■恩田陸

2007/03/29

『チョコレートコスモス』 恩田陸

チョコレートコスモス Book チョコレートコスモス

著者:恩田 陸
販売元:毎日新聞社
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舞台の上には魔物が住んでいる。

その魔物に魅せられたふたりの少女。

天才と“呼ばれる”少女と天才少女。奇跡の舞台はいま幕が開く。

まさに…

恩田陸版「ガラスの仮面」!!!

「ガラスの仮面」新刊は未だか未だかと、半ば諦めの境地に陥っておりました私。いやぁ、こんなところで「ガラスの仮面」を読むことができるとはっ!(←違うから!きっと恩田氏もそんな読み方じゃ不本意だから!!)でも、読めば読むほど「ガラスの仮面」だった本作。

恩田陸氏とはちょっと距離を置こうと決めた(合わないかもしれないと思っている)私でしたが、“『チョコレートコスモス』は「ガラスの仮面」らしい”という評判を聞いていてもたってもいられなくなりました。「よ、読まねば。この作品を読まずして何を読む!」という強い意志を持って頁を捲ると…出た!北島マヤが居た!!

もうねぇ、佐々木飛鳥(主人公)という文字は北島マヤに、東響子(ライバル)という文字は姫川亜弓に自動変換されるから不思議です。私は物語を自動的に映像化して読む癖があるのですが(右脳左脳という記事に詳しい)、動く彼女たちはまるっきりマヤと亜弓さんの姿をしておりました。超、愉しかった!!!

マヤ(違う!いま自然にキーを打っていて自分でもびつくり)飛鳥の演技を始めて目の当たりにした仲間たちの反応。まさに雷に打たれたような、突風が吹き荒れたかのような、「この子は天才かもしれない」という心のざわつき。まさに月影先生がマヤを見つけたときの反応そのままです!役に入り込むときの飛鳥のつぶやき…まさにマヤの「ブツブツブツブツ」そのままじゃないですか!!そして、天才子役から天才女優へと変貌を遂げる“努力家”のライバル東響子は亜弓さんの生き写し!!!この作品を「ガラスの仮面」と呼ばずしてなんと呼ぶ!!!!

はぁ、興奮してしまいました。でも、この『チョコレートコスモス』を読んでも「ガラスの仮面」のオマージュどころかそのまんまじゃん!という不快感は感じませんでした(さっきから“そのまま”を連呼しておりますが、決して悪意を持ってのことではない)。なんでだろ?こんなに同じなのに。愛しの“紫のバラの人”が出てくる出てこないの問題ではないんだよなぁ。思わぬところで「ガラスの仮面」の新刊が読めたという感動でもない(笑)なんだか不思議。好きです『チョコレートコスモス』。

この続き、描かれるのでしょうか?すんごい読みたいすんごい読みたい。飛鳥と響子の対決がどんなものになるのか。幕が開くまでにどんな紆余曲折があるのか。ふたりはどんな風に火花を散らしあうのか。飛鳥はその最大の欠点を克服することができるのか。

なんだか、『チョコレートコスモス』のレビューになっていないような気がしますが、あらすじが知りたい方は是非「ガラスの仮面」をどうぞ。とにかくおもしろい。『夜のピクニック』に並ぶ恩田氏の代表作になりそうな予感。そして、このまま「ガラスの仮面」42巻まで徹夜一気読みを敢行してしまいそうな予感。

ガラスの仮面 (第42巻) Book ガラスの仮面 (第42巻)

著者:美内 すずえ
販売元:白泉社
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2006/10/12

『ロミオとロミオは永遠に』 恩田陸


ロミオとロミオは永遠に Book ロミオとロミオは永遠に

著者:恩田 陸
販売元:早川書房
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日本人だけが地球に居残り、膨大な産業廃棄物の処理に追われる近未来。

少年たちは将来を約束された大東京学園の卒業総代になることを夢見ていた。

しかし、大東京学園はとんでもないところで…?

SFって苦手です…。

同じFでもファンタジーのFならOKなのに。

この『ロミオとロミオは永遠に』はタイトルに惹かれて手に取ってみました。あとは表紙ね。この表紙は読了後にじっくり鑑賞するのが良いかもしれない。傑作だと思います、表紙。

さて、肝心の中身なのですが、20世紀サブカルチャーを前面に押し出したオマージュ作品の本作は読んでいて思わずにやりとしてしまう場面が幾つも。日本だけが世界から取り残され、新地球に行くことができなかったという設定も、大東京学園に入学することで将来を約束されたいという希望を持つ少年たちも良い。でも、なんでまたあんなにも少年たちに苦行を強いるのか…。

学園が少年たちにリンチとも思える指導を行うことで、脱出したい!という思いを彼らが育むというストーリーは自然だと思います。でも、読んでいて気持ちの良いものではないよね…。あの弱いものいじめを喜んで読めるほど、人間腐ってないつもりです。あの環境に耐えられないから逃げ出したい!じゃなくて、逃げ出して「成仏」したいから脱出を試みる!というプラスの方向に持ってゆけなかったのでしょうか?大東京学園そもそもの目的が生徒を「成仏」させることでさ、「成仏」しても生きてゆけるように強い精神を育む…みたいな話だったら良かったのに。それを全面に押し出さなくても良いからさ、そういう裏テーマをね。校長だけが知っているんじゃなくて。

と愚痴ってみる。でも、「成仏」の先にあった未来は希望があって、好感持てましたね。彼らがこれからの新しい日本を作る。どんな日本になるのかは…彼らもわからない。そういう夢のあるラストって好きです。

ただ、ちょっと長いよね…。

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2006/06/29

『Q&A』 恩田陸

Q&A Book Q&A

著者:恩田 陸
販売元:幻冬舎
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これからあなたに幾つか質問をします。ここで話したことが外に出ることはありません。

郊外の大型ショッピングセンターで起こった重大死傷事件の事故原因とは?

Q&Aだけで物語が進行する、恩田陸ワールド。

恩田陸氏の特徴として“読者置き去りラスト”の傾向がありますよね。最初に読んだ恩田氏の作品は『MAZE』だったのですが、「どうして謎の解決がいつの間にか二の次で、てんで違う方向に着地してしまうのだろう…」と不条理感を感じたことを昨日のように思い出しました。この『Q&A』は謎は謎のまま、そしてラストは「えっ?これで締めくくり?」とある意味驚かされる不条理が待ち受けております。

中盤までは良かったんのですがね…。物語がQ&A(つまり会話のみ)で進行してゆく形式もおもしろいものだったし、地の文無しでここまで読者に状況を把握させれ筆力には圧巻の一言なのですが、如何せん中盤から後半にかけて「えっ?」ってなもんです。あのまま事故の原因解明だけに焦点を絞っておいてくれたら。

『Q&A』は恩田作品の中ではミステリに分類されるのだと思いますが、パニック時の人間心理とかトラウマとか宗教とか、「あぁ、これはミステリではないな」という箇所に差し掛かるとどうしても頁を捲る手が遅くなってしまう自分に気付く。いや、読みとばしているから捲る手は早いのか…。とにかく、小学生の女の子にQ&Aしてゆく場面で「これは違う方向へ向かってゆくかもしれない」という予兆はありました。

当たって欲しくない予感というものは、得てして当たってしまうわけで。

着眼点とか設定とかはとても好みです。でも、やっぱりあの不条理には納得ゆかない。恩田氏の作品って、どうも好き嫌いがはっきりと分かれますよね。恩田氏の作品もこの『Q&A』で7作目。そろそろ取り捨て選択の時期がやってきたかもしれませんね…。積読本の中に『麦の海に沈む果実』が残されておりますので、選択はその後になりますでしょうか。難しいところだ。『夜のピクニック』なんかはすごく良かったし…。

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2006/06/20

『夜のピクニック』 恩田陸

夜のピクニック Book 夜のピクニック

著者:恩田 陸
販売元:新潮社
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夜を徹して全校生徒が80kmを歩く“歩行祭”が始まった。

私はあの賭けに勝つことができるのか?

私は勝つことを望んでいるのか、負けることを本当は望んでいるのではないだろうか?

青春ですねぇ。

こういうバキッと青春!という物語は大好きです。恩田氏の作品は何冊か読みましたが、いまのところこの『夜のピクニック』が一番かもしれない。前回のレビューでも同じようなことを書いた記憶がありますが…健忘症か?

恋愛のこと、友達のこと、受験のこと。なんでも楽しくて、なんでも不安で、自分がなにをしたいのかうまく掴むことができなくて。こういったもやもやした、あやふやな感情って、高校生くらいの時代が一番似合いますよね。子どもでもない、大人でもない、高校生でしかない時代。できれば高校生にもう一度戻りたいと思わせる素敵な一冊でした。

この『夜のピクニック』は夜を徹して80kmをただただ歩くという“歩行祭”の出来事が描かれています。もし、高校時代にこんなイベントが修学旅行の代わりにあるなんてことになったら、私は暴動を起こしたかもしれない。でも、実際にやらねばならなくなったら、絶対に楽しい一夜になるという自信があります。修学旅行の夜が一日ずーっと続いているようなものでしょ?進んでは絶対にやらないけれど、やってみても良いかな?と思わせる不思議な魅力を持つ“歩行祭”。普段は無意識下にある事柄が、きっと素敵に見えてくるだろうな。

登場する高校生たちがまた素敵で。実際に私が高校生だったころはもっともっと子どもで、あんなに仲間を大切にしていなかったかもしれない。今になって一番付き合いが続いているのは高校のときの仲間たちなのだけれど、この『夜のピクニック』に登場する彼らのような連帯感は高校時代には感じていなかったはず。皆が皆を思い合っていて。もちろん秘密を抱えるふたりの主人公を筆頭に。彼らのような互いを尊敬し合っていて、こいつといっしょにゴールを迎えたいと思える仲間。本当に良いものですね。

読了後、本当に清々しい感情が沸き起こりました。本屋大賞受賞も手放しで頷ける一冊。

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2006/05/30

『図書室の海』 恩田陸

図書室の海 Book 図書室の海

著者:恩田 陸
販売元:新潮社
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Mystery、Horror、Science Fiction…

恩田陸のジャンルを越えた10の罠がここに。

『六番目の小夜子』番外編を含むとっておきの短編集。

恩田氏の作品を読むなら短編集の方が好みであることをようやく自覚致しました。

恩田氏の作品って、どれもニュアンスで描かれているじゃないですか?(あぁ、この「じゃないですか?」口調を死ぬほど嫌悪しているのに。使ってしまう罠)明確に「こうです!こうなんです!」と主張する結末を持たない=読者に結末を委ねる姿勢。この姿勢が本格ミステリをこよなく愛す私にはノックアウト気味だったのですが、短編だとすんなり受入れられる自分がここに居ました。

短編って基よりニュアンス重視というか、文字制限を受け入れざるを得ない戦場で戦っているため、読者の想像力に期待する部分が多い。それを念頭に置いて読むため、曖昧なまま物語が終結しても、憤りとか不安とか感じないのですよね。あぁ、こういう雰囲気の作品も良いね、で納得できる。

長編だと「ここまで読ませといてそれかい!」という憤慨を覚えやすい。本格ミステリ中心で生きて来た私の読書人生がそう思わせることは判っていても、憤ってしまう未成熟な私。駄目な子ね…。

というわけで、まだ数冊しか読んでいない恩田氏の作品の中でも『図書室の海』はお気に入りの一冊。ミステリよりもホラー作品の方が好みの作品が多かった。一番好きなのは「茶色の小壜」でしょうか。『夜のピクニック』を読まなきゃ!という気持ちにさせるという意味では「ピクニックの準備」も好きです。

あとは表題作「図書室の海」を読んでいて感じたのが、「あぁ、私は関根秋くんがかなりお気に入りだったんだなぁ」ということ。関根姉が主人公だというだけでどきどきしながら読み進めました。いつか秋くんが登場するんじゃないかって。駄目な子…。

恩田陸氏初心者にはとっかかりとして適した一冊ではないかと思います。これからどんな恩田作品を読めば良いかわかる一冊。

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2006/05/29

『三月は深き紅の淵を』 恩田陸

三月は深き紅の淵を Book 三月は深き紅の淵を

著者:恩田 陸
販売元:講談社
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「その本はたった一人にだけ、たった一晩だけしか他人に貸してはなりません」

そんなルールと幻想的な内容だけが伝説化され、存在の有無も確認できない『三月は深き紅の淵を』

一冊の本にまつわる4つの物語。

帯に惹かれて読み始めました『三月は深き紅の淵を』。

本書の中で奇しくも恩田陸氏ご本人が語られていることですが「小説が六割、タイトルが四割で小説全体を決定するとも言われている」この言葉は真だと思います。ちょっと付け加えるならば「小説が五割、タイトルが四割、帯が一割で小説全体を決定するとも言われている」。小説なんて手に取ってもらえるかどうかに成功の半分以上がかかっているといっても過言じゃない。読んでもらえなければ小説として存在しているのかどうかも定かではないのだから。

この『三月は深き紅の淵を』はその五割を有効に利用した一冊だと思います。なんとなく気になってしまうタイトルに、ぐっと引き寄せる帯。

内容については第一章「待っている人々」第二章「出雲夜想曲」のふたつが私のお気に入りです。ベストは第二章。女編集者がああでもないこうでもない云いながら、『三月は深き紅の淵を』の謎の作者を追いかけるという、れっきとしたミステリ。伏線の張り方もうまくて、恩田氏のこのテイストの作品をもっと読みたいと思わせる一作。第一章についてはある意味バカミスのユーモアを凝らした一作。こんな催しなら私も参加してみたい。現在の会社に提出したエントリーシートには「趣味:読書」としっかり記入したから、いつかお呼びがかかるかもしれないわね。

その『三月は深き紅の淵を』についてはうまく感想を述べられないのですが、幻想的な雰囲気作りがうまく作用していたと思います。ここまでタイプの違う4つの短編を描ききることのできる恩田陸氏って何者?といった感じ。でも、むさぼるように読むほど良かったかと聞かれると…。

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2006/05/16

『ドミノ』 恩田陸

ドミノ Book ドミノ

著者:恩田 陸
販売元:角川書店
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28人のマトリクスが東京駅に集結。

倒れ始めたドミノはもう、誰にも止められない!!

恩田陸にも手を出しておかなきゃ、読書マニアは語れないよね…ということで、これまで倦厭気味だった恩田陸氏に積極的に挑戦しているところでございます。

『ドミノ』は巻頭の人物紹介表に惹かれて読み始めました。28人もの登場人物を読み分けられるか?(書き分けられるか?)といぶかしんだものですが、そこは女王・恩田陸。そんな心配はご無用でございました。

端的に感想を述べると…「で?」。映画化したらどびっきりのエンターテイメント作品になるであろうこの作品。でもね、読書なの。倒れだしたら止まらないドミノ感が読書というツールでは発揮しきれません。

読書というのはエンターテイメントであるのと同時に、感情移入の場だと私は考えております。『ドミノ』は28人もの人間が登場するために、状況説明や情景説明に多くの頁を裂かなくてはなりません。その分、ひとりひとりの内面に入り込めない。誰に主軸を置いて感情移入したら良いのかわからないのです。萌えキャラが居ないっていうやつですか?

まぁ、くるくる廻る地球の上では誰もが主役であり、誰もが主役ではない。数十万億のベクトルがてんでバラバラの方向を向き、そのベクトルの中でなんらかの渦が出来あがってゆくものですが、読書の世界の中でもそれを感じさせられるのはちょっと寂しいではないですか。

エンターテイメントとしては一流ですので、是非とも映画化・映像化してもらいたい一作でございます。

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2006/05/03

『六番目の小夜子』 恩田陸

六番目の小夜子 Book 六番目の小夜子

著者:恩田 陸
販売元:新潮社
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3年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が見えざる手によって選ばれる。

今年は「六番目のサヨコ」が選ばれる年。

サヨコ伝承と、淡い青春時代を綴った恩田陸の代表作。

いまや宮部みゆき氏と肩を並べる大女流作家の恩田陸氏ですが、実は恩田氏の作品を読むのはこれが2作目です。1作目が『MAZE』だったのですが、あの不条理ラストに納得がゆかずに避けておりました。今回再チャレンジしようと思ったのは半年くらい前に『六番目の小夜子』のドラマ再放送を見かけて、これだけ有名な作品なのに読んでないとは読書家の名が廃る!と思ったからです。あとは山田孝之くんが若くて可愛かったからです…。

さて、ドラマでは舞台は中学校でしたが、原作の舞台は高校なのですね。高3独特の受験を控えた微妙な距離間とサヨコ登場の違和感がうまいことマッチしていて、良かったです。中学生にサヨコをやらせるのは荷が重過ぎると思うよ…。

しかし、ドラマは随分と豪華キャスティングですこと(ドラマ版公式HP)。鈴木杏ちゃんに山田孝之くん、栗山千秋ちゃん(の小夜子はまさにはまり役だと思います)に勝地涼くんまで。鈴木杏ちゃんの役はドラマオリジナルのようですし、山田孝之くんの設定も原作とは違っちゃってますね。原作の関根秋は私のド好みです。

肝心の原作感想ですが、本作も『MAZE』同様、ラストに消化不良感が否めません。これはミステリ好きの私の趣向に起因するものなのでしょうが、謎が謎のまま残されることが苦手。いや、読者にとっての謎はきちんと解明されているのですが、登場人物たちがサヨコ伝承を謎のまま残し、未来永劫続けて行くというホラーさにそら恐ろしいものを感じます。ドラマでは杏ちゃんが○○をこれでもか!と言わんばかりに問い詰めていたように記憶しておりますが、そちらの方がしっくりくるというものです。

恩田氏の作品はまだまだ2作目で、全く未知の領域と言わざるを得ませんが、すべての作品がこの調子ってことは…ありませんよね?皆様のオススメ恩田作品があれば是非教えてくださいませ。出来れば不条理ホラーではなく、快刀乱麻に謎を解く!みたいな作品を是非。よろしくお願いいたします。

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