■石持浅海

2017/05/01

『パレードの明暗 座間味くんの推理』 石持浅海

座間味くんシリーズお馴染みの短編集。

座間味君の一言でこれまで見えていた事件の様相が一変する…という趣向ですが、今回もちょっと強引なものがちらほら。毎回書いていますが、その(座間味くんが指摘した)ように考えることもできる程度の書き方なら良いんです。でも、同席のふたりが座間味くんの言うことが唯一無二の真実であると盲信してしまうのがとても気持ち悪い。座間味くん、結構無理なこと言ってるよ?という気持ちになるのです。

今回は「アトリエのある家」のロジックはとても綺麗でした。「キルト地のバッグ」も良かったです。

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2015/04/20

『わたしたちが少女と呼ばれていた頃』 石持浅海


『扉は閉ざされたまま』
でお馴染みの碓氷優佳シリーズ第4弾…ってことになるのでしょうか。番外編?

タイトル通り、優佳がまだ少女だった高校3年間を描いた作品です。とりあえず語り部(小春)による崇拝にも近い優佳の持ち上げが気持ち悪い。これに似た感情は同じく石持作品『玩具店の英雄 座間味くんの推理』でも感じて記事にしていますが、座間味くんにしろ優佳にしろ、そんな崇拝されるようなキャラだったか?と思ったら本作ではラストでしっかり落としてくれました。小春、その推理は本作でもっとも素晴らしい推理と言っても過言ではなくってよ。

優佳の持ち味なのかもしれない思い込みと決めつけをベースにした強引な推理。結果として優佳の想像した通りになったけれど、そうならなかった可能性や的外れだった可能性は無限です。なんにせよ、第三者による反論(議論)がないので。本シリーズはそういうシリーズだと思って割り切って読むべきでしょう。短編だしね。

それでも「握られた手」は良かったと思います。

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2014/03/22

『トラップ・ハウス』 石持浅海

トラップだらけのトレイラーハウスの中で、9人の大学生がwhy?とwho?に挑むという石持氏お得意の閉鎖空間もの。

「なぜ自分たちは閉じ込められたのか」という、自分に向けられた悪意の存在を確認していく設定は大好物です。仕掛けられた目覚まし時計のアラームと短いメッセージ、そこから犯人の真意を読み説いていくとか最高…なんですが、石持作品において最早お約束になってしまった論理の飛躍と強引さは尚も健在。ふたつめのメッセージからの推論が最も乱暴だったかな。

そして、これもいつものことですが、全く共感できない動機。ワザと…なんですかね?石持氏のインタビューとか読んだことないのですが、どこかでこの件について語ってたりしませんかね?ご存知の方がいらっしゃいましたら一報ください。

そうそう、ラストでいきなり推理ゲームがデスゲームになってしまったのも残念。もっと知的に終わらせて欲しかったものです。



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2013/11/13

『見えない復讐』 石持浅海

法人に対する復讐、復讐のための企業、スケールの大きなお話になって当然のテーマが吃驚するほどミニマムなお話に。ミニマムっていうかちまちま。幽霊を演出し出したときには「こいつら大丈夫か?」と渇いた笑いが出ましたとも。ははは。

とりあえず、『玩具店の英雄』でも感じた強引さが本作でも。田島が導き出した推理・推測が絶対の正解であると信じ、一切の反論なしに納得してしまうギャラリーにものすごく違和感。そういう考えもできるよね、で落とすことは許されないのだろうか。ちょっとリドルっぽいまとめにしてくれれば尚のこと素敵なのに。

そして、これも最近の石持作品にありがちなのだけれど、動機にまったく共感できない。彼女でもなんでもない、憧れの対象にすぎなかった女性のために殺人は犯せないと思うのだが如何だろうか。いや、ひとりだけならそういう勘違い男だったと納得できないこともないのだけれど、3人だからな3人。それとも勘違い男が3人、奇跡的に集まってしまったからこその復讐計画だったのだろうか。それにしても爆弾はちょっと…。

最後の非常階段での出来事にもぽかーん。どうしてそうなってしまったのか、その心の動きをまったく理解できませんでした。これでタイム誌に選出されるほどの経営者になれるっていうんだから世の中驚き。

うーん、ちょっと辛口がすぎるだろうか?いや、このくらいは妥当な一冊。

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2013/07/10

『八月の魔法使い』 石持浅海


あるはずのない工場事故報告書が巻き起こす勤め人ミステリー。たった一枚の、それも表紙だけの工場事故報告書からあれこれ想像逞しく推理してみせるそのシチュエーションは大好物ですが、如何せん「why?」の部分が弱くって残念。

「なぜこの工場事故報告書は用意されたのか」もそうだし、「なぜ魔法使いはこの告発を行うのか」も弱い。ネタバレするならば工場事故報告書は役員の追い落としのために用意されたものなのだけれど、この報告書トラップがうまいこと作動したと思えないのよね。今回の告発劇があって初めて有効活用されたような気がする。

会議室という密室で行われる役員たちの足の引っ張り合いが幼稚で面白味に欠けるのも残念。だからこそ魔法使いが今回動いたのだってことはわかっているのだけれど。

マックブックに関する駆け引きが本作の中でいちばんおもしろかったかなあ。

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2013/03/25

『玩具店の英雄 座間味くんの推理』 石持浅海

『月の扉』の座間味くんが美味しいものに下鼓を打ちながら既に解決したはずの事件に隠されていた裏側を読みとる…すっかり定着したパターン、7つの推理が冴えわたる短編集です。

が、相変わらず強引ですね。短編という「容量の制約」だと思いますが、果たして座間味くんが解き明かした裏側は本当に真実なのでしょうか?確かに座間味くんが指摘する「違和感」、それには納得しきりなのだけれど。そして、違和感がある以上、そこから事件の核心に迫っていくのは当然なのだけれど。果たして座間味くんが到達した地点が唯一の正解なのだろうか?と思わされること数々。

きっと、本作から登場した津久井操という女性、彼女が異常なまでに座間味くんを褒めて上げるからなのだろうけれど。座間味くんの推理を、発言を、彼女は全面肯定してしまうんですよね。それが「座間味くんだから」という理由で。きっと「容量の制約」がなく、座間味くんの推理にひとつでもふたつでも反論するページ数の余裕があればこう思うこともなかっただろうけれど。それでもやっぱり『月の扉』から始まる座間味くんシリーズが好きなので残念です。

ただ、「傘の花」はあまり強引さがなく綺麗だと思いました。逆に、表題作は「なぜ表題作になったのか?」と思ってしまったほど強引。きっと、座間味くんを指して「英雄」としたかったのだろうけれど。けれど、座間味くんほど「英雄」から程遠くに身を置きたい人はいないのだよ。

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2013/01/26

『彼女が追ってくる』 石持浅海


『扉は閉ざされたまま』『君の望む死に方』に続く碓氷優佳シリーズ、第三弾です。

犯人視点で描かれた本作。追ってくる「彼女」とはもちろん優佳…かと思いきや、追い掛けてくるのは被害者である「彼女」です。ダイイングメッセージ、死者が握るカフスボタン、なぜ「彼女」は犯人を示さないそのカフスボタンを握ったのか。その謎が物語の主軸になります。

が、もちろん優佳の推理のとっかかりはそんなところにはありません。『君の望む死に方』のレビューにも似たようなことを書きましたが、優佳の推理は「思い込み」が強くて強引なんですよね。確かに犯人の供述にはおかしな点があったかもしれない。でも、その発言があった瞬間に犯人を特定してしまえるほどの情報だったかと言えば「?」です。ネタバレになりますが、全ての女性が丁寧にスキンケアして寝るとは限らないからね!

まぁ、そんな強引さが推理…もしくは探偵役には求められているのかもしれません。探偵役など一生務めることのないだろう私にはわからないことですけれど。

そうそう、殺人の動機ですが(本作も)全く共感できないものでした。これについては優佳も「興味ない」的なことを言っていたのでまるっと同意しておきます。そもそも、感情なんてものは千差万別、十人十色、誰とも同じにはなれないし誰ともわかり合えないものですから、共感なんてものは不要なのでしょう。

ところで。表紙中央の彼女(おそらく犯人)が黒木メイサにそっくりだと思うのですがどうでしょう?黒木メイサと言えば何年か前に『扉は閉ざされたまま』が映像化されたときに優佳を演じてましたよね。あれ、観てみたいなあ。

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2012/02/04

『まっすぐ進め』 石持浅海



石持氏らしい日常系ミステリかと思いきや、途中で背負ったリュックを掴まれてぶんぶん振り回される思いを味わいました。
描かれる謎の全てが「正解のわからない謎」であり、思考の飛躍があり過ぎるような気もしないではありませんが、だからこそ自由に、自分がまっすぐ進んでいるのだと信じられるのだと思います。

しかし、石持氏の描く恋愛模様は素敵ですよね。

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2008/11/15

『ガーディアン』 石持浅海

ガーディアン (カッパ・ノベルス) Book ガーディアン (カッパ・ノベルス)

著者:石持浅海
販売元:光文社
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私にはガーディアン=守護者が居る

私に危害を加えるものには制裁を

私に殺意を覚えるものは…死を?

『耳をふさいで夜を走る』に続く石持浅海アナザーワールド。今回はガーディアンという特殊な存在を主題に据えて、母と子2つの物語を。

設定自体に違和感を感じることはなかったのですが…一段組に違和感。もうニ段組ノベルスは流行らないのでしょうか?同じ厚さでも圧倒的に少ない内容量、でも値段はいっしょなんだから騙された気分です。薄くて安くて良いじゃない。ハードカバ的扱いにしたいならハードカバで出してくれ頼む。

まぁ、本作がハードカバ向きの作品かっていうと微妙なんですが。前半の「勅使河原冴の章」は(きっと)ミステリです。メインの謎は2つ。何故彼は死んだのか?彼女を狙ったのは誰なのか?何故彼は死んだのか?については動機(?)当てになるのではっきり言ってどうでも良いのですが(しかも真相がわかることは一生ない)、もう一方についてもとても丁寧に描かれているので推理する暇もないですわからないでか。

そして後半「栗原円の章」…これはミステリじゃないよね?そして、ガーディアンと私のハートフルな物語でもない。なんだろう、いくらガーディアン=守護者とはいえこんな存在が自分の傍にあったら怖いと思うのですが。「おじいちゃんに護られて恥ずかしくないような人間になる」って確かにそうですが、いくら慈悲の心を持っていたって、恐怖という感情を知らない人が立派な人間になれるものでしょうか?

というわけで、「勅使河原冴の章」は愉しんで読みました。「栗原円の章」は頭を捻りながら読みました。石持作品=ミステリだと思って読まないことをそろそろ覚えなくてはならないのでしょうか?寂しいですね。

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2008/09/21

『耳をふさいで夜を走る』 石持浅海

耳をふさいで夜を走る Book 耳をふさいで夜を走る

著者:石持 浅海
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

僕はこれから3人の少女を殺しに行く

僕が創り上げた可愛い少女たちを

彼女たちが覚醒する前に

こんな石持浅海は読んだことない

印象だけで語るなら『BG、あるいは死せるカイニス』が一番近いかも。まさか石持・ロジック・浅海氏からシリアルキラーが産み出されることとなろうとは。

主人公・並木直哉が“なぜ”3人の少女を殺害せねばならないのか、その動機が隠されたまま進行する物語。石持氏の作品で、動機面で納得できたことはあまりないので(笑)そこを隠されてしまうと正直読むのキツイ。ミステリ小説の吸引力って“なぜ”“誰が”“どうやって”だと思うので。

では“どうやって”で愉しめば良いじゃん!という話なのですが、本作は“練りに練られたどうやって”を捨てねばならない事情ができてしまった…というところから物語が始まるのです。当然、行き当たりばったり。ミステリスキーの愉しみどころがどんどん減ってゆきますなぁ。だからこそのシリアルキラーなのですが。でもシリアルキラーの心情に興味ないよ。

その殺人劇のシナリオを書いたのは誰だ?という謎もあるにはあるのですが…それが表面化したころにはそんなのどうだって良くなってるし。だって、もう数えるほどしか人間残ってない。しかも、みんな頭悪そう。

この手の作品は所詮、好みの問題なので。シリアルキラー物が好きな方(得意な方)の評判を聞いてみたいです。石持浅海は人間が殺人者になる過程を描ききることができたのか。こちらとあちらを分ける線を踏み出すには…どんな覚悟がいるのでしょうかね?越えてみたらなんてことないなんて、嫌よ。

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