■三津田信三

2013/03/14

『幽女の如き怨むもの』 三津田信三

読み始めたら止まらず、トイレに行くのに難儀したこのミス2013第4位『幽女の如き怨むもの』。物語の9割はきっとホラー、でも残りの1割、第四部で全てが現実のものとなるさすが。

舞台はタイトルからもお察し、遊女…花魁が下働きを行う遊郭。戦前、戦中、戦後の三時代で起こった不可解な3×3=9件の連続身投げ事件。花魁たちを誘う「何か」をいつしか人は幽女と呼び、恐れ、不思議を不思議として処理する。けれど、その不思議を説明可能な現実にしてしまうのが刀城言耶なわけです。

物語の9割はホラーで遊郭(遊女)の歴史みたいなものなので、興味のない人にはキツイかもしれない1冊。ただ、伏線がさりげない形であちこちに張り巡らされているので頑張って読んでいただきたい。無駄な描写はありません。あれもこれもそれも伏線。そしてその伏線を「どうだ!」ではなく「さらっと」明かす姿勢が潔いです。さらっと。

あっ、でも、個人的に9件の身投げ事件のうち2件目だけはちょっと不合理というか強引な気がするかな。

結末は相変わらず救われているようで救われていない感じ。犯人の人生はどこで狂ってしまったのか…は聞くまでもない質問ですが、しあわせな時が少しでもあったように祈るだけです。

そういえば、刀城言耶シリーズお決まりの謎列挙がありませんでしたね。少し寂しい。

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2013/03/02

『水魑の如き沈むもの』 三津田信三

水魑様信仰の残る山中の村、雨乞いの儀式の最中、湖に浮かぶ屋形船の上で殺された神男。衆人環視という視覚の密室と続く神男連続殺人の謎に挑むのは刀城言耶…なんてあらずじになるのかしら『水魑の如き沈むもの』。

刀城言耶シリーズはまずその(物理的な)厚さに驚かされるわけですが、本作は厚さなんて気にならないくらい読み易いです。
水魑様を祀る水利組合が仕切る閉鎖的な村なんて特殊な舞台もなんのその、登場するキャラクタも多いですが物語が自然と頭に入ってくる。さすが。

そして、次々と事件が起こるわけですが…最後には刀城言耶による疑問点の箇条書きがありますからね!これまでの振り返りができるだけでなく、ミステリ好きのテンションを上げてくれるという素敵効果付き。疑問点の数が多ければ多いほど「これが今から解決されるわけか…!」と嬉しくなっちゃいます。

しかも本作、探偵が皆を集めてさてと言い…を始めてから真相が二転三転どころか四転もするわけで。この残りページでもう一回ひっくり返すか!?と驚きが隠せません。そして終章…基本的にミステリにおいて犯人は捕まるべきであると思っている私ですが、本作は動機が動機だけにたった2ページの終章に救われたものです。

ところで、刀城言耶の父親・冬城牙城の名前が出てくるんですけど…まったく記憶にないのですがどんな因縁があったんでしたっけね?これは過去シリーズ再読の必要ありかね?

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2008/12/27

『メフィスト 2009年1月号』

メフィスト 2009年 01月号 [雑誌] Book メフィスト 2009年 01月号 [雑誌]

販売元:講談社
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久しぶりにメフィスト買いました。西尾維新氏の『きみとぼくの壊れた世界』もんだい編が掲載された号を買ったのが最後かと思いますので…何年ぶりでしょうか少なくとも5年は経ってますね月日の流れるスピードが異常だ歳ですか?では、そんな浅いお付き合いしかしていないメフィストを今回購入した契機ですが、

40代のタタル&熊を拝みたかったからに相違ありません

でも、それだけじゃない。今回のメフィストは私のスキスキ作家さんが多くてにんまり。以下、連載以外で私が読了した作品(しかも読んだ順)のレビューです。

「QED~flumen~ 出雲大遷宮」 高田崇史
残念ながらタタルの嫁情報は入手できませんでしたが、それでもいろいろと無視できない情報が散りばめられておりました本作。まず、タタルたちが“あの事件”と呼ぶ9年前の事件。どうやらこの事件がQEDの終焉となる模様ですが…舞台は出雲ですか(出雲に足を踏み入れることはないようですが)なんか、ついに本丸に攻め込んだ感じですね。そして、その事件の鍵を握る(らしい)中島晴美…正直「誰それ?」状態だったのですが、『QED~flumen~ 九段坂の春』に登場した奈々の同級生だそうで。全く覚えておりませんでしたてっきりモブかと。そう思って『九段坂の春』再読中なのですが、やっぱりモブでしたし。そして、なによりもなによりも見逃せない情報が。熊、子連れ女性と結婚したんですか!?なんか熊っぽい選択ですね違和感なく受け止められました。子どもの名は「大地くん」だそうで。きっと終焉までには「大地くんの母親」も登場してくれると思うので(まさか既出ってことはないよね!?)その辺りにも注目しつつ残り3作のQEDを追いかけてゆきたいと思います。しかし、タタルってば狐憑きからは卒業したようで大人になりましたね。

「薬剤師とヤクザ医師の長い夜」 椹野道流
QEDトリビュートとして登場した本作。椹野道流氏と聞いてもピンとこなかったのですが、ミチルンと聞いて「あぁ!」高田崇史氏のエッセイでお馴染みのミチルンじゃないですか。さて、そんなミチルンの「伊月崇」と本家QEDの「桑原崇」というW崇でお送りする「薬剤師とヤクザ医師の長い夜」。タタルが若干別人ですが、トリビュートだし挿絵のタタルが異常に男前だったので成績は「優」。あの環境下で出雲大社あたりの薀蓄を語り出したら本物のタタルだったんですけれど(笑)でも、本作ではお目にかかれない漢方薬局勤務のタタルが垣間見れてやっぱり満足でした。これを契機にミチルンの作品にも手を伸ばしてみようと思います。ティーンズからだけでなく、講談社ノベルスからも「鬼籍通覧(伊月崇)シリーズ」が出ているようですし。そういえば、「薬剤師」と「ヤクザ医師」が「やくざいし」でかかってますね。いま変換してみて始めて気がつきました(駄目な仔)。

「零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係」 西尾維新
零崎シリーズラストを飾る『零崎人識の人間関係』。ノベルス化したときに一気に読むべきか…と一瞬だけ悩みましたがそれも一瞬。読んで良かった崩子ちゃん可愛いよハァハァ。勝手に『人間関係』は長編だと思っていたのですが、『零崎曲識の人間人間』と同様に短篇をいくつかまとめる形式なんですね。wikiによると「匂宮出夢との関係」「無桐伊織との関係」「零崎双識との関係」「戯言遣いとの関係」とのこと。これでふたつ目が発表されたことになるのですね。俄然「零崎双識」と「戯言遣い」が気になるところですが…どっちか書き下ろしにしないと販売戦略上マイナスでしょうから、ってそんなこと私が気にするところじゃないかそれよりもなによりも崩子ちゃん可愛いよハァハァ。「無桐伊織との関係」とは言いつつも主役は戯言遣いの抱き枕=闇口崩子ちゃんと、その存在自体が主役=哀川潤の両者かと。死神の最期の願いを叶えるべく闇口衆の拠点たる大厄島に乗り込んだ4人。4人の前に立ち塞がるは生涯無敗結晶皇帝(凄いネーミング)。「かけっこ」であり「鬼ごっこ」でもある大厄ゲームの詳細は省きますが、崩子ちゃんと伊織ちゃんの戦いは良かったですねキュンキュンします。やっぱり戯言シリーズは女の子が可愛い。女の子が涙流しながら頑張っている様を読むのは嬉しい…って私はどんな変態だ。人識の人間関係については4篇で1作だと思いますので、それはノベルス化したときにたっぷりじっくり語りたいと思います。戯言シリーズの後日談とも言える本作、はやく全部通して読みたい!

「密室殺人ゲーム2.0 Q5 三つの閂」 歌野晶午
『密室殺人ゲーム大手飛車取り』の第2弾である本作。その5問目です。前作をべた褒めしました私ですが、本作もその遊び心はそのままに出題レベルもそのままに、とにかく嬉しいはやくノベルス化して欲しいこれまでの4問も読みたい!今回のお題は雪密室。雪密室に対する登場人物たちのツッコミ(「積雪の条件が整うまで、ひたすら何年も待ちますか?中略。だったら雪の密室トリックなぞ使わず、別の方法でさっさと殺しますよ」)とか互いへの罵倒とか…あぁ、気持ち良い。殺人現場の情景も美しいですよね。処女雪に聳え立つ透明ボックス…まさに非日常的非現実的ファンタジーですよ。ボックスが自作ってところがミステリ的には残念ですが、その頑張りには涙です。前作はラストに蛇足感ありましたが、本作はどんなラストでもってゲームを終わらせるのでしょうか。それも楽しみです。

「隙魔の如き覗くもの」 三津田信三
長篇だけかと思っていたら短篇でも美味しくいただけるんですね刀城言耶シリーズ。今回の怪異は隙間から現在過去未来、心の隙間に付け入る幻を見せる隙魔。隙魔が隙間に見せるは小学校校長が鬼に追われる幻…けれど、その校長が虐殺されたと知っては?刀城言耶シリーズらしいアリバイ崩しは健在。納得のゆく結末に思わずにんまり。動機を蔑ろにし(頁数の関係やもしれませんが)殺害機会の点だけで犯人指摘するその美しさにうっとりです。

「答えのない絵本」 麻耶雄嵩
メル久しぶり!というか麻耶雄嵩氏久しぶり!新刊というものをここ数年拝見しておりませんが…久しぶりの新作がこんなバカミスだなんて(笑)ロジックではこうなるのかもしれませんが、こんなのが認められるわけないじゃないですか!?衝撃のラストへあなたを誘うって本当だよ!是非読んでください。ラスト直前まではバッキバキの本格です。可能ならばラスト直前で自分なりの犯人を見付け、そこでメフィストを閉じていただけたら。

「嘘つき紳士」 北山猛邦
ミステリというよりはセンチメンタル…かと思いきやなんとも後味の悪い感じ=私の好み作品きました。ハートウォーミングな結末が待っているに違いないと思っていただけに、この裏切られた感が堪らないですね。『キョーコ』はどんな気持ちであんなピュアなメールを打っていたのだろうその心の闇を覗きたい。でも、TOKYOにそんな力があるかどうかは…疑問。

「トーキョー語り」 辻村深月
新刊2冊放置してメフィスト短篇から読ませていただきましたが…やっぱり高校生くらいの女の子の心情を描くのが巧いですなぁ。なにか劇的な出来事が起こるでもなく、劇的な出来事を起こすでもなく。私たちの身にも起こりそうな起こっていたような日常を切り取っているはずなのに、なんとなくキラキラ。本作には一美というキャラクタが登場するのですが、まぁ居ますねこういう悪い女。少なくとも私の中には居る。そして、そんな一美(私)にしてみたら主人公のさくらは鼻につきますよ。篤志の「イライラする」件はまさに。だけど、そこはトーキョーじゃないから知らないふりは出来ないから、だからいっしょに過ごすしかないの。そして、せっかくいっしょの時を過ごすなら、楽しいほうが良いに決まってるじゃない。そんな当たり前のことを当たり前に描いた作品だと思う。だから、特に特質すべき点はありませんの。

「Aカップの男たち」 倉知淳
倉知淳氏久しぶり!と思ったらそんなバカ作品とは(笑)最近男性用ブラジャーが話題になってますが、倉知淳氏がさっそく作品に取り入れてきました。作品は一応ミステリ風味ですが、それよりもブラジャーの件が印象強くって特に感慨はございません。それよりもゴ○ゴサイドから叱られませんか?スナイパーがブラジャーって(笑)

だんだんレビューが短くなくなるテキトーになるのはご愛嬌ということで。この他にも法月綸太郎氏のグリフィンシリーズの連載も始まったのですが…連載もの読んじゃうと次のメフィストも欲しくなるなるからなぁどうしようか悩み中。でもグリフィンシリーズはなかなか面白かったので、絶対読みたくなるんだと思います。
  

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2008/10/19

『山魔の如き嗤うもの』 三津田信三

山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ) Book 山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)

著者:三津田 信三
販売元:原書房
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忌み山に足を踏み入れたこと

それが全ての誤りで

全ての始まり

家本として読み始め、間に「ペルソ○4」を挟んだので…読了までに3週間。このままではアカン!と“汗だく合宿(読了するまでお風呂から出られない地獄の合宿)”を敢行して読み終えた本作。決して面白くなかったわけではありません。

てっきり『首無の如き祟るもの』で行き先変更したときに遭遇した事件=さすが刀城言耶!しっかり怪奇に巻き込まれてくださる!!とか褒めようと思ってたのに。阿武隈川先輩を漸く拝めると思っていたのに。

怪異の舞台は忌み山・乎山。遅い成人参りの最中、乎山に迷い込んでしまったが運の尽き。山魔に追われ辿り着いた先で出遭った怪しい家族と、その消失事件。乎山に隠された徳川埋蔵金の利権を巡り争う旧家。そして…邑に伝わる民謡になぞらえて惨殺され消えゆく人々。お一人ずつ消えて残ったのは?

なんかもう、古き良きミステリのにほいがプンプンしますね。鳥肌。もちろん刀城言耶シリーズ恒例の“怒涛の謎列挙(箇条書き)”も健在です。その量、約2枚半。

しかも、読者サービス=解決の二転三転までもが健在。そのどれもが捨てるには惜しい名解答だったりするんだから美味しい。あの少ない残頁でここまでやってくれるとは正直思っておりませんでした。残頁を確認し、「大丈夫?ちゃんと終われる?もしかしてバカミス的解決?」とか疑っちゃってすみませんでした。

登場人物の名前が似ている(旧家の一族モノでよく起こる現象)ので、私のようなトリアタマかつ読了まで3週間みたいな人間は、最後まで「えっ?それ長男?次男?甥っ子??」とかやる羽目になりましたが…まぁご愛嬌ということで。

シリーズが進むにつれ面白くなってゆく本作。一家消失の解答は秀逸でございました。次も読む、絶対。

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2008/05/10

『首無の如き祟るもの』 三津田信三

首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ) Book 首無の如き祟るもの (ミステリー・リーグ)

著者:三津田 信三
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大好きな長寿郎様のお役に立ちたくて

長寿郎様をお守りしようと思って

でも、僕は首無様から長寿郎様をお守りすることはできなかったんだ

間違いなく刀城言耶シリーズのベストですね!

と断言しても良いものか。この作品のために『厭魅の如き憑くもの』『凶鳥の如き忌むもの』を読んだ身としては、どうも釈然としないものが残るのですが…とにかくミステリとして最高の出来でした『首無の如き祟るもの』。

山間の邑。邑を支配するのは一守、二守、三守の連合による秘守家。これまで微妙な中庸を保ってきた三家連合に空けられた風穴。それは、一守家長男にして次期当主たる長寿郎の首無死体。花嫁候補の首無死体までもが長寿郎の死を彩る中、秘守家では次期当主を指名するべく喧々轟々の争いが。すべては邑を秘守家とは別の方法で、呪いで、支配してきた首無様の仕業なのか?それとも10年前井戸に落ちて命を落とした長寿郎の双子の妹・妃女子の怨念か?

と、作品紹介してみましたが、最後に「その謎を解くは…刀城言耶」と書けないのが哀しいところです。というわけで、ここからネタバレレビューと相成ります。真相をズラズラ並べ立てますので、未読の方は間違ってもスクロールされませんように。是非とも自分の手で眼で真相まで辿り着いて欲しい名作ですから!

ラストに登場したあの男、絶対ヨキ坊ですよね!

あの男が刀城言耶でないと云い切る根拠は特にありません。強いて云うならば「そうであってくれた方が面白いから」でしかない。でも、あのラストを「罪を犯した者同士が、自分の手がどのくらい汚れているかを告白する場」として定義すると、ストンと落ちてくるものがあるんですよね。

ミステリに幾度と無く登場してきた“首無死体の問題”に民俗学の仰々しさをミックスして、とんてもない新解釈が生まれたのも素晴らしいと思います。“首無死体”の王道といえば、人物の入れ替え。本作で為されている行為も人物の入れ替えに違いないのですが…

まさか10年の時を越えて行われた入れ替え

だと、誰が予想できたでしょうか?長寿郎(男)とか長寿郎(女)という表記は、常時であるならばちょっと笑っちゃうような表記なのですが、読んでいるときはもう没頭しちゃって興奮しちゃって、全く気になりませんでした。この赤子入れ替えの真相が男(探偵役)から示されたときにパーッと視界が拓けた感覚が未だに忘れられません。どんなに入り組んで絡み合った謎でも、たったひとつのポイントを明かしてやるだけで、クリアになる。絶対に解けない紐を前にしていたのに、手品師がハンカチーフを掛けた次の瞬間には、それが解けてしまっていた。そんな類の驚きです。

しかも、入れ替えは一度だけではありませんからね。長寿郎(男)と長寿郎(女)、長寿郎(女)と毬子、毬子と江川蘭子、江川蘭子と高屋敷妙子、そして刀城言耶とヨキ坊。とことん入れ替えに拘った、渾身の一作。これだけ入れ替えに拘ったんだから「やっぱりラストの男はヨキ坊じゃなきゃ!」とたった今、改めて思いました。

とにかく、ミステリとして上質上級な一冊。民俗学部分にいつもなら苦痛を感じるのですが(呪われる!)本作は事件事件の連続で、そこまで気になりませんでしたし。ミステリ8:民俗学2といったところですか?そして、三津田氏の新刊は『山魔の如き嗤うもの』…中盤で友情出演した刀城言耶が向かった邑で起こった事件ですよね?(未確認です)ついにやんごとなき神社の跡取り・阿武隈川先輩がメインキャラとして登場するのかと思うとワクワクです。

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2008/04/05

『凶鳥の如き忌むもの』 三津田信三

凶鳥の如き忌むもの (講談社ノベルス) Book 凶鳥の如き忌むもの (講談社ノベルス)

著者:三津田 信三
販売元:講談社
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怪異譚を愛して已まない小説家・刀城言耶

今日も怪異を求めて東奔西走

そして出遭った怪異は…人間消失

「更新は1週間ほど滞ります」と宣言しておきながら、2週間滞らせていただきました当ブロ愚。この2週間のうちに関東方面に2回遠征に行ったり、友人夫婦にこのブロ愚の存在がバレてみたり、風邪を召してみたりと色々遭ったわけです。

さて、再開第1弾レビューは厭魅の如き憑くものに続く刀城言耶シリーズ第3弾でございます…えっ?第3弾!?

『九つ岩石塔殺人事件』ってなんですかっ!?

迷宮社なんて、いかにも胡散臭い出版社から発行されておりますが(実存していたらすみません)…これはどんなトリックに分類したら良いのだろう。叙述トリック?(笑)

そんなわけで刀城言耶シリーズ第3弾『凶鳥の如き忌むもの』は、瀬戸内海に浮かぶ嵐の小島を舞台に描かれる人間消失モノミステリでございます。『厭魅の如き~』では民俗学&ミステリのタッグにKOを赦した私ですが、本作はミステリ色が強くてグイグイ読めました。人間消失の謎をカテゴライズして、ひとつひとつ潰してゆく過程なんてゾクゾクしましたね…本格だ、と。

「全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる」とは愛しのホームズ様の弁ですが、本作はそれに真正面から挑んだ作品ではなかろうかと。さもなくば、

あんなバカミス的結末は提示できません

あれ?私ってば、またもや毒吐いた?とにかく、あのカテゴライズ作業がなければ、あのトンデモ結末は許容できなかったと思います。あの工程が有ったからこそ許容できるぎりっぎりのラインで落としたかな、と。いや、どう読んだって許容できない方も多かろうと思いますが…。

とにかく、伏線がしっかり張られていて読ませる作品に出来上がっておりました。個人的には『厭魅の如き~』より好きですね。ホラー&民俗学がタッグを組むと、途端に睡魔にやられる体質に生まれてしまったものですから。

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2007/12/18

『厭魅の如き憑くもの』 三津田信三

厭魅の如き憑くもの (ミステリー・リーグ) Book 厭魅の如き憑くもの (ミステリー・リーグ)

著者:三津田 信三
販売元:原書房
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憑き物筋の家系と非憑き物筋の家系。

神隠しに遭い消えた子供とカカシ様。

ミステリと民俗学を融合させた刀城言耶シリーズ第一弾。

以前から気になってはいたのですが、“ミステリと民俗学の融合モノは疲れる”という経験則を打ち破るほどの魅力を感じることができずに敬遠してきた刀城言耶シリーズ。ですが「このミス!2008」の5位に『首無の如き祟るもの』がランクインしているのを見て、比喩でなく重い腰を上げた次第でございます。

結論から申し上げますと…

やっぱりミステリと民俗学の融合モノは疲れる

ミステリと民俗学の組み合わせは非常に相性が良く、禍々しい雰囲気を醸し出すことには成功しておるのですが…如何せん冗長過ぎる。斜め読み、万歳。カカシ様と邑の関係を読者に理解させる重要性はきちんと理解したつもりなのですが、ここまで同じ話を繰り返されるとさすがに飽きます。言葉や角度を変えただけで、結局どれも同じ話なんだもの。まぁ、それでも某Q○Dシリーズよりは融合が巧くいっているように感じました。

ついでにもうひとつミステリ読み人間として忌憚無い意見を申し上げますならば、探偵役たる刀城言耶が犯人を指摘する箇所をもう少し丁寧に描いて欲しかった。あの少ない頁では仕掛けられた“どんでん返しに次ぐどんでん返し”の魅力が半減。残り頁を確認した上で、「えっ?この小説、ちゃんと犯人指摘して終わるんでしょうね?」と要らん心配をしてしまいました。刀城言耶が最終的に指摘した犯人の数は4人。どれも説得力ある指摘にも関わらず、当て推量戦法に見えてしまったのは、その描写(頁数)の少なさに原因があると思います。

個人的には黒子=○太郎説に一番グッときました。○三郎が幼い頃に経験した神隠しの伏線が非常に美しく回収されていたと思う。ケッキョクチガッタンダケドネ。その所為で神隠し伏線が宙に浮いてしまった感が残念。一旦綺麗に回収された伏線を捨て、もう一度回収し直すのには高度なテクニックが必要かと。

まぁ、本作の最大の魅力は叙述トリックにあるのかもしれませんが。メタミステリ的要素を含んだ本作。「はじめに」を丁寧に読んだ読者こそ騙されるという罠。けれど、あの少ない残り頁で「実はこんな叙述トリックを仕掛けてたんですよ。貴方は気付きました?」と言わんばかりの解説(?)を読まされたのには閉口。ミステリ読み人間は皆まで言ってくれなくとも、気になったら自分で回収しにゆきますから。妙なところで親切心を披露してくれなくても結構。それなら犯人指摘をもっと丁寧に描いてくださいよ。

なぜか酷評レビューとなった本作ですが、個人的には好印象好評価なんでございますのよ。これは『首無の如き祟るもの』に期待大。その前に『凶鳥の如き忌むもの』に取り組むのをお忘れなく!

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