■今野敏

2018/10/14

『棲月 隠蔽捜査7』 今野敏

シリーズ第7弾?第9弾?

事件はとんとん拍子で進むので物足りなく感じるが(以下ネタバレ:ハッカーがSNSを乗っ取って云々はわかるが、サーバー攻撃との関連がご都合展開に思える)大森署長になってからの竜崎が培ってきたすべての集大成といった1冊。戸高や根岸を始めとする大森署員との信頼関係あふれる描写が本当によかった。

辞令が出て狼狽する竜崎を可愛らしく思えるのはシリーズをここまで追いかけてきた読者の特権。家族、特に妻である冴子とのやりとりもいい。シリーズ当初、この夫婦にここまでの安定感はなかったはず。

神奈川県警刑事部長となる竜崎をどんな事件が待ち受けているのか。警視庁をライバル視する部下たちを正論でバッタバッタと切り倒し、伊丹と共同戦線を張る未来が見える見える。続きが気になる良シリーズ。これからも期待しています。

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2016/11/28

『去就 隠蔽捜査6』 今野敏

隠蔽捜査シリーズ第8弾。

大森署管内で発生したストーカーによる女性連れ去り事件。行方不明の女性は以前、ストーカー被害を大森署に相談していた。ストーカーという犯罪に対して警察ができるベストな対応とは、事件が起こった今すべきこととは、事件の真相はどんなものなのか。警察官僚として、合理的に、やるべきことをやるべきときに。そろそろ『去就』が気になる竜崎が事件を解決へと導く。

(ネタバレします)
ストーカー事件の方にもちょっとした発想の転換劇がありますが、本作の読みどころはきっと特別監察ですよね。弓削(悪意を持って呼び捨て)ムカつきますね。竜崎のように「小者には腹も立たない」と言える境地には私はまだ立てません。でも、新たに竜崎シンパとなったふたりの隊長が良い証言してくれました。それもまた、竜崎自身は自分は当たり前のことをやっただけなのに、と思ってそうですが。あと、伊丹にきちんとありがとうが言えた竜崎も良かったですね。戸高をとにかく信頼する竜崎も良かった。弓削以外は良いところばかりですね。

竜崎家の雰囲気もとてもよくなりましたよね。妻である冴子は登場時からあんな強キャラでしたっけ?すっかり竜崎を掌でコロコロしています。

そろそろ異動がありそうな展開ですが、どうやら栄転になる模様。現場で指揮を執る竜崎がまだ見たいような気もしますが、官僚のパワーゲームを制する竜崎もまた見てみたい。あ、伊丹の異動フラグも立ってるので伊丹の後任で竜崎刑事部長ってのも有りかも。

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2016/08/12

『ST 警視庁科学特捜班 黒いモスクワ』 今野敏

鋭意再読中のSTシリーズ第3弾。

黒いモスクワ…黒…黒…黒崎ということで黒崎活躍回ですが、個人的には翠>黒崎>>>>>>>青山>赤城>>>山吹といった印象です。キャップと赤城を心配して個人的にロシアまで飛んできてくれた優しい山吹さんにもっと出番を!

事件の真相については明らかに怪しい描写が複数あるので簡単に察することができます。粉塵爆発についても(本作が発表された2000年はわかりませんが)広く知れ渡った手法なので小麦粉の記述が出てきた時点で気付けたことでしょう。

個人的に外せないポイントは機内で翠に優しくする菊川なのですが、なんと言うかもっと菊川×翠ください。

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2016/07/08

『ST 警視庁科学特捜班 毒物殺人』 今野敏

鋭意再読中のSTシリーズ第2弾。サブタイトル通り、毒物殺人事件が起こりますが捜査のポイントはそこじゃありません。

STメンバの活躍度は山吹>>青山>>>>>翠=黒崎>>赤城ってところでしょうか。ついに山吹の時代が来ましたが、専門の薬学からのアプローチではなく、僧侶という宗教の専門家として思想・思考から事件に迫ります。

物語のキーパーソンである女子アナの前に唐突に現れ、存在感を増していく自己啓発セミナー代表。もちろん怪しい。この男が事件に関わっていないはずがない。と読者もSTの面々も思うわけですが、百合根の嗅覚に引っかかってこないのはあくまでも百合根が未熟だからなのか。百合根はバランサーだとずっと思っていたのですが、菊川の方がそれっぽいですよね。山吹がようやく活躍してくれたので、次は百合根に期待。

結局のところ動機は愛憎でしたね。どうしても女子アナと近しい関係になりたいという気持ちはわかるのですが、もっとやり方あっただろうに…としか思えないのですが如何でしょうか。

スマートにまとまっているとは思えず、読了にも時間が掛かってしまいました。ST5人の魅力は変わらずなんですけどね。

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2016/07/03

『ST 警視庁科学特捜班』 今野敏

さっそく再読してみましたSTシリーズ第1弾。

『プロフェッション』でSTの面々も丸くなってきた…みたいな印象を受けたのですが、別に最初から尖ってなかったです。周りに迎合しないから変人に思われる(扱われる)だけで、彼らは自分の役割はきちんと果たすし、求められれば丁寧にわかりやすく説明できるんですよね。STを使う警察側(顕著なのは菊川)に問題があって、彼らと協力して事件を解決する姿勢さえ見せれば捜査は何倍もスムーズになるんだと改めて。

今回の5人の活躍度は青山>>>>>翠>>黒崎>>赤城>>>>山吹って感じでしょうか。山吹さんにもっと出番を。黄のファイルを読むしかないのか。

それにしてもマフィアの抗争なんかが絡んでくるあたりが90年代ミステリっぽくて実に懐かしかったです。馳星周が流行った時代ですよね。

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2016/06/30

『プロフェッション』 今野敏

STシリーズ最新刊。ドラマを見ていたので脳内キャスティングはドラマの面々ですが青山の性別を改変したことだけは未だに許せない(役者さんに罪はないです)

2時間弱で読了。さらりと読めてそれなりに楽しめるんだけど後に残らない1冊。STメンバの活躍度に大きな差があって、青山>>>>>>>>>人間嘘発見機のふたり>>赤城>>>>>>>山吹いたっけ?みたいなことになっているのが残念。個々の力を最大限発揮すると自然とチームプレイみたいなのが好きなので。

そして、百合根という潤滑油がいなくてもSTが機能するようになってきましたね。これを喜ばしいものと取るか残念と取るか。ドラマの展開が脳をちらつきます。それにしても菊川はいつから青山のおとんに。そして翠とのそれっぽい関係はすっかり鳴りを潜めてしまいましたね。作中にそれっぽい記述(恋愛感情に独身も既婚者も関係ない云々)がありましたが、そこでもふたりは無反応でしたし。残念。

犯人の○○○○○設定は正直もうお腹いっぱいです。どうして犯人は広東住血線虫などという不確かな方法で3人を殺害しようとしたのかに説明が為されてないですし(○○○○○だからで終了なのでしょう)。ちょっと乱暴だと思いました。

STの面々に等しく…なくてもいいからしっかり活躍の場がある骨太な作品が読みたい。過去作のレビューがないのでこれを機に再読してみようかしら。

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2015/06/10

『自覚 隠蔽捜査5.5』 今野敏

隠蔽捜査シリーズ第7弾。スピンオフ短編集。

竜崎は魔法を使っているわけではなく、ごくごく当たり前のことをごくごく普通に話しているだけなのに、皆が皆、憑きものを落とされたかのような反応をするのが実に微笑ましい。

個人的には「訓練」で電話を受けた時の竜崎の心のなかがどんなだったのかを知りたい(笑)

戸高が活躍しているのも嬉しい。

伊丹の出番が少なかったのが残念だけれど、それはまた次の長編で。それにしても『宰領』は絶対に読んだのだけれどレビューがないのがおかしいな。

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2013/02/08

『転迷』 今野敏


転迷開悟=迷いを転じて悟りを開くこと、ならば本作で悟りを開いたのは誰なのか。隠蔽捜査シリーズ第4弾です。

先日読了したばかりの『初陣』は刑事部長の伊丹が主人公でしたが、本シリーズの主人公はあくまで竜崎。今回も竜崎の元には厄介事が舞い込みます。が、「お国の為」に働くことを厭わない彼は刑事(署長)としての仕事を全うするわけですが…この「お国の為」ってのがすごいなあといつも思うわけです。同時に、強い違和感を覚えるわけですが。果たして、国家公務員として働いている人の中に「お国の為」と思って仕事をしている人がどれだけいるでしょうか?竜崎は「お国の為」に働くことが国家公務員の義務であり、キャリアが果たすべき義務はさらに大きいと考えているわけですが…そんなこと考えて仕事している公務員を私は知りません。

そしてそれは物語の中でも(少々違う形とはいえ)問題として現れます。外務省、そして厚生省との縄張り争い…と書くと随分と堅苦しくなってしまいますが、事件を解決させるために情報が欲しい竜崎が各省庁を代表するキャラクタを相手取るわけです。キャラクタが好ましいかどうかは別として厚生省麻薬取締部の矢島とのやりとりは痛快です。そして、最後には「お国の為」に一致団結して(?)働くこと=事件を解決することの必要性を周りに認めさせていくんですよね。その意味で『転迷』したのは竜崎以外のキャラクタであって、竜崎は徹頭徹尾なにも変わらないんですよね。それが良い。

個人的には戸高の活躍が少なかったのが残念かな。戸高が追っていたヤマまで本筋の事件と絡んできたらどうしようかと思いました。さすがにそれは高望みというものです。

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2013/02/05

『初陣』 今野敏

警察キャリアの表と裏を「変人」竜崎の視点で描いた隠蔽捜査シリーズですが、今日はその3.5、竜崎の同期にして幼馴染の伊丹を主役に据えたスピンオフ作品『初陣』のレビューです。

伊丹が福島県警から警視庁に戻ってくるところから物語(時系列)はスタート。刑事部長として自分は今なにをすべきなのか…キャリアであっても迷って当然、人間だもの。ってことで、危機に直面した伊丹が頼るのは「歩く建前」「歩く正論」「変人」竜崎なわけです。

多忙なふたりを繋ぐのは基本的に電話。困り顔で事情を説明する伊丹と、それを…ほぼ100%手元の仕事を片付けながら聞く竜崎と。立場や関係は様々、それは『隠蔽捜査』 『果断』 『疑心』に詳しいわけですが、スピンオフとは言えその辺りは頭に入れた上で読んだ方が楽しめると思います。というか、そうじゃないと竜崎の快刀乱麻っぷりに付いて行けないような気がする。やっぱり私は『疑心』であれこれ悩んでみせた竜崎よりも、こういう竜崎の方が好きです…って本作は伊丹のお話でしたっけ。伊丹も好きです。人間らしくって。

実を言えば『疑心』はあまり楽しめなかったクチなのですが、「試練」を読んで『疑心』を再読するのも悪くないと思ったりもしたかな。

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2008/09/02

『ST 桃太郎伝説殺人ファイル』 今野敏

ST桃太郎伝説殺人ファイル (講談社ノベルス コC- 22) Book ST桃太郎伝説殺人ファイル (講談社ノベルス コC- 22)

著者:今野 敏
販売元:講談社
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猿、雉、犬を従えて…もといST5人を従えて

百合根警部が向かった先は

桃太郎伝説の伝わる地、岡山

菊川さんって妻帯者だったんですねっ!!

翠とのラヴラブフラグはなんのために立ちっぱなしなんだろう。それがなによりも気になった本作『ST 桃太郎伝説殺人ファイル』が本日のメニューです。結局そのまま読んじゃいました。でも、本作は一転して読んで嬉しい良作です。

岡山県警からの要請を受けて桃太郎伝説の色濃く残る岡山県へと馳せ参じたSTの面々。今回も「取材費もらっちゃった」小説だったらどうしようかと危惧していたのですが、その必要はノーサンキューだったようです。桃太郎伝説(温羅とか吉備津彦とか)についてはこれまた某QEDで嫌って云うほど読まされたので(笑)読みとばしOKってくらいには詳しい私。本作を読みながら「このくらい簡単にさらっとまとめてくれれば良いのに…」とか呟いちゃったのは秘密の方向で。

本作はプロファイラー・青山が大活躍の一作。腐女子代表の私としては嬉しい一作。しっかし、青山が最後に○○しちゃうのにはびっくりしました。お姉さんが側に居てあげたい…って私、青山より年上?年下??

でも、本当に読み応えのある一作でした。ミッシングリンクが登場したり、『隠蔽捜査』を彷彿とさせる警察内部の泥沼合戦があったり。今回は桃太郎所縁の寺院や陰陽五行説が登場したので山吹さんの出番もあったし(笑)そういえば黒崎さんが喋りましたね!何巻ぶり??

って、そんなことよりも(酷っ!)冒頭の叫びですよ!なんのために菊川♥翠のフラグは立ってるんですかっ!?私はてっきり菊川さんは独身で、翠と恋仲になるものとばっかり思っていたのに…妻帯者なの!?しかも、あの表記は「夫婦仲は冷え切ってる」とも「仕事に夢中な駄目な俺をしっかり支えてくれる良き妻」とも取れるじゃないですか。いやぁ、おてて繋いで飛行機♥みたいな初心なふたりを暖かく見守るのが好きだったのに。某マエストロが出てきたときに餅焼いてたよね?絶対焼いてたよね??

はぁ、これからもSTから目が離せません(邪だな、おい!)とりあえず既刊のSTシリーズは読破してしまったようなので、新刊が出る日を待ち侘びたいと思います。

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