■綾辻行人

2015/06/02

『Another エピソードS』 綾辻行人

『Another』からのスピンオフ。鳴が夜見山を離れた一週間を描くエピソードsummer。

作品の分類としてはホラーとミステリの中間かと。とにかく読み易く、あっという間に読了。Anotherの設定をうまく活かしたラストのどんでん返し(幽霊の正体)については描写があからさまなので看破するのは容易。綾辻らしいです。

これからも広がりをみせていきそうな『Another』、とりあえず想が夜見山に越してきたらしいのでそれで1本書けちゃいますね。鳴たちの年代が特殊な終わり方をした年として語り継がれていたらいい。

個人的にはエピソードSはセンチメンタルのSだと思っております。

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2013/02/01

『Another』 綾辻行人

 

アニメを観ていたので死者、トリック、結末…その全てを知った上での読書でしたが、その厚さが気にならないくらい充実した時間となりました。

呪われた三年三組、紛れ込んだ死者、死に近づく一年。否応なく「現象」に巻き込まれてしまった彼らにできることは、自らの身に死が降りかかって来ないことを祈るだけ…だったはずなのに。その年、主人公とヒロインがどんな風に「現象」を止めたのかを知ることに意味はないと思うのです。だってそこには、物語的ご都合主義ってやつが必要になってきますからね。意味があるのは「死者は誰か」ってことで、死者が誰かを知った上で読み進めた私は常時にやにやしっぱなしでした。結構あからさま…ですよね?知らないで読んで気付けたかって言われたら微妙ですが、描写はかなり大胆だと思いました。そして、記憶を消してもう一度読みたいと上質なミステリに出逢うたびに思うわけです。

あれ?これってミステリですよね?

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2012/04/08

『奇面館の殺人』 綾辻行人

読了直後だというのに読み返して全ての地の文を確認したくなる一冊。大がかりなトリックはないけれど、緻密に計算された謎…ロジックで綺麗にまとめあげてくれるその手法はさすが綾辻。

館シリーズも残すところあと一作。残念ですが、『十角館の殺人』を超える一作が来てくれることを願って。

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2007/04/21

館シリーズアンケート

右サイドバーに設置しておりましたアンケートを新企画用に差し替えたため、本文内(企画内)に収納させていただきました。投票は引き続き可能でございますので、レビューをお読みの後に是非一票を投じていただけると幸いです。

アンケートにご協力ください
好きな館シリーズは?
十角館の殺人
水車館の殺人
迷路館の殺人
人形館の殺人
時計館の殺人
黒猫館の殺人
暗黒館の殺人
びっくり館の殺人

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2007/03/19

『暗黒館の殺人』 綾辻行人

暗黒館の殺人 (上) Book 暗黒館の殺人 (上)

著者:綾辻 行人
販売元:講談社
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ひょんなことから“中村青司の館”に関する情報を入手した江南。

暗黒館と呼ばれる館で江南が遭遇するのは…恐ろしい罠。

物理的にも精神的にも重厚感あふれる、館シリーズ第七弾!

おんまたせいたしました!!

もうこのまま無かったことにしてしまおうか…という誘惑に何度かられたことか。有耶無耶なままエイプリルフールを迎えて、冗談オチにしてしまおうかと何度悩んだことか。そのくらい難産だった『暗黒館』。漸くレビューをお届けできることに感無量です。

この『暗黒館』を読了するために、私がとって作戦は…カフェで缶詰め作戦。『暗黒館』には睡眠薬が盛られていると信じて疑わない私ですが(この缶詰め作戦を取るまでは、1日30頁が限度だった)、ベッドで読むから眠くなる→眠れない環境に身を置けば良いんだ!と気付くまで○週間。暖冬とは云え、北海道の3月に屋外での読書は自殺行為ですので、カフェに『暗黒館』と煙草だけを持ち込み、ひたすら読む読め読むんだ。この週末にカフェで分厚い新書を手に、恨めしい顔をして読書している女を見かけた方、それは私だったかもしれません。

さて、肝心の『暗黒館』の内容に触れておりませんねぇ。正直なところ、内容云々よりも読了までの難産っぷりの方が印象強いんですよ。まぁ、そうも云っていられないので、ネタバレ全開レビュー(しかも毒舌)にすることで、なんとか書き上げちゃいましょう。

えーっと、中村青司の原点、ここにあり!!

もうこのネタバレだけで良いような気もしないではありませんね。この『暗黒館』は“(中原)中也”と呼ばれる青年の視点を取って描かれているのですが、この“中也”が実は若き日の中村青司だというトリックです(←さらーっと、すべてをバラしたNE!)このトリックにいつ気付くか…が『暗黒館』の唯一の楽しみ方だと思うのですが(つまり、暗黒館内で行われる殺人は特に重要視する必要も意味も無いという毒舌です)、このトリック、なんともアンフェアな描かれ方をしています。

中也=中村青司が暗黒館に滞在していた“過去”と“現在”とを結ぶのは、十角塔(十角!)から墜落した江南某という青年なのですが、同じ同じ時刻同じタイミングで地震が起こり、同じ名字の同じような身なりをした青年が同じ塔から落ちるってどんな偶然やねん!同じが6回も出てきたよ。その偶然を起こせるのが中村青司の館だって云うんなら、そんな館はこっちから願い下げです。

というわけで、読者に誤認させよう感が満載で、興醒め。しかも唐突に挿入される“現在”を生きる江南の独白(?)がしつこい。同じような台詞を何度も何度も読まされて辟易してしまいます。あんな独白入れなければ、もっとスマートな(物理的にも精神的にも)作品になったと思います。

暗黒館に住まう浦登家の秘密はちょっと素敵でしたけれど…ミステリに有りがちな設定と云ってしまえばそれまでですね。その雰囲気を味わうには、『暗黒館』は厚過ぎるんですよ。せっかくの良い部分も、全体に横たわるダラダラ感と睡眠薬の所為で台無しです。そうそう、青屋敷で焼身自殺を遂げた中村青司ですが、彼の食した“ダリアの肉”はその不死性を発揮しなかったのでしょうか?実は檻の中で青司が惑っている…なんて設定が次のシリーズで当たり前のように出てきたら怒るけどね。

でも、ラストの征順の「家人に一人、優秀な医師がいるのです」には、若干ゾクッとしましたでしょうか。玄児よね?これって玄児のことよね?そして、檻へと向かう江南の耳に届いたピアノの調。これって美鳥よね?そんな“匂わせた”ラストは唯一素敵だったと思います。

さて、これで胸に痞えていた懸案事項も解決いたしました。これからはミステリブロ愚、通常営業です。リハビリも兼ね、薄くてさらっとした作品から読み始める予定。これからも当ブロ愚をどうぞよろしくお願いいたします。

20000HIT、本当にありがとうございました!!

暗黒館の殺人 (下) Book 暗黒館の殺人 (下)

著者:綾辻 行人
販売元:講談社
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2007/02/24

『黒猫館の殺人』 綾辻行人

黒猫館の殺人 Book 黒猫館の殺人

著者:綾辻 行人
販売元:講談社
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記憶を失くした老人が江南の元に持ち込んだ“手記”。

その手記に描かれた殺人事件は妄想か真実か?

中村青司が手掛けたという黒猫館は一体どこに?

漸く『黒猫館の殺人』まで到達いたしましたか。『びっくり館の殺人』は既にレビュー済ですので、残すは『暗黒館の殺人』…正直タジタジです。できればずっと読んでいたかった『黒猫館の殺人』。なにはともあれレビュー。

この『黒猫館』を読み終えたときの正直な感想は…

すわっ、バカミスかっ!!

です。そんな真面目くさった顔で「実は黒猫館は○○○○○に有ったのです!」とか云われたって爆笑!だって、○○○○○よ?○○○○○以外のどこにあったって、こんなに笑えなかったと思う。なんでしょう、言葉の響きですね。

でも、黒猫館が○○○○○に有る必然性はナルホドくん。中村青司の変人ぶりもさることながら、天羽博士もなかなかやります。中村青司じゃなきゃ、そんな仕事請け負わねぇぜ!って感じ。でも、これまで登場した館のなかで、一番住んでみたいかもしれない『黒猫館』。『十角館』はそんなに部屋いらねぇ!感満載ですし、『水車館』は部屋の行き来が大変そうだし、『迷路館』はもうアトラクション化してるし、『時計館』はそんなところで眠れません、許してください。その点、『黒猫館』はモチーフも可愛らしいし、○○○○○に有るんでなければ住みたいです。

そうそう、ちょっと前になにかのレビューで「ドジスンの作品をちゃんと読んだことない」と書いた気がするのですが(検索してみたら『英国庭園の謎』でした)、この『黒猫館』にも登場してきたことで、さらに読みたい気持ちが上昇しました。でも、翻訳モノは訳者の言葉選びが肝心だからなぁ。ちゃんと調査してから選ばないと危険ですね。

って、殆どが『黒猫館』に関係ないことばっかりだわ。危ない危ない。この『黒猫館』は『時計館』の次ということもあって、ちょっとパンチが足りないような気がしてしまいますが、私は結構好きですね。○○○○○のあたりなんて、すっかりバカミスだし(まだ云うか!?)でも、生前の中村青司を知る人物との邂逅により、さらに中村氏の根っこの部分を知ることのできる作品かもしれません。

それを云うなら次巻の『暗黒館の殺人』に勝るものは無いのですが…。

あぁ、あの物理的殺人級厚さを誇る『暗黒館』に手を付けるときがきましたか。まさかこんなに早く再読の時がくるとは思っておりませんでした。南無三。

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2007/02/23

『時計館の殺人』 綾辻行人

時計館の殺人 Book 時計館の殺人

著者:綾辻 行人
販売元:講談社
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108個の時計が時を刻む時計館。

時計の針が進むにつれ、死体となってゆく仲間たち。

殺人犯は時計館の亡霊か?館シリーズ第五弾!!

『人形館の殺人』レビューがあまりにもアレなもんでTOPに置くのは忍びない…と畳み掛けるように『時計館の殺人』レビューをupです。この『時計館の殺人』は、

館シリーズNO.1との呼び声高い名作

『十角館』『水車館』でかましたあの5分間フリーズをこの作品でももちろんかましました。だって、だって、旧館と新館で○○の○○が違うだなんて!鹿谷氏(この作品からはこの名称が定着)の最初の指摘を受けて、残りのページを貪るように読んだおもひでがあります。一瞬、なんのこちゃい?状態だった私。

作中で鹿谷氏が何度か語る“時間の概念”。こういう哲学的なことは難しい上に建設的じゃないから苦手なんだよ~とナナメ読みを決め込んでいた私は、どっさり後悔することとなります。見事に確信じゃんか!?

わかる人にはきっとわかるのだろう、このトリック。でも、鹿谷氏の解決編まで気付かずに読むことができたら…きっとこの『時計館の殺人』を最適な形で楽しむことができるのではないかと、今回の再読で確信しました。この『時計館』トリックは、その衝撃度から決して忘れることのできないトリック。一度読んでしまったら「あれ?この作品のトリックってどんなのだっけ?」だなんて呆けることは不可能です。そのため、再読時にはそのトリックがずっと頭の中を駆け巡る…この作業、結構頭使います。物語に入り込むことが出来なかった。これが叙述トリックと物理トリックの楽しみ方の相違なのか、と妙に感慨深い。やっぱり、私は叙述をふんだんに駆使した作品の方が好きだな。

でも、『時計館の殺人』が名作であることに変わりは無く。鳴る為の機能を所持していない鐘の音が聞こえたとき…ぞぞぞっと鳥肌が立ちます。再登場を果たした瞬間に悲劇に巻き込まれる形となった江南くんには、皆で哀れみの合掌を。中村青司の設計した館で怪事件が起こる…というよりは、その館に鹿谷氏が介入した瞬間に最後のスイッチが入ってしまうといった方が正確だな…と思ったり。

とにかく、この作品はトリックを知らぬまま、できれば推理なんてうっちゃって、物語の重圧感を存分に楽しんだ後、いっしょに仰天して欲しい。そんな思いを込めて、お勧め。『時計館』に仕掛けられたトリックは、まさに天からの授かりもの。そんな至福の思いを皆様も是非。

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2007/02/22

『人形館の殺人』 綾辻行人

人形館の殺人 Book 人形館の殺人

著者:綾辻 行人
販売元:講談社
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京都の街をマネキンで彩る人形館。

中村青司の呪いはここにも現れる?

館シリーズ異色作とも呼べる、衝撃の第四弾。

20000HIT御礼だ!と云いながら、なかなか再読する機会のないシリーズものを消化しているに過ぎないかもしれないこの企画。お館様シリーズもようやく折り返し地点です。

さて、最初に謝っておきましょうか…ご、ごめんなさい!

えっと、この『人形館の殺人』がお好きな方は、ここからのレビューは読まれないほうが懸命です。企画レビューと云えども、当ブロ愚の構成要素は基本的にぶった斬り。今日は…斬ります。

なにをくどくど…とお思いでしょうが、要するに“私的にこの『人形館の殺人』は館シリーズとして認めていなくってよ!?”という思いの現われです。だって、そもそも

中村青司の館で起こった事件じゃないじゃん!!

いや、解るんです。解ってはいるんです。時々こういう作品を書きたくなっちゃう気持ちっていうのは。でもね、だったら『人形館の殺人』だなんてタイトルにしないでくださいよ~。『人形屋敷の殺人』とか『人形邸の殺人』とか『人形館-ただし番外編-の殺人』とかにして欲しい。いっそのこと『人形館の囁き』でも良いです。だって、この作品ホラーでしょ!?

ミステリは大好きだけどホラーは苦手(というか嫌い)な私は、綾辻氏の「囁き」シリーズが未読だったりします。お恥ずかしい話ですが、駄目なんですホラーが。だから、『人形館の殺人』に対しての評価も自然と辛くなる。ミステリだと思って読んでたらホラーだった…っていうんだから、このぎゃふん感をどうしてくれようか。

館シリーズと銘打っておきながら、実は中村青司の館で起こった事件では無いという新手のミステリか!?と本気で思いましたもの。読了後、私のこの気持ちがミステリ!?とも思いましたもの。あぁ、ごめんなさい。もう書けません。

この作品の良さが解るときがいつか来るのでしょうか?もうちょっと寝かせておこうと思った今回の再読。名作と呼び声高い『時計館の殺人』で気分をリフレッシュして、ソフトもハードも重い『暗黒館の殺人』に挑みましょうか…って、『黒猫館の殺人』忘れてるから~!!

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2007/02/21

『迷路館の殺人』 綾辻行人

迷路館の殺人 Book 迷路館の殺人

著者:綾辻 行人
販売元:講談社
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あの中村青司の設計した迷路館で起こった推理小説家連続殺人事件。

貴方は綾辻行人の、いや鹿谷門実の仕掛けた罠を見破ることができるか?

作中作の形をとり描かれる迷路館の殺人。

20000HIT御礼館レビューの最中に、あんな腐女子丸出しなレビューをupしたからかなのか、朝起きたら洗濯物干しが崩壊→あわせて洗濯物も生乾きでお陀仏になっていました…すわっ、中村青司の呪いか!?

気を取り直してレ、レビューを。この『迷路館の殺人』は作中作の形をとっておりまして、稀譚社ノベルスの体がいきなり挿入される様は圧巻でございます。あぁ、こういう凝り方大好き。そして、唐突に宣言される鹿谷門実氏当て。『迷路館』以降の館シリーズをお読みの方には当たり前過ぎる事実なのですが…だからシリーズものは順番に読まないと!という教訓。

ただね、稀譚社さんには申し訳ないのですが、鹿谷氏の書く作中作『迷路館の殺人』は凡作です。すべての殺人が「中村青司の手によるからくり趣味を全面に利用しての殺人」というのはミステリとしてタブー、約束違反ですからね。そんな殺人、成功して当たり前なわけです。その凡作を良作に押し上げているのが綾辻氏によるエピローグ。こういうラストのどんでん返し、大好きです。まさかあの数頁でこうまでひっくり返されるとはっ!

この『迷路館の殺人』に仕掛けられているのは、これまたミステリの定番「性別誤認トリック」です。このトリックは決して映像化できないトリック、小説でしか為しえないトリックとして、出版界にとって重要視されるべきものだと個人的に思っております。作家の力量が試されるトリック。その意味では鹿谷氏もよくやってくれたやもしれません。結果として凡作だったけれど。

まぁ、鹿谷氏もエピローグで仰っているように、作中作『迷路館の殺人』は犯人への告発がメインの役割を果たしているわけで、作品の可否は問題ではないのだと思います。だから、その辺りは目を瞑ってください(って、これまで散々「凡作凡作」叩いておいてそれを云うかっ!)。とにかく、作中作『迷路館の殺人』を読み終えてこの『迷路館の殺人』の位置付けを決定してしまうのは甘いということで。判ったかね、数年前の自分よ。

さて、次回は私の鬼門『人形館の殺人』です。この作品はダメなんです。もう今のうちに謝っておきます。ご、ごめんなさい。

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2007/02/19

『水車館の殺人』 綾辻行人

水車館の殺人 Book 水車館の殺人

著者:綾辻 行人
販売元:講談社
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あの中村青司が設計した水車館に訪れた突然の落雷と殺人。

現在と過去が交互に語られる中、明かされ繋がってゆくふたつの事件。

解き明かすは…島田潔。

20000HIT御礼だ!と勝手にお送りしております館シリーズ連続レビュー。さっそく第二弾『水車館の殺人』を上梓です。

あぁ、やっぱりお館様は最高だ。

『十角館の殺人』で「さぁ、どうだ!」と云わんばかりに私の度胆を抜いてくれた館シリーズ。一作目に傑作が出来上がってしまうと、二作目三作目は如何せん凡作が出来上がってしまうという出版界の負の約束事を、ここまで見事に裏切ってくれるとは!普通は五作目くらいまで泣かず飛ばずで、いきなり信じられないくらいのヒット作が生まれたりするものなのですが(その五作目に『時計館の殺人』がくるあたりに、もう鳥肌が立ちます)。

さて肝心の『水車館の殺人』レビューでございますが…これまた度胆を抜かれること間違いなし!手垢が付くほど再読を繰り返している私でも、島田潔によって真相が明かされる瞬間に“ゾクゾクッ!”としてしまいましたもの。この記念レビューは常時ネタバレアリですので、怪傑ズバットの如くネタバレしますが、ミステリのお約束「入れ替わり」を一人称でこうも巧みに仕掛けられるとは思っておりませんでしたよ!!

その叙述の罠には、解答を知っている再読者(私)が読んでも舌を巻くほど。『水車館』は親切設計になってまして、ラストの場面で綾辻氏が仕掛けた記述の罠をしっかり回収してくれているのですが(例えば342頁の「どうしたって、あの時のようにはピアノを弾いてやれない…」とか!)もうそんなに懇切丁寧に語ってくれなくたって読者は判ってくれるよ!と伝えたくなるほど、巧い。またもや「入れ替わり」の事実を告げられたときに5分程ページを捲る手をフリーズさせた私。もちろんフリーズが解けたときに捲ったのは解決編ではなく、これまで1時間かけて読み広げてきたページであったことを告白しておきます。

もう、この館シリーズを読めばミステリの主流トリックの殆どを知ることができると云っても過言ではありませんね!まさに、エンターテイナーです綾辻氏。

しかも、これまたミステリでお馴染みの「色覚異常」まで絡めてくるんですから…巧すぎる。「色覚異常」と絵画を絡めた清涼院流水氏の『ジョーカー』と『水車館』が頭の中で混線をきたしていた私は、ラストに『幻影群像』の詳細が明らかになったときに「あれ?」と思ってしまったものですが、それはご愛嬌ということで。

とにかく、凡作覚悟で読む必要なんて一切無し。『十角館』に負けないクオリティを持った『水車館の殺人』。心からの忠誠を込めてこう呼ばせていただきます。「お館様」、と。

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