ。」はなかなかなのですが、腕貫探偵の仕事かと云われると…そうじゃないので。でも、腕貫探偵の彼女がやってくれます。この彼女、なかなか。「流血ロミオ」の物産展での腕貫探偵&彼女の会話なんて、間違いなく恋人のそれです。没個性の公務員もなかなかやるな、うん。

個人的には前作でやった「誰も待っていないのに名簿に名前書かせる→とりあえず椅子でお待ちいただく→椅子を温める暇もなく○○さ~んの呼び出し」パターンを復活させて欲しいのですが。今回は腕貫探偵&彼女の美味いもの対決(?)か見物だったわけですが…食に全く興味のない私には面白みもなにも無かったりしたので…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/01/24

『キス』 西澤保彦

キス Book キス

著者:西澤 保彦
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

えっ?これが西澤作品?

西澤保彦が描くエロスとSFの融合体。

西澤作品だというだけで手に取った本作。西澤氏、こんな作品も執筆されていたんですね…知りませんでした。本作は森奈津子シリーズと銘打たれた作品集第3弾。

西澤氏の破天荒ぶりはチョーモンインシリーズを読んで、ある程度理解していたつもりだったのですが、矢張り“つもり”だったようです。こんな作品群まであったなんて…。ちなみに、本作『キス』を☆で評価するならば☆1.5です(もちろん☆5満点)

エロスがどうとかじゃないんです。SFがどうとかじゃないんです。読了後、「だから?」と思ってしまった本作は痛い!!4つの短(中)編が収録されているのですが、「うらがえし」だけはまぁまぁでした。「うらがえし」だけで☆1つ。あとの3作で☆0.5ですね。「勃って逝け、乙女のもとへ」なんかは、ちょっとしたミステリテイスト(「キス」もか?)になっているのですが、やっぱり「だから?」と思ってしまった。うーん、なにが原因だ?

本作は実在の森奈津子氏へのオマージュ的要素が多大に含まれているのですが、その森奈津子氏に全く興味が無い(むしろ知らなかった)のが最大の原因でしょうか?内輪ネタ、あるいは楽屋落ち的な内容に感じてしまうからでしょうか?

まぁ、どの作品読んでもサイコー!なんて作家に出逢えるのはごくごく稀だということは、重々理解しているつもりですので、本作だけで西澤作品を見切ったりはしませんが、既刊の森奈津子シリーズには手をつけることは無いでしょう…。西澤氏はやっぱりチョーモンインシリーズ。保科さんと能解警部、そして嗣子ちゃんの関係が明かされるまで追い続けますよ!!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006/12/26

『ソフトタッチ・オペレーション』 西澤保彦

超能力、我々の生活からは大きくかけ離れたその能力を用いて行われる犯罪に立ち向かうは…

中学生の卒業式ですか?ルックのチョーモンイン正規相談員・神麻嗣子。

人気シリーズもついにもう8作目。

まだまだ続く読了作品レビュー消化週間。第五弾はチョーモンインシリーズ最新刊『ソフトタッチ・オペレーション』です。前回レビューがパスラー作品として紹介した『箱の中の天国と地獄』だったのですが、パズラーといえば西澤保彦ですよね。チョーモンインシリーズはパスラー作品とは云い難いですが。

さて、先ほどから連呼しております“チョーモンイン”でございますが、ご存知ない方のために少しだけ説明をば。当ブロ愚でチョーモンインシリーズのレビューを書くのは、初めてなんですよね。既読作品をコンプリートした完成形ブロ愚が書きあがるのはいつの日か。って、チョーモンインの解説でした。チョーモンインとは超能力者問題秘密対策委員会の略でして、超能力者(この作品群で描かれる頻度で超能力者がいたら、5人に1人は超能力者なんじゃないかと思ったり思わなかったり)がその能力を悪用し、犯罪を犯した場合にそれを補導し、指導し、更生させるという特殊任務を負った組織です。その委員会に所属し、スミスのように(笑)超能力者を補導してゆくエージェントが本作のマスコットガール・神麻嗣子です。この嗣子ちゃんには秘密があるようなのですが、それはシリーズ最終巻で明かされる模様。

というわけで、4つの短編と1つの中編で構成されております本作ですが、表題作である「ソフトタッチ・オペレーション」の主人公・浩美くんの語り口とフェチ度にすっかりノックアウトされた私です。作品としては「闇からの声」が最も完成度が高かったと思うし、私もぞくりとしたのですが、読了後いちばん印象に残ったのが表題作でした。

あそこまでフェチ度が高かったら、それはもう犯罪ですよ!西澤氏も足フェチですか?

というわけで、物語の半分くらいは浩美くんの足への情熱でできている本作(嘘です)。本当に気に入ったのは双子のエル・テレパシー。双子のシンクロニティについてはいろんな作品で描かれておりますが、そのひとつの形としてチョーモンインらしく描かれたのが双子間でのみ使用可能なテレパシー。そのテレパシーが本作では大活躍するわけですが、それはまぁお読みいただければ幸いかと。しかし、双子の片割れ貴緒ちゃんも浩美くんに負けず劣らず良いキャラしてますなぁ。この双子で一作書いてくれないでしょうか、西澤氏。

それにしても、本作は能解警部の出番が一切御座いませんでしたね。保科さんとのラブ模様が嗣子ちゃんの秘密に関係しているようなので、そのあたりの記述がもっと読みたかったのですが。うーん、気になる木。シリーズ完結は哀しいですが、秘密を秘密のままにしておけない性質なんです。だって、ミステリフェチなんだもの!!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006/07/22

『あなたが名探偵』

あなたが名探偵 Book あなたが名探偵

著者:泡坂 妻夫,西澤 保彦,小林 泰三,麻耶 雄嵩,法月 綸太郎,芦辺 拓,霞 流一
販売元:東京創元社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

「ミステリーズ!」で連載されていた犯人当てミステリが一冊に。

あなたは見事に犯人を当てることができるのか?

先日レビュー致しました『気分は名探偵』と趣を同じくする本書。発表媒体が違う(新聞とミステリ専門誌)だけで、こんなに印象が異なりますか…。『気分は名探偵』は一般紙での掲載ということでオープンな印象を与えるのに対し、『あなたが名探偵』についてはコアなミステリファンしかこの小説は読んでいないだろうという前提があっての、クローズな印象。どちらにも寄稿されている麻耶氏、法月氏の作品を読むとその相違は顕著ですよね。正解率なんぞを掲載することによって、素人探偵を煽って「考えてやろうじゃないか!」という気持ちにさせてくれました。出版物としてのイメージは『気分は名探偵』の方が上かな。

さて、肝心の内容判定ですが、トリックに捻りの効いたものが多いのが『あなたが名探偵』の特徴。「ミステリーズ!」で発表するということは、もうコアなミステリファンに読まれることが前提となっているため、生半可なものは出せませんというイメージ。ある意味体育会系。

一番好みだったのは法月氏の「ゼウスの息子たち」かしら。ノックスの“十戎”に真正面から喧嘩を売った形の一作(笑)十戎なんて守ってたら新しいミステリは書けないと断言できるとは云え、どうしても十戎破りの作品に出逢うと“にやり”としてしまいます(←嫌な奴だな)

逆に麻耶氏は『気分は名探偵』の方が好きだったかも。あちらはロジックで複雑化しているだけで問題は単純であったのに対し、『あなたが名探偵』に掲載された本作は問題自体が複雑になっていたため、読了後「もう良いって…」と思ってしまった。問題はスマートであればあるだけ好みです。

せっかくの犯人当て小説感が薄かったのが本当に残念。問題編と解答編が完全に分かれてしまっているのも、やっぱり読み難い。そうすることで、読者に考える時間をという意図は充分に伝わってくるのですが。私自身が「当ててやるぜ!」という精神状態で無かったいうのが、一番の敗因なのですが…申し訳。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006/07/01

『腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿』 西澤保彦

腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿 Book 腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿

著者:西澤 保彦
販売元:実業之日本社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

どんなに眼と鼻の先に置かれていても、心身ともに健やかな者の視界には絶対に入ってこないもの。

それが市民サーヴィス課出張所。

今日も腕貫探偵は市民の苦悩を解決する。

よくドラマで御目にかかる没個性の公務員。そのお姿にかかすことのできない黒い腕カバーの名称が腕貫であることが判明。ひとつ賢くなったぜ、メモメモ。

この『腕貫探偵(副題省略)』は没個性の象徴・腕貫をはめ、今日も大学・病院・夜の商店街と奇想天外な場所で市民の悩み相談を受け付けるべく、出張所を開くのです。待っている市民なんて居ないのに、ご利用者氏名一覧表に名前を記入させ、一旦待合椅子に座らせてから「お待たせしました、まじょ。さ~ん」なんて呼びかけるわけです。このお役所仕事ぷり、最高。

そして、相談を受付け始めたならば、見事な聞き役に徹し、最後に的確なアドバイスを一言。多くは語らず、でもアドバイスをヒントに謎を違う角度から眺めてみれば、あらびっくりというわけです。まさに安楽椅子探偵お役所仕事版という感じです。

先程から私、お役所仕事お役所仕事云ってますが、私お役所仕事って嫌いじゃないです。別に私はお役所に勤めているわけではないのですが。基本的に現実主義・合理主義と評価されることが格段と多い私。できることとできないことの見極めって非常に大切だと思うんですよね。この見極めを誤るとただの馴れ合いのなぁなぁになってしまって、はっきり云って不快です。どの会社も職務規定やら法律やらに基づいた、独自のルールが存在するわけですが、そのルールを破ってまでお客様のため…というのはナンセンスだと思っています。ルールは会社やそこで働く社員を守るために存在しているのです。そのルールから逸脱して=自らを犠牲にして他人のために何かを強いるなんて、少なくとも私にはできない。その他人が自分にとってかけがえのない家族や恋人であるならいざ知らず、一見の客である貴方のためにそこまでやってられません。そのルールの縛りが一般よりキツイのがお役所であって、彼らの身を守るためにあるものを曲げてまで私のために働いてくださいとは口が避けても云えません…よね?

それでも、腕貫探偵は親切です。親身になって市民の悩みに耳を傾けてくれます。今ちょうど悩んでいることがあるんですよ、ぜひ相談にのってください腕貫探偵。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2006/05/21

『いつか、ふたりは二匹』 西澤保彦

いつか、ふたりは二匹 Book いつか、ふたりは二匹

著者:西澤 保彦
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ぼくは眠っている間だけ、ジェニィになることができるんだ。

今日もぼくはジェニィになってピーターのところでお昼寝をする。

そんな猫と犬の冒険物語。

この話も良かった!

ミステリーランドって本当に粒揃いですよね。設定で遊ぶことができることによって、内容が活きる活きる。この『いつか、ふたりは二匹』も完全に設定の勝利です。どうしてぼくがジェニィになることができるのか…なんて野暮なことを聞いてはいけません。いきなりジェニィなぼくのシーンから始まるので、違和感もかなり解消されているし。

小学校6年生のぼくも周りから“トモジイ(爺)”なんて呼ばれるおませさんという設定で、両親の不在がそのおませさんに説得力を持たせております。ニュースくらいしかテレビは観ないなんて小学生、なかなか居ないと思うぞ。

さて、この『いつか、ふたりは二匹』はジェニィとピーターの友情物語であり、しっかりとした作りのミステリでもあります。ミステリーランドの中でも1・2を争う出来ではないでしょうか。ジェニィとして見聞きしたことをうまくつなぎ合わせて、起こっている小学生連続誘拐未遂事件の真相を看破する。この看破までの流れが非常にスムーズ。ジェニィとしてのぼくを肯定さえしてしまえば、違和感無く読み進めることができます。秀逸。

残る謎はピーターなのですが…それは読んでからのお楽しみ。でも、ピーターについてはちょっと想像を働かせるだけで容易に看破できます。看破してからのピーターはとても愛らしく感じますよ。あぁ、ちゃんと愛しているんだなぁと。

良い作品を読んだときはネタバレせずにオススメする。これ基本。ということで、是非お読みください。

| | コメント (3) | トラックバック (1)