■黒田研二

2013/02/27

『さよならファントム』 黒田研二


交通事故で負った大怪我、失意の中で妻にまで裏切られた若きピアニストはついに妻を殺害してしまう。死に場所を求めて彷徨う彼の前にひとりの少女が現れ、ふたりは連続爆弾騒ぎと全ての契機である交通事故の真相を負うことに。若きピアニストの前に現れたファントム…幻影は果たして誰なのか。まとめるとこんな話になるだろう『さよならファントム』が今日のレビューです。

発売当初、某SNSで高評価ツイートされているのをいくつか見たので期待して読みました。クロケンがやりたかったこともトリックももちろん理解、理解した上で…ラストが少し散らかってしまった印象が否めないです。こういう作品って真相(トリック)が明かされたときに「ああ、そうだったのか!」と視界が開けて清々しい気持ちになれるかどうかが重要だと思うのですが、私は本作でそこまでの快感を得られることができなかったです。

骨子になっている謎と枝葉の謎。枝葉の部分を最後にまとめようとした結果、いきなりいろんな人が登場してきて話が散らかってしまった感じ。骨子の部分は伏線もたっぷりで納得のいくものだったので、もっと凝った演出で明かしてくれても良かったのにと残念に思います。

っていうか、主人公がダメ人間すぎる。そしてクーニャは可愛い。

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2009/01/22

『ウェディング・ドレス』 黒田研二

ウェディング・ドレス (講談社文庫) Book ウェディング・ドレス (講談社文庫)

著者:黒田 研二
販売元:講談社
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陵辱を受けた花嫁×交通事故死した花婿

姿を消した花嫁×三股をかけられていた花婿

平行する世界が交差したとき、真相は明らかになる

消化すべく再読。

やっぱりこうじゃないとクロケン!!

驚嘆の魔術師(トリックメーカー)・黒田研二、なんて(ノベルス)背表紙あらすじに書いてありますが(笑)本作の出来は「これからクロケンのことをそう呼んでもいいかも」なんてちょっとだけ思わせる素敵作です。

メフィスト受賞作を新本格度合の強い順に並べたら、もしかして1位に輝くのでは?と思った本作。対抗馬は『ドッペルゲンガー宮』か『真っ暗な夜明け』か?第12~16回受賞作はどう見ても本格ミステリ作家育てるべく力入れてみましたラインナップですね。

そんな新本格ミステリ『ウィディング・ドレス』。仕掛けられているのは○○トリック。物語は花嫁サイド、花婿サイドに分かれて交互に進み…あれ?明らかにおかしい。ふたりの供述が噛み合わない。どちらかが嘘を吐いているようにも思えないのに。つまりはなにかの前提がズレている…そしてズレているのは。

どの前提がズレているのか、は比較的簡単にわかるはず。丹念に、頁を捲る手を一度止めて、じっくりと考えればきっと全てが見渡せるはず。面倒臭いから基本やらないと思いますが(笑)

作中に登場する物理トリックは正直「どうよ?」っていう出来なんですが。むしろ爆笑の出来なんですが。このあたりに往年のクロケンバカミススピリットを感じます。あぁ、デビュー作からこんなことやってたのかって(笑)無理ではないけれど、いくら興奮していたとはいえ…見間違えるだろうかパラパラ。こんなバカトリックしか用意していないのに他人を事件に巻き込もうとか思った犯人の過信が笑える。

でも、メフィスト受賞作のなかでも一、二を争う本格度合なのは間違いないかと。あと、クロケン作品のなかでも一、二を争う出来ではないかと。クロケンの初期作品の方が好き、と言わしめる原動力になってます。うん、良いミステリだ。

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2008/05/12

『ナナフシの恋』 黒田研二

ナナフシの恋~Mimetic Girl~ (講談社ノベルス クM- 7) Book ナナフシの恋~Mimetic Girl~ (講談社ノベルス クM- 7)

著者:黒田 研二
販売元:講談社
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不審なメールに誘われて集まった6人のクラスメイト

なぜ、自殺を図った彼女が私たちにメールを送ってきたのか?

6人が“友人とは云えない彼女”の自殺の真相に挑む

久しぶりにクロケンを読みました…が、どうも辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』を思い出さずにはおれない展開。でも、結末が「まさしくクロケン!」というバカミス一歩手前だったので一安心。

ナナフシは草食性の昆虫で、木の枝に擬態し自らの命を守る。そのナナフシのように自らの姿を消すことに長けていたクラスメイトが自殺を図った。彼女は今、病院のベッドの上で意識を失ったまま。なのに、彼女の名前でクラスメイトたちに送られてきたメール。このメールの発信者の意図は?彼女の自殺の原因とは?という主題です。

自殺した彼女がいかに姿を消すことに長けていたか、クラスメイトだった自分たちが如何に彼女に注意を払っていなかったのか、彼女はどんなことを考えていたのか。そんなことを中心に進められる議論は、微妙で不要?でも、タイトルにもある「ナナフシ」は真相に辿り着くのに必須でございます。

ここから一瞬ネタバレします。この作品にはこのネタしかないので、うっかり読んでしまうとこの作品を読む意味がなくなりますので注意。

だからって、自分を凶器に見立てて突き落としてくれっていうのはどうかと思いますけれども。突き落としちゃう奴も突き落としちゃう奴ですけれども。

まさにクロケンらしいラスト。このラストはクロケンじゃなきゃ書けないと思う(決して悪く云っているつもりはない)。青春真っ盛りの彼女がこの選択をしたという点に痛さがあると思います。その意味で青春小説なのかもしれない。

でも、やっぱりクロケンの初期作品の方が好きです。初期作品の方が本格ミステリスピリットに溢れてましたよね?そんなクロケンスピリットに溢れる本格を私は待ち望んでおります!

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2006/07/22

『カンニング少女』 黒田研二

カンニング少女 Book カンニング少女

著者:黒田 研二
販売元:文藝春秋
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私は姉の死の真相を知るために馳田学院に合格しなくてはならない。

たとえ、どんな手を使ってでも!

少女と仲間たちの青春カンニング物語。

号泣しちゃったぢゃないかよ!

号泣する準備なんてどこにもできていなかったのに、決壊してしまった私の涙。いやぁ、クロケンにはいつも騙される。

本作は交通事故死した姉がどんな秘密を抱えていたのかを知るために、姉が在籍していた馳田学院に入学しようと一念発起する少女が主人公です。始まりは一見ミステリチックでございますが、中身は完全に青春カンニング物語ですので、安心してくださいませ。

まず、本作で行われるカンニングのハイテクさったら無いです。本作を参考にカンニングをして大学に合格してみよう!なんて血気盛んな若人が居たら、私は彼にこう囁くことに致します。「その作品を持って、どっか上場企業の研究室に飛び込みしてごらんよ。絶対採用してもらえるから…」高校生にしてそのスキルを持っているなら、大学になんて行かなくたって将来安定です。安心してください。誰もが一度は考えたことのある「消しゴムに…」「超小型カンペに…」なんてお粗末すぎてへそが茶を沸かします。概念は理解できても、仕組みは理解できん。

そもそも、ただ暗記するだけの試験に全く意味はありません。私は暗記の女王と呼ばれ、社会理科などの暗記科目に絶大な力を発揮致しましたが、それがいまどれだけ私の中に蓄積されているかというと…皆無です。司法試験だって、六法全書の持込みは可なんですよね?六法全書のすべてを覚えていることが必要なのではなく、六法全書のどこになにが書かれているかを知っていて、必要なときにその知識を有効に使えるかどうかがすべての鍵となる。そういう試験が私は好きです。人間の素晴らしいところは道具を創作し、使うことができるところなのですから、試験中に道具を取り上げてどうするのでしょうか?猿になれと?

まぁ、決められたルールの下に行うからこそ試験の公正さというのは守られるのであって、カンニングはそのルールから逸脱しているため、肯とは云い難いところですが、『カンニング少女』に登場する4人の仲間たちは、そのルールからドロップアウトする自分たちを自覚しながらも、全力を尽くすその姿勢が好きです。

そして、号泣のラスト。やっぱり青春小説はこうでなくっちゃ!という素晴らしいラスト。姉の死の真相なんて、もう蛇足に感じられちゃうくらいのラスト。必見です。

続けてもう一回読んでも良いと思わせる抜群の出来です。是非、ご賞味ください。

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2006/07/17

『川に死体のある風景』

川に死体のある風景 Book 川に死体のある風景

著者:綾辻 行人,有栖川 有栖,歌野 晶午,大倉 崇裕,佳多山 大地,黒田 研二
販売元:東京創元社
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“川と死体”を題材に、6人の人気作家が競演。

この『川に死体のある風景』は歌野昌午氏の呼びかけをきっかけに、今をときめく(古っ!)6人の人気作家が“川と死体”をテーマに競演したアンソロジーです。それぞれの短編作品とあとがきが収録されておるのですが、あとがきに個性が溢れていて好き。そもそも、アンソロジーという場自体が、作家の個性を発揮させるのに適した場だと思っているのですが、この『川に死体』は作品を発表してゆく順番も、6人の合議制で決められたようで、「六人の競作だから、まあ、三、四番手がいちばん目立たないだろう」と告白されていた佳多山氏のあとがきが印象的。

黒田研二氏のあとがきも「クロケンらしいなぁ」という感じ。あわあわあわあわ。綾辻行人氏があとがきで書かれていた当初プロットの作品なんて、楽しそうですよね。コメディでありながらも、解決には相当のロジックが披露されそうな。是非読みたい読みたい。有栖川氏はあとがきで性懲りも無く学生アリスシリーズの次回予告をされておりましたが、一体いつ発売になるのですか!?情報の小出し小出しは、出版のメドが立ってからしていただかないと、期待してしまうんですのよ!頼みます、有栖川氏。

というわけで、本編とはまったく関係のない、しかもあとがきを読んでいない方にはまったく理解もできないレビューをつらつらと書いてまいりましたが、『川に死体』に納められている6つの短編を個人的に順序付けるならば以下のような感じ。

①「捜索者」 大倉崇裕
②「玉川上死」 歌野昌午
③「桜川のオフィーリア」 有栖川有栖
④「悪霊憑き」 綾辻行人
⑤「水底の連鎖」 黒田研二
⑥「この世でいちばん珍しい水死人」 佳多山大地

トップ3がストレートに勝負してきているのに対し、綾辻氏はとにかく変化球、クロケンは…ちょっと有り得ない感じ?佳多山氏はいつになったらミステリになるのかと思ったら、よくわからないうちに解決編に突入していたという感じ。視点や時代の切り替えに難を感じてしまいました。

個人的にはこんなところでEMCのメンバーと再会できると思っていなかったので、とにかく嬉しい。『月光ゲーム』直後のストーリーのようで、アリスたちはとにかく暗いし、マリアも登場していないしで、ちょっと物足りないけれど。君たちの活躍を待ち望んでいる読者がここにいるからね。頑張れ。

さて、お次はなにを読もうかな。候補としてはまたもやアンソロジーか、135回直木賞候補にもなったあの作品です。さてさて、どちらを手にとることとなるのやら。

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2006/07/14

『霧の迷宮から君を救い出すために』 黒田研二

霧の迷宮から君を救い出すために Book 霧の迷宮から君を救い出すために

著者:黒田 研二
販売元:実業之日本社
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脳を損傷し、動くものを認識できなくなってしまった僕。

自らの巻き込まれた事件の真相を探るため、僕は霧のかかった世界の中を進む。

密室のシェルターで起こった殺人事件の真相とは?

『今日を忘れた明日の僕へ』テイストの作品でしたね。脳に損傷を起こして…という設定もそうですが、全体を流れる雰囲気が近い。クロケンのこの手の作品はちょっと物足りなく感じてしまう私ですが、いつも新しいこと挑戦してくれる作家スピリットが好きです。

本作、ミステリ部分が弱くって、かなり物足りない感じがします。だって、一番印象に残っているのが、数々の防犯グッズなのですから。“ミツケテくん”はGPSシステムを利用し、いざというときには2名の緊急サポーターがすぐさま駆けつけてくれる優れもの(?)です。私、防犯グッズってひとっつも持っていないのですが、それは緊急事態発生時に防犯グッズを自分が持っていることを絶対に思い出すことができないと思っているからです。防犯グッズを使うためには冷静さが必要ですよね。緊急時に冷静さを保つことなんて、私きっとできない…。そのあたりを考慮した、気軽な防犯グッズだったら欲しいなぁ。オートで危険を察知してくれるような。本人の心拍数に応じて、けたたましいベルが鳴るとか…もちろん誤作動はいっさいなしよ☆

すっかり話が逸れてしまった…ミステリ部分が弱いっていう話なんですよ。本作は登場人物が少ないわりに、みんな唐突に登場するので、肩透かしをくらってしまいました。「あんた、一体誰?」みたいな。ミステリにおいて、登場人物が少ないと、容易に犯人が確定(想像でもよい)できてしまうのがマイナスですよね。本作もそのケースの臭いがします。ラストのクロケン風味も、なんだか蛇足的に感じてしまった私。いや、それまでまったくミステリでなかったのに、いきなりミステリ空間に放り込まれたショックからそう感じてしまっただけかしら?

とにかく、ミステリテイストの作品ではなく、ビシッとした本格ミステリ作品が読みたいお年頃。ストック本のなかに、本格ミステリ作品が一冊も無くてがっかり。メフィスト出身つながりで、氷川透氏の作品あたりでも再読してみようかしら。もちろん、氷川透シリーズで。

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2006/05/23

『ふたり探偵』 黒田研二

シリアルキラーJによる連続殺人事件が頻発。

捜査にあたる恋人がその魔の手にかかり意識不明との情報が、札幌から上野への寝台特急“カシオペア”に乗車中の友梨の元に寄せられた。

そして友梨の身に起こる不思議な変化。

謎と論理のフルコースを召し上がれ(by 太田忠司氏)

連続してこの『ふたり探偵』のレビューを見る機会があったものですから、「あぁ、私もこの話好きなんだよねぇ」と再読を決意致しました。

この『ふたり探偵』はクロケン(黒田研二氏)の生み出した作品の中でも名作だと思います。

帯にでかでかと書かれた太田忠司氏の紹介文の通り、謎と論理をお腹一杯楽しむことができます。

この『ふたり探偵』では主人公・友梨の身にちょっとした(いや、かなりの)不思議現象が起こるのですが、その現象こそが『ふたり探偵』たるタイトルの所以。その現象とは意識不明の重態である恋人の意識が、友梨の意識と同調(憑依)し、ふたりで意見を交わしながら起こった殺人事件を解決してゆくというもの。普通ミステリの設定にこんな奇異な設定をもってこられると「は?」ってなものなのですが、その設定をうまく利用してバキバキの本格ミステリをクロケン氏はやってのけるのですね。その論理の精巧さからいって、本格ミステリとしか云い様が無い。

この奇異な現象を主人公があっさり受け入れることなく、ストーリーの半分くらいまで疑ってかかるところがまた現実的。伏線も至るところに張られていて、ぼーっと読んでいる暇はありません。作者が読者に対して仕掛ける叙述トリックも爽快感がありますし、とにかく本格ミステリマニアをも唸らせる一作となっております。

是非ご賞味いただきたい、と。

蛇足と知りつつ付け加えますと、この『ふたり探偵』には続編があるのですが、そちらはストーリー展開は良いのですが、論理部分にちょっと隙があるというか、後から設定をいじくりました!感が否めない一作となっております。そこがまた残念なのですが、『ふたり探偵』と同時に続編もお読みいただけたら…と思います。

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2006/03/08

『結婚なんてしたくない』 黒田研二

結婚なんてしたくない Book 結婚なんてしたくない

著者:黒田 研二
販売元:幻冬舎
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“結婚なんてしたくない”5人の男性が出逢った女とは?

5人が遭遇した事件があるときひとつに交わる。

結婚なんてしたくない貴方に。

黒田研二氏はいつもラストに大どんでん返しを用意する、そのサービス精神が好きです。

今回はどんでん返しはありませんでしたが、落とすところに落として円満に解決させておりましたね。

まぁ、ツッコミ所はいくつかありましたが…。

まずねぇ、最初の最初。ネタバレになるのでオブラートには包ませていただきますが…

気付くだろう!普通!!

気付いていてやってたのと、気付いてないのでは落とし所が全く違ってくるのでは?

まぁ、そこまでストーリーに関与してないから良しとするか。

さて、今回は黒田研二氏の異色作との位置づけのようですが、話の筋は読めてしまうもののぐいぐい読ませる手法が良かった。

視点が5人の男性の間で入れ替わるため、実際の厚さよりもあっさりと薄く感じます。男性のタイプが違うのが良いね。

一番好印象だったのがゲイの彼。彼らの同棲生活がそこまでうまくゆくか?とのツッコミは封印するとしても、二人の関係性が良かったね。一番救われた感じがしました。彼にも良い彼氏が出来ると良いですね。

一昨年の黒田研二強化月間(という時期があった)からかなりの時間が経っているので、未読の作品もかなりたまってまいりました。例の合作は除外するとして(あの二人が組んであんな作品しかできないでか!)また強化月間やろうかなぁ。

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