2007年1月24日 (水)

『キス』 西澤保彦

キス Book キス

著者:西澤 保彦
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

えっ?これが西澤作品?

西澤保彦が描くエロスとSFの融合体。

西澤作品だというだけで手に取った本作。西澤氏、こんな作品も執筆されていたんですね…知りませんでした。本作は森奈津子シリーズと銘打たれた作品集第3弾。

西澤氏の破天荒ぶりはチョーモンインシリーズを読んで、ある程度理解していたつもりだったのですが、矢張り“つもり”だったようです。こんな作品群まであったなんて…。ちなみに、本作『キス』を☆で評価するならば☆1.5です(もちろん☆5満点)

エロスがどうとかじゃないんです。SFがどうとかじゃないんです。読了後、「だから?」と思ってしまった本作は痛い!!4つの短(中)編が収録されているのですが、「うらがえし」だけはまぁまぁでした。「うらがえし」だけで☆1つ。あとの3作で☆0.5ですね。「勃って逝け、乙女のもとへ」なんかは、ちょっとしたミステリテイスト(「キス」もか?)になっているのですが、やっぱり「だから?」と思ってしまった。うーん、なにが原因だ?

本作は実在の森奈津子氏へのオマージュ的要素が多大に含まれているのですが、その森奈津子氏に全く興味が無い(むしろ知らなかった)のが最大の原因でしょうか?内輪ネタ、あるいは楽屋落ち的な内容に感じてしまうからでしょうか?

まぁ、どの作品読んでもサイコー!なんて作家に出逢えるのはごくごく稀だということは、重々理解しているつもりですので、本作だけで西澤作品を見切ったりはしませんが、既刊の森奈津子シリーズには手をつけることは無いでしょう…。西澤氏はやっぱりチョーモンインシリーズ。保科さんと能解警部、そして嗣子ちゃんの関係が明かされるまで追い続けますよ!!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年12月26日 (火)

『ソフトタッチ・オペレーション』 西澤保彦

超能力、我々の生活からは大きくかけ離れたその能力を用いて行われる犯罪に立ち向かうは…

中学生の卒業式ですか?ルックのチョーモンイン正規相談員・神麻嗣子。

人気シリーズもついにもう8作目。

アフィリエイトが報酬対象外って…報酬とか全くいらないので、画像だけでも表示できるようにしてください。たのんます。

さて、まだまだ続く読了作品レビュー消化週間。第五弾はチョーモンインシリーズ最新刊『ソフトタッチ・オペレーション』です。前回レビューがパスラー作品として紹介した『箱の中の天国と地獄』だったのですが、パズラーといえば西澤保彦ですよね。チョーモンインシリーズはパスラー作品とは云い難いですが。

さて、先ほどから連呼しております“チョーモンイン”でございますが、ご存知ない方のために少しだけ説明をば。当ブロ愚でチョーモンインシリーズのレビューを書くのは、初めてなんですよね。既読作品をコンプリートした完成形ブロ愚が書きあがるのはいつの日か。って、チョーモンインの解説でした。チョーモンインとは超能力者問題秘密対策委員会の略でして、超能力者(この作品群で描かれる頻度で超能力者がいたら、5人に1人は超能力者なんじゃないかと思ったり思わなかったり)がその能力を悪用し、犯罪を犯した場合にそれを補導し、指導し、更生させるという特殊任務を負った組織です。その委員会に所属し、スミスのように(笑)超能力者を補導してゆくエージェントが本作のマスコットガール・神麻嗣子です。この嗣子ちゃんには秘密があるようなのですが、それはシリーズ最終巻で明かされる模様。

というわけで、4つの短編と1つの中編で構成されております本作ですが、表題作である「ソフトタッチ・オペレーション」の主人公・浩美くんの語り口とフェチ度にすっかりノックアウトされた私です。作品としては「闇からの声」が最も完成度が高かったと思うし、私もぞくりとしたのですが、読了後いちばん印象に残ったのが表題作でした。

あそこまでフェチ度が高かったら、それはもう犯罪ですよ!西澤氏も足フェチですか?

というわけで、物語の半分くらいは浩美くんの足への情熱でできている本作(嘘です)。本当に気に入ったのは双子のエル・テレパシー。双子のシンクロニティについてはいろんな作品で描かれておりますが、そのひとつの形としてチョーモンインらしく描かれたのが双子間でのみ使用可能なテレパシー。そのテレパシーが本作では大活躍するわけですが、それはまぁお読みいただければ幸いかと。しかし、双子の片割れ貴緒ちゃんも浩美くんに負けず劣らず良いキャラしてますなぁ。この双子で一作書いてくれないでしょうか、西澤氏。

それにしても、本作は能解警部の出番が一切御座いませんでしたね。保科さんとのラブ模様が嗣子ちゃんの秘密に関係しているようなので、そのあたりの記述がもっと読みたかったのですが。うーん、気になる木。シリーズ完結は哀しいですが、秘密を秘密のままにしておけない性質なんです。だって、ミステリフェチなんだもの!!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月22日 (土)

『あなたが名探偵』

あなたが名探偵 Book あなたが名探偵

著者:泡坂 妻夫,西澤 保彦,小林 泰三,麻耶 雄嵩,法月 綸太郎,芦辺 拓,霞 流一
販売元:東京創元社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

「ミステリーズ!」で連載されていた犯人当てミステリが一冊に。

あなたは見事に犯人を当てることができるのか?

先日レビュー致しました『気分は名探偵』と趣を同じくする本書。発表媒体が違う(新聞とミステリ専門誌)だけで、こんなに印象が異なりますか…。『気分は名探偵』は一般紙での掲載ということでオープンな印象を与えるのに対し、『あなたが名探偵』についてはコアなミステリファンしかこの小説は読んでいないだろうという前提があっての、クローズな印象。どちらにも寄稿されている麻耶氏、法月氏の作品を読むとその相違は顕著ですよね。正解率なんぞを掲載することによって、素人探偵を煽って「考えてやろうじゃないか!」という気持ちにさせてくれました。出版物としてのイメージは『気分は名探偵』の方が上かな。

さて、肝心の内容判定ですが、トリックに捻りの効いたものが多いのが『あなたが名探偵』の特徴。「ミステリーズ!」で発表するということは、もうコアなミステリファンに読まれることが前提となっているため、生半可なものは出せませんというイメージ。ある意味体育会系。

一番好みだったのは法月氏の「ゼウスの息子たち」かしら。ノックスの“十戎”に真正面から喧嘩を売った形の一作(笑)十戎なんて守ってたら新しいミステリは書けないと断言できるとは云え、どうしても十戎破りの作品に出逢うと“にやり”としてしまいます(←嫌な奴だな)

逆に麻耶氏は『気分は名探偵』の方が好きだったかも。あちらはロジックで複雑化しているだけで問題は単純であったのに対し、『あなたが名探偵』に掲載された本作は問題自体が複雑になっていたため、読了後「もう良いって…」と思ってしまった。問題はスマートであればあるだけ好みです。

せっかくの犯人当て小説感が薄かったのが本当に残念。問題編と解答編が完全に分かれてしまっているのも、やっぱり読み難い。そうすることで、読者に考える時間をという意図は充分に伝わってくるのですが。私自身が「当ててやるぜ!」という精神状態で無かったいうのが、一番の敗因なのですが…申し訳。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年7月 1日 (土)

『腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿』 西澤保彦

腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿 Book 腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿

著者:西澤 保彦
販売元:実業之日本社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

どんなに眼と鼻の先に置かれていても、心身ともに健やかな者の視界には絶対に入ってこないもの。

それが市民サーヴィス課出張所。

今日も腕貫探偵は市民の苦悩を解決する。

よくドラマで御目にかかる没個性の公務員。そのお姿にかかすことのできない黒い腕カバーの名称が腕貫であることが判明。ひとつ賢くなったぜ、メモメモ。

この『腕貫探偵(副題省略)』は没個性の象徴・腕貫をはめ、今日も大学・病院・夜の商店街と奇想天外な場所で市民の悩み相談を受け付けるべく、出張所を開くのです。待っている市民なんて居ないのに、ご利用者氏名一覧表に名前を記入させ、一旦待合椅子に座らせてから「お待たせしました、まじょ。さ~ん」なんて呼びかけるわけです。このお役所仕事ぷり、最高。

そして、相談を受付け始めたならば、見事な聞き役に徹し、最後に的確なアドバイスを一言。多くは語らず、でもアドバイスをヒントに謎を違う角度から眺めてみれば、あらびっくりというわけです。まさに安楽椅子探偵お役所仕事版という感じです。

先程から私、お役所仕事お役所仕事云ってますが、私お役所仕事って嫌いじゃないです。別に私はお役所に勤めているわけではないのですが。基本的に現実主義・合理主義と評価されることが格段と多い私。できることとできないことの見極めって非常に大切だと思うんですよね。この見極めを誤るとただの馴れ合いのなぁなぁになってしまって、はっきり云って不快です。どの会社も職務規定やら法律やらに基づいた、独自のルールが存在するわけですが、そのルールを破ってまでお客様のため…というのはナンセンスだと思っています。ルールは会社やそこで働く社員を守るために存在しているのです。そのルールから逸脱して=自らを犠牲にして他人のために何かを強いるなんて、少なくとも私にはできない。その他人が自分にとってかけがえのない家族や恋人であるならいざ知らず、一見の客である貴方のためにそこまでやってられません。そのルールの縛りが一般よりキツイのがお役所であって、彼らの身を守るためにあるものを曲げてまで私のために働いてくださいとは口が避けても云えません…よね?

それでも、腕貫探偵は親切です。親身になって市民の悩みに耳を傾けてくれます。今ちょうど悩んでいることがあるんですよ、ぜひ相談にのってください腕貫探偵。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2006年5月21日 (日)

『いつか、ふたりは二匹』 西澤保彦

いつか、ふたりは二匹 Book いつか、ふたりは二匹

著者:西澤 保彦
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ぼくは眠っている間だけ、ジェニィになることができるんだ。

今日もぼくはジェニィになってピーターのところでお昼寝をする。

そんな猫と犬の冒険物語。

この話も良かった!

ミステリーランドって本当に粒揃いですよね。設定で遊ぶことができることによって、内容が活きる活きる。この『いつか、ふたりは二匹』も完全に設定の勝利です。どうしてぼくがジェニィになることができるのか…なんて野暮なことを聞いてはいけません。いきなりジェニィなぼくのシーンから始まるので、違和感もかなり解消されているし。

小学校6年生のぼくも周りから“トモジイ(爺)”なんて呼ばれるおませさんという設定で、両親の不在がそのおませさんに説得力を持たせております。ニュースくらいしかテレビは観ないなんて小学生、なかなか居ないと思うぞ。

さて、この『いつか、ふたりは二匹』はジェニィとピーターの友情物語であり、しっかりとした作りのミステリでもあります。ミステリーランドの中でも1・2を争う出来ではないでしょうか。ジェニィとして見聞きしたことをうまくつなぎ合わせて、起こっている小学生連続誘拐未遂事件の真相を看破する。この看破までの流れが非常にスムーズ。ジェニィとしてのぼくを肯定さえしてしまえば、違和感無く読み進めることができます。秀逸。

残る謎はピーターなのですが…それは読んでからのお楽しみ。でも、ピーターについてはちょっと想像を働かせるだけで容易に看破できます。看破してからのピーターはとても愛らしく感じますよ。あぁ、ちゃんと愛しているんだなぁと。

良い作品を読んだときはネタバレせずにオススメする。これ基本。ということで、是非お読みください。

| | コメント (3) | トラックバック (1)