■法月綸太郎

2016/10/11

『二の悲劇』 法月綸太郎

綸太郎シリーズ鋭意再読中です。今回は二人称が重要な鍵となる悲劇シリーズ第2弾。

女性ふたりがルームシェアしていたマンションの一室で起こった殺人事件。顔を焼かれた死体はどちらの女性のものなのか…な展開かと思いきやもっとじめっとしております。女性ふたりの取り違え(入れ違い)がしばらく描かれておりましたが(ここからネタバレします)最初に親父さん(警察)が読んだ通りの事件でしたよね。最初から被害者と目されていた女性が被害者で、逃亡していた同居人が犯人。そして犯人の自殺。あれ?綸太郎が登板する必要ありましたか?1yardに気付きましたが、あれも数日もすれば郵送されてきたので…。

というわけで二人称「きみ」に辿り着いたのが綸太郎の功績かと言うと、個人的にはそうでもないような。警察だって馬鹿じゃない。6年前に死んだ二宮にそっくりな人物が竜胆を襲ったとなれば関係者を洗いなおすはずで、その過程で双子の存在に間違いなく気付きますよね。

読者からすると「きみ」=二宮じゃない誰かは明らか(とまでいかなくとも最初の記述で察した人は多かったはず)なので、じゃあ他の登場人物の誰だってことになるのですが、登場しているようで登場していないんですよね。私の大好きな言い方をすると「ノックスの十戒」と「ヴァン・ダインの二十則」のそれぞれ10番に抵触しているような。その点がややアンフェアで、もっとクリアで驚きのある存在であって欲しかったと思います。

綸太郎のどうしようもないことをぐだぐだ考える度はかなり高くて、そこは良かったです(笑)

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2016/10/02

『頼子のために』 法月綸太郎


『一の悲劇』
ドラマ化から法月綸太郎ブームが来てます。十余年ぶりの再読。ドラマはとても楽しく観ました。前評判より綸太郎がしっかり変人で良かった。謎のミステリ好き家政婦とか、法月家のテーブルがまるで麻雀卓とか、昼ドラ的愛憎パート長すぎるもっと長谷川博巳を映せとか、そもそも何が『一の悲劇』なのか視聴者はわからないよなあとか突っ込みどころは多々ありましたが、丁寧に作られていて良かったと思います。納得いかないのは久能刑事を無能化したことくらいかな。

さて、本日のレビューは法月綸太郎初期の名作『頼子のために』です。物語は愛娘である頼子を殺された父親の手記から始まり、復讐、そして自殺未遂で手記は幕を閉じます。そして、その手記の内容に疑問を持ち捜査に乗り出したのが綸太郎ですが(ここからネタバレします)綸太郎が手記に疑問を持った→手記は事実ではない→何のために手記は書かれたのかを考えていくと真実に到達できるのでしょう。手記の大きな目的は頼子を妊娠させたのが柊であると誤認させるため。では、父親であり復讐者でもある彼がそんなダミーを用意し殺さなくてはならなかったのは何故なのか。誰かを庇うため?彼が殺人を犯してでも庇いたかった相手とは?素晴らしいですね。

27年前の作品なので個人情報の概念がガバガバなのは多少気になります(笑)

個人的には14年前の事件の真相、頼子はなぜ車道に飛び出したのかが胸に刺さります。こうなってしまう前にそれぞれが胸に秘めた苦悩と誤解を解きあう方法はなかったのでしょうか。

最後の綸太郎の決断は私は否定的ですが、倫太郎らしいなとも思います。

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2016/09/08

『法月綸太郎の新冒険』 法月綸太郎

『一の悲劇』ドラマ化記念で再読。法月綸太郎を代表する名短編集。

個人的ベストは「身投げ女のブルース」。(ネタバレします)最終的に本物の身投げ女が殺されているところが法月綸太郎らしい後味の悪さですね(褒めてます)。たったひとつ誤認で事件の様相ががらりと変わってしまう、ミステリの良さ・おもしろさが詰まった作品。

次点は「背信の交点」。観光地も登場させられるし、男女ペアだし、2時間ドラマにぴったりの題材なのですがもうこのトリックを成立させられる電車は走っていないのでしょうか。個人的には事件の真相よりも奥様が綸太郎の名を聞いたときに浮かべた表情、その理由が忘れられません。綸太郎、かわいそうに…。

「リターン・ザ・ギフト」で穂波との関係を聞かれた綸太郎が「さあ、ぼくの方が聞きたいぐらいだ」と答えているのですが、私も聞きたい。最近の作品にはめっきり穂波登場しませんしね。親父さんとの掛け合いはもちろん、穂波との微妙な関係からくる掛け合いも好きなので、穂波の再登場をぜひご検討ください。

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2016/09/05

『法月綸太郎の功績』 法月綸太郎

『一の悲劇』ドラマ化を記念して再読。容姿に関しては酷い書かれようの綸太郎ですが、長谷川博己さんが演じるとか最高ですね。ところで「普段は社交的で紳士的、なおかつ楽観的な性格だが、推理のことになると一切の妥協を許さない厳しい性格にひょう変する」(ネットニュースより)って誰ですか(笑)

個人的に本短編集のベストは「都市伝説パズル」です。ロジックが最も綺麗だと思いますし、ゾッとするホラーな感覚も同時に味わえるお得な?作品。

「縊心伝心」のパパン退職後妄想はぜひそうあって欲しい未来ですが、そうなると綸太郎は生涯独身のままということに…。でも、2030年の頃にはそんなシチュエーションで昭和の未解決事件に挑む親子の作品が読みたいですね。

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2016/01/23

『雪密室』 法月綸太郎

今年はブログを始める前に読んだ新本格の定番を再読していきたいと思っています。

本作はタイトル通り、いかにして『雪密室』は作られたのか…が鍵になる作品。ですが(ネタバレします)共犯者が多すぎる。厳密には従犯者ですが。個人的に共犯の存在はリスクが跳ね上がるうえに、犯人側が取り得る選択肢の幅が爆発的に広がってしまうので好きではないです。今回は望んで共犯者になったわけでないという体でしたが。

冒頭に仕組まれた叙述トリックにはにやり。こういうのは大好きです。

綸太郎の母親についての記述があるのもこの作品…と個人的メモ。

作家アリスがドラマ化しましたが、綸太郎シリーズもドラマ化できそうですよね。連続ドラマは原作の数的に(ry ですが、2時間ドラマならどうだろう。綸太郎の登場遅めの作品が多いのがネックかもしれませんが。でも、警視庁のお偉いさんを身内に持つ作家…って浅見光彦かな。

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2016/01/10

『ノックス・マシン』 法月綸太郎


「本格(ミステリを主題にした)」S
Fを4作収録した短編集。このミス2014第1位だけれど、誰が読んでもたのしめる作品じゃない。なぜに第1位。

私はノックスの十戒が大好きなので「ノックス・マシン」はとてもたのしめました。唐突と言わざるを得ない第5項はなぜ生まれたのか…を風刺を利かせて描いてみた作品。いいです。こういうの好きです。

続く「引き立て役倶楽部の陰謀」もおもしろい。アガサ・クリスティも『アクロイド殺し』『そして誰もいなくなった』もどれもこれも大好きなのでにやにやしながら読んでました。ワトソン爺がもうね。でも、この作品は少なくとも上記2作を読んでないと心からたのしめないのがマイナスですね。というか、この『ノックス・マシン』自体がある程度(古典)ミステリに精通していること前提で書かれているので、年末のランキングものだからと読んだ人は置いてけ堀でしょう。

尚、残る2作は微妙。「バベルの牢獄」はやりたいことはわかるのですが、読了後にそれで?って言いたくなる。

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2015/09/16

『一の悲劇』 法月綸太郎

ブログを始める前に読んだ新本格の名作を再読するのもいいなと今日は法月綸太郎。一度読んだのは間違いない。けれども全く覚えていなかったのでとても楽しめました。その日のうちに読了。

誘拐もの特有の緊張感でグイグイ読ませる前半。二転三転する推理劇でグイグイ読ませる後半。挙がった推理、犯人候補の誰が真犯人でも納得できるなかで一番胸糞悪い結末だったのが法月らしいと思いました。

とりあえず、久能刑事ってこんなに優秀でしたっけ。綸太郎目線だと久能刑事は結構かわいいところあるので。

あと、著者近影を引き伸ばされた綸太郎がボロクソ言われていて笑いました。法月(作者)ノリノリで書いてそうだなあ。

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2014/01/14

『犯罪ホロスコープII 三人の女神の問題』 法月綸太郎

『犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題』の続刊。十ニ星座をモチーフとした事件に綸太郎が挑むという設定はとても良いのだけれど、設定が制約となり、結構むちゃくちゃな事件もあったりしてなんだかなあ…という印象。

Ⅱで描かれているのは天秤座から魚座まで。どの作品が好みだったかを聞かれても正直答えられないのだけれど…天秤座「宿命の交わる城で」が一番良かったかな。トリックに思い至ってしまったため驚きはなかったけれど、収録作の中では一番ロジカルだったような気がする。

うん、法月はやっぱり長編だね!次の長編に期待!なにせ綸太郎がついに携帯を持ったからね!もしかしたら親父さんと離されて携帯が必要になるようなステレオタイプな事件に遭遇するかもしれないし!

って、それは嫌だわ()お約束はいつまでもお約束であって欲しいものです。

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2013/03/10

『キングを探せ』 法月綸太郎

このミス2013、第8位の本作。とにかくもうタイトルが秀逸。これだけでレビューとして事足りるんじゃないかってくらい「やられた!」感いっぱいの読了に満足。

推理小説において交換殺人ものは鉄板で「無関係な二者(事件)をいかにして結びつけるか」がその醍醐味ですが、本作における交換殺人は四者で行われるっていうのだから繋がりなんて見つかるわけがない。というか、交換殺人を疑うきっかけとなった事故の部分には少しご都合主義を感じないでもなかったのだけれど(○○に気付いた時点で冷静に行動できていれば良かったわけで…まあ、殺人を犯したばかりの人間にそれを望むのは酷というものだけれど。だからこその正露丸だったわけですし)とにかくもう最後のくだり、タイトルに絡んだあたりの謎解きが秀逸すぎてそのあたりのことは忘れましたとも。

ミステリとしてはまあ普通? 法月らしい論理の世界…というよりは叙述…とも言い難いし、とどう表現するのが適切かわからないのだけれど、タイトルに仕掛けられた罠に気付かされたときの爽快感がたまらなかった一冊。こういう瞬間があるから本を読むことが止められないわけです。

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2009/03/31

『生首に聞いてみろ』 法月綸太郎

生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2) Book 生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)

著者:法月 綸太郎
販売元:角川書店
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切断された石膏像と、切断された生首

首の上、秘められたものとは?

2005年ミステリ界を風靡した法月綸太郎代表作

ワントリックもののミステリは風化してしまうけれど、ロジックに足を着けたミステリは風化しないのだな、と思った再読通勤本。一度読んだはずなのに、実に愉しませていただきました(トリアタマによる犯人忘却は秘密)。

本作、相当長く相当厚いのですが、無駄な箇所はそうそう無く。綸太郎のああでもないこうでもないは健在。でも、いきなりピコーンと閃いて「犯人は貴方だ!」とかやられるより、ひとつひとつ可能性を潰して、ときには犯人の掌の上で騙され欺かれながら、唯一といえる真相に辿り着く…その過程を愉しみたいときってのがあるんです。本作はまさにその過程を愉しむ1冊。綸太郎(登場人物の方)がやけに人間臭い、ときには(いつもか?)それが良いのです。

本作はもう各所でレビューされ尽くしていて、いまさら「やれトリックが~」とか「やれロジックが~」とかの検証は不要かと。というか、

読めば判る

ので。回収し損ねた伏線もないでしょうし。綸太郎と同じ過程で犯人まで辿り着けると思います読者も。親切な本格ミステリ。

なので、読書中に私が猛烈に気になったポイントを。それは妻の自殺に心を痛める各務に対して放たれた法月警視のこんな一言。

「私の家内も同じ死に方をしましたから」

えっ?初耳です。法月綸太郎シリーズはエラリー・クイーンへの強烈なオマージュなので、母親が居ないことを気に掛けたことも無かったのですが(まるでそれが当たり前のように)、そうですよね居ますよね母親。でも、その母親が病死でも事故死でもなく自殺って。綸太郎が母親に関して述べた作品(箇所)って他にありましたっけ?少なくとも私のトリアタマデータベースには残っておりません。だって、母親が居ないのなんて当たり前だと思っていたので…この件、いつか描かれますか?それとも本家と同様藪の中ですか?

しかし、綸太郎と警視(父親)の関係は作品によって随分違いますね(本家同様)。絶大な信頼を寄せてみたり、邪魔者扱いしたり。「今回のふたりはどんな関係かな?」と思いながら読むのが最近の愉しみ方だったりします。

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