2008年5月17日 (土)

『バラ迷宮』 二階堂黎人

複雑怪奇な6つの殺人事件を解き明かすは

気品に満ちた巻き髪の名探偵

その名も…二階堂蘭子

当ブロ愚で二階堂蘭子シリーズをレビューするのはこれが初めてですか…なんか意外ですね。でもまぁ、蘭子と黎人が義兄妹だという設定すら忘れるくらいのご無沙汰ですから。蘭子って、どうして二階堂家の養女になったんでしたっけ?どの作品でそのあたりの事情が描かれているんでしたっけ?トリアタマが憎い。

というわけで、本日のメニューは二階堂蘭子シリーズの短編集『バラ迷宮』。前回読んだのは高校生の時ですので…もちろんトリアタマの私が内容を覚えているわけが無く。初読の気持ちで読めました。

個人的に一番好みだったのは「変装の家」でしょうか。殺人事件の犯人は故意に事実を捻じ曲げようとするものですが、本作はこの捻じ曲げが無理なく見事にスムースに行われた一作。人差し指のほんの少しの動きだけで、真相は闇の中へ。

「ある蒐集家の死」も好きです。ミステリ作品と云えば“殺人事件発生→探偵役員出勤→探偵が皆を集めて「さて」と云い”がお約束の順序ですが、本作は“探偵が皆を集めて「さて」と云い”からのスタート。その後、現場の状況や登場人物が紹介されるのですが、そのあたりの描写に無理や唐突感がなかったので。あとは二階堂蘭子という名探偵が、謎や殺人事件に対してどんな矜持を持っているのかも分かる。「犯人がそれで観念するのなら、方法は別に何でもかまわないわけじゃない」なんて、事実を故意に捻じ曲げるのは犯人だけでは無い宣言ですもの。

他の作品は蘭子の推理云々というより、その雰囲気を愉しむべきかと。本当に蘭子はおどろおどろしい雰囲気の作品が良く似合う名探偵。久しぶりに奇怪な怪人が登場する長編モノも読みたくなりました。『人狼城の恐怖』は無理だとしても。蘭子が二階堂家の養女になった件が描かれた作品はどれだったかしらね。

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2008年5月15日 (木)

『本からはじまる物語』

本からはじまる物語 Book 本からはじまる物語

著者:恩田 陸
販売元:メディア・パル
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私たちの大好きな「本」或いは「本屋」を主題に

18つの物語が集い、羽ばたく

大好きな本多孝好氏が寄稿しているというので手に取ってみた一冊。直木賞やら芥川賞受賞した大御所も軒並み参加しておりまして、かなり豪華なラインナップ。ただ主題を「本」或いは「本屋」に限定してしまうと…似たような作品が顔を合わせて「あちゃ~」となっちゃうこともあるわけで。

個人的ベストだったのは贔屓目を抜きにして(声を大にして)本多孝好氏の「十一月の約束」でした。先日レビューした『Story Seller』「作風変わりましたね」なんて申し上げたのが嘘のような本多節炸裂、素敵な物語でございました。『Story Seller』で熱望した「不思議を不思議のまま」、むしろ不思議なことなどなくそれが自然で自明なことであったかのように閉じられた物語に「そう、これが読みたかったのよ」と嬉しさが。主人公の少年も良い具合に捻くれていて、本多作品らしさに溢れておりました。

二階堂黎人氏の「白ヒゲの紳士」にはシリーズキャラクタの水乃サトルが登場しましたね。このトリック(?)を使った作品は他にもありましたので、目新しさはありませんでしたが(しかも、もう一方は家族愛を主題にしたハートフルな作品)サトルはやっぱり奇人変人として本屋でも認定されているのだと納得。あと、サトルが叫んだ「ユーレカ!」ってなんですか?宇宙人との交信?

有栖川有栖氏の「迷宮書房」は某古典へのオマージュを込めて。有栖川氏のショートショートが大好きな私。収録作の中で最もユーモアに溢れていたと思います。そして、私がこの「迷宮書房」に迷い込んだらと妄想してみる。私ならどんなオーダーをするのか…きっと「これまで出逢ったことのないような驚きとトリックに溢れたミステリ」とかうっかりオーダーしちゃうんだろうな。そしてえらい目に遭うんだ。

そうそう、私は純文学畑の人間でないので、本が飛んだり、本屋での些細な一コマ系の作品の良さがさぱーり解りませんでした。すみません。想像力に乏しくて。特に些細な一コマ系は「なにが哀しくて他人の(どうでも良い)頭の中を覗かねばならんのか」とか思っちゃいました。自分でも駄目な仔だと思います、本当に。

あっ、石田衣良氏の「23時のブックストア」は結構好きかも。好きな作家を10人挙げて、そのうちの7人が重なるような方とお近づきになってみたいという欲求は良く良く理解できるので!

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2006年6月10日 (土)

『稀覯人の不思議』 二階堂黎人

稀覯人の不思議 Book 稀覯人の不思議

著者:二階堂 黎人
販売元:光文社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

手塚作品愛好家が密室の中で殺害された!

現場から盗まれた稀覯本の行方はどこに?

犯人の真の目的とは?

辻村深月氏の『凍りのくじら』は藤子先生への愛がたっぷり詰まった一作でございましたが、この『稀覯人の不思議』は負けじ劣らず手塚先生への愛がどっしり詰まった一冊でございます。こういう敬愛する作家への愛とか、コレクター情報の山ほど詰まった作品を読むのは好きです。

肝心のミステリ部、動機の部分がこの作品は素晴らしいと思います。一般には受け入れられないけれど、わからんでもない動機。ああいった賞賛を受けたい人間のエゴってどうしてもありますから。動機を推理しながら読み進めるのがこの作品には合っていると思います。

ここからはミステリの要、トリックについて触れます。ご注意!

ただ、ミステリにおいて共犯トリックというのはいかがかと思います。共犯者が殺人を犯している間に、自分はのこのことアリバイ作りをしているなんてナンセンスです。しかも、実際には手を染めていないのだから、共犯というより黒幕。やっぱりミステリは正々堂々と単独犯の犯行でなくては。そもそも、共犯関係を結ぼうという思考は理解できない。囚人のジレンマではありませんが、他人とそんなリスキーな関係を結ぼうなんて、私なら絶対に思えない。互いの利害関係が一致して…というのならなんとか理解の範囲内ですが、共犯者を脅迫して殺人を手伝わせるなんて、リスクの二乗ではないですか。しかも、自分のミスで犯行が明らかになるというなら、諦めも付きますが、他人のミスで捕まることになったらもう目も当てられない…。やっぱり犯罪は単独犯に限ります。

って、自分の犯罪論をとくとくと語りましたが、別に殺人かなにかを起こそうって気はさらさらございませんのでご安心ください。

そうそう、第2の密室の作成の仕方(表の玄関の施錠)も良かったと思います。犯人がその頃ぬくぬくとアリバイ作りをしていなければね…。

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2006年4月23日 (日)

『カーの復讐』 二階堂黎人

カーの復讐 Book カーの復讐

著者:喜国 雅彦,二階堂 黎人
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

古代エジプトでは死者の魂は“カー”となってその身に戻ってくると信じられていた。

そして、王家の墓を研究のために暴いた学者が何者かに狙われ始める。

果たして“カー”は本当に存在するのか?アルセーヌ・ルパンがこの謎に挑む。

ミステリ好きにとって“カー”といえばディクスン・カーですので、タイトルを見た時はてっきりディクスン・カーものの(あるいは“ばりの”)推理小説だと思っておりました。まさかアルセーヌ・ルパンものだったとは…。

さて、肝心の内容ですが、本家のアルセーヌ・ルパン(本当はリュパンの表記の方がしっくりするのだけれど)ものに則ってただただ記述が続くつまらない冒険小説になっておりました…。本家は翻訳ものの性からか、どうしてもそういった形式になってしまうものですが、そこには強いルパンの個性が存在するので楽しむことが出来ます。

でも本作はね…。起きたことがただただ描かれているだけで、そこにぐっと引き込む要素が無い。起きてる事象も隠し通路がどうしたこうしたという、想定の範囲内の出来事ばかりだし。そして、肝心なルパンの魅力を筆力から感じることができないのですね。

きっとルパンならここですごい隠し玉を持っていて、ラストにびっくりさせてくれるんんだろうなぁ…という私の期待をすべて裏切ってくれました。ある意味ルパンの変装をした別人だったのではないだろうか?と。

金庫の件がもしかしたらびっくりに相当するのかもしれませんが、ある程度想像力を持った大人なら金庫の件がストーリーにのぼった時点で、とっくに真相を看破していることでしょう。それだけで大泥棒なら私も大泥棒ですよ…。

ということで、非常に不本意だった一作。

二階堂氏は昨年、ご自分の本業ではないところでミステリ界を賑わせておりました(人の土俵で相撲をとるどころか、住んじゃったみたいな)ので、ちょっと嫌煙気分だったのもありますが…。

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