2008年1月30日 (水)

『名前探しの放課後』 辻村深月

名前探しの放課後(上) Book 名前探しの放課後(上)

著者:辻村 深月
販売元:講談社
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突然のタイムスリップで3ヶ月前の世界に戻された依田いつか

タイムスリップには誰かの何かの意図があるはず

それならば…いつかの“使命”は唯一つ

仲間の自殺を止めること

大好きな辻村深月嬢の最新巻。単行本での刊行に購入をしばし迷いましたが…やっぱり好きなんだ辻村深月作品。そして、今回も号泣。

晴れ渡る秋空の下、ジャスコの屋上、突然のタイムスリップに戸惑う主人公・依田いつか。ここから見えるあの看板は、もう撤去されたはずなのに。季節は冬であるはずなのに。誰かが自殺をしたはずなのに。

どうして自分はここに居るのだろう?どうして“誰か”は死んでいないのだろう?

そんなミステリチックなスタートを切った本作は、辻村嬢らしい青春小説でした。主題は辻村嬢のデビュー作である『冷たい校舎の時は止まる』に似た、自殺した誰かの“名前探し”。3ヶ月前に戻されたいつかには、肝心の自殺した“誰か”の記憶が無い。誰が自殺したのか思い出せない。だから仲間を集めて自殺しそうな人間に当たりをつけて。その“誰か”が死なないように。最期の瞬間、自分たちを思い出すことで自殺を思い留まることができるように。仲間のために死ねない、と思ってもらえるように。

そんな風に“誰か”との関係を深めてゆく、そんな友情と愛情の物語。

辻村嬢の描くキャラクタは、どの作品も個性的で魅力があって。女性にだらしない主人公・いつかを始め、指揮を採ることに長けた自信家にして野心家・天木、鉄道マニアで遺書を書くのが趣味・河野、強く優しく歪みを自ら矯正することのできる・秀人&椿、そして自らの哀しい過去を絶望を笑って語る・あすな。とにかく魅力的なキャラクタがその“誰か”のために一丸となって。

私は途中で自殺するのが“誰なのか”に気付いてしまったのですが、それで終わらないのが辻村作品。気付いていても号泣させられましたし。では、ここからは他作品とのリンクにも触れるネタバレレビューを開始しましょう(個人的にはここからが一番愉しい)。

まずは『凍りのくじら』に登場した幼き天才ピアニスト松永。私はキャラクタの名前を覚えたりできるほどの脳内キャパが無いので(無念)ドラえもんの件が出るまでまったく気が付きませんでした。『凍りのくじら』のラストでも郁也がピアノを辞めなかったことは描かれておりましたが、改めてピアノを引き続ける郁也の姿は素敵だと思いました。ちょっと切ないけれどね。

そして…衝撃の秀人&椿。まさか彼らが『ぼくのメジャースプーン』

ぼく&ふみちゃんだったとはっ!!

もちろん気が付きませんでした。あの秀人といっしょに居たジェントルメンなおじさまは先生だったわけですね。最多出場じゃないですか、先生。しかし…まさかこの作品の根幹、契機となったのが

ぼくの持った例の力の所為だったとはっ!!!

なんかパワーアップしてないですか、力?まだ起こっていないはずの未来のことまで捏造させてしまうとは…恐るべし、ぼくの力。しかし、いくつになってもふみちゃんが絡むと冷静でいられない秀人…悪くない。美味しい。

そうそう『スロウハイツの神様』からチヨダ・コーキのお名前がひょっこり出てきたりもしてましたね。

作品単体の出来ももちろん上質な上、辻村作品スキーなら隅から隅まで楽しむことのできる一作。ただ、初めての辻村作品には向かないかもしれませんね。少なくとも『ぼくのメジャースプーン』だけは読んでおくことをお勧めします。

名前探しの放課後(下) Book 名前探しの放課後(下)

著者:辻村 深月
販売元:講談社
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2007年1月30日 (火)

『スロウハイツの神様』 辻村深月

スロウハイツの神様(上) Book スロウハイツの神様(上)

著者:辻村 深月
販売元:講談社
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憧れの神様と過ごすひとつ屋根の下。

まるで“ときわ荘”のようなスロウハイツに訪れる波乱の日々。

辻村深月の描く青春群像。

漸くレビューが叶いました辻村深月新作『スロウハイツの神様』。前作『ぼくのメジャースプーン』を大絶賛した私ですが…

本作、失速?

辻村作品の魅力は、細部まで描かれ活き活きと動く登場人物たちと、ラストに仕掛けられたどんでん返し。でも、本作『スロウハイツの神様』はそのどちらもがおざなり。

スロウハイツに住む未来のクリエイターたちは8人。いつもの辻村作品であれば、これでもか!これでもか!とまでに繰り返される過去のトラウマが本作には登場しません。過去が詳細に描かれるのは家主でありスロウハイツのNO2でもある環と、スロウハイツの神様・チヨダコーキのみ。他のメンバは…書かれて無いと断言することはできないまでも、2本柱との関係を描くことが重視され、なおざり感あり。

まぁ、タイトルからして神様・コーキを押し出した直球勝負だから、ちょっと違和感を感じました~くらいで我慢できるんですけれど…

今回のストーリー展開はぬるい!

上巻を読み終えた時点で下巻の展開の95%が読めたと云っても過言ではありません。

チヨダコーキの偽者・鼓動チカラとは何者なのか?チヨダコーキを越える評価を受ける幹永舞は誰なのか?そしてコーキの天使ちゃんは?このあたりの謎が上巻を読み終えた時点で見渡せてしまう。それがとにかくとにかく残念で。

いつもの辻村作品なら「そんな記述どこにあったよ?」と読者を唸らせる巧妙さで伏線を隠してくるのですが、今回はあからさま過ぎる。奇人・チヨダコーキがぶつ切りで語る、嘘か真かエピソードがラストで巧いこと回収される様は綺麗でしたが…ねぇ?

本作はこれまでの辻村作品と比べてキレに難アリ。ただ、辻村氏の狙ったところはそこじゃないのだとも思う。スロウハイツの名の通り、神様を取り巻くスロウな生活を、神様の新しい家族を、神様の復活を描きたかったのだと思う。

そうそう、理帆子(by『凍りのくじら』)の登場は嬉しかったですね!スコシ-なんとかをsuper-なんとかに持ち替えた理帆子。伊坂幸太郎作品にも見られるこういうリンクは、ひとつひとつの作品をひとりひとりの登場人物を大切にしている感が存分に伝わってきて、本当に嬉しい。芹沢光これからの活躍を祈って。

蛇足ですが、チヨダコーキに西尾維新を被せて読んだのって、私だけでしょうか?

スロウハイツの神様(下) Book スロウハイツの神様(下)

著者:辻村 深月
販売元:講談社
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2006年12月21日 (木)

『凍りのくじら』 辻村深月

凍りのくじら Book 凍りのくじら

著者:辻村 深月
販売元:講談社
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SF-スコシ・ナントカ。

そんな風にしか人を見ることの出来ない、すこし・不在な存在・理帆子。

そんな彼女が経験した、すこし・不思議な物語。

辻村深月強化週間も本作『凍りのくじら』でラストでございます。繰り返し繰り返し述べておりますが、辻村作品、重い。連続で読むもんじゃないね。ブロ愚更新も滞る滞る。

さて、本作『凍りのくじら』はそんな辻村作品の中でも、読了後の気分がライトに保たれる方です。『ドラえもん』へのオマージュである本作は、藤子先生の提唱するSF-すこし・不思議な物語。

って、ここまでが読了日(なんと13日だ!)のレビュー。ここからはもう、うろ覚えレビューです。

『凍りのくじら』は、亡き両親(母親)が理帆子に贈った最後の写真集のシーンでもう号泣です。私は家族ものを扱った作品に弱い。恋愛小説を読んで、切なくなったり涙を流したりすることはほぼ皆無に等しいですが、友情や家族愛を描いた作品では必ずと云って良いほど涙が溢れてきます。自分の母でさえも“すこし・不幸”だなんて、カテゴリ付けしてしまう理帆子。そんな理帆子に正面から向き合うことのできなかった母親。彼女が自分の死を感じ取り、娘にしてやれる最後の仕事として選んだ、写真集作り。うわっ、もう読了してから1週間以上経つのに、思い出しただけで泣きそうになりました。

良い作品って、こういう作品のことを云うんですね。

そして、理帆子の先輩であり、キーパーソンでもある別所あきら。彼がラストにあの“りはこのスモールライト”を持って登場したシーンは、本当に秀逸だと思います。オマージュっていうのは、こういう作品のことを云うのだ…と再確認再認識。あきらの存在に関するトリックは薄々勘付いていたのですが(初読の際のお話。「おっきなカメラね~」とおばさんに話しかけられたシーンであれっ?と思いました。)こういったミステリミステリしていない作品でも、こういう要素をきちんと残してくれるって嬉しい。もちろん、あきらの存在はミステリ要素として用意したのではなく、ストーリーの要として必要だったわけですが。とにかく、辻村深月はいろんな引き出しを持っているな、とうっとり。

そうそう、郁也がピアノを弾くシーンも好きですね。ラストのちょっと大人になった郁也も好きです。すこしじゃなく、すごく・ナントカの郁也。父親に捨てられたくないがためにピアノを続ける…という、かなり辛い経験をしたであろう彼が、どうしてあんなに前向きに生きて行けるのか。辻村氏の描く男の子は、みな素敵です。

あっ、若尾なんて男もいましたか…。

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2006年12月10日 (日)

『子どもたちは夜と遊ぶ』 辻村深月

子どもたちは夜と遊ぶ(上) Book 子どもたちは夜と遊ぶ(上)

著者:辻村 深月
販売元:講談社
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虚数であり、存在しない数「i(アイ)」。

見えない「藍」の姿を追い求め、浅葱が犯してしまった罪。

子どもたちは遊び疲れた後、救われることができるのか?

辻村深月強化週間…とか云いながら、まったく“週間”になってないことを、誠に遺憾に思います。だって、読むのに気力も時間も必要なんだもの、辻村深月。

本作『子どもたちは夜と遊ぶ』は、魅力的なキャラクタとその設定に惹かれるものの、最期の落とし方があまり好みではなくて、初読時にがっかりした記憶がございます。さっそくネタバレレビューに早代わりいたしますが、よろしいでしょうか?

そうそう、このレビューでは月子や孝太くんと同じ時を過ごした彼を「浅葱」、浅葱が捜し求める兄を「藍」として扱うことに致します。その部分まで正確に記すと、混乱必至ですので。だって、まだ私の中でも充分に消化しきれているとは云い難いですし…。

まず、兄である「藍」が浅葱の作り出した(二重)人格だった…という点。はっきり云って「やっぱりそれかよ~」と思ってしまいました。二重人格ネタって、確かに落とし易いし描き易いのかもしれませんが、あれだけ「藍」に逢いたがっていた浅葱に、もっと救われるエンディングは用意してあげられなかったのか…と哀しい。恭司が「藍」だったネタの方がよっぽど素敵に思った、私。ラストの恭司なんて、充分にその資格があったし。最期に恭司として月子に再会した彼は、自分が壊してしまった最愛の彼女を見て、どう思ったのか。「不幸にならないで」と自分が不幸を与えてしまった彼女に、どんな願いを込めたのか。浅葱は幸せになる道をどこで間違ってしまったのか。

確かに、浅葱に日常を与えてしまうことは「破綻」を意味しますよね。殺人という罪を犯してしまった彼に、もう日常に戻ることは許されない。道から外れてしまった浅葱に、文字通り生死をかけて手を差し伸ばした月子。その月子の手を振りほどいてしまった彼に、もう道は無くなってしまいました。浅葱と対峙した月子の決意…それは『ぼくのメジャースプーン』でも語られていて、『ぼくの~』を読んだときに改めて驚嘆させられたものですが、もし月子の手を浅葱が離さなかったら…未来は変わっていたのかな?それとも、自分の知られてはならない過去を握る彼女を、浅葱はいつか手にかけてしまっていたのかな?未来は可変でしょうか?

そして、本作での仕掛けられている叙述トリック(?)月子と孝太くんの関係を差して私はそう呼びますが、これは初読の際には全く気付けませんでした。再読した今回も、「うわぁ、際どい書き方してるなぁ」と思いましたね。ただ、フェアかアンフェアかと聞かれれば、フェアかな、と思います。ただ、変わった家庭(日向子さんが絶対的な原因だ)だとは思いますが。浅葱がこの事実をもっと前から知っていたら…とここでも悔やまれる。

ダメだ、浅葱が好きすぎる自分がいる…。女性受けを狙った漫画キャラクタのような彼にすっかり惚れている…。

本作は浅葱をはじめとする“魅力的なキャラクタ”に引っ張られるかのように成立している作品。月子も孝太くんも恭司も秋先生も、みんな魅力的。『冷たい校舎の時は止まる』でも感じたことですが、「こんな奴等いねーよ」と思わせる反面「あぁ、いるいるこんな奴」とも思わせる、そんな微妙な中庸感を持ち合わせたキャラクタ作りが、辻村氏は巧いです。彼らがどうやっても合わない…という方は辻村作品がどうあっても合わないし、それは人間のエゴと向き合うのが辛いという危機感がそうさせるのかもしれない。

とにかく辻村作品はとても面白い反面、連続で読むのは辛すぎる。強化週間と銘打ってしまった以上『凍りのくじら』まで読みますが…日々こういった小説を書き続けている辻村氏の精神状態がちょっと心配になったりならなかったり。

子どもたちは夜と遊ぶ(下) Book 子どもたちは夜と遊ぶ(下)

著者:辻村 深月
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2006年12月 7日 (木)

『冷たい校舎の時は止まる』 辻村深月

冷たい校舎の時は止まる (上) Book 冷たい校舎の時は止まる (上)

著者:辻村 深月
販売元:講談社
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雪の降り積もる中、不思議な力で校内に閉じ込められてしまった8人。

そこは8人の中に存在する、自殺したクラスメイトが作り出した世界。

自殺を謀った仲間は一体誰なのか?

カテゴリもあって、ワード検索でご来場いただいている方も多いのに、レビューがたった1冊しかなくて申し訳状態でした、辻村深月氏。今日から辻村氏強化週間です。ただね、辻村氏の作品を読むと、若干鬱状態に陥るんですよね。連投可能なのか、自分。

さて、強化週間1作目はデビュー作であり、メフィスト賞受賞作でもある『冷たい校舎の時は止まる』でございます。メフィスト賞らしからぬ作風と上中下の3冊組という、剛の者ではありますが、おもしろい。

雪の降り積もる学校に、何者かの手によって集められた8人の高校生たち。彼らを結ぶキーワードは“クラス委員”と“自殺したクラスメイト”。しかし、8人の誰もが“自殺したクラスメイト”が誰だったのか思い出すことができない。8人の中にその“自殺したクラスメイト”はいるのか?そして、その誰かはなんのために8人を集めたのか?恨み?それとも、最期の時を過ごしたかったから?

そんな「自殺したクラスメイト当て」を主軸に描かれるミステリ部分と、人間誰しもが抱える“生きることへの苦悩”を描いた心理(精神)部分に分かれる本作。

冷たい校舎の時は止まる (中) Book 冷たい校舎の時は止まる (中)

著者:辻村 深月
販売元:講談社
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辻村氏はそんな“悩みを抱えた若者”を書かせたら天下一品です。ちょっと重すぎる…という思いも抱かずにはいられないのですが、きっと8人の誰かには共感できる部分があると思う。ただね、主人公の深月ちゃん(主人公に自身の名前を与える…おぉ、エラリィ好きですか?)だけは、ちょっと重すぎると云いましょうか、被害者すぎると云いましょうか、読んでて苛々する場面が無かったとは云えません…。

そして、特筆すべきがミステリ部分。私はすっかり騙された口です~。えっ?これってアンフェアじゃない?と一瞬思わせましたが(えっと、自殺したクラスメイトの件の方です)あくまでも“ホスト”に関しては8人の仲間たちが考察(絞殺が変換1発目で出てくる私のPCって…ちょっと哀しい)した結果ですからね。その意味でフェア。

そして辻村氏が放つもう一発のトリック(写真に感じた違和感の件)。こちらがあって、あちらがあるのですが(あぁ、まどろっこしい!)このトリックには見事に騙されました。下巻にヒントがばら撒かれてますが、あの程度じゃ気付けないです。スガ兄の過去には普通に感動しちゃってましたし。私って、浅はかさん。

というわけで、ミステリとしても読み物としても充分納得の1作。処女作でこのクオリティを出してきますか!私とほとんど歳も変わらないのに!!と驚きの1作。辻村氏、いつか大物に化けますね。それも近いうちに。とにかくオススメの1作ですので、あの3冊組に倦厭気味の貴方にも是非お読みいただきたい作品です。

冷たい校舎の時は止まる  (下) Book 冷たい校舎の時は止まる (下)

著者:辻村 深月
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2006年4月29日 (土)

『ぼくのメジャースプーン』 辻村深月

ぼくのメジャースプーン Book ぼくのメジャースプーン

著者:辻村 深月
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ぼくの好きなふみちゃんを傷つけたあいつを許せない。

言葉に不思議な力を持つぼくは、その力で復讐することを決意する。

復讐までの一週間、不思議な不思議なお話。

辻村深月氏、天才かもしれないっ!

こんなに心打たれるお話読んだのは久しぶりです。辻村氏のこれまでの作品の中でも、ピカイチで好みです。辻村氏の作品では、いつもラストでうるっとさせられてしまいますが、今回もやられました。泣かせようとしているわけではないと思いますが、作品を通して登場人物が必ず成長を見せてくれるものですから。そういう姿にたまらなく弱いのです、私。

今回はちょっと不思議な力を持った少年が主人公ですが、物語の肝は不思議な力云々ではなくて、人間が相手に与える影響や干渉をどうとらえるかがテーマになっております。人道というものをあれだけの量で説かれたら、普段の私なら絶対に嫌になって投げ出すところなのに、辻村氏の作品だけはそれがない。そういった作品を書く作家だという事前知識があるにしても、流石と言う他ありません。脱帽。

それに、辻村作品を既にお読みの方であれば、おおっ!と思えるあのお方がキーパーソンとして登場してますしね。好きだったんですよねぇ、あのお方。冷静沈着で、物腰も柔らかくって。あんな方に師事したいものです。

デビュー作から振り返ると、個人的に『ぼくのメジャースプーン』→『冷たい校舎の時は止まる』=『凍りのくじら』→『子どもたちは夜と遊ぶ』の順で好みだということになるでしょうか。第一作目の『冷たい校舎~』はメフィスト受賞作ということもあってミステリテイストを含んだ作品でしたが、二作目『子どもたち~』でそのテイストもほぼ下火になり、三作目からは全く見られなくなりましたね。

ミステリ好きとしてはまた辻村氏のミステリものを読みたいと願うばかりですが、これだけクォリティの高い作品を読まされれば、新作を出してもらえるだけで嬉しい。シリーズもの以外で、数少ない新作が楽しみな作家のひとりです。

しっかし、ほとんど私と歳が変わらないっていうのがショックでもあり、驚き。

辻村氏はいつか大きな賞を受賞すると思います。もっともっと活躍してくださることを祈りつつ『子どもたちは夜と遊ぶ』を再読しようかと考えております。

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