■東野圭吾

2016/11/26

『疾風ロンド』 東野圭吾

映画化を機に。『白銀ジャック』シリーズの第2弾という位置づけで良いのでしょうか。今回雪山に埋められたのは未認可の生物兵器。裏表紙には長編ミステリと書かれていますがミステリはほぼなし、エンタテイメントコメディです。

読めばわかるので特にレビューすることもないのですが、雪山を疾走するシーンなどは実に映像化向きなので読むよりも観る方が楽しめるかもしれません。極秘裏に捜索を任された情けない研究者(兼 父親)にはイライラされっぱなしですが、それも阿部寛ならいい感じに演じてくれるかもしれないですね。予告はとてもおもしろそうでした。

まさに手軽に読める方の東野作品です。シリーズ第3弾『雪煙チェイス』が今月末に発売予定ですね。そちらも楽しみです。

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2016/05/30

『マスカレード・イブ』 東野圭吾

マスカレード・シリーズ第2弾にして、『マスカレード・ホテル』前日譚。

収録されている作品は4編。前作で協力関係になり恋人となったふたり(ホテルのフロントクラーク山岸尚美と、警視庁捜査一課の新田浩介)がそれぞれ単独で2編ずつを担当。表題作であり新田編でもある「マスカレード・イブ」は○○殺人をメイントリックにしたミステリらしいミステリです。ふたりが知らぬ間に協力し合っているところも憎い趣向ですね。

ただ、『ホテル』の感想にも書いたのですが、殺人事件よりもなによりもホテルで起こるトラブルや交錯する人間関係の方がおもしろいんですよね。ホテル編だけでどんどんシリーズ化してもらいたいくらい。

「それぞれの仮面」でチェックアウトした女性に一言物申せずにおれなかった尚美ですが、あれから経験を積んだ今の彼女がどう対応するのか少し気になります。堪えるかな。なんとなく同じようなことを言ってしまうような気がします。

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2016/04/28

『むかし僕が死んだ家』 東野圭吾

読み逃していた初期東野作品の名作。

幼少期の記憶をなくした女性が己の欠落を埋めるために謎の屋敷を訪れ、そこに封印された過去と記憶を取り戻すお話。屋敷のあちらこちらに散りばめられた日記や手紙をもとにゆっくりと真相に近づいていくそのさじ加減が絶妙。ふたりの登場人物とともに、昔この屋敷でなにが起こったのかを考え、同時に真相に到達できる。装飾された他殺体も暗号も名探偵も登場しないけれど、謎解きはできる。これぞ推理小説といった作品。とてもおもしろかった。

東野圭吾は比較的読んでいる方なのだけれど、こうして読み逃がした作品に名作が残っているととても得した気持ちになりますね。

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2016/04/08

『夢幻花』 東野圭吾

黄色いアサガオが咲き、ひとりの老人が殺された。複雑に絡み合う人間関係と謎の中心で咲く黄色いアサガオ。禁断の花にはどんな秘密が隠されているのか。

3時間弱で読了。ぐいぐい読ませる展開はさすが東野圭吾です。でも、ラストが綺麗にまとまりすぎというか物足りないと思ってしまうのはわがままでしょうか。(ネタバレします)そもそも黄色いアサガオに幻覚作用があるというのは創作ですよね?「アサガオの中には強い幻覚作用(毒性)があるものがある」という事実と「滅びるものには理由がある」という作中でも登場した考え方を掛け合わせて「黄色いアサガオが滅びたのは強い幻覚作用により政府が生育を禁止したからだ」という推測を作り上げたようですが。その推測が正しいかどうかはともかくとして、読者が知り得ない未知の毒薬とかノックスの十戒…は冗談としても都合が良すぎる気がして。物語としてはうまく機能しているんですけどね。

そもそも黄色いアサガオの秘密を知ってしまった(流出させてしまった)責任を果たすために代々黄色いアサガオの情報を集め監視している一家があるという設定が微妙。政府が生育を禁止したり、自白剤として使用するために内務省が秘密裏に栽培していたりと散々スケールの大きいことを言っておきながら、その使用を阻止しようとするのは個人の力っていうのが。せめてどこかの省庁が組織立ってやってくれていたら…それはそれでおかしいんですけどね。

広げた風呂敷がとても綺麗に小さくなってしまって、もっと「なんなんだこれは…」って言いたくなるくらい大胆な畳み方で良いのにと思った作品でした。

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2016/03/11

『私が彼を殺した』 東野圭吾


『どちらかが彼女を殺した』
に続く最後まで読んでも犯人の名前が書いてない加賀恭一郎シリーズ。

犯人候補が2人から3人に増えており、確率で言えば難易度は上がっている(かもしれない)。おもしろいのが犯人候補3人の視点入れ替わりで書かれているのに、最後まで犯人がわからないところ。

(ネタバレします)解決の鍵となるのが毒入りカプセル=ピルケースの動き。そして、そのピルケースの動きを追って行くと3人全員が(一旦は)犯行不可能な立場になってしまうところがおもしろい。実際にはふたつめのピルケースが存在しておりピルケースそのものを入れ替えることができたのは誰か、で犯人を特定できるのだけれど…身元不明(元妻)の指紋云々よりも付いているべき美和子や西田の指紋が付いていないことを鍵にした方がスマートなような気がします。

個人的には加賀の出番が少なく、加賀のなにを考えているかわからない得体の知れない感じが伝わって来なかったのが残念。

驚きの真相を謳って第4の人物・美和子が犯人なんてのも良かったと思うのはトリッキーすぎるでしょうか。

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2016/02/29

『どちらかが彼女を殺した』 東野圭吾

ブログ開始前に読んだミステリの名作再読中。

加賀恭一郎シリーズ第3弾にして、フーダニットの名作。なにせ最後まで読んでも犯人名が書いてない。「なんとなく」や「そうだと思った」が通用しない、ミステリースキーに対する挑戦状な1作です。

『どちらかが』のタイトル通り、2択です。彼女を殺したのは男か女か。それだけのシンプルな問題なのに考えれば考えるほど男の犯行とも、女の犯行とも、はたまた妹(彼女)の自殺とも思えてしまう不思議。最後の鍵は○○○ですが、文庫verでは直接的な表現がないので少し論理的に思考する必要があります。加賀が○○○の○を見せてくれないということは…。

文庫版は袋とじ解説がありますが、なにも知らずにノベルス版を買った人は驚いたでしょうね。ノベルス初版が1996年6月、今ほどインターネットが普及していなかったのでネタバレ検索するわけにもいかず、身近な人にミステリスキーがいなければ独りで悶々としなくてはならないとか苦痛ですね。

同じ趣向の『私が彼を殺した』は3択ですが、こちらも大好きな作品なので近々再読してレビューしたいと思います。

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2015/08/02

『禁断の魔術』 東野圭吾

ガリレオシリーズ第8弾。「猛射つ」が加筆され長編化と聞いて。

いつも書いているが、湯川の人間味が増している。ただし、本作に限って言えばその人間味が効果的に作用していたように思う。もちろん「猛射つ」のお話。ラスト、合図があれば湯川は発射したに違いないという意見に1票。確証のないことは言わないのなら、確証のあることは言うのでしょう。そして、自分の心(決意)に確証が持てなくてどうする。ただ、長編にする必要のある作品かなあ…とは思う。特に大きな驚きがある作品ではなく。加筆するとしたら登場人物の心模様でしょう。ガリレオにそういうものは求めてないのよねえ。

というわけで、「曲球る」なんて解決に科学も物理も関係ないどころか、不可解な事件は起こってなくて唖然。

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2015/06/04

『虚像の道化師』 東野圭吾

ガリレオシリーズ第7弾。収録されている4編はどれもドラマ化済。

ガリレオらしい物理(学)トリックが用いられた「幻惑す」「心聴る」の方が好み。「心聴る」はドラマではカットされた北原という草薙の同期の存在が良かった。どうして改変した…というか、ドラマでは草薙がそもそも空気でしたね。原作に逆輸入してきた内海はとても良いですが、やはりコンビは男女じゃないと!という考えは理解できない。

そして、本作でも感じた湯川の人間らしさ。私は湯川にそういう側面を求めていないので、「偽装う」の礼とか不要に感じてしまうのだけれど、一般的には違うのでしょうね。

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2015/05/29

『天空の蜂』 東野圭吾

おすすめ東野作品としてタイトルが上がることが多いので以前から読みたいと思っておりましたが、その厚さ故に尻ごみしていた1冊。映画化と聞いてようやく重い腰を上げました。

内容よりもなによりも、この作品が1995年に書かれたことに驚きを隠せません。原発に対する国民の姿勢、意識をテーマに描かれている作品ですが、事件が起こってからの人々の反応が震災以降の世間の反応そのままです。そして天空の蜂(犯人たちが名乗った犯行グループ名)の最後の声明文。私は今だからそのメッセージの中身を理解できますが、発売当時…いや、震災前にこの作品を読んでいたとして彼らの放ったメッセージを理解できたかどうか自信がありません。

それにしても、この作品を今になって映画化するってのはチャレンジですね。江口洋介は個人的に湯原というより三島のイメージですが。

そういえば、本作は犯人グループの動機、事情、心情の描写がとても薄いです。書かれていないわけじゃない。でも、最近の社会派東野作品に比べるとかなりあっさりした書き方だと感じます。意図的かな?でも、今の東野圭吾がこの作品を書いた場合、読者が犯人に感情移入するように(もっと言えば同情するように)書くんじゃないかなあという気がします。

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2015/05/12

『パラドックス13』 東野圭吾

3月13日13時13分、13人の男女を残して世界から人々が消えた。P-13現象と名付けられた予測不可能な現象に巻き込まれた13人が元の世界に戻るため、この世界で生きていくために思考錯誤し、もがき苦しむ物語。

あらすじを読んだ時にはP-13現象を論理数学的に解き明かす謎解き小説かと思ったのですが、

サバイバル小説でした

結局のところP-13現象がなんだったのかわからず(なにが起こったのかはもちろん理解していますが)、揺り戻しに関してもその瞬間になにかをする必要があったわけではなく、鍵となったのは生きること。まあ、元の世界で13秒の間に死んだ人間が集められた世界があの世界だったので、戻るために必要なのが死の反対である生であるというのは理解できるのですが。そして、最後まで誰よりも生きようとしていた誠哉が生きられなかったのはよくある展開だとしても納得できない気持ち。

おもしろかったのだけれど、読了後になぜかなにも残らない1冊。それはきっと彼らの心にもなにも残らなかったからだと思うのだけれど。とりあえず、そのうち映画化されるんだろうなあと()

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