■有栖川有栖

2017/08/16

『狩人の悪夢』 有栖川有栖

作家アリスシリーズ最新長編。

アリスが懇意にするホラー作家の自宅に招待され、そこで死体の第一発見者となるという定番パターン。(ここからネタバレします)ラスト、火村の鬼気迫る狩りは素晴らしかったですね。ここまで熱くなる火村は珍しいような気がしました。そして、最終的に犯人の心に刺さったアリスの「作家として」の言葉。バディものであることを強く感じた1作でした。

タイトルの通り「悪夢」がテーマなので遂に火村の悪夢が明らかになるかと少しだけ、すこーしだけ期待しましたがもちろん何もわかりませんでした。ですが、エピローグで火村の悪夢に踏み込もうとするアリスの言葉、ふたりのやりとりを読んでいて火村の過去は明らかにならぬままシリーズが終わるかもしれないと感じました。アリスにとって大切なのは火村がこちら側で踏みとどまることであって、火村の過去を知ることじゃないんですよね。興味はあると思います。踏みとどめるために火村の過去を暴くことが必要ならするでしょう。でも、平時なら(火村が安定しているなら)それを穿り返そうとはしないのがアリスなんですよね。

文化の日に嬉しい予定が入ったので、次回作はその様子からお願いします。事件に巻き込まれるのは予定がすっかり終わったあとにしてください…ね?

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2016/09/02

『みんなの少年探偵団2』

江戸川乱歩没後50年(2015年)記念に発行された少年探偵団アンソロジー第2弾。有名作家揃ってます。

個人的ベストは大崎梢『闇からの予告状』でしょうか。(以降ネタバレします)孫世代の活躍ってのがいいですね。宝石へと辿り着く過程も丁寧ですし、怪盗二十面相を欺こうとココちゃんが仕掛けた罠も良かったです。正統派な一作。

次点は歌野晶午『五十年後の物語』ですね。五十年後がいつを差すのかが肝の叙述トリックです。うまい。七つ道具がスマホに劣るのはまあ仕方ないかと(笑)

坂木司の『うつろう宝石』も好き。探偵の老いに踏み込んだ作品が多くなってきたのは本格ミステリスキーの平均年齢が上がってきているからでしょうか(笑) 明智を盲信するだけでない小林少年というのも悪くないと思いました。

有栖川有栖『未来人F』はいつもの有栖川と明らかに違う、乱歩を意識した文章に名作を予感したものですが……メタでした。物語の世界からすっと引き離される感覚。残念です。

少年探偵団を謳ってますが、読んで楽しいのは間違いなく大人ですね。有栖川のメタオチなんて子どもが読んでもぽかーんだと思います。歌野の作品テーマでもありましたが、少年少女が胸躍らせる作品というのは今も昔もそう変わらないはずなので、少年少女には図書館でボロボロになっている少年探偵団ものを読んで楽しんでもらいたいものです。

あ、平山夢明はいつもの平山夢明でした。

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2016/06/17

『鍵の掛かった男』 有栖川有栖

ようやく読めた作家アリスシリーズ長編。2016年本ミス7位、このミス8位です。

本作読了で現在出版されている作家アリスシリーズはコンプリートです。その上で、これまで発表された作品のなかで最もアリスが活躍したお話だと言いたい。鍵の掛かった男、その過去のおおよそをアリスひとりが解き明かしました。拍手。今回はアリスと火村を意図的に対照的な存在として書いてますよね。静のアリス、動の火村。実際に各地に移動し、聞き込みをしたのはアリスですが、私はやっぱりアリスが静だと思います。静のアリスだから聞くことのできた話がたくさんあったと思うんですよね。

それでもやはり言わせて欲しい。男の過去を追うことに重点が置かれミステリらしい展開が少なかったのは残念。火村がホテルに到着し、チョコレートの件を指摘し他殺説(ミステリ)にぐいと近づいた加速感は良かったです。火村が動だと思う根拠はここですね。

あと、アリスの単独行動が多くてアリスと火村のやりとりが少なかったのも物足りなさを感じる一因ですね。アリスと火村の気の置けない会話がとても好きです。今回、笑わずにはおれなかったのは400pの火村のこんな一言。(事件の真相に触れています。ネタバレ注意) 「ヤッホー、パパだよ。嘘だと思うならDNA鑑定しよう」とかどんな調子で言ったのか。斎藤火村のバリトンで是非。

うーん、おもしろかったんだけど、もっとミステリミステリしている作品が読みたい。密室とか。『鍵の掛かった男』なんて、密室が次々に登場しアリスによる密室講義が始まってもおかしくないようなタイトルだと思いません?

それにしても意外と探偵もやれるアリスが最も近しい男に掛かった鍵を開けるのはいつなんでしょうかね。

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2016/05/28

『怪しい店』 有栖川有栖

(怪しい)店を舞台にした作品をまとめた短編集。ドラマ化された「ショーウィンドウを砕く」も収録されています。ドラマはhulu配信作も含めてとても楽しく拝見しました。火村のサイコパス設定はどうかと思いましたが、斎藤工さんのバリトンが素晴らしかったので大満足です。作家アリスはドラマ化に相応しい作品がまだまだたくさんあるのでぜひ続編を。

さて、本作の収録作は5篇。ミステリの完成度では「古物の魔」がベストでしょうか。明らかに怪しい容疑者と鉄壁のアリバイ、犯行現場の違和感に監視カメラの謎。それらが見事に解き明かされていたと思います。

表題作「怪しい店」はあやしい店NO.1ですが、個人的には冒頭の<エルシー>にまつわる謎の方が好きです。最後のICレコーダーに関する推理は少し文章がまわりくどかったかも?作中アリスの気持ちになりました。

「潮騒理髪店」はシチュエーションも提示された謎も素晴らしかったですが、火村が導き出した真相が微妙。それだけ追い詰められていたのかもしれませんが。まだDNA説の方が納得できます。

改めて有栖川作品は読みやすい。作中で人畜無害を評されたアリスのやわらかく優しいところが表現されている作品が多いように感じました。火村とアリスの変わらないやりとりもいい。作家アリスもので未読なのは『鍵の掛かった男』だけなのですが、もっともっと読みたいです。

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2016/02/13

『高原のフーダニット』 有栖川有栖

ドラマに触発されて長らく未読だった本作をついに。作家アリスシリーズは『怪しい店』『鍵の掛かった男』も未読です。

中編3作が収録されておりますが、「ミステリ夢十夜」は異色というかファンサービスと感じましたがいかがでしょう。火村とアリスとシリーズお馴染みのキャラクタたちが舞台上でコント(演劇)を繰り広げている脳内変換で読みました。火村はやるとなったら真面目に演技しそうですが、やるとなるまでに粘り強い交渉と駆け引きが必要…というかやりませんよねやっぱり。

残る2編は個人的に惹かれるところはなく。「オノコロ島ラプソディ」の嘘に関する部分はアンフェアというかバカミス一歩手前というか。個人的にはかなり微妙。「高原のフーダニット」もタイトルにまでなっているフーダニット部分が弱いというか(ここからネタバレします)女性だから○を持っていて当然という部分には同意しかねますね。身だしなみに気を使う女性だとしても、家から歩ける範囲をバードウォッチングするのに○を持っている可能性はそう高くないと女性だから思います。

とりあえず、野上刑事の株がぐんぐん上がった1作。

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2016/01/14

『白い兎が逃げる』 有栖川有栖

ドラマ化にともない未レビュー作品を再読中。シャングリラ十字軍が登場するようなので本作収録の「地下室の処刑」も映像するかもしれませんね(『暗い宿』収録の「異形の客」は確定)

収録されているのは中短編4作ですが、際立った名作はない印象。ただ、「不在の証明」や表題作「白い兎が逃げる」のような新たな発見、証言で事件の様相ががらりと変わる様を読むのは好きです。まあ、せっかくの双子ならもっと凝ったやつが読みたい(そんなときは『マジックミラー』

「比類のない神々しいような瞬間」はとにかくタイトルが好きです。でも、犯人を追いこむ○○の○○って偶然ですよね…。それがなかったら犯人のアリバイを崩せなかった可能性はいかほどか。すこし消化不良です。

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2016/01/07

『朱色の研究』 有栖川有栖

朱色を物語の柱に据えた作家アリスシリーズ長編。ドラマ化を祝って未レビュー作品を再読中。

火村とアリスがマンションの一室に呼びだされ、死体を発見。マンションまでの道すがらにすれ違った重要参考人の証言をもとにエレベータのトリックを解くまでのスピード感が好き。ですが、(ネタバレします)捜査の枠外に出るために一旦疑われて捕まってみるとかどんな推理小説…と思ったら推理小説だった。理解はできますがよく考えなくても意味不明な行動ですよね。夕陽に唆されてしまったと言えばそれまでですが。

動機についても微妙です。突発的な殺人だと言うなら理解できますが、一応計画殺人(の中の突発殺人)なので。

それでも、火村の悪夢に触れるシーンや、殺人者を裁くということを火村がどう考えているのかが語られるシーン、そして火村とアリスの掛け合いなど長編でなくてはなかなか描写しづらいシーンが多いのでとても重要な作品だと思います。ドラマのトレーラーで「人を殺したいと思ったことがあるか」と火村に尋ねる女子大生が映っているのでこの作品もドラマ化されるのでしょうか。たのしみです。

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2016/01/04

『46番目の密室』 有栖川有栖

祝ドラマ化

ということで、未レビュー作品を再読。まずは作家アリスシリーズ第1弾『46番目の密室』。初登場作品とは思えないほど火村のパーソナリティがしっかりしています。1992年出版ということは24年前!?ですが、最近の作品に登場する火村と性格も口調もそう変わらず違和感ないです。すごい。そして、火村の犯罪に対するスタンスも本人の口から明確に語られているので、それを押さえておく上でも重要な作品。とりあえず、美しいかどうかは火村にとっては些事だと思います(と、ドラマ開始前から一番不安なことをぶっ込んでみる)

密室トリックに関してはあとがきで作者本人が述べているように、地味です。(ネタバレします)目撃者がいるとあっさり破綻する程度のものです。だから、さあ読め!これが有栖川有栖の密室だ!という作品ではないです。反対に、これも作者自身が述べていることですが、密室のトリックがわかったから犯人がわかるというものでもなく、トリックを使用可能だった者から犯人を特定する一手はあくまでも(足跡の)ロジックという、これが有栖川有栖のロジックだ!という作品になってます。この安定安心のスタイルがとにかく嬉しい。

とりあえず、天上の推理小説の一歩たる46番目の密室がどんなトリックだったのか私、気になります。そして、動機はあれじゃないとダメだったのだろうか。

ドラマのキービジュアルが漫画版『46番目の密室』表紙のそれなので、ドラマでも本作やるのでしょうか。雪降る軽井沢ロケ、今ならやれますね。たのしみです。

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2015/07/25

『菩提樹荘の殺人』 有栖川有栖

表題作の中編を含む4作を収録した作家アリスシリーズ。<若さ>が共通のモチーフ。

個人的にはアリスも知らない学生時代の火村を描いた「探偵、青の時代」がベスト。火村が車の下を覗いた理由がまさしく火村でうまい。

あとがきで有栖川氏が「火村英生の語られぬ過去についても、今はまだ知らないが、いつか突然に知る瞬間がくるかもしれない」と語っているのだけれど、もうその瞬間は来たでしょうか。火村の過去が知りたくて読んでいる部分が結構(割合を書いてしまうと怒られそうなくらい)あるので、読めないかもしれないとか嘘。けれど、それが描かれたときは作家アリスシリーズが終わってしまうときなのか。学生アリスも終わりが見えているし…私が死ぬまでにどうかひとつ。

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2014/03/19

『Mystery Seller』


とっておきの謎、売ります。
がコンセプトのALL書き下ろしアンソロジー。

個人的には有栖川の「四分間では短すぎる」がベスト。某古典名作の本歌取り、もう単純に「うまいなあ、さすが有栖川だなあ」という感嘆ですよ。そして、作家アリスと火村がやっても成立しそうなお話だけれど、学生アリスたちが年代ものの下宿で膝を突き合わせてやるからこその味がある作品だなとも思ったり。

米澤穂信の「柘榴」も好き好き。ただ、ミステリでは無いような気がするのだけれど…このアンソロ、他にもミステリ?と首を傾げたくなる作品があるのだけれど(島田荘司とか島田荘司とか)ミステリをどう定義しているのだろうか。どこかに提示してくれればより親切なのに。

麻耶の「無くした御守」は素なのか素じゃないのかとても気になりますが、そこを投げっぱなしにしてこその麻耶だなあ、と。

そして何より、作家ごとの著作リストがもう親切でたまらない。このリストだけでも価値のある、そんな一冊かと。

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