■坂木司

2016/09/02

『みんなの少年探偵団2』

江戸川乱歩没後50年(2015年)記念に発行された少年探偵団アンソロジー第2弾。有名作家揃ってます。

個人的ベストは大崎梢『闇からの予告状』でしょうか。(以降ネタバレします)孫世代の活躍ってのがいいですね。宝石へと辿り着く過程も丁寧ですし、怪盗二十面相を欺こうとココちゃんが仕掛けた罠も良かったです。正統派な一作。

次点は歌野晶午『五十年後の物語』ですね。五十年後がいつを差すのかが肝の叙述トリックです。うまい。七つ道具がスマホに劣るのはまあ仕方ないかと(笑)

坂木司の『うつろう宝石』も好き。探偵の老いに踏み込んだ作品が多くなってきたのは本格ミステリスキーの平均年齢が上がってきているからでしょうか(笑) 明智を盲信するだけでない小林少年というのも悪くないと思いました。

有栖川有栖『未来人F』はいつもの有栖川と明らかに違う、乱歩を意識した文章に名作を予感したものですが……メタでした。物語の世界からすっと引き離される感覚。残念です。

少年探偵団を謳ってますが、読んで楽しいのは間違いなく大人ですね。有栖川のメタオチなんて子どもが読んでもぽかーんだと思います。歌野の作品テーマでもありましたが、少年少女が胸躍らせる作品というのは今も昔もそう変わらないはずなので、少年少女には図書館でボロボロになっている少年探偵団ものを読んで楽しんでもらいたいものです。

あ、平山夢明はいつもの平山夢明でした。

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2016/06/26

『アンと青春』 坂木司

ベストセラーとなった『和菓子のアン』に続くシリーズ第2弾。デパ地下の和菓子屋さん「みつ屋」にやってくる人々が抱える謎と和菓子の物語。

個人的には少し残念な読了です。収録されている作品は5つなのですが、どれもこれも謎の方向性がマイナスで後ろ暗いんですよね。(ネタバレします)嫁姑問題や放射能といったテーマはこの作品の可愛らしいしい優しい感じと合わない気がします。和菓子だと思って食べたら中に詰まっていたのは辛子だった…みたいな読了感。

そして、一番気になったのがとにかく卑屈なアンちゃん。『アンと青春』というタイトルなので悩んだり苦しんだりを繰り返しつつ前に進むという作りになっているのはわかります。わかりますが、アンちゃんて結局前に進めたんでしたっけ?アンちゃん自身は成長してます。251pで椿店長が褒めたように。でも、アンちゃんは周りからの評価が欲しいのではなくて、自分が納得して認める自分になりたかったのでは?自己肯定感を得たかったのではなかったのでしょうか。その意味でアンちゃんは現状維持だと思うのですが。

そして、私は前作『和菓子のアン』の感想でアンちゃんに恋話がなかったのが良かったと書いたのですが、フラグが立ってしまいましたね。アンちゃんの成長=魅力が増したということなのだと思うのですが、恋はエッセンスとして匂わせる程度にしてあくまでもサクセスストーリーであって欲しかったという私の我儘です。坂木司の恋愛物語は好きなんですけどね。『シンデレラ・ティース』が大好きなんです。

和菓子の蘊蓄、食べ物の描写は素晴らしいです。表紙の和菓子もとにかく美味しそう。食べたい。なのでミステリ部分がとにかく残念です。フラグが立ったままということは続きが読めるということだと思いますが、第1弾のような感じに軌道修正してくれるといいなと願います。

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2015/08/30

『ホリデー・イン』 坂木司

『ワーキング・ホリデー』 『ウインター・ホリデー』からスピンオフ作品集。ヤマトの前ではすっかり子どもになってしまう進を読むのが好きなので、ふたりがいっしょに登場しないのは少し物足りないけれど、やっぱり良いキャラそろってておもしろい。すば抜けてジャスミン。

個人的には進とジャスミンが店の前で出会うシーンの描写が好き。生意気な進の視点からも、やさしいジャスミンの視点からも。わかったようなことを言うジャスミンに反発したくて、それが最後の一押しになったんだとしたら。進はしっかり男の子ですとも。

雪夜も嫌いじゃない。でも、関わりたくはないタイプ。ちょっと遠くから…舞台の客席の位置から観ていたい。役者ですよね。そんな役者な雪夜が「ジャスミンの残像」のラストでジャスミンにかけた言葉はいい。

知らなかったのですが映画化されてるんですね。正直観たい。キャスティングはどうかと思うけど。脳内キャスティングと全然違う。脚の綺麗なゴリ。なにより雪夜の綾野剛はちょっと…(綾野剛嫌いじゃないです。試写会で『天空の蜂』観てきましたが綾野剛、最高でした。でも雪夜じゃない)

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2015/02/08

『僕と先生』 坂木司

『先生と僕』の続編。変わらない先生と僕のふたりにミス研のメンバや怪盗が絡んで少しにぎやかになった印象。

良くも悪くも坂木司らしい日常の謎ものが5編。これといって印象に残る作品はないけれど、名探偵の言葉が深く突き刺さる「秋の肖像」は悪くない。とりあえず、被害に遭っておびえていたであろう○○に謝れ。

レディバードと二葉の関係…というか、レディバードの正体が明かされるまでシリーズは続くのかしら。きっと二葉と同じ大学に通う学生なんだろうなあと思いつつ、いつ出るか知らぬ続編に期待。大丈夫、『先生と僕』からも相当時間空いたんだから。

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2013/08/10

『ウィンター・ホリデー』 坂木司

小学5年生の息子と初めて過ごす冬。クリスマスにお正月、バレンタインにホワイトデー、互いを知らなかった時間を取り戻すかのように楽しんで過ごせる…のか?というわけで、『ワーキング・ホリデー』続編です。

やっぱり私は「お母さん」との異名を持つ進が年相応…どころか、むしろ幼くなっちゃう瞬間が好きなようで、ふたりで意地を張り合ったお正月の喧嘩にほっこり。ようやく出来たお父さん、ようやく会えたお父さんを独り占めしたくなっちゃう気持ち、わかります。

だから、バレンタインのコンビニで大和が言った言葉も好き。「『お父さん、迎えにきて』。それだけ言えば充分なんだよ」は名言。家族だから、お父さんだから、息子だから許される、信頼が省略させる会話って本当に素敵だなあ。

現在家族は「お父さんと進」と「お母さんと進」の二世帯。果たしてこの二世帯が一世帯になることはあるのか…は次のホリデーに期待でしょうか。

ところで、本作に登場した元ヤンのサクライさんって『和菓子のアン』に登場した桜井さんってことでよろしいか?学生結婚したんですね、おめでとう!

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2013/08/09

『ワーキング・ホリデー』 坂木司

『ウィンター・ホリデー』を読む前に再読してみた。そう、間違いなく再読なのだけれど、内容はすっかりこってり忘れていたのでとても楽しめました。

ある夜、ホストクラブ・ジャスミンに現れたのは小学生の男の子。その子が言う、「初めまして、お父さん」から新米お父さんの最高の夏休みが始まる。というお話なのですが、とりあえずミステリ脳な私はお父さんがお父さんじゃない展開を予想しましたとも。いつそんな展開になるのかと、最後の最後まで疑っていましたとも。感動が台無しですね!

それにしてもラスト。「帰りたくない」「だめだ」からの進の涙にやられましたとも。どんなにしっかりした子でも、いや、しっかりした子だからこそ。我儘とわかる自分の気持ちを素直に表現することに勇気が必要で、怖くて、だからこそこんな風に泣いちゃうんだろうなあと思ったら切なくてね。

でも大丈夫!ふたりには冬休みがあるから…ということで、今から『ウィンター・ホリデー』に取りかかります。こちらは間違いなく未読。さて、ふたりはどんな冬休みを過ごすことになるのでしょうか楽しみです。

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2013/03/23

『和菓子のアン』 坂木司


読書メーターで話題になっていたので読んでみました『和菓子のアン』。『シンデレラ・ティース』みたいなお話かな?と思っていたら、やっぱり『シンデレラ・ティース』から恋話を引いた…それでいてとても甘いお話でした。

何となく始めた和菓子屋さんでのアルバイト。デパ地下という場所柄、やって来るお客様は千差万別。その中には不可解な行動や不可思議な言動を繰り返す人もいて…という有りがちな舞台設定ですが、物語に添えられる和菓子の蘊蓄というか和菓子トリビアがまさに「いい味」出してるんですよね。

ミステリとしては表題作の「和菓子のアン」が一番良かったかなと思うけれど、正直、謎解きよりも和菓子に関する描写の方が印象に残ってます。というか、美味しい和菓子が食べたい。大福よりは上生菓子をいただきたい気分。今ならきっとその和菓子にどんな趣向が凝らされていて、どんな風に楽しんだら良いか…最終的には美味しくいただけば良いのだけれど、とにかくいろいろ考えを膨らませつつ楽しいおやつの時間にできると思うのです。

そうそう、本作はアンちゃんに恋話らしい恋話を用意しなかったこと。それがとても良かったのだと思います。

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2009/03/30

『短劇』 坂木司

短劇 Book 短劇

著者:坂木 司
販売元:光文社
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ささやかな悪夢を、お目にかけましょう

…醒めないかもしれないけれど

坂木司が贈る、奇想短編集

「本が好き!」で連載された坂木司氏のショートショートをまとめた奇想短編集。収録されているのは26作品、恋愛あり、コメディあり、ホラーあり、悪夢あり。坂木氏の引き出しの多さを実感する1作。

個人的には冒頭「カフェラテのない日」と「雨やどり」が好きで。個人的坂木ベストが『シンデレラ・ティース』な私としては、もっと坂木流恋愛小説が読みたかったのだけれど…恋愛モノはこの2編だけでしたね残念。「カフェラテのない日」に登場するバリスタは格好良すぎで胡散臭さ抜群。「雨やどり」に秘められた想いとパイナップルは痛過ぎて。でも、出来れば長編に仕立てていただきたいものです「雨やどり」。

あとは基本的にホラーが多いような。後味の悪い気味の悪い気持ちの納まりの悪い作品が続きます。坂木氏らしくないと云えばらしくない。でも、人間誰しもこのくらいの“悪”は心に秘めているもので。ここまでの数を一気に披露されると若干うんざりしますが、連載として定期的にエッセンスとして読むならば、上質。でも、ホラー作品からタイトルを挙げてレビューを披露したいと思うような名作は見つけられませんでした残念。

あとがきで示された「この本の中で、なぜか繰り返し出てくるモチーフがあることを」。すぐには想起できなかったのだけれど、そのモチーフとは○ですか?人は○を見る度に、それを覗き込まずには、それに手を差し込まずには、その先にあるものを思わずにはいられない。そんな不思議な○に堕ちる日がやってきたとしたら?

って、書いてみましたが…坂木氏の狙いを○から拾い上げることはできませんでした。私ってばダメ読者。

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2009/01/21

『夜の光』 坂木司

夜の光 Book 夜の光

著者:坂木 司
販売元:新潮社
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私はスパイ、コードネームはジョー

私には3人の仲間が居て

皆、それぞれの戦場で闘っている

スパイ小説かつ青春小説、えっそれってどういう新ジャンル?と思った坂木司氏の新刊『夜の光』。読んでみて納得、これはスパイ小説かつ青春小説だわ。

普通に学生生活を謳歌していたならば、決して集うことのなかった4人のスパイ。本当ならば自分独りで自分の戦場で、孤独な闘いを続けるはずだったのに。天文部に入ってみようと思ったがばかりに…出逢ってしまったじゃない本当の仲間に。

それぞれが、それぞれに、悩みを抱えて。それは家族のことだったり、定まらない自分であったり、恋だったり。スパイ同士は決して自分の戦場のことを語らない戦況を尋ねたりもしない。けれど、一番辛いときに一番しんどいときに、狙い定めたかのように援護射撃をしてくれるから。それはつまらないジョークだったり、美味しい野菜だったり、薫り高き珈琲だったり。

そして、4人のスパイを遙か彼方から照らす夜の光。何億光年か先に存在した星を静かに眺めているうちに、また頑張ろうって思えるから。まだ闘えるって思うから。だから4人は集う星の下に夜の光に。

坂木司氏らしいミステリもテイストとして残されてはいるのだけれど。この作品の良さはそこではないと思うから。(個人的には「スペシャル」のピザの謎が好き。よくできている私もいつかやってみたい)

ゲージの軽いノリと、ジョーの丁寧な訂正が好き。ギィが珈琲を淹れるたびに私は手元のマグカップを口に運んでいたし、ブッチの作る野菜なら食べても良いと思った。偏食の大家たる私が。そして、田代のような話のわかる教師がこの世に居るわけないと哀しくなった。

実は私もスパイ業を営んでいて。私にも同じ戦場で闘う仲間が居ることを再確認して、ちょっと笑った。

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2008/05/19

『先生と僕』 坂木司

先生と僕 Book 先生と僕

著者:坂木 司
販売元:双葉社
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「よかったらバイトしない?時給の高さは保障するよ」

恐がり妄想家大学生とミステリ大好き中学生

そんなふたりの出逢いは…えっ?これってナンパ?

アフィリを表示させるべくタイトルである『先生と僕』を入力したら…卑猥なビデオのアフィリが山のように出てきました(汗)でも、決して卑猥な作品ではありません。坂木司らしいハートフルな日常の謎モノ、それが本作『先生と僕』でございます。

大学生と中学生。この組み合わせを「先生=大学生、僕=中学生」だと考えるのは純文学の世界だけ、本作で描かれる関係は「先生=中学生、僕=大学生」です(いや、こっちだって定石と云えば定石なんですが)。そして僕が教わるのはミステリ、(できれば)人の死なないミステリ。

最も好みだったのは表題作「先生と僕」でしょうか。書店に並ぶ雑誌に立てられた怪しげな付箋。付箋に書かれた電話番号にコールすると…えっ?古本屋??古本屋に対する嫌がらせに過ぎないのか。それとも、その付箋にはなにか重大な秘密が隠されているのか?この謎はなかなか面白い。そして、先生(探偵)たる隼人くんのロジカルな思考も素晴らしいです。

タイトルが秀逸なのは、文句なしで「額縁の裏」ですよね。ギャラリー詐欺の手法を暴く作品に付すタイトルとして、相当レベルが高い。中身は…怪しいでしょ明らかに。いつも冷静で大人びた先生が、ちょっとだけ見せる素顔がめんこい一作。

そして、作中で隼人くんが二葉さんに薦める(できれば)人の死なないミステリが秀逸ですね。古典作品ばかりなので、読み落としている作品も数点ありましたが…どれも名作です。「挿絵と旅する男」とかまた読みたい。この『先生と僕』に取り掛かる前にこの名作たちを読むのも一興かと。

坂木氏はもうシリーズを擁しないのでしょうか?ノン・シリーズの短編集も上質な作品ばかりで嬉しいのですけれど。あっ、坂木氏の長編っていうのも読んでみたいですね!!

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