■乙一

2013/08/08

『吉祥寺の朝日奈くん』 中田永一


恋が始まるまで、あるいは、始まることなく終わってしまった恋の物語が詰まった短編集。

個人的にベストだったのは「ラクガキをめぐる冒険」でしょうか。どの作品にも謎解きがエッセンスとして振り掛けられているのだけれど、どうして遠山くんに会いたいのか…の部分をフェイクにしてうまく魅せてくれた本作がいちばん綺麗だったと思う。ラストのまとめ方もいちばん救われた感じだったし。

表題作も好き。まさか全てが○○だったとは。けれど、人の気持ちと言うのはシナリオ通りにいかないもので、その気持ちの振れ幅がまるで小さなものであるかのような淡々とした描写に改めて乙一すげーと思いました。まる。

そういえば、『箱庭図書館』のときにも思ったのだけれど、乙一の文章ってこんなに句読点多かったっけ?「三角形はこわさないでおく」が特に顕著で、ちょっと読み辛かったです。まる。


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2013/07/24

『百瀬、こっちを向いて。』 中田永一


恋愛小説家としての乙一、処女作がこの「百瀬、こっちを向いて。」なのだけれど、『I LOVE YOU』で読んだときは全く気付けませんでした。そして今日、改めて読んでみて…ああ、乙一らしいところあるよねえ、って。

一番らしさを感じたのは「なみうちぎわ」でしょうか。仄暗いところがまさに。そして、私の一番のお気に入りだったりもする。ちょっとミステリ入ってるからってのもあるかもしれないけれど。なんとなく本多孝好の「眠りの海」(『MISSING』収録)を思い出しました。

表題作の「百瀬、こっちを向いて。」も好きかな。主にほおずきの花言葉方面で。やっぱりどこか仄暗くて後ろ暗いところのある作品が好き。毒、といよりは、闇。乙一のそういうところから離れたくての中田永一名義だったのかもしれないけれど。やっぱり見え隠れしてしまうものなのでしょうか。

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2013/07/11

『GOTH モリノヨル』 乙一

 

『GOTH』の刊行から6年、映画化の折に書き下ろされた本作。そこからもう5年が経過しているので私が『GOTH』を読んだのは10年以上前ということになるのだけれど、「僕」がどんな嗜好の持ち主で、森野との関係はどんなだったかを思い出すに充分な一作でございました。

ミステリ要素は薄いのだけれど、もっと薄味なのに250Pのノベルスで刊行されている作品がわんさかあるので充分に満足できましたとも。「僕」の推理の過程は自然で美しく、また、犯人にとても近い思考の持ち主だからこそ真相に到達できるという点が良いですね。

尚、本作は短編&写真集の形をとっているのだけれど、写真集の方はぱらぱらとだけ拝見。こちらになにか仕掛けが施されているということはないよね?

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2013/03/17

『箱庭図書館』 乙一

乙一が貴方の没原稿をリメイクします、という「オツイチ小説再生工場」を書籍化した一冊。乙一自身があとがきで「小説のアイデアがなかなかおもいつかない人間」であると書いているのですが、小説ってアイデアだけでもダメだし文章力だけでもダメだし、売れるかどうかには運も関わってくるし…本当に一握りの人だけがなれる職業が作家なのだなあと改めて思った次第。

そして、乙一が作家たる所以を如何なく発揮し、とにかくもう大好きな作品になったのが「ホワイト・ステップ」です。乙一自身も「自分が過去に書いた作品にちょっとだけ雰囲気が似ているような気がして」と評しているように、優しい方の乙一作品のかほりがします。雪の上、残された足跡が紡ぎ出す優しい物語。次に外を歩くときにはちょっと変わった足跡を探してみよう…そう思ったわけですが、外はもうぐっちゃぐっちゃのべっちゃべちゃなのです。春ですね。

暗い方の乙一では「小説家のつくり方」が好きかな。こういう救われたのか救われていないのかよくわからない感じが実に乙一らしいなあ、と。彼が小説家になった理由、モチベーション、それがとても人間らしくて好きです。嘘だらけの理由よりも余程、理解ができる。

そうそう、読んでいてとても気になったのが漢字とひらがなの割合なのですが、乙一作品っていつもこうでしたっけ?それともwebで公開することを前提に、ひらがな多めにしているのかな?

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2007/05/31

『小生物語』 乙一

小生物語 Book 小生物語

著者:乙一
販売元:幻冬舎
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この物語を綴るのは「乙一」か「小生」か。

日記の間に幻想が入り混じる不思議物語。

乙一カテゴリはあれども、収録されているレビューは一作(しかも酷評)のみ…という情けない状態に気付いたのは数日前。なんでも良いから乙一作品読まねば…と最初に目に付いたのがこの『小生物語』です。

以前から乙一は「あとがきがおもしろい」と思っていた私は、あとがきテイストの小文が集まったこの『小生物語』がもろ好みでして。

この『小生物語』のすごいところは、日記の体を装った創作であること。乙一の日常がいつの間にか小生の綴る妄想世界に早変わり。私は『ZOO』に収録されている「SO‐far そふぁ~」の原型(だと勝手に思っている)ソファに座った青白い顔した少年の話が好きです。マイソファにそんな少年がいたら…怖いけどちょっと素敵。

小説家として活動する自分は空想であると書かれた日記の脚注で、そんな話を精神科でしたら幾つか薬を処方してくれた…なんて書かれているのを読むとゾクッとします。その脚注だってファンタジィなのかもしれませんが。ファンタジィならば、なんてユニーク。

そして、同じく脚注で書かれる合コンのお話も好き。あの合コンに参加したメンバから夫婦(佐藤&島本)が生まれるとは。あの似非合コンにも意味があったということで。しかし、すごいメンバだ。是非参加したい。

そうそう、ブランコは怖い遊具だという乙一氏の意見には激しく賛成。あんな怖い遊具が大好きだった幼き自分に拍手。

こんなにおもしろい日記を読まされたあとに、このくだらないブロ愚を更新するのは気が引けますね。というわけで、『小生物語』のレビューはこれにて終了。まったく乙一カテゴリが厚くなっていないという罠。

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2006/06/25

『銃とチョコレート』 乙一

銃とチョコレート Book 銃とチョコレート

著者:乙一
販売元:講談社
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大怪盗ゴディバを追うのは子どもたちのヒーロー・名探偵ロイズ。

ゴディバの隠し地図を発見した少年・リンツは、ロイズと共に捜査を開始する!

ロイズはゴディバの正体を暴くことができるのか!?

超楽しみにしていた『銃とチョコレート』。はっきり申し上げて良いですか?

おっ、面白くなかった…。

はっきり申し上げるとか云っておいて、乙一ファンの逆襲を恐れて反転です。乙一氏好きな方は、決してドラックしませんように。

このレビューを書く前に、評判をググってみたのですが、皆さん「おもしろかった」って書かれているのですよね…。乙一氏らしさもなく、ミステリとしてのスリリングさもなく、文章にキレもなく…。キレがないのはジュブナイル仕様で書かれているからだけではないはず。妙に残酷なのも、本当に必要?それが乙一氏らしさではないでしょう?

ロイズはあくまでも名探偵で居て欲しかった。純粋にわくわくさせてくれる冒険ものが読みたかった。勝手にロイズの活躍を事前に想像していた私の負けですか?なんだろうなぁ、うまく表現できないのですが、期待していたものとは大き違っていました。名探偵ロイズが実は…っていうのは悪くないのですよ。でも、あんなに人間臭くなくても。悪くても超人的な人であって欲しかった。有名になりたい、いつまでも人に覚えていてもらえる人でありたい、という気持ちはわかります。でも、謎を解き明かしたいという気持ちを忘れないで欲しかった。

二転三転する(私はそう思いませんでしたが)悪役も、みんな中途半端。それが現実なのかもしれないし、その中途半端を描くのが乙一氏の作風なのかもしれませんが、それでは夢がないではないですか。やっぱり私は勧善懲悪が好きだな。

ストーリーにもうちょっとメリハリがあれば…って、それは乙一氏の作風ではないって?

酷評というか、ただの批判レビューになってしまって残念。でも、同じように感じた人はきっと私だけではないはず。乙一氏好きな方は「よく知らない素人がなにか戯言を云っているわ」と思って大目にみてください。

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