■氷川透

2016/06/01

『密室ロジック』 氷川透

ブログ開設前に読了した作品を鋭意再読中。氷川透シリーズ第4弾です。

タイトル通り密室ものです。氷川透は「論理がつくり出す密室」と表現していましたが、簡単に言えば3つの脱出経路のすべてに常に誰かがいたという状況です。その3つの脱出経路(A、B、C)がそれぞれどんな理由・状態で脱出不可能だったのかを説明してくれるのが詩緒里パート。そして、論理的かつまわりくどく、さらにはねちっこく(褒め言葉)密室を突き崩して行くのが氷川透パートになります。

とりあえずやっぱり氷川透シリーズ好きだなあと思ったわけであります。正直、事件が起こるまでの各人パートは読みづらい。179Pという薄い本のうち、そのほとんどが誰がどこにいてなにをしていたかが書いてあるだけ。しかも動機なんて知ったことではない。むしろ実際に犯行を行ったのが氷川透が指摘したその人なのかも作中では明らかにされないのです。怒る人は怒る。壁本かもしれない。でも、私は好きなんだよなあ。

(ネタバレします)結果的に某地点の某さんがその場を離れたから脱出できたわけですが、もしその場で電話をかけていたら物語はどう動いたんでしょうね。犯人の指摘には影響を与えませんが(某さんがその場を離れるはずだと思い込んでいた人物が犯人であり、それは1人だけというのが氷川透の根拠なので)そこだけが物語が都合よく動いた感があったので少し気になりました。あと冴子の不倫相手は誰なの。やっぱり気になる。

氷川透(作者)がtwitterからも姿を消して3年ですが、私はまだ『インサイド・アウト』を諦めていないのでどこかの出版社さまどうぞよろしくお願いします。

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2015/08/25

『人魚とミノタウロス』 氷川透

氷川透再読まつり開催中。

氷川透の高校時代の親友、生田瞬を訪ねた病院内で焼死体が発見された。死体が発見された面接室を使用していたのは生田だが、身元がわからない死体なら別人を疑わなければ本格じゃない。そんなメタな思想に隠して、親友の生存を信じて事件の謎を解くことにした氷川。そして、病院内で第2の事件が発生。果たしてふたつの事件に関係はあるのか?という1冊。

可能性を蓋然性で否定せずテーブルに残しておき、論理で木っ端微塵にしていく様は見事です。ただ、氷川の推理が見事なだけに、犯行が杜撰で偶然に頼り過ぎ、まさに小説的な出来過ぎな展開なのが気になります。受付の監視が厳しいという描写を何度も入れておきながら、肝心なところ(犯人の出入り)は見てないってどういうことなの。消毒アルコールをかけられ、火を付けられた○○が声を出せなかったのはまだしも、部屋を出て助けを求めなかったのは何故なの。そもそも、犯人の行動が素早過ぎる。1秒も無駄にできない…にも関わらずトイレには行く。本来ならば証拠が山ほど残りそうな事件に見えて仕様がないのです。

でも、論理は本当に見事。これだけは自信を持って言える。

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2015/08/18

『最後から二番めの真実』 氷川透

氷川透の名を目にする機会があったので再読。12年ぶり。

後期クイーン問題に踏み込んだ意欲作として紹介するのが相応しいか。後期クイーン問題とは「作中で探偵が最終的に提示した解決が、本当に真の解決かどうか作中では証明できない」というこれまでこの本を読んできた時間はなんだったんじゃいという問題。メタ的に作者が「読者への挑戦」としてそれを保証することはできるけれど、その対象はあくまで読者であり、探偵に対して「すべての情報は出そろったよ。真相に到達できるからね」と教えてあげる術はないという問題。個人的にはそんなこと考えながらの読書は楽しいのだろうかという問題。

とりあえず、作中の氷川透が信じる解は正直あまり美しくない。バタバタしていて無理もある。他者の協力が必須な上、ひとりの人間を殺害するために関係ないふたりの人間まで…というのは全く理解できない。リスクがただただ増大している。けれど、この作品における真実の名探偵である氷川透の導き出した解が、この作品においては真実なのでしょう。例え『最後から二番めの真実』の方が美しくとも。

本格を書こうとした本格ですよね。大好きです。作者である氷川透がtwitterからも姿を消し、消息不明なのですがいま何をしているのでしょうか。新作読みたい。書きあげたはずの『インサイドアウト』はどうなったの。読みたい。

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2008/09/25

『密室は眠れないパズル』 氷川透

密室は眠れないパズル Book 密室は眠れないパズル

著者:氷川 透
販売元:原書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

密室

それは本格推理小説に欠かすことのできないファクター

氷川透が密室講義に挑む

やっぱり好きだわ氷川透

本格推理小説という分野に真っ向勝負を挑んでいる感じが好きです。最近そのお姿をさぱーり見かけませんが…筆を置いてしまったのでしょうか?『各務原氏の逆説』シリーズ第3弾が直前でぽしゃってからお見かけしませんが。HPも2007年から更新ありませんが。

本作も推理作家志望の青年・氷川透を探偵役に据えたガッチガチの本格。ですが、氷川透が若いので、ロジックも比較的若めにくどさを押さえたすっきり設計となっております(笑)まぁ、事件を解決に導くのは氷川透ですが、本作の探偵役は氷川透じゃないので。探偵役まで氷川透にやらせたら、この倍くらいの分量になったのではないですか?だって、氷川透ってばああでもないこうでもないと理論をこねくり回して読者を置いてけ堀にするのが得意だから(笑)

そんなんだから女の子にもてないんですよ(爆笑)本作では吊り橋効果か、登場する女の子とお近づきになれたようですが。

それよりもなによりも密室!!本作では真相に辿り着くまでのダミー回答が複数個用意されておりまして、ミステリスキー垂涎モノです。しかも、どれもレベル高い。個人的には(探偵役が提示した)最初の真相もなかなか好きです。7年ぶりの再読で、すっかり当然のように真相を忘れていた私が、最初に自力で辿り着いた真相がまさにこれでした。だから“なかなか好き”なのかもしれませんが。

そうそう、読書中にいくつか思い出したネタ(真相?)があるのですが、最後まで描かれなかったネタは、本作と主題を同じくする『密室ロジック』で描かれたネタなんでしょうかね?本作と『密室ロジック』は激似だったように記憶しているのですが…所詮私の脳だからな。きっと気のせいでしょう気のせいでありたい。

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2006/07/16

『真っ暗な夜明け』 氷川透

かつてのバンド仲間との久々の再会、そして殺人。

推理小説家志望の氷川透は名探偵としての素質を開花させることとなるのか?

第15回メフィスト賞受賞作。

氷川透氏のデビュー作にして、否文庫化の絶版です。

どうしてこんなにおもしろいのに?

たまに「くどくどと、とにかくうざったらしい文章が気に入らない」というレビューを見かけますが、私は氷川透のわかりにくい冗談が結構好きです。如何せん、下ネタ多し?

氷川透氏の作品はすべて読んでおりますが、この『真っ暗な夜明け』と『最後から二番目の真実』が好きですね。初期作品はこれでもか!これでもか!という程、ロジック尽くし。氷川透氏(作者)自身が登場人物の氷川透に云わせた言葉(嗚呼、判り辛い!敬称の氏が付いている方が作者としての氷川透です)を引用すれば、「でもぼくは、あらゆる可能性を――完全にありえない可能性を除くすべての可能性を、パラノイアックに追求するから。しまいには、それが自己目的化してしまうこともなきにしもあらずだけど――」この台詞にすべてが凝縮されているといっても過言じゃない。

この台詞を文字通り受け取っても良し、婉曲させて「もう、どうしてこうくどくどくどくど!もっと簡潔に云えんのかい!」と憤っても良し。その憤りこそ、ロジックの本質。「こうでしょ?こうでしょ?ここはこうでしょ?じゃあ、こうするしかないね。んじゃ、君が犯人♪」のように、2時間ドラマのラストで断崖絶壁に犯人を追い詰めるように、逃げ道を塞いでゆくことこそロジックの本質。基本的に嫌みったらしい名探偵に似合います。

ここからネタバレします。ミステリでネタバレ書くの久しぶりだわ!

この『真っ暗な夜明け』では凶器として使われたブロンズ像の台座が、いつ犯人の手に渡ったか?を看破すれば、自然と犯人がわかるように描かれております。

ただ、氷川透が云ったように、あの日ふたつの殺意が同時に存在していた偶然については、素直に納得できないのだけれど。これが“どんなに有り得なさそうな結末でも、他のすべての可能性を削除したあとに残ったものは真実”ってやつですか?偶然がミステリに介入してくると、どうしても嫌悪的な反応が出てしまいますの。

でも、この『真っ暗な夜明け』がロジックを駆使した名作であるとの結論は変わりません。5月に発売予定だった氷川氏の新作は一体いつに延期になったのやら。頼みます、氷川氏!

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2006/05/20

『各務原氏の逆説』 氷川透

各務原氏の逆説 Book 各務原氏の逆説

著者:氷川 透
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

困ったときにぼくが頼るのは、各務原氏である。

各務原氏はぼくらの高校の用務員であり、カウンセラーでもある。

殺人事件が起こっても、困ったぼくが行くのは各務原氏のところなんだ。

氷川透氏の新刊『各務原氏の逆説3(仮)』がようやく発売の運びとなりましたので、シリーズ第1作目を再読してみることに致しました。

いやぁ、この「各務原氏シリーズ」はロジックが弱いね!私は「氷川透シリーズ」のこれでもかっ!と言わんばかりのくどいロジックが好きなので、ライトに書き下ろされた「各務原氏シリーズ」では満足ゆきません。

氷川透氏は『真っ暗な夜明け』第15回メフィスト賞を受賞しデビュー。論理・ロジックを駆使した若手本格ミステリ作家という位置付けなのですが…最近の作品にはデビュー当初のようなロジックが見られなくなっております。この「各務原氏シリーズ」も然り、『逆さに咲いた薔薇』然り、どうにも満足できない。ライトにしよう、ライトで行こうという策略が見え隠れ致します。どうかデビュー当時の作風に戻っていただきたい…という切なる願い。

この『各務原氏の逆説』の舞台は軽音楽部。氷川氏自らがジャズをやっていたということもあって、ジャズに対する熱い想いには深いものがあります。「氷川透シリーズ」の氷川透も同様。氷川氏の作品を読むときには、意図的にジャズをBGMにするようにしております。だって読んでいる最中に必ず聞きたくなるのだもの。私は楽器の演奏はからっきしできませんが、セッションって本当に気持ち良いんだろうなぁと、氷川氏の作品を読むと感じます。羨ましい。氷川氏のピアノを是非とも聴いてみたいと思います。

さて、ここから『各務原氏の逆説』のトリック(?)に触れます。ご注意ください。

えっと、キャラクタを誤認させることの意味がさっぱりわかりません!

最初と最後に登場する桑折亮くん。彼は=氷川透らしいのですが…だからどうした?新手のファンサービスでしょうか?登場人物表で(重要な人物が一人だけ抜けていますのでご注意ください)なんて注意書きがあって、抜けているのは物語の語り手である主人公なのですが、彼を意図的に桑折亮であると誤認させて何のメリットがあるのでしょうか?物語とは全く関係の無いところで叙述トリックをかましてどうするのでしょうか?斬新すぎて開いた口が塞がりません。深い意味があったとは思えない…。しかも『見えない人影-各務原氏の逆説』では桑折くんが常設キャラクタになってたりするし。

チェスタトンばりの逆説の紹介文を読むとなんだか涙が出てきます…。

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