2006年8月20日 (日)

『悪党たちは千里を走る』 貫井徳郎

悪党たちは千里を走る Book 悪党たちは千里を走る

著者:貫井 徳郎
販売元:光文社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

せっかく計画した徳川埋蔵金詐欺を同じく詐欺師に邪魔された三流詐欺師。

しかし、いつの間にかその詐欺師とチームを組んで狂言誘拐をすることに?

貫井徳郎の新境地!

ブログジャックの最中でも図書館で予約していた本は…またまた以下略。

返却期日も近いし、もう読まずに返してしまおうか!と思ったのですが、

読まずに返さなくて良かった!

内容紹介部分の「貫井徳郎の新境地!」というフレコミは伊達じゃないです。本当に面白かった!貫井氏といえば『慟哭』に代表されるような固くて真面目なミステリ作家という印象だったのですが、『被害者は誰?』で「あぁ、こういうのもアリだな」と思わせ、この『悪党たちは~』で「やってくれました!」という感じ。

本作をジャンル分けするならば、ドタバタユーモアミステリ(コメディ?)といった感じ。まず、いまどき徳川埋蔵金で詐欺を働こうとする詐欺師なんて居ないですよ!!冒頭でいきなり彼らが三流(四流?)詐欺師であることが判明。もう、誘拐なんて大それたことするのは辞めなさい、とついつい諭してやりたくなるってなものです。

そこに二流詐欺師(リトグラフ詐欺)が合流し、次に企てるは犬の誘拐…ちょっと斬新?その犬誘拐計画を練っているところに登場した一流詐欺師。展開が迅速で読者を飽きさせませんな。この一流詐欺師がまた素敵で。彼がとっさに三流詐欺師どもにメッセージを残すシーンなんて、もう脱帽。賢すぎるザマス!でも、本当はディズニーランドではしゃぐ君が私は一番好きよ。

誘拐を企てた黒幕が誰か?という部分が、この作品の一番の肝なのですが、そこは貫井氏。どんでん返しの名手(私が勝手に命名)は本作でも伏線をばっちり活かして、納得の結末です。三流詐欺師がその正体に気付くまで、私はこれっぽっちも彼らを疑っておらず、思わず膝を打ってしまいました。粘着質ですね、黒幕。

とにかく、この名作を読まずに返さなくて良かった。読了後の清々しさは最近読んだ作品の中でピカイチです。最後の落し方も素敵。彼らはこの作戦が終了したあとにも、偶然を装った再会を果たし、いつまでも友人という関係を築いていって欲しい。彼らは秘密を共有する…なんて些細でお互いを縛り付ける関係でなく、ともに戦場を生き延びた戦友なのだから。

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2006年6月25日 (日)

『気分は名探偵 犯人当てアンソロジー』

気分は名探偵―犯人当てアンソロジー Book 気分は名探偵―犯人当てアンソロジー

著者:我孫子 武丸,霧舎 巧,貫井 徳郎,法月 綸太郎,有栖川 有栖
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

「夕刊フジ」に掲載された、ミステリ作家6人による犯人当てアンソロジー。

果たして君は作者が散りばめたヒントをもとに、犯人を指摘することができるか!?

真夜中は別の顔、まじょ。です☆

普通に眠たいです。でも、謎に背を向けることができないのは名探偵たる証!と夜な夜な読み進めました。解答編に突入する前に、せっせと読み返すものだから、読了するのにいつもの倍の時間がかかってしまいましたね。

さて、ここからは楽しいネタバレの時間です。作品ひとつひとつのレビューと、私の推理がどんなお粗末なものだったかを書き記してゆこうと思います。味読の方はくれぐれもスクロールさせませんように。

「ガラスの檻の殺人」 有栖川有栖
アンソロジー最初の作品。私の推理は犯人はストーカー被害を訴えている学生時代の友人だ!というもの。その根拠は時計。被害者にぶん殴られた探偵ですが、どうして自分が気絶していた時間が2分やそこらだと判る?というところから推理を進めました。だって、殴られる直前までの時間経過はさっぱり描かれていなかったので、そこに10分くらいの空白の時間があってもおかしくない!と思ったものですから。さては時計をいじったな?という推理です。まぁ、違ったわけですが。本当の結末である○○○については、気になる記述だなぁとは思ったのですが、じゃあ本来そこにあった○○○はどこに行ったの?と思います。凶器が落ちててもおかしいけれど、大量の○○○が落ちてたっておかしいでしょうよ!それだけがたまたま売り切れていたなんて、そんな偶然許しませんよ。だって、もっと売れてる○○○なんて、いっぱいありますからね!絶対抜いたはずなんですよ、と憤ってみる。

「蝶番の問題」 貫井徳郎
これは結構容易にわかりました。最初のヒントが出てきた時点で「あぁ、この人は○○○○○なんだな」と。唯一読み返さずに解答できた作品が貫井氏の一作。叙述トリックものは数こなしてますからね。ピンときちゃいました。一番正解率が低かったのが貫井氏の作品だったようですが、発表の場が「夕刊フジ」という大衆紙だったからでしょう。これがミステリ雑誌かなにかだったら、もっと正解率が高かったはず。ミステリマニアはまず叙述トリックを疑いますからね。叙述トリックさえ解ければ、犯人特定まではあっという間です。だって、二択ですもの。でも、このアンソロジーの中で一番好みの作品がこの貫井氏の「蝶番の問題」ですね。

「二つの凶器」 麻耶雄嵩
これも○○の矛盾点に気付いてから、犯人特定までは容易でした。というわけで正解。ミステリでありがちな犯人の利き○の問題をちょっと捻った形ですね。掲載作の中で、最もロジックを駆使した本格ものの作品だったと思います。これも好き。今回は実朝が木更津をリードしてゆく形ではなく、あくまでも純粋な木更津探偵ものでしたね。この程度の事件に実朝が出てゆく必要は無いってやつですか?それとも、実朝はそこまで直子先輩は苦手ですか(笑)探偵が妙に気にしている箇所をじっくりと読めば、自ずと正解は開けてくると思います。本格ミステリ初心者にぜひ挑戦してもらいたい一作。

「十五分間の出来事」 霧舎巧
霧舎氏のお顔を雑談会のお写真で初めて拝見いたしました。ちょっとイメージと違ったな…。お元気そうでなにより。早く「あかずの扉シリーズ」の新刊をお願いしますよ。さて、肝心の推理ですが、これはパーサーの彼女が犯人かと思いました。彼女は心臓が強そうですので、商品のビールで頭を殴って、それをあろうことか探偵役を務めた大神に売りつけたのだと推理しました。いや、大神が買ってすぐにビールを開けたときに泡もなにも吹き出さなかったので、違うなこれ…と思いながら解答編を読んだら、やっぱり違ってたというオチなのですが。霧舎氏らしい、なにが描きたいのかよくわからないドタバタミステリだったと思います。(←褒めてない褒めてない)

「漂流者」 我孫子武丸
唯一、当ブロ愚にカテゴリが存在しないのが我孫子氏。いや、我孫子氏の作品は最近読んでいないというだけで、『0の殺人』も『8の殺人』もマリオくんシリーズもしっかり読んではいるのですが…。この「漂流者」の人物当ては解答編で登場したヒントからきちんと当てさせていただきました。男三人で飲んだ○○○って件ね。そこから、人物の入れ替わりを組み立てるのに、ちょっと時間を費やしましたが。入れ替わりを示唆する○○○○○○○も、現物を直に見ることができたら、もっと違和感を感じれただろうに。

「ヒュドラ第十の首」 法月綸太郎
これも好きです。でも、眠くてもう推理どころじゃなかったよ。三択の犯人当てかと思いきや、とんでもないところから真犯人を持ってくるという、ミステリ好きにはたまらない結末でしたね。ミステリをあんまり読まない人にはアンフェアに見えるかも。でも、正解率は一番高いので、じっくり読めばわかる仕組みになっているのでしょう。如何せん、眠くて。法月氏、すみません!全く推理ぜすに解答編を読み進めてしまいました!『生首』以来、綸太郎の活躍を拝見しておりませんが、彼にも好い加減嫁を見つけてやってください…(とお茶を濁して逃げる)

以上、全作品のレビューでした。眠いを連呼しつつもこのレビューを書いてる私はまだまだ逝けるのかもしれません。さっきからカラスが五月蝿い。アンソロジーとしてこのレベルの作品が集まっているのは非常に珍しいことですので、是非ミステリ好きの方にも、そうでない方にも挑戦していただきたい一作です。寝て起きたら、皆様の正解率なんかをググってみよう。そうしよう。

おやすみなさい。

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2006年5月24日 (水)

『さよならの代わりに』 貫井徳郎

さよならの代わりに Book さよならの代わりに

著者:貫井 徳郎
販売元:幻冬舎
Amazon.co.jpで詳細を確認する

劇団の看板女優が公演中の控え室で殺害された。

事件を予測していたかのような発言を繰り返す少女の登場に僕は惑わされる。

少女が抱える秘密とはなんなのだろうか?

最初はイイッ!と思ったんだけどなぁ。

序盤はグイグイ引き込まれる展開。でも中盤から中弛みし、後半は予定調和に落ち着きました。帯に書かれた“予想外の結末”なんてセリフに年甲斐も無く騙されてしまった私。そうなんだよ、帯に書かれていることなんて、大抵嘘八百なんだよ。

「貫井氏の作品を読んでいる」という先入観から、「絶対なにか仕組んでいる」と身構えてしまったのが敗因でしょう。貫井氏については何度かレビューでも触れているように“大どんでん返しの名手”として認識しております。今回もどれほどのどんでん返しがあるのかと思ったら…。

ミステリとしての決着も妥当なところで、際立った特異点もなく、「ふぅん」といった感じ。貫井氏の読ませたかったのは“さよならの切なさ”なのかもしれませんが、そんな純文学が読みたいんじゃないやい!

ここからネタバレ記事にします。ネタバレ無しで書こうと思っていたのですが、やっぱり書きます。

謎の少女・祐里は未来からタイムスリップしてやってきたという設定です。この設定自体には偽りはないと踏んでいたのですが“予想外の結末”というからにはこの部分に何か仕掛けているのだろうと思っておりました。

例えば、祐里が新條さんの孫という設定がダミーで、実は和希と智美さんの子どもである(祐里と新條さんがそっくりだという設定はどこにいった!)とか、実は殺害された香織さんに刺さっていたナイフは未来から祐里が持ち込んだもので、事件の犯人も祐里である(犯罪者の孫ってことで差別を受けていた娘がそんなことするか!)とか。

でも違ったのですね。(自分で既に反論あげちゃってるじゃないですか!)祐里が未来に戻れなくなった(あるいは死体で戻った)ことにどのような衝撃があったのかが気になるところではありますが。神隠し扱いでしょうか?

既に上記のようなストーリーとは関係ない事柄に興味を持ち始めている時点でOUTって感じでしょうか。序盤のグイグイきてる感じが良かっただけに、ちょっと残念な読了でございました。

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2006年5月16日 (火)

『光と影の誘惑』 貫井徳郎

光と影の誘惑 Book 光と影の誘惑

著者:貫井 徳郎
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

誘拐、密室、現金強奪、そして出生の秘密。

貫井徳郎が贈る4つの驚愕短編集。

貫井徳郎氏の作品は『慟哭』と『被害者は誰?』の2作品しか読んだことのない「本当にミステリマニアか?」と疑われても仕方の無い私。でも、貫井氏の得意技が驚異の大どんでん返しであることは周知の事実として認識しておりました。

この『光と影の誘惑』は貫井氏の必殺技がうまく活かされた名作だと思います。私の持論で「短編の巧い作家は良い作家」というのがあるのですが、その例をとれば貫井氏は充分に良い作家。短編の構成や落し方が東野圭吾氏に近いと感じるのは私だけでしょうか?

4つの短編の中で最も私の好みなのは「我が母の教えたまいし歌」です。大どんでん返しの内容については早い段階で看破することが可能ですが、そこへの持って行き方や描かれ方が私の好み。

純粋にひっかかったのは表題作「光と影の誘惑」でしょうか。「あれ?」と思わせる表記がうまいこと隠されていることにブラボーと叫ばずにはいられない。ミステリではフェア・アンフェア論争が巻き起こることがままありますが、最後に「あっ!」と思わせてくれれば、それだけで私はフェアだと思っております。アンフェアなのは最後に「はっ?」と思わせる作品のことです。

貫井氏の代表作はデビュー作『慟哭』を除けば「症候群シリーズ」ということになるのでしょうか?これから自他共に認めるミステリマニアとなるためにも、貫井氏の「症候群シリーズ」に挑戦することに致します。他にもオススメがあれば是非ご紹介くださいませ。

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