2008年5月10日 (土)

『首無の如き祟るもの』 三津田信三

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ) Book 首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

著者:三津田 信三
販売元:原書房
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大好きな長寿郎様のお役に立ちたくて

長寿郎様をお守りしようと思って

でも、僕は首無様から長寿郎様をお守りすることはできなかったんだ

間違いなく刀城言耶シリーズのベストですね!

と断言しても良いものか。この作品のために『厭魅の如き憑くもの』『凶鳥の如き忌むもの』を読んだ身としては、どうも釈然としないものが残るのですが…とにかくミステリとして最高の出来でした『首無の如き祟るもの』。

山間の邑。邑を支配するのは一守、二守、三守の連合による秘守家。これまで微妙な中庸を保ってきた三家連合に空けられた風穴。それは、一守家長男にして次期当主たる長寿郎の首無死体。花嫁候補の首無死体までもが長寿郎の死を彩る中、秘守家では次期当主を指名するべく喧々轟々の争いが。すべては邑を秘守家とは別の方法で、呪いで、支配してきた首無様の仕業なのか?それとも10年前井戸に落ちて命を落とした長寿郎の双子の妹・妃女子の怨念か?

と、作品紹介してみましたが、最後に「その謎を解くは…刀城言耶」と書けないのが哀しいところです。というわけで、ここからネタバレレビューと相成ります。真相をズラズラ並べ立てますので、未読の方は間違ってもスクロールされませんように。是非とも自分の手で眼で真相まで辿り着いて欲しい名作ですから!

ラストに登場したあの男、絶対ヨキ坊ですよね!

あの男が刀城言耶でないと云い切る根拠は特にありません。強いて云うならば「そうであってくれた方が面白いから」でしかない。でも、あのラストを「罪を犯した者同士が、自分の手がどのくらい汚れているかを告白する場」として定義すると、ストンと落ちてくるものがあるんですよね。

ミステリに幾度と無く登場してきた“首無死体の問題”に民俗学の仰々しさをミックスして、とんてもない新解釈が生まれたのも素晴らしいと思います。“首無死体”の王道といえば、人物の入れ替え。本作で為されている行為も人物の入れ替えに違いないのですが…

まさか10年の時を越えて行われた入れ替え

だと、誰が予想できたでしょうか?長寿郎(男)とか長寿郎(女)という表記は、常時であるならばちょっと笑っちゃうような表記なのですが、読んでいるときはもう没頭しちゃって興奮しちゃって、全く気になりませんでした。この赤子入れ替えの真相が男(探偵役)から示されたときにパーッと視界が拓けた感覚が未だに忘れられません。どんなに入り組んで絡み合った謎でも、たったひとつのポイントを明かしてやるだけで、クリアになる。絶対に解けない紐を前にしていたのに、手品師がハンカチーフを掛けた次の瞬間には、それが解けてしまっていた。そんな類の驚きです。

しかも、入れ替えは一度だけではありませんからね。長寿郎(男)と長寿郎(女)、長寿郎(女)と毬子、毬子と江川蘭子、江川蘭子と高屋敷妙子、そして刀城言耶とヨキ坊。とことん入れ替えに拘った、渾身の一作。これだけ入れ替えに拘ったんだから「やっぱりラストの男はヨキ坊じゃなきゃ!」とたった今、改めて思いました。

とにかく、ミステリとして上質上級な一冊。民俗学部分にいつもなら苦痛を感じるのですが(呪われる!)本作は事件事件の連続で、そこまで気になりませんでしたし。ミステリ8:民俗学2といったところですか?そして、三津田氏の新刊は『山魔の如き嗤うもの』…中盤で友情出演した刀城言耶が向かった邑で起こった事件ですよね?(未確認です)ついにやんごとなき神社の跡取り・阿武隈川先輩がメインキャラとして登場するのかと思うとワクワクです。

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2008年4月 5日 (土)

『凶鳥の如き忌むもの』 三津田信三

凶鳥の如き忌むもの (講談社ノベルス) Book 凶鳥の如き忌むもの (講談社ノベルス)

著者:三津田 信三
販売元:講談社
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怪異譚を愛して已まない小説家・刀城言耶

今日も怪異を求めて東奔西走

そして出遭った怪異は…人間消失

「更新は1週間ほど滞ります」と宣言しておきながら、2週間滞らせていただきました当ブロ愚。この2週間のうちに関東方面に2回遠征に行ったり、友人夫婦にこのブロ愚の存在がバレてみたり、風邪を召してみたりと色々遭ったわけです。

さて、再開第1弾レビューは厭魅の如き憑くものに続く刀城言耶シリーズ第3弾でございます…えっ?第3弾!?

『九つ岩石塔殺人事件』ってなんですかっ!?

迷宮社なんて、いかにも胡散臭い出版社から発行されておりますが(実存していたらすみません)…これはどんなトリックに分類したら良いのだろう。叙述トリック?(笑)

そんなわけで刀城言耶シリーズ第3弾『凶鳥の如き忌むもの』は、瀬戸内海に浮かぶ嵐の小島を舞台に描かれる人間消失モノミステリでございます。『厭魅の如き~』では民俗学&ミステリのタッグにKOを赦した私ですが、本作はミステリ色が強くてグイグイ読めました。人間消失の謎をカテゴライズして、ひとつひとつ潰してゆく過程なんてゾクゾクしましたね…本格だ、と。

「全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる」とは愛しのホームズ様の弁ですが、本作はそれに真正面から挑んだ作品ではなかろうかと。さもなくば、

あんなバカミス的結末は提示できません

あれ?私ってば、またもや毒吐いた?とにかく、あのカテゴライズ作業がなければ、あのトンデモ結末は許容できなかったと思います。あの工程が有ったからこそ許容できるぎりっぎりのラインで落としたかな、と。いや、どう読んだって許容できない方も多かろうと思いますが…。

とにかく、伏線がしっかり張られていて読ませる作品に出来上がっておりました。個人的には『厭魅の如き~』より好きですね。ホラー&民俗学がタッグを組むと、途端に睡魔にやられる体質に生まれてしまったものですから。

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2007年12月18日 (火)

『厭魅の如き憑くもの』 三津田信三

厭魅の如き憑くもの (ミステリー・リーグ) Book 厭魅の如き憑くもの (ミステリー・リーグ)

著者:三津田 信三
販売元:原書房
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憑き物筋の家系と非憑き物筋の家系。

神隠しに遭い消えた子供とカカシ様。

ミステリと民俗学を融合させた刀城言耶シリーズ第一弾。

以前から気になってはいたのですが、“ミステリと民俗学の融合モノは疲れる”という経験則を打ち破るほどの魅力を感じることができずに敬遠してきた刀城言耶シリーズ。ですが「このミス!2008」の5位に『首無の如き祟るもの』がランクインしているのを見て、比喩でなく重い腰を上げた次第でございます。

結論から申し上げますと…

やっぱりミステリと民俗学の融合モノは疲れる

ミステリと民俗学の組み合わせは非常に相性が良く、禍々しい雰囲気を醸し出すことには成功しておるのですが…如何せん冗長過ぎる。斜め読み、万歳。カカシ様と邑の関係を読者に理解させる重要性はきちんと理解したつもりなのですが、ここまで同じ話を繰り返されるとさすがに飽きます。言葉や角度を変えただけで、結局どれも同じ話なんだもの。まぁ、それでも某Q○Dシリーズよりは融合が巧くいっているように感じました。

ついでにもうひとつミステリ読み人間として忌憚無い意見を申し上げますならば、探偵役たる刀城言耶が犯人を指摘する箇所をもう少し丁寧に描いて欲しかった。あの少ない頁では仕掛けられた“どんでん返しに次ぐどんでん返し”の魅力が半減。残り頁を確認した上で、「えっ?この小説、ちゃんと犯人指摘して終わるんでしょうね?」と要らん心配をしてしまいました。刀城言耶が最終的に指摘した犯人の数は4人。どれも説得力ある指摘にも関わらず、当て推量戦法に見えてしまったのは、その描写(頁数)の少なさに原因があると思います。

個人的には黒子=○太郎説に一番グッときました。○三郎が幼い頃に経験した神隠しの伏線が非常に美しく回収されていたと思う。ケッキョクチガッタンダケドネ。その所為で神隠し伏線が宙に浮いてしまった感が残念。一旦綺麗に回収された伏線を捨て、もう一度回収し直すのには高度なテクニックが必要かと。

まぁ、本作の最大の魅力は叙述トリックにあるのかもしれませんが。メタミステリ的要素を含んだ本作。「はじめに」を丁寧に読んだ読者こそ騙されるという罠。けれど、あの少ない残り頁で「実はこんな叙述トリックを仕掛けてたんですよ。貴方は気付きました?」と言わんばかりの解説(?)を読まされたのには閉口。ミステリ読み人間は皆まで言ってくれなくとも、気になったら自分で回収しにゆきますから。妙なところで親切心を披露してくれなくても結構。それなら犯人指摘をもっと丁寧に描いてくださいよ。

なぜか酷評レビューとなった本作ですが、個人的には好印象好評価なんでございますのよ。これは『首無の如き祟るもの』に期待大。その前に『凶鳥の如き忌むもの』に取り組むのをお忘れなく!

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