2009年4月 2日 (木)

『推理作家になりたくて 謎』

推理作家になりたくて〈第6巻〉謎―マイベストミステリー Book 推理作家になりたくて〈第6巻〉謎―マイベストミステリー

販売元:文藝春秋
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推理作家になりたくて

推理小説を貪り読んだあの頃

自薦短編と大好きな短編を推理作家がご紹介

泡坂妻夫氏の訃報を聞いて、「DL2号機事件」が読みたくなって。『亜愛一郎の狼狽』も所有してはいるのだけれど…せっかくなら有栖川有栖氏や法月綸太郎氏の作品も読める本短編集で、と。

とりあえず冒頭、有栖川有栖氏の「望月周平の秘かな旅」から。タイトルから丸判りですが、学生アリスシリーズ望月周平スピンオフ(?)作品でございます。学生アリスシリーズの短編はこのトリアタマが記憶しているだけでも4編になるので…そろそろ短編集が出てもよろしいのではないかと思うのですが如何でしょう有栖川氏?とにかく、少しセンチで少しミステリな本作。ミステリ部分については江神さんが早々に解かれたようですが(というか誰でも解かる…しかし正解はない)それに沿ってモチさんがとった行動が。いつもの元気なモチさんとは少し違ったセンチな1作。

そして登場順、次に惹き込まれた作品が小杉健治氏の「原島弁護士の処置」。小杉氏、地味に読んだこと無くてそれでも逆転裁判が大好きな私としては、法廷モノミステリも良いな、と。法廷モノってどうしても映像作品の印象が強い。読者を法廷内で驚かそうとすると、どうしてもアンフェアな書き方になるんじゃないだろうか、とも思うし。でも、論理を築き上げるという意味では最高の場所、シチュエーションだよな…と妄想すると新ジャンル開拓できたようで嬉しい。法廷ミステリ、読みます。

そして、泡坂妻夫氏「DL2号機事件」。“日本のチェスタトン”の異名を取った泡坂氏の訃報。ブラウン神父よりも亜愛一郎を手に取ったのが早かった私としては、逆説といえば泡坂氏なんです。って、本作が逆説バリバリか?と問われるとそうでもないんですが。でも、久しぶりの亜愛一郎は至福でした。泡坂氏のご冥福をお祈りいたします。

ところで、「DL2号機事件」からもれなく「DL6号事件」を連想してしまう私はどんだけ逆転裁判スキー?

あと、泡坂氏を推薦(?)した加納朋子氏の「最上階のアリス」も愉しませていただきました。さすが貫井徳郎氏の嫁(笑)

そういえば本短編集には江戸川乱歩の「挿絵と旅する男」も収録されていて。坂木司氏の『先生と僕』を読んだときに、「挿絵と旅する男」を再読したいな…と思ったのが脳内に残っていて。それが本短編集を選んだ最大の契機だったかもしれないですね。

って、法月綸太郎氏「ロスマク」レビューしてない!!っていうか、今日はレビューというより思い出話ばっかりだ。でも、この『推理作家になりたくて』は第6巻が最も素晴らしいと思います。いろんなミステリが読みたいわ、という方にお薦め。本当にいろんなジャンルのミステリが詰まってます。ナビ本としてどうぞ。

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2009年2月12日 (木)

『虹果て村の秘密』 有栖川有栖

虹果て村の秘密 (ミステリーランド) Book 虹果て村の秘密 (ミステリーランド)

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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父親は刑事、自分は推理小説家になりたい僕と

母親は推理小説家、自分は刑事になりたいユーと

夏休み、ふたりが出遭った事件とは?

ミステリーランドもコンプ出来てないよなぁ、それどころか『銃チョコ』以来は新刊チェックすら忘れてた、あら北村薫はアリスモノなの?読まなきゃ、っていうか殆ど配本進んでないじゃない!と思ったとか思ってないとか。今日は有栖川有栖氏のミステリーランド第2回配本『虹果て村の秘密』をレビュー。

『虹果て村の秘密』と題しておきながら、「虹の麓には宝物が埋まっている」を使った冒険ものか?と思わせておきながら、密室殺人モノの本作。行間の広さや文字の大きさは児童向けですが、内容はきっと児童向けではない。だって、その推理はロジカル。

物語の主人公は「父親は刑事、自分は推理小説家になりたい」僕と、「母親は推理小説家、自分は刑事になりたい」ユーと。男の子と女の子、ふたりの小学生探偵が大人の力を借りながら…最後の最後は自分たちの力だけで…殺人の罪を告発する物語。

虹果て村には、ある意味お約束とも云える「殺人事件など扱ったことはございません」駐在さんと、新米(イケメン)刑事休暇中が居て。土砂崩れで警察の介入が遅れる中(古典!)虹果て村内部に「犯人を見つけてやろう」と思っていた人物は彼ら2人しかおらず。彼らは推理小説家になるために、刑事になるために、夢を叶えるために、よく動き、よく観察し、よく考えていたから…だから少し(いや、かなり)非現実的だけれど、事件を解決した賛美は彼らのものに。

大人が読むと少し物足りない内容でしょうか?ロジックの道筋は犯人と対峙したときに明かされますが、ある意味「天啓」のような閃きに近いものだったので、その道筋ができあがる過程が見事に抜けているのが残念(むしろ一方は寝ておった)。犯人を怪しむべき契機はきっと「あれ?」と思います。「えっ、この人、云ってることおかしくね?」系ね。

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2009年1月27日 (火)

『火村英生に捧げる犯罪』 有栖川有栖

火村英生に捧げる犯罪 Book 火村英生に捧げる犯罪

著者:有栖川 有栖
販売元:文藝春秋
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これは火村英生に捧げる犯罪だ

とっておきの探偵に

きわめつけの謎を

ようやく読むことができました火村&アリスシリーズの新刊『火村英生に捧げる犯罪』。タイトルは秀逸、内容は…有栖川作品に多いですよねタイトルが秀逸すぎてパターン。

8つの短篇・掌篇が収録された本作。趣向やトリックは様々。これまでの短編集以上にバラエティに富んだ1作だったことは間違いなし太鼓判を押します。

個人的に好みだったのは「あるいは四風荘殺人事件」。これもまたタイトルが秀逸。「あるいは」が良いですよね、「あるいは」が。内容もまた趣向が凝らされていて。アリス&片桐の癒し系コンビが火村の元に持ち込んだ、とある殺人事件。まるで推理小説のように閉ざされた山荘で、まるで推理小説のように雪密室に彩られた謎を、まるで推理小説のように“名探偵”と“警部”が手を組んで解決する…はずだったのだが。長編でもいけるんじゃないかと思った本作、館モノと呼ぶのが相応しい、有栖川作品初の館モノか!?

あとはやっぱり掌篇が好きで。有栖川氏の作品は短ければ短いほど良いなぁ(失礼発言)「鸚鵡返し」が良い。そんなしょーもないトリック仕掛けるなよ(笑)と犯人の肩に手を置きたくなる1作。「悪意と善意の顛末」はタイトルが好き。内容は…コナソの2時間スペシャルかと思った(こんな阿呆な犯人居たんだ、の意)1作。

では、短篇はと言いますと…「長い影」は綺麗にまとまってましたね動機が自然。時効の停止なんていう社会派(?)ネタを有栖川氏が書くとはおもっておりませんでした。社会派とうよりベタネタか?そして表題作「火村英生に捧げる犯罪」と「殺風景な部屋」ではアリスが活躍。茅野&森下に密かに莫迦にされるアリスが可哀想ですが(ただし、すべて真実)火村がアリスを連れまわすのには何か理由があるはず。きっとたぶんね。

というわけで、タイトルがなによりも秀逸だった本作。有栖川作品は掌篇が大好きなんだけれど…たまには長編が読みたい。国名シリーズで長編、いっちょよろしくお願いします。

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2008年11月 1日 (土)

『ダリの繭』 有栖川有栖

 ダリの繭 ダリの繭
販売元:セブンアンドワイ
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ダリに心酔し、ダリを愛した男が死んだ

象徴であるダリ髭までもが消え

火村は幻想から真実を救い上げることができるのか?

せっかくのダリ風表紙を表示すべく、今日はセブンアンドワイアフィリで。「ダリ?誰それ?」という方(あまりいらっしゃらないと思うが)も、この表紙を見れば一目瞭然かと。

異質な殺人現場。けれど、残された謎は至ってシンプル。誰がダリ社長を殺したのか?

新情報が出るたびに、新証言が出るたびに、二転三転する犯人候補。正直、捜査陣が踊らされている感が強かった。けれど、現実ってこういうものなのでしょうね。ひとつひとつ可能性を潰していって、最後に残ったものが真実。しかし、残された真実は“あの有名な台詞”のように意外性のあるものではなく。

なので、本作には理論の飛躍はありません。最後に火村に舞い降りた夢のお告げ(?)は飛躍と呼べるほどのものではなく。関係者の誰でもないのなら、もう彼しか居ないのです。

けれど、有栖川氏が書きたかったはそういう物語ではなかろうか、と。だって、残された謎は至ってシンプル。殺人現場はひとつだけ。誰がダリ社長を殺したのか?

それでも、やっぱり作家アリスは短編の方が好きです。ついつい「長い」とか思ってしまった我慢の足らない仔。それでも最後まで読めたのは火村♥アリスの新婚さんごっこのお陰だったりします。

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2008年10月27日 (月)

『妃は船を沈める』 有栖川有栖

妃は船を沈める Book 妃は船を沈める

著者:有栖川有栖
販売元:光文社
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船乗りは船に女性の名をつけるという

けれど、ここに船を沈める魔性の女がひとり

火村英生は船を沈めることなく、岸まで辿り着けるのか

「船を沈める」「妃(=女)」『セイレーンの沈黙!?』と思ってみて、それは作家アリスの作品名だったと気付く。そんな執筆ペースの早い学生アリスの作品『妃は船を沈める』が本日のメニューです。

本作はひとりの“魔性の女”を巡る2つの中編を幕間を挟んで繋ぎ合わせた異色長編。ジェイコブズの名作『猿の手』をモチーフに据えつつ、描かれるのは現実的な幕引き。もちろん幕を引くのは火村英生。

今回、新キャラが登場しましたが、彼女(あっ、彼女って言っちゃった!?)の火村英生観には鋭さを感じます。特にネクタイの件。火村が臨床犯罪学者として殺人犯を追いかけるのには理由があり、その理由こそ最大のミステリですが…本作、少しこの件に踏み込んだ?それともミスリード??

さて、ここからネタバレします。この警告文も久しぶり。

個人的に、お妃様が犯人って納得ゆかないんですが、皆様どうですか?「猿の手」側で限りなく黒だった彼女を捕らえられなかった→「残酷な揺り籠」でリベンジという構図も解らなくはないですが。彼女はいつまでも“魔性の女”で有り続けて欲しかった。火村が“あの女”と言ったら彼女みたいな展開までは期待しないから(笑)

殺人犯は火村の手にかかると(その謎解きに多少の無理があっても)自然と罪を認める…なんて記述が多用されておりましたが、「残酷な揺り籠」の火村の推理はやっぱり弱いと思います。読了後に「そうだったのか!」と膝を叩けなかった。そして、火村が犯人をどう追い詰めるべきか悩んだ理由も解らず。だって、彼女はもう“魔性の女”じゃなくなってしまったのに。“ただの女”が犯した犯罪なら、これまで充分に暴いてきたじゃない。

どうも納得のゆかない終焉。幕間と『猿の手』論争が面白かったと書いたら怒られますか?

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2008年10月18日 (土)

『海のある奈良に死す』 有栖川有栖

海のある奈良に死す (角川文庫) Book 海のある奈良に死す (角川文庫)

著者:有栖川 有栖
販売元:角川書店
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「行ってくる。『海のある奈良』へ」

そう言って手を振った友が死んだ

一体誰が?『海のある奈良』とは一体何処に?

別に長時間通勤しているわけじゃないのに(地下鉄には15分くらいしか乗らない)さくさく読める通勤本。他の誘惑がないからでしょうか。ぺよんとか。

この『海のある奈良に死す』を読むたびに『セイレーンの沈黙』はいつ出るんだろう?と思います。半年がかりで書き上げた五百枚の書き下ろし長編…読みたい。でも、『女王国の城』が出たときにこれ以上は言わないって決めたんだ。次まであと5年くらいは待てるって思ったんだ。自重。

本作は比較的ネタを覚えていて…というか覚えすぎていて、『海のある奈良』という言葉が登場する度に該当地が日本地図でピカンピカンと点灯してくれました。アリガタイワァ。地図と言えば、故・赤星楽氏の『アリバイの鐘』は読んでみたかったですね。同じ頭で考えてるから当たり前なのですが有栖川有栖氏(実写)が思いつきそうなネタだと思いました。こういう与太話(作中表記)好きです。

さらにさらに覚えているといえば、○○○○○○効果について知ったのも本作だったように思います。大してネタバレじゃないですが、なんとなく伏せてみる。きっと火村がキャメルを吸う度に私も煙草が吸いたくなるのはこれなんじゃないかと思ったり。街でキャメルを吸う人を見る度に「火村発見!?」かと思うのですが、もちろん一度も発見できたことはありません。

それにしてもトラベルミステリ度の高い本作。歴史のお勉強までできちゃったりして。読んでいて幾度となく「初期有栖川って感じ!」と興奮。(ほとんど)歳をとらないアリス&火村ですが、心なしか若いような気さえします。腐女子フィルタですか?

そんな若々しい火村がうなされるシーンも挿入されていて、作家アリスシリーズの模範となるような1冊。朝井女史も登場するよ!

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2008年9月14日 (日)

『絶叫城殺人事件』 有栖川有栖

絶叫城殺人事件 (新潮文庫) Book 絶叫城殺人事件 (新潮文庫)

著者:有栖川 有栖
販売元:新潮社
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6つの迷宮の先にあるのは

殺人事件

火村&アリスはこの迷宮を抜け出せるのか?

『暗い宿』あとがきで有栖川氏が仰っていた怪しい○○シリーズのひとつがこの『絶叫城殺人事件』でしょうか?末尾に「殺人事件」と名のつく作品が収められた短編集でございますが、かならず「~亭」とか「~荘」といった建物を表す名称とセットになっているあたり有栖川有栖の館シリーズと言えなくもないような。

個人的な好みは「黒鳥亭殺人事件」でしょうか?最近は後味の悪いミステリを気に入る傾向にあるようですね私。病んでいるのかしら?でも、作中に自然な形で登場する○○から火村が真相に到達するあたりは秀逸だと思います。あと、アリスがゲーム(二十の扉)の正解を口にしたときの少女の満面の笑顔が怖い。おどろおどろしい雰囲気を身に纏った短編集のスタートを飾るに相応しい作品だと思います。

あとは表題作「絶叫城殺人事件」でしょうか。読書前「火村が犯人を埠頭に誘き寄せ、スポットライトをバックに推理を披露するやつよね?」と思い込んでいた私の頭はどうなっているのだろうか。確かに埠頭は出てきたが…そんな神々しい火村は用意されておりませんでした。なにか他の作品と間違ってる?間違ってるのは私の頭か?とりあえず、本作も後味は悪い。でも、推理は秀逸。この展開は素晴らしい。

この2作に挟まれた残4作は…普通かやや劣るといった評価になろうかしら。「月宮殿殺人事件」に至っては駄洒落(?)混じりだし。

文庫版あとがきに映画「マグノリア」について書かれた箇所があって、久しぶりに観たくなりました。トムが怪しげなセックス教祖を演じてたことしか覚えていないのですが(記憶力ってなぁに?美味しいの?)好きです。

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2008年9月10日 (水)

『暗い宿』 有栖川有栖

暗い宿 (角川文庫) Book 暗い宿 (角川文庫)

著者:有栖川 有栖
販売元:角川書店
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旅の想い出

それは訪れた土地であったり、出逢った人であったり

出遭った事件であったり

この作品のレビューを書くのは2度目です。1度目はついさっき書きました。

えぇ、それはそれは見事に
きれいさっぱり消えましたとも

引越して無線LANに換えてからどうも脆弱です。無線LANの所為じゃないのか?フレッツが悪いのか?ともかく、いまから始まるレビューがやる気ないものになること請け合いです。

火村&作家アリスが活躍する『暗い宿』は、タイトルにもある「宿」モノを集めた短編集。命の洗濯に出掛けた先々で事件に遭遇する火村&アリス。野上さんじゃなくても「こいつら疫病神ちゃうん?」と思いたくもなります。

個人的に最も好みなのが「ホテル・ラフレシア」でございます。この作品、ミステリとしては物足りないのですが(だから謎をふたつ用意してあるのでしょう)後味の悪さが最高です。ラストの数頁(数行)、背筋にゾッと冷たいものが奔ります。深い深い人の闇。

「201号室の厄災」は漫画版を先に読んだような想い出が。漫画版の火村はイメージぴったりなんですが…アリスはやっぱり(作者の)有栖川氏のイメージと重ねちゃいますよね(笑)←って、ここ笑うところじゃないから!!作中の火村の台詞は全て英語なんですが…腐女子の私はうっとりせずにはおれません。謎を解き明かすという行為をなんのために行うのか。そこにトリックを用意した意欲作です…って、あれ私さらっとネタバレした?

そうそう、ネタバレといえば、「異形の客」で触れられたシャングリラ十字軍が登場する短編ってなにに収録されているんでしたっけ?『絶叫城』でしたっけ?でも、ノンシリーズとして書かれていたような気もする。トリアタマガニクイ。「覚えてるよ!」という方がいらっしゃいましたら教えてくださると幸いです。っていうか、ありましたよねそんな作品。なかったらどうしよういよいよ末期か私の脳。

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2008年9月 3日 (水)

『壁抜け男の謎』 有栖川有栖

壁抜け男の謎 Book 壁抜け男の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:角川グループパブリッシング
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有栖川有栖の魅力を存分に詰めた

ノンシリーズ短編集

今度は黒を召し上がれ

『女王国の城』がめでたく出版されてからというもの、有栖川氏の勢い止まるところを知りませんな。本作『壁抜け男の謎』に始まり、『妃は船を沈める』『火村英生に捧げる犯罪』を立て続けにリリース。エッセイ集まで含めたら…今年になって一体何冊出版されたの!?

ということで、ノンシリーズものの短編が集められた本作。未読作品の方が多かったので、なかなか楽しめました。有栖川氏、仕事の幅が広い。

個人的に最も好みだったのが「ジージーとの日々」です。残念ながらミステリじゃない。でも、私こういうハートフルなハートウォーミングなお話に弱いんですよ。いきなりの現れた刺客に見事に討ち取られ、私うっかり涙しそうになりました。絶品。

絶品といえば「震度四の秘密」も好きですね。こちらもミステリじゃない。でも、アリバイものと分類することはできるかもしれませんね、する意味ないけれど。嘘は上手に吐きたい。嘘は上手に吐かないで欲しい。そんな女心の機微がどうして解る有栖川氏。

あとはそうですねぇ…もう無いかも。残念ながら。有栖川氏のショートショートが大好きで、未だに有栖川氏のベストは『ジュリエットの悲鳴』(白い方)に収録されている「幸運の女神」だったりするのですが、今回のショートショート作品「天国と地獄」はちと微妙。あとがきで有栖川氏自身が語っておられるように、もう少し長い方が面白かったように思います。

今回はノンシリーズものの短編集ですが、学生アリスものの短編も一冊の本にできるくらいには溜まっているように思うのですが・・・いかがでしょうか?東京創元社さん、そろそろまとめてくれませんかね?

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2008年5月15日 (木)

『本からはじまる物語』

本からはじまる物語 Book 本からはじまる物語

著者:恩田 陸
販売元:メディア・パル
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私たちの大好きな「本」或いは「本屋」を主題に

18つの物語が集い、羽ばたく

大好きな本多孝好氏が寄稿しているというので手に取ってみた一冊。直木賞やら芥川賞受賞した大御所も軒並み参加しておりまして、かなり豪華なラインナップ。ただ主題を「本」或いは「本屋」に限定してしまうと…似たような作品が顔を合わせて「あちゃ~」となっちゃうこともあるわけで。

個人的ベストだったのは贔屓目を抜きにして(声を大にして)本多孝好氏の「十一月の約束」でした。先日レビューした『Story Seller』「作風変わりましたね」なんて申し上げたのが嘘のような本多節炸裂、素敵な物語でございました。『Story Seller』で熱望した「不思議を不思議のまま」、むしろ不思議なことなどなくそれが自然で自明なことであったかのように閉じられた物語に「そう、これが読みたかったのよ」と嬉しさが。主人公の少年も良い具合に捻くれていて、本多作品らしさに溢れておりました。

二階堂黎人氏の「白ヒゲの紳士」にはシリーズキャラクタの水乃サトルが登場しましたね。このトリック(?)を使った作品は他にもありましたので、目新しさはありませんでしたが(しかも、もう一方は家族愛を主題にしたハートフルな作品)サトルはやっぱり奇人変人として本屋でも認定されているのだと納得。あと、サトルが叫んだ「ユーレカ!」ってなんですか?宇宙人との交信?

有栖川有栖氏の「迷宮書房」は某古典へのオマージュを込めて。有栖川氏のショートショートが大好きな私。収録作の中で最もユーモアに溢れていたと思います。そして、私がこの「迷宮書房」に迷い込んだらと妄想してみる。私ならどんなオーダーをするのか…きっと「これまで出逢ったことのないような驚きとトリックに溢れたミステリ」とかうっかりオーダーしちゃうんだろうな。そしてえらい目に遭うんだ。

そうそう、私は純文学畑の人間でないので、本が飛んだり、本屋での些細な一コマ系の作品の良さがさぱーり解りませんでした。すみません。想像力に乏しくて。特に些細な一コマ系は「なにが哀しくて他人の(どうでも良い)頭の中を覗かねばならんのか」とか思っちゃいました。自分でも駄目な仔だと思います、本当に。

あっ、石田衣良氏の「23時のブックストア」は結構好きかも。好きな作家を10人挙げて、そのうちの7人が重なるような方とお近づきになってみたいという欲求は良く良く理解できるので!

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2007年2月18日 (日)

有栖川国名シリーズアンケート

右サイドバーに設置しておりましたアンケートを新企画用に差し替えたため、本文内(企画内)に収納させていただきました。投票は引き続き可能でございますので、レビューをお読みの後に是非一票を投じていただけると幸いです。

アンケートにご協力ください
好きな有栖川 国名シリーズは?
ロシア紅茶の謎
スウェーデン館の謎
ブラジル蝶の謎
英国庭園の謎
ペルシャ猫の謎
マレー鉄道の謎
スイス時計の謎
モロッコ水晶の謎

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2007年2月12日 (月)

『正しく時代に遅れるために』 有栖川有栖

正しく時代に遅れるために 有栖川有栖エッセイ集 Book 正しく時代に遅れるために 有栖川有栖エッセイ集

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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エラリー・クイーンから有栖川有栖まで。

ミステリの枠内に囚われず、漫画や文楽・能にまで及ぶエッセイ集。

本格好きの貴方、いっしょに時代から遅れてみませんか?

『謎は解ける方が魅力的』に続く、有栖川氏のエッセイ集です。『謎は~』でも触れておりますが、私は有栖川氏の短い文章が大好き。文字数の制約の中で、いかに伝えたいことを伝えるか…巧い。

ただ、現在右サイドバーに設置してあります「アンケート」を見るに(そろそろ違うものに差し替える予定ですので、是非今のうちにご参加ください!←宣伝)有栖川氏の魅力は長編にこそあり!と感じていらっしゃる方が思ったよりも多い模様。もちろん、私も有栖川氏の長編もラヴなんですよ~。ただ、どうせ読むなら作家アリスよりも学生アリスを読みたいという願望の表われなのです…。

ところで、ミステリ(本)を読むのは好きだけれど、それを書いている作家には特に興味が湧かない…という意見をお持ちの方は多いのでは無いでしょうか?私もミステリに出逢った当初は、既刊の作品を追うのに必死で、エッセイに手を出す余裕なぞございませんでした。エッセイに手を出すようになったのはごくごく最近。森博嗣氏の『森博嗣のミステリィ工作室』あたりがもしかしたら最初かもしれません。その後、東野圭吾氏の『あの頃ぼくらはアホでした』に出逢い、それがまた飛び抜けて傑作だったため(オススメです。エドガー・アラン・ポーの件が最高です)エッセイに興味を持つようになりました。この2冊は本当にオススメ。やっぱり、生み出される作品が面白いのには、生み出す人に面白さがあるからだと思います。

というわけで、エッセイもなるべく読むように心がけで数年。『正しく時代に~』を読んで、またエッセイの良さを感じましたね。正直、読んでいない作品の書評や解説、ミステリ選考会の講評などは厳しさを感じずにはいられませんが、雑記はやっぱり良かった。「六段階の距離」なんかは、有栖川氏に六段階目までに辿り着くためにどこに手紙を送ろうか、真剣に考えてしまいました(編集部に送るという荒業は却下)。「オススメされる私」も密林愛用者の私にはにやりとさせられる内容でしたし。

作家という職業にを営んでゆくためには、日常の些細なことも見逃さない、鋭いアンテナが必要なのだなと感心します。いつもの日常をちょっとした日常に変えるために、有栖川氏のアンテナを借りてみませんか?そして、当ブロ愚を訪れてくださるミステリ好きの皆様、有栖川氏が熱く語る本格論を読んで、いっしょに時代から遅れる決意を固めましょう。

ミステリとならば、時代から遅れることも厭わないですよね?

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2007年1月15日 (月)

『モロッコ水晶の謎』 有栖川有栖

モロッコ水晶の謎 Book モロッコ水晶の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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助教授の誘拐に始まり、連続殺人鬼の暗躍、殺人を予測できなかった占い師まで。

心躍る主題を料理するのは、有栖川有栖。

さぁ、国名シリーズ第8弾を召し上がれ。

本作『モロッコ水晶の謎』で“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”企画も終焉でございます。読了のスピードにレビューが追いつかず、リアルな感想をお届けできなかったのが残念でございます。でも、やっぱり企画モノは好きです。楽しいです。またやりたい。次こそは「お館様!」こと綾辻氏の館シリーズですね。

いつ開催されるかわからない次の企画モノはさておき、『モロッコ水晶の謎』レビューです。本作は中編クラスの作品が3品と掌編が1品。それでは、どうぞ!

「助教授の身代金」

すわっ、火村誘拐!?

とタイトルだけで愕然とされた貴方、お仲間です。火村が誘拐に遭い、電話口で火村が遺した謎の暗号にアリスが挑む…というストーリーが一瞬にして出来上がった私ですが、もちろん火村がそんなドジを踏むわけが無く。誘拐されたのはテレビドラマの当り役から“助教授”とあだ名された元・有名俳優です。

誘拐を扱った作品は、本格ではなく社会派ミステリに多いので、あまり読んだことの無いジャンル。東野圭吾氏の『ゲームの名は誘拐』か貫井徳郎氏の『悪党たちは千里を走る』くらいしか思い浮かばないのですが、これらだって純粋な誘拐モノじゃなかったし。虚構の中でも成功し得ない、リスクの大きすぎる犯罪なのでしょうね。

本作で最も印象強いのが火村の次の言葉。引用しましょうか。

「一時間前に自分が話したことぐらいはっきり覚えている。あんた、他人がしゃべることばかりに興味を持つから、自分が何をしゃべったか忘れてしまうんだ」

すごい言葉ですね。犯人特定に至った火村の閃きは、かなり美しい。でも、一時間前に自分が話したことをはっきり覚えているだなんて、かなり特殊だと思います。私はこのレビューを書く間にも、上から下まで何往復してるかわからないというのに。

「ABCキラー」

アガサ・クリスティ『ABC殺人事件』へのオマージュ作品として生まれた本作。クリスティの『ABC殺人事件』を読んだのはもう数年前。「なんか納得いかねー」というあまり良くない印象だけが残されております。でも、クリスティのベスト3にこの作品を押す向きもありますよね。私的には『そして誰も』『アクロイド』『(不本意ながら)オリエント』という為るべきベスト3なのですが。

って、クリスティ談義はともかく、この「ABCキラー」も途中で謎解きの筋が入れ替わるという「なんか納得いかねー」な作品。判り易くできているのですが、やっぱり最初から最後まで一本道であって欲しいと思うのが本格ミステリファンとしての願い。でも、本家へのオマージュ感はたっぷりでしたので、嬉しい。

でも、実際にこんな事件が起こったら、どれだけの恐怖が社会を襲うのでしょうか?私も名字と市町村の頭文字が一致しちゃっているので、自分の番が来るまで恐恐として過ごすことでしょう。でも、Aから始まるアリスの「あがっちゃった感」はよくわかる。私もきっと、自分の番がくるまでは、興味津々でワイドショーに齧りつくのでしょう。

「推理合戦」

この掌編は好き。朝井女史がラストで電話を取り落とすシーンなんて最高。アリス、一矢報いる。

自分の子どもとも云える作品の登場人物に、どんな名前を付けるか。有栖川氏は自分の子どもに自らの名前を与えましたが、読者が嫌な思いをすることが無いようにと、犯人や被害者には実在しそうに無い名前を付けることにしている…と語った作家は誰だったでしょうか?思い出せない。私も母親を殺されたことがございますが(作品名は忘れました)なんとなくむずむずした思いを抱きましたね。

「モロッコ水晶の謎」

オーラスレビュー。でも、なんとなく好きじゃない本作。犯人の信念には感服いたしますが、そんな風に美しくないトリックは嫌です。

ある人物の協力を得て、犯人を嵌める火村。犯人を破滅させ、自白させるの好きね。極悪。しかし、犯人のように占いに全幅の信頼を置くことってできるでしょうか?私も占いは好き(星占いや血液型占いなどの大雑把なものは全く信じておりませんが。だって、恋愛運なんて同じグループに属してないと成立しないじゃないですか)なのですが、あくまでも指針や方向性を示す程度のものであって、そこから運命をどう切り開くかは自分次第ではないでしょうか。その一般論を逆手にとったのが、本作の面白いところなのですが、無茶苦茶やな…という第一印象は否めません。

ただ、あとがきで有栖川氏の語る「ありそうで、ない。なさそうで、ある。」そんな味わいは充分に感じられました。

というわけで、本作を持ちまして“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”は終了!国名シリーズが発売されましたら、随時追加してゆきたいと思います。それは一体いつの日か…。次の国名シリーズの題名当てなんて、なかなか楽しそうなので、ちょっと思案した後追記しておこうと思います!!

それでは皆様、アデュー☆

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2007年1月14日 (日)

『スイス時計の謎』 有栖川有栖

スイス時計の謎 Book スイス時計の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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作者・有栖川有栖をして「どこから見ても本格ミステリ」と云わしめる4作品を収録。

美しい論理をとくとご賞味ください。

有栖川 国名シリーズ第7弾!!

“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”も本作『スイス時計の謎』と次作『モロッコ水晶の謎』で終了。既に『モロッコ水晶』も読了しているのですが、8作品しか無いにも関わらず、一月半ばになっても企画終了していないところが情けないですな。そうはいっても、残り2作品、張り切って参りましょうか!!

「あるYの悲劇」

本作はアンソロジー『「Y」の悲劇』のために書き下ろされた作品。『「Y」の悲劇』も所有しておりますが、あのアンソロは有栖川氏と法月氏の作品がかろうじて読める…といった感じでしたね。二階堂氏の作品なんて…アンチミステリとも云えない。

「Y」と読むことのできるダイイング・メッセージを扱った本作ですが、もちろん「Y」と読むのが正解!とはゆきません。この「Y」は別の文字記号を表しているのですが…あとがきで有栖川氏が述べているように、書き方はあれでOKでも、瀕死の被害者の手が一画目よりも上に上がったとはどうしても思えないですねぇ。でも、この作品の本質は「どこに書いたか?」ですから、まぁいっか。

この作品の被害者はバンドマンなのですが、彼を死に至らしめた凶器が“フライングV”(イメージが湧かない方は是非ググってみてください)だという、そのこだわり様に脱帽。まさに「Y」の悲劇。

そうそう、この作品は34歳独身者の独白から始まるのですが…アリスですよね?最初、この独白がアリスによるものだとは思わず、犯人によるものだと思ってました。だって、一瞬でもアリスがナンパを考えるだなんて!!寂しいなら、迷わず助教授に電話しなさい。休講にしてでも、彼はやってくるでしょう。

「女彫刻家の首」

この作品は死体から切り取られた首の消滅を扱った作品です。先程のダイイング・メッセージといい、主題からして本格の彩りですね。

さて、ミステリで死体の首が切られる場合、被害者の誤認や入れ替えを考慮するのが常套手段であり、大抵は“雪の山荘”か“嵐の孤島”が舞台で、警察が介入できないように意図されているものです。でも、本作は早々に警察が被害者を特定!では、撲殺に使われた凶器が特殊なもので、凶器の特定=犯人検挙か?というわけでもありません。凶器、転がってますから。というわけで、みなさんも犯人が首を持ち去った理由を推理くださいませ。

私はこの解釈、好きですねぇ。ただ、犯人が○○なんですよ。むしろ○○だったから、計画に綻びが生じたときにストップがかけられない。浅はかですこと。

「シャイロックの密室」

本作はタイトルからして本格。タイトルに「密室」と付く作品は、どんなにダサいと云われようと果てることが無いと私は信じております。スマート。

“ノックスの十戒”か“二十則”の中に、「一般生活で必要とされない特殊な知識や能力を用いたミステリは禁止(かなり意訳です)」というのがあるのですが、この作品はこれに抵触しているかも。しかも、解決編までその知識が登場することはないし。でも、この作品は倒叙形式(犯人視点で描かれている)だから、火村&アリスの推理の過程を覗けない→だからセーフってことなのかな?いまさら“十戒”や“二十則”を守っていては、ミステリは書けないとはいえ、やっぱりコンプされた作品を望んでしまうのが本格ミステリ好きなのです。

でも、こういった専門知識をふとしたきっかけでしったミステリ作家は、「これで一作書ける!」と神が舞い降りるが如く興奮するのでしょうね。私にもいつか神が降りてくることを祈って(ミステリを書こうと思ったことは一度もありません…悪しからず)

「スイス時計の謎」

表題作でござい。「ロシア」から「モロッコ」まで8作の表題作の中で、この「スイス時計」が個人的にいっとぅ好みです。最も本格、最も論理的ですよね。

それが端的に表現された箇所がこちら。引用です。

「いくら考えても火村先生のロジックは崩れないんだ。将棋で言えば詰んでるし、チェスで言うならチェックメイト。お前が犯人だ、と俺も思う。あの推理だけで裁判に懸けられるかどうかは疑問であるにせよ、俺にとっては動かぬ証拠に等しい」

最高ですね!!

物的証拠が無い中での犯人指摘。でも、あまりにも美しい論理は、動かぬ物的証拠に等しい。何度でも云いましょう、最高ですね!!本作で火村が披露した論理は、本当に美しいです。この論理だけで、国名シリーズ表題作中ベストだ!と云い切れるほど。是非、この美しい論理のフルコースを召し上がってください。

さて、本作では恋だの愛だのに無縁も無縁だった、アリスの忘れられない過去の恋愛に触れることができます。プロローグとエピローグで描かれるアリスの心情。この事件の中でどうやって変化していったのか。アリスはこれからも書き続けることができるのか。これもまた見所。

本格ミステリたる要素が詰まりに詰まった『スイス時計の謎』。『ペルシャ猫の謎』が番外ベストならば、本作は正統派ベストですね。

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2007年1月13日 (土)

『マレー鉄道の謎』 有栖川有栖

マレー鉄道の謎 Book マレー鉄道の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

旧友との再会に喜ぶ火村&アリスの前に立ちはだかったのは…

やっぱり殺人事件!!

日本だろうが、マレーシアだろうが、犯罪は彼らを休ませてはくれないのだ!!!

「日本推理作家協会賞」に輝いた、バリ本格作品。と、とにかく厚い!!作家アリスシリーズ最長不倒ではなかでしょうか?そして、こんなに厚いのに、本棚で見つけることのできなかった私って…というわけで、わざわざ書店に向かい文庫版を購入して挑む本レビュー。ノベルス版が本棚のどこかに眠っているはずなのに…。

というわけで、『マレー鉄道の謎』を読むのは今回が2度目です。本棚のどこに収納してあるのかもわかりませんし、犯人が誰だったのかもトリックがどんなだったのかも、誰が殺されるのかもさぱーりです。初読の心持ち。でも、日本を脱出しても火村&アリスは殺人事件に見舞われるわけね…と哀れに思ったことだけは、鮮明に思い出せます。

今回、火村とアリスは大学時代の旧友・大龍がキャメロン・ハイランド(マレーシアの軽井沢)で経営するホテルに婚前旅行へ向かう。見慣れぬ景色と新しい出逢いにリフレッシュする間もなく、遭遇するのは殺人事件。しかも、旧友・大龍が犯人として目されたとあっては、火村&アリスは黙っちゃいられない!!密室の謎に、飛び立つ飛行機というタイムリミット、ふたつの枷が彼らを束縛する。果たして、火村は旧友を助け、犯人を裁くことができるのか?

という内容です。まず、火村&アリス夫婦に共通の友人が居たとは驚き。彼らはもう、自分たちのコミュニティでよろしくやってたと勝手に思っていたので(これまで、アリスの作家友達は何人か登場しましたが、大学時代からの共通の友達というのはお目にかからなかったものですから)ちゃんと大学生ライフを楽しんでいたとは。まぁ、恋だの愛だのとは無縁だったご様子ですが。

さて、今回の火村の推理ですが…結構泥臭かったですね。犯人挙げるまで、難産でしたし(それじゃなきゃ、こんな厚さにはなるまい)。死体の発見されたトレーラーハウス内がガムテで目張りされていて…というオーソドックスな密室だったのですが、このトリックは容易に想像できました(きっと、前回読んだ際の記憶が奥底にあったためだと思いますが)。このトリックは手を変え品を変え、いくつかの作品で発表されておりますよね。一番印象深いのは三毛猫ホームズのアレです。アレは無茶苦茶だけど忘れられない。

そして、犯人と対峙し、最大のピンチを迎える火村&アリス。犯人の構える銃がモデルガンだと知りつつも飛び掛らずに、とにかく犯人を追い込んで追い込んで追い込んだ火村。あの姿勢こそ、犯罪あるいは犯罪者に対して、火村が取り続けてる狂気的なスタンス。火村は一体、どんな罪に苛まれているのでしょか?

そうそう、この『マレー鉄道の謎』は異国の地で起こった事件を扱っておりますので、登場人物の会話の約半数が異国語です。もちろん、異国語表記されているわけではないので普通に楽しめるのですが、なんとなく火村に(そしてアリスにも)後光が射している様に見えるのは、英語すらまともに習得できない私のやっかみでしょうか?いいもん、日本から出ずに一生を終えるもん。

というわけで(どういうわけだ?)、やっぱり作家アリスシリーズは短編だな…と、再確認した一作。美しすぎる推理に酔いしれたいヒムラーな私としては、もがき苦しむ助教授(アリスが助教授という英単語が浮かばず、プロフェッサーに勝手に昇格させた件が好きです)なんて、見たくない!本企画も『スイス』と『モロッコ』で終了。この2作は名推理目白押しですので、楽しみだがん!!

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2007年1月 9日 (火)

『ペルシャ猫の謎』 有栖川有栖

ペルシャ猫の謎 Book ペルシャ猫の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

正統なる国名シリーズにして、番外編色強き第5弾。

「買いなさい。損はさせないから」

私は既刊の国名シリーズの中で、この『ペルシャ猫の謎』が一番のお気に入り。しかも…むにゃむにゃむにゃ。この先は各作品レビューで!

「切り裂きジャックを待ちながら」

なんかもぅ、このタイトルだけでご飯三杯イケます!みたいな秀逸さ。タイトルだけで傑作!みたいな雰囲気漂う本作は、内容もイケてます。

本作は有栖川氏と法月綸太郎氏、綾辻行人氏が競演し、それぞれの原案をミステリドラマ化するという夢のような企画のために描かれた作品。このドラマ、リアルタイムで見た記憶があるのですが、綾辻氏の「意外すぎる犯人」の印象が強過ぎて、他の2作品をまったく覚えておりません。綾辻氏の「意外すぎる犯人」はいろんなところでリメイク(?)され、違う役者が登場するものを3回くらい見たような気がします。最初はテレビ局でしたよね?あとは無人島と…とにかく、物語が始まった瞬間に「これかぁ~」という感じ。

って、すっかり「意外すぎる犯人」話に!そうそう「切り裂きジャックを待ちながら」のレビューでした。この作品は死体の登場から火村の登場までの描写に鳥肌が立ちます。有栖川氏の作品の中で、シーン毎にランキングをつけるならばベストかも。そのくらい気に入っております。

そして、火村は犯人を追い詰めるシーンも圧巻!「Mary!」と犯人が叫んだシーンでも鳥肌立ちます。まさに舞台や映像化向け。

「わらう月」

本作も『英国庭園の謎』に収録されていた「完璧な遺書」と同じく、犯人(今回は共犯者か)サイドより事件を捉えた作品。しっかし、容疑者と対面する際の火村は極悪人ですねぇ。まぁ、犯罪者の肩を持つこともないのですが。ちょっと可哀想になります。

しかし、本作で共犯者を追い詰める(嵌める?)火村のキザ台詞には参りました。い、云われてぇ!ちゃんと(ちゃんとか?)女性を褒めることもできるんじゃないですか。なぜ彼女(妻)ができない。やっぱりアリスが…。

そうそう、この「わらう月」の中に、学生アリス・作家アリスの関係性を解き明かす重要なヒントが!作家アリスの作品には『月光なんとか』という作品が多いそうな…『月光ゲーム』ですね!でも、『月光』と名の付く作品は『ゲーム』しかないので、これからどしどし発表されるのでしょうか?『海奈良』の中でも、作家アリスの作品タイトルがひとつ明かされてましたよね?『セイレーンなんとか』だったように記憶しているのですが、それはいつ出るのでしょうか?(←きっと出ないと思ふ)

余談ですが、私は小さいころから月が大好きで、夜道、どこまでも付いてくる月が頼もしかったものです。

「暗号を撒く男」

朝井小夜子女史登場!私は朝井女史が登場し、ちょっとしたミステリバトルの起こる作品が大好き。確か『モロッコ水晶の謎』にも掌編が収録されておりましたよね。『モロッコ』の中では、あの掌編が一番好みだった気がする…なんちゅー作家泣かせな。

本作の中では朝井女史の「人殺し関係です」発言がとにかく好き。自分の職業を問われて、こんな素敵な切り替えしをしてみたいものです。

って、こんなに朝井女史の話ばかりをするのは、ミステリとして語るところが少ないからです。

「赤い帽子」

『ペルシャ猫の謎』最大の番外編(なにせ、火村もアリスも登場しない!)にして、私が本短編集の中で最も気に入っている作品(←おいっ!)それが「赤い帽子」。

本作は“はりきりアルマーニ坊や”が主人公。しかも、発表媒体が大阪府警…社内雑誌(笑)で有栖川氏の作品が読めるんですか!(そういえば、東野圭吾氏の昔働いていた会社の社内広報誌に連載していたことがあったみたいですね。うちの会社からもミステリ作家が誕生してくれないかしら)とにかく羨ましい。

というわけで、「赤い帽子」はアルマーニ坊やの活躍がふんだんに描かれております。作家アリスシリーズに登場する警察関係者の中では、アルマーニ坊やが一番好きですね。野上刑事部長の、あのつっけんどんな感じも捨てがたいけれども。鮫やんも好きです。そんな鮫やんがアルマーニ坊やをスカウトしてくれた…なんて件にしあわせなものを感じました。

そして、森下が犯人にどんどん肉薄していく様に、こちらまで興奮。「こいつが犯人だ!」と雷に打たれる瞬間に、私も出逢ってみたい…って、その前に本物の殺人事件と出逢わないと…それは嫌だな。

「悲劇的」

この「悲劇的」は完全なる番外編、ショートショートです。ある学生が火村に提出したレポート。そのレポートの最後に火村が付け加えた18文字。火村の最初にして最後の執筆作品です。

火村の無神論者ぶりは、数々の作品で描かれておりますが、この作品もそんな火村の一面を知ることのできる一作。火村くらい徹底していると気持ちよいものがありますね。苦しいときの神頼み…いるかいないかわからない神に祈る時間があるならば、苦しみから脱却する努力に努める。それが合理的なことは良くわかっていても、そこまで思い切れないのが人間ですよね?

「ペルシャ猫の謎」

表題作にして問題作。あとがきで有栖川氏自身も語っておりますが、この結末を読まされた読者は、一体どうしたら良いものか。これを表題作にしちゃうっていうんだから、有栖川氏も図太くなったものです(あくまでも本人談です)

というわけで、ミステリとして成立していない本作。でも、私の愛するシャーロック・ホームズの決め台詞「あり得なかった仮説を消し去っていって、最後に残ったものは、どれだけありそうになくても真実だ」がうまいこと(弁解として?)用意されております。でも、この決め台詞は“偶然という奇跡”が作用したときに、効果を発するものだと個人的に思っているので、心霊現象までカバーしてくれないと思うのですが(でも、コナン・ドイルも心霊現象好き?だったからなぁ)

「猫と雨と助教授と」

ボーナストラックとして収録されている本作。語るべきポイントは唯一つ。

「婆ちゃん。猫、もう一匹増えてもいいかな」

もう、これだけ。猫を猫可愛がりする火村も見物です。犯罪を憎む助教授も、猫の前では形無しです。もしも、猫が犯罪を起こしたら(三毛猫ホームズクラスの天才猫)火村は果たして犯猫を裁くことができるのか?(笑)

やっぱり『ペルシャ猫の謎』が私の中で国名シリーズのベスト。国名シリーズは未読でこれから読もう!という方は、もちろん『ロシア紅茶』から読むのがベストだと思いますが、とりあえず一冊…と仰るならば、是非『ペルシャ猫』を手に取ってくださいませ。

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2007年1月 8日 (月)

『英国庭園の謎』 有栖川有栖

英国庭園の謎 Book 英国庭園の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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不思議の国のアリスよろしく、英国庭園を彷徨えるアリス&火村。

ジャバウォッキーまで登場し、まさにアリス尽くしの一冊。

有栖川 国名シリーズ第4弾!

この『英国庭園の謎』は有栖川 国名シリーズでも異質な一作。何故って?それはタイトルの国名が日本語表記だからですよ!イギリス庭園とせずに、英国庭園と表記するあたり、私の超好みです。では、その内容はというと…?

「雨天決行」

この作品はタイトルからして読者をミスリードしておりますねぇ。有栖川氏の作品はかなりの数を読んでいて、タイトルを読んだだけでは内容を思い出せないものも幾つか存在しますが、この「雨天決行」は別ですね。

しかし、被害者の白石女子。めちゃくちゃこだわりもってますねぇ。この手のこだわりは、森博嗣のお得意とするところなのですが(私もかなり森作品の影響受けております)テレビはテレビじゃないとゾワゾワっとしませんか?

あとね、この作品に登場するぬかるみに遺された足跡の件なんですが…必要でしたか?火村の推理のとっかかりも、足跡とはまったく関係ないところからだったような気がするのですが?まさに蛇足だったような気が致します。

「竜胆紅一の疑惑」

この作品は有栖川お得意の犯人指摘しない系ですね。私は結構、こういう結末も好きなのですが、ズバットやってくれないと気持ち悪い方もいるのではないかなぁ?と思います。

本作のアリスの役割はとにかく不憫。火村を紹介して欲しい-ただそれだけのために駆り出された哀れな推理小説家。アリスの存在意義(雑学データベース?)が発揮された作品をそろぞろ読みたいものです。

でも、好きな作家の新作が読みたい!という読者の気持ちは本当によくわかります。有栖川氏の学生アリスシリーズの新刊を待ちに待ち望んで早○年。もうすぐ二桁に到達しようか…年上だったアリスたちがすっかり年下に。江神さんは…まだセーフ?でも、彼らは大学生ですからねぇ、ウラヤマシイ。新刊を待ち望んでいるといえば、小野不由美氏もそう!せめて自分が死ぬまでにシリーズ(十二国記)の完結を!!

「三つの日付」

アリスがその存在意義を~と書いたばかりですが、この「三つの日付」がありましたか。この作品はアリスが容疑者のアリバイ証人で…というかなり異色な作品。鬼・火村の追求を受ける犯罪者や共犯者の気持ちが少しはわかりましたか?アリスよ。

この作品には今は亡き赤星氏が登場しており、『海奈良』も再読しないとなぁと思わせた一作。火村シリーズは短編の方が好きなので、角川系の『海奈良』『ダリ繭』『朱色』あたりは国名シリーズに比べて読みが浅いんですよね。でも、レビューコンプのためにも、しっかり時間を作らないとね!

というわけで、アリスのように曜日にとらわれない生活に憧れます。毎週毎週、サザ○さんが怖いという今の生活からは早くおさらばしたいものです。

「完璧な遺書」

『英国庭園の謎』の中では、この作品が一番好きです。この作品は古畑系の倒叙形式でもって書かれているのですが、犯人側から見た火村がいかに怖いかが存分に描かれてる作品。犯人の考えたこと、為したこと、そのすべてが見破られる恐怖ったらないでしょうね。

しかも、最後に火村がかますハッタリ。私のPCは「こうさつ」と入力すると「絞殺」が一番最初に変換されるという、どういう生活送ってるわけ?PCなのですが。少し前に携帯の記憶機能バトンが流行りましたが、そんなおっそろしいバトン、受け取れねーっす。丸裸じゃないですか!!でも、「もりひろし」と入力して、きちんと「森博嗣」と変換してくれるこのPCは、やっぱり愛おしいです。そろそろ寿命ですが…。

「ジャバウォッキー」

実はルイス・キャロルのアリスシリーズをちゃんと読んだことの無い私。小学生のころにジュブナイル版で大抵の作品は読んでしまったので、いまさら感がどうしても拭えないのですよ。でも、ジャバウォッキーのジャバウォッキーぶりが知りたければ、ちゃんとしたの読まなきゃですよね。

さて、本作はかつて火村に捉えられたジャバウォッキーが、復讐あるいはSOSのために再度交信してくる…というお話。私はジャバウォッキーの思考回路、好きです。壊れていないのならば、是非ともコピーして欲しい。あの思考の飛躍は魅力的です。

そうそう、本作もアリス大活躍の回でしたね。ちゃんと、存在意義を示しておりましたアリス。でも、携帯で通話しながら暴走運転だなんて、今の世の中じゃ捕まっちゃうよ?アリス。しかも、千円札を投げつけて、改札を突破だなんて…アリスもなかなかやるわね。あとで火村にいっしょに謝ってもらってください。大の大人がふたりして、ペコペコ頭を下げる様…見物です。

「英国庭園の謎」

表題作。やっぱり表題作がラストだと落ち着きますね。国名シリーズ読んでるぞ!って感じで。

ただ、表題作は正統派であろうとする姿勢の現われか、如何せん地味な作品が多いのも事実。本作はポエティックな暗号モノなのですが、暗号解読のいくつかのパターン(ひとつ飛ばしとか、文字を削除して読むとか)を一通り試してゆけば正解に辿り着けるでしょう。電撃で打たれるかの如く、突如として脳裏に閃いた暗号の美しさにはやはり負けます。

本作も火村が犯人を嵌める型のオチが用意されているのですが、犯人は誰かわからないけど、この罠に嵌った人間が犯人だ!という解決の仕方は好きです。もっと臨場感があれば尚良し。アリスがお約束をかましてくれましたが、犯人と対峙しない名探偵だなんて勿体無くって。アリス、よくやったぞ。

というわけで、どんどんレビューという名の随筆の様相を為してきた企画レビュー。この『英国庭園の謎』で丁度折り返しでございますか。後半戦は『マレー』が厚いので、そこで数日を要するかもしれませんな…。

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2007年1月 7日 (日)

『ブラジル蝶の謎』 有栖川有栖

ブラジル蝶の謎 Book ブラジル蝶の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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最早お馴染みの火村&アリス夫婦が出逢った、風変わりな事件が集められた宝石箱。

その箱から今回飛び出すは…数々の蝶々。

美しい蝶と論理に酔う、国名シリーズ第3弾!

昨日はお休みさせていただきました“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”企画でございますが、早くも飽きた…わけではございません。今日も一作一作丹念にレビューさせていただきますよ!

「ブラジル蝶の謎」

有栖川氏の短編構成は表題作がラストにくるものが多いような気がするのですが、本作は“蝶サンド”を果たすため、敢えてトップバッターにこの「ブラジル蝶の謎」が。

本作は瀬戸内海の小島に独りで暮らしていたロビンソン・クルーソーが、19年ぶりに本土に戻ってきたところ、蝶の舞う部屋で殺害され?というストーリー。犯人を指摘する火村の推理は、悪く無いけれども抜け穴も存在するよね?という感じで、ちょっと物足りない。19年と云えば、生まれたばかりの赤子が大学に入学するに至るほどの長い月日ですので、人も社会も大きく変わってしまうでしょうね。その変化が本作の推理の鍵です。

そうそう、蝶が天井に貼り付けられていた理由は非常にオーソドックスで、トリックがどんどん複雑化している中で、こういう作品を読むと原点に戻った感がして安心できます。

「妄想日記」

この作品は有栖川氏が創造した創作文字が面白くて好きです。この創作文字をなんとか解読しようと、数分にらめっこした過去が私にはございますが、まさかミスリードだとは…。しかも、床に描かれた○○○は、どうにらめっこしても浮かび上がってこないし。ぎゃぼ。

「妄想日記」は死体に何故火をかけねばならなかったのか、大オチのその理由が印象深いです。焼却された死体が登場するミステリは、被害者の身元を割れにくくするためか、犯罪自体を無かったものにするため、大抵この辺りが理由だったりするのですが、これは新説です。消えなかったのか?という疑問は敢えてスルーで。

「彼か彼女か」

この作品は『ブラジル蝶の謎』の中で一番気に入っている作品。それは何故って?もちろん<ミスター・マリリン>の蘭ちゃんですよ!私も「彼か彼女か」を読んだときには、有栖川氏に新キャラ出来たね☆と思ったものです。蘭ちゃんが<ミスター・マリリン>にやってきた訳ありな客の悩み事を快刀乱麻に解決する。そうね、シリーズ名はマリリン・シリーズでよろしいかと。有栖川氏、是非よろしく。

というわけで、本作のトリックは男性作家ならではないでしょうか?少なくとも女性はなかなか考え付かない(はず)。こういう、ちょっとしたとっかかりから、真相に辿り着く系のミステリって好きです(何度目だ、ナウシカ)。

というわけで、蘭ちゃんと資本主義と家父長制のふしだらでいかがわしい相互依存関係について、いつか蘭ちゃんと火村が語り合う様が見たいと願う一作。

「鍵」

この作品も好きですねぇ。ミステリの犯人どうこうでなく、被害者のそばに残されていた鍵は一体なんの鍵だったのか?という点に主題が置かれた本作。その鍵が玄関の鍵だったり、ただの宝石箱の鍵だったりしないのが有栖川流。最後にアリスがつまらない見栄と負け惜しみで横文字で解答するのが、夫婦っぽくて好き。そんなことで怒ってちゃ、夫婦生活やってけないわよ?

というわけで、火村は旅する先々で事件に遭遇しすぎではないかと思ったり思わなかったり。犯罪学者が犯罪を離れて、羽休めすることはできないのでしょうか?だって、次に控える「人喰いの滝」でも旅先でお呼びがかかってだたでしょ?最新作の『乱鴉の島』だってねぇ?ちょっと火村が不憫になってきました。

「人喰いの滝」

本作は漫画化されたものを読んだことがあって、ラストで犯人を嵌めた火村が極悪風だった(私がそう見えただけです~。漫画家さんに罪は無いです~)のが印象的でした。名探偵が犯人を嵌めて自供させる作品は数多くありますが、これって犯人が違うトリックを使ってたらどうするつもりだったんでしょうねぇ?だって、そんな大量の○○を購入している不審客がいたら、警察の足を使った捜査で浮かび上がってくるはずだもの。

でも、アリスの「人喰いの滝が、喰ったものを吐き出し始めたんです」は決まってましたね。火村に大抵美味しいところを持っていかれるアリスですが、そのセンチメンタルな物云いにうっとりさせられることもしばしば。

そうそう、トリックにも触れなくては。ネタ自体は『スウェーデン館の謎』と同じなのですが、こちらの方がスマートに感じるのは私だけ?人喰いの滝の精度の点だけリスクがともないますが、過去の実績から信頼おけるでしょう。

「蝶々がはばたく」

本作が“蝶サンド”のラスト作品。このトリックは一際印象に残りますね。ネタは人間消失モノなのですが、その現象が○○的なものでなく○○の力で為されたというところに、そのすごさを感じます(って、このフセ字はトリック知っている方もわからないのではないだろうか)今日みたいな日にも、そんな不思議な力が働きそうですよね。

しかし、今回もふたりで旅行ですか。三十路もとうに過ぎ去った大人が、そんなにそんなにいっしょには出掛けません。だーかーらー、あらぬ噂が立つんですよ。でも、蟹は私も食べたい。是非、ご一緒したい。

ラストの締め方がいかにも有栖川!なのですが、そこに書かれている情景はあまりにも重くって、読む度に胸がきゅんとします。

というわけで、これぞ!という光る作品が若干少ないかなぁと思ってしまった『ブラジル蝶の謎』。でも、安定したクオリティこそが有栖川スタイルなのかもしれません。

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2007年1月 5日 (金)

『スウェーデン館の謎』 有栖川有栖

スウェーデン館の謎 Book スウェーデン館の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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次回作の取材のため、雪深い裏磐梯を訪れたアリス。

かの地で出逢ったのは、美しくも儚いルシアと、魅力的なカイバル海豹。

起こった犯罪のすべてを知るのは…降り積もる雪のみ。

“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”第2作目はもちろん『スウェーデン館の殺人』でございます。国名シリーズは既に8作出版されておりますが、うち6作が短編、2作が長編となっております。やっぱり有栖川を読むなら、長編は江神さん(学生アリス)、短編が火村(作家アリス)ですね。学生アリスの方が執筆スピードは速いけれども、作品としての完成度は職業作家のアリスが上手でしょうか。

って、学生アリスシリーズは作家アリスが執筆した作品群で、作家アリスシリーズは推理小説家を目指す学生アリスが執筆したものだというパラドックス説はどこまで本当なのでしょうか?私はかなり信じているのですが、有栖川氏がオフィシャルでこのお話をされてるのを読んだことないものですから。情報求ム。

さて、肝心の『スウェーデン館の謎』レビューです。既にここまでお読みの方ならお判りかとおもいますが、火村モノの長編って苦手なんです。火村の怪傑ズバットぶりがうまく活かされていないような気がして。ただ、本作は物語の半分過ぎてからの登場ですから、中編として読むことも可能かも。

しかし、アリスの「きてくれ。嫌な予感がする」って呼びかけに、大の大人が何コマか講義休講にして駆けつけるかね?(休講にしたって記述はなかったような気がしますが、遣りかねないものですから)だから、あらぬ噂が立つんですよ。ねぇ?

さて、トリックのお話。本作はミステリの王道も王道、足跡の密室(?)を取り扱った作品なのですが、うまくまとまっている反面、リスクが大きすぎるような気がします。離れのログハウスと本館(スウェーデン館)をつなぐ足跡だけでなく、林なり森なりへと逃げる足跡でも偽装しておけば良かったのに。ログハウス内に明らかな他殺体があるんだから、その方が自然でしょう。あるべき足跡が無いから、本館の人物が必然的に疑われるわけです。って、そこまでのミスリードはいらないのか。

そうそう、作中に挿入されているパズルは皆さん、解けましたでしょうか?私はこういうのからっきしダメなんですよ。とにかく奇抜な解答を狙おうとしてしまって。あの微妙な違いがパスラー的なのでしょうね。

って、やっぱり長編はレビューがのらない。読むのにも時間かかったもんなぁ。せっかくの企画レビューでございますが、このくらいで許してください。

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2007年1月 4日 (木)

『ロシア紅茶の謎』 有栖川有栖

ロシア紅茶の謎 Book ロシア紅茶の謎

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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犯罪臨床学者・火村英生とミステリ作家・有栖川有栖の夫婦コンビが挑む新たな謎は…

エラリィ・クイーンのひそみに倣った“国名シリーズ”!

期待するなってのが、もう無理!!

あけましておめでとうございます!

年末年始はトドのように“食っちゃ寝読書しちゃ寝”を繰り返し、読了本と体重を順調に増やしてまいりました、まじょ。です。今年こそはミステリブロ愚の名に恥じないように、精進を重ねてゆく所存でございます。

皆様、今年も宜しくお願い致します!!

というわけで、新年一発目のレビューは有栖川有栖の『ロシア紅茶の謎』でございます。新年&そろそろブロ愚一周年企画ということで、“有栖川 国名シリーズ一気読みレビュー”を開催!企画モノ、本当に好きねぇ。もちろんバナも作成しました(ブロ愚タイトル下に企画ショートカットとして使用中)。本当はどこぞの国の国旗を使ったバナを作成したかったのですが、そういうのはなにかの権利にひっかかるのでしょうかね?どちらの素材サイト様でもお見かけしなかったものですから。

というわけで、企画レビューは短編一作毎に細かくレビューしてゆくのが慣わし。カンパリマス。

「動物園の暗号」

有栖川作品に結構な頻度で登場する○○○トリック。『マジックミラー』あたりがその代表格かな?と思いますが、その○○○トリックをちょっと捻った形で披露しているのがこの「動物園の暗号」でございます。私は○○○を片手にバーチャル旅行(あっ、旅行って云っちゃってるよ!)をする趣味は無いのですが、地理専攻の友人にそんな崇高な遊びで淋しい夜をやり過ごすという剛者がおりました。でも、百聞は一見に如かずだとやっぱり思うんですよねぇ。でも、○○○とにらめっこして、「ひとつ暗号できたぞ!」と喜ぶ有栖川氏は可愛い。

でも、この暗号、とても印象に残ります。最後のオチはどうかな?やりすぎでは?と思いますが、センチメンタル・アリス(作中の有栖川有栖はカタカナ表記で)にはぴったりかも。私は道産子なもんですから、北海道の地名(あっ、地名って云っちゃってるよ!)について勉強させられた(能動的)ことがあるのですが、地名にはしっかり由来が存在するんですよね。だから、最近の統廃合で市町村がころころと地名変更を繰り返すニュースを見ると、なんだか哀しくなります。その土地の情景やら、かつての意義やら、互いの関係やらを端的に現した地名。そんな地名がこんなに素敵に連鎖した暗号。うん、印象深いです。

というわけで、まったく作品の内容に触れてないわりに、ネタだけはバラすという最低のレビュー。

「屋根裏の散歩者」

この作品は秀逸!『ロシア紅茶の謎』に収録されている作品の中で一番好きです。ミステリ好きなら、そのタイトルを見ただけで触手が動くってなもんです。江戸川乱歩へのオマージュもオマージュ、その設定を借りて有栖川氏が新たに創造する「屋根裏の散歩者」。本作は現代の郷田三郎が作り出した暗号を犯罪臨床学者が解く(解いてないかもしれない)ことが主軸となっているのですが、私は散歩者のユーモア溢れるそのセンスが好きですね。下品だけど。

そうそう、アリスと火村が並んで美容室カット…って構図はなかなかおもしろいものがありますね。三十路をとっくにまわったおじさん(『スウェーデン館の謎』で火村自身がそう云ってるからセーフですよね?)ふたりが美容室…せめて床屋にしてくれ。でも、このさりげなく挿入された美容室も重要なファクターになるっていうんだから、二度美味しいぞ、有栖川氏。

「赤い稲妻」

この作品も好きです。最後に火村があがく犯人を追い詰めるために切り出す“事実”が好き。このカード切られたら、もうぐうの音も出ないわ!っていう詰みをみせてくれる作品はいつでも好きです。

トリックも面白い。この作品は「いかにして密室は創られたのか?」が推理のキーとなりますが、トリックを解いて犯人を追い詰めるのではなく、トリックを推理の糧にして犯人を追い詰めるという、その構造が好きです。でもね、客人が来てるのにドアチェーンはやっぱり無いと思うの。

「ルーンの導き」

どんどんと作品毎レビューが短くなっているのは、ご愛嬌で(笑)

この作品は私が火村英生をヒムと呼ぶようになった記念の作品です。ただ、私のヒムは愛称のヒムではなくて「him」なんですがね。わかる方だけ、楽しんでください。

さて、この暗号は無理矢理ですねぇ。私、就職するのにまったく使えない資格をいくつか所有していて、その中に図書館司書ってのもあるんですが、暗号を解くための知識を所有していても、閃きがそこに存在しなければ暗号は解けない(無理矢理だとしても)という典型的作品。未読の方は、司書資格というヒントも頭の隅に置いて取り組んでみてくださいませ。

そうそう、この作品を読んで久しぶりにタロット占いに行きたいなぁと思いました。気に入った絵柄のタロットに出逢ったら、いつか買おうと思って早○年。

「ロシア紅茶の謎」

表題作です。この作品の火村はいつにも増してキザったらしい(トリックを明かしたあとの決め台詞が)のですが、そんなヒムも素敵。でも、すでにトレードマークとなりつつある白いジャケットについては、いつもどうかと思います。

さて、この作品は毒殺に用いられた青酸カリ容器はどこに消えたのか?という、ミステリ的お約束ネタです。でも、斬新。私が犯人なら怖くてできないところです。だって、容器の保管場所の○○によっては…ねぇ?最近、異常気象ですし。私は生まれて初めてこんなに雪の無いお正月を過ごしました。

そうそう、DNA鑑定の件なんですが、私の認識では○○ではDNAの検出ってできないはずですよね?血液型は検出可能ですが。火村の仕掛けた罠。その罠に犬猿の野上刑事が阿吽の呼吸でのっかった、あの瞬間が私は好きです。

あと、有栖川氏も仰っているように、あの歌詞はダサいと私も思います。作家は作詞には向いていないのでしょうか?森博嗣氏の『詩的私的ジャック』で披露された歌詞も超微妙だったし。

「八角形の罠」

レビュー、最後の作品です。本作はミステリーステージツアーと銘打たれた犯人当てゲームのために書き下ろされた一作。う、うらやましい。一度はミステリーツアーに参加したいと常日頃願っている私。ちょっと前には名探偵コナンのミステリーツアーなんてのもありましたよね。超参加したかった。関西の方が、そういった企画が多いような気がしませんか?是非、北海道でも。

というわけで、私としては作中アリスの執筆した「八角館の殺人」(探偵役は江神さんじゃなくて島田潔ですか?)にも興味ありありなんですが(笑)

本作のネタは「消えた凶器」です。私の嫌いな○○ネタなのですが、しっかりと口封じしてくれている(それでもって、ボロを出す)という王道なので許す。でも、凶器が跳ね返ってピックアップできなかったらどうするつもりだったんだろう?とこの作品を読むといつも思ってしまいます。まぁ、解けなかったひがみでしか無いんですけれど。

というわけで、えらく長いレビューとなってしまいました。次回『スウェーデン館の謎』は長編なので、息抜きにさっぱりとしたレビューにしよう。そうしよう。それでは、皆さま、スパシーボ!!

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2006年9月18日 (月)

『乱鴉の島』 有栖川有栖

乱鴉の島 Book 乱鴉の島

著者:有栖川 有栖
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

命の洗濯と題して休養旅行に出掛けた火村&アリス。

ふたりが迷い込んだ孤島で起こる殺人事件とは?

作家アリスシリーズ4年ぶりの長編にして、初の孤島もの!

このブロ愚を始めてもう8ヶ月になりますが、作家アリス(火村)シリーズのレビューを書くのはこの『乱鴉の島』が初めてになりますか。初のレビューが新作だなんて嬉しい限りです。というのも、最近の有栖川氏(漢字表記の有栖川有栖が現実世界の有栖川有栖氏です)はどうにも遅筆で(良心の小文字)このミスの「私の隠し玉」に毎年毎年掲載される『砂男』だって…それを云うなら学生アリス(江神二郎)シリーズだって…。でも、こうして『乱鴉の島』を読めたんだから、もう何も云うまい(もう既に散々云っちゃってるYO!)

下宿の婆ちゃんにお膳立てしてもらい、アリスと共に“命の洗濯”旅行(何度目の婚前旅行だ?)に出発することとなった火村。とある島で下宿の先輩が営む民宿に身を寄せるはずであったが、手違いのため“烏島”と呼ばれる絶海の孤島に迷い込むことに。“烏島”に住まう往年の大翻訳家と翻訳家を慕う面々がひた隠しにする秘密と、IT企業家殺害の謎とは?要約するとこんな感じでしょうか。

その殺害されるIT企業家なんですが、いくらなんでも“ハッシー”の呼び名はどうかと思います。ミダス・タッチなんて素敵な呼称があるにも関わらず“ハッシー”って。シリアスな場面で「ハッシー」「ハッシー」連発されると、どうにもテンションが下がります。どう考えてもホリ○モンがプロトタイプだし。

とにかく本作は事件の発生までが長くって。事件の発生に時間が掛かる本格ミステリは、往々にしてトリック自体に目新しさが無いものです(おいっ!)本作は殺人事件のトリック・犯人当てがメインではなく、“烏島”に集まった面々が抱える秘密とはなんなのか?がメインでしょうか。クローン技術の大家に、早くして愛する妻に先立たれた大翻訳家。ならばその秘密とは?

その秘密も、かなり丁寧に描かれているために想像の範囲内に落ち着きます。ヒム(私は火村のことを“ヒム”と呼んでいます。him)がその秘密に辿り着くまでにあんなに時間が掛かったのが不思議なくらい。まぁ、いつものようにアリスが重要な事案を“些細なこと”としてヒムに話さなかったのが主たる要因なのですが。さすがアリスです。4年ぶりであっても、お約束ごとは決して忘れません。

本作はヒム&アリスVS登場人部全員という図式だったために、アリス以外にも足を引っ張る人間がいっぱい居て、展開がゆるゆるだったのが非常に残念。ページを捲る手が止まる止まる。ミステリが主軸で無かったのも原因ですが、ちょっと物足りない読了となりました。やっぱり“読者への挑戦”が挿入されるバキッと本格・作家アリスシリーズが読みたいものです。

短編の作家アリス、長編の学生アリスで有栖川有栖は楽しむに限りますね。

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2006年7月17日 (月)

『川に死体のある風景』

川に死体のある風景 Book 川に死体のある風景

著者:綾辻 行人,有栖川 有栖,歌野 晶午,大倉 崇裕,佳多山 大地,黒田 研二
販売元:東京創元社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

“川と死体”を題材に、6人の人気作家が競演。

この『川に死体のある風景』は歌野昌午氏の呼びかけをきっかけに、今をときめく(古っ!)6人の人気作家が“川と死体”をテーマに競演したアンソロジーです。それぞれの短編作品とあとがきが収録されておるのですが、あとがきに個性が溢れていて好き。そもそも、アンソロジーという場自体が、作家の個性を発揮させるのに適した場だと思っているのですが、この『川に死体』は作品を発表してゆく順番も、6人の合議制で決められたようで、「六人の競作だから、まあ、三、四番手がいちばん目立たないだろう」と告白されていた佳多山氏のあとがきが印象的。

黒田研二氏のあとがきも「クロケンらしいなぁ」という感じ。あわあわあわあわ。綾辻行人氏があとがきで書かれていた当初プロットの作品なんて、楽しそうですよね。コメディでありながらも、解決には相当のロジックが披露されそうな。是非読みたい読みたい。有栖川氏はあとがきで性懲りも無く学生アリスシリーズの次回予告をされておりましたが、一体いつ発売になるのですか!?情報の小出し小出しは、出版のメドが立ってからしていただかないと、期待してしまうんですのよ!頼みます、有栖川氏。

というわけで、本編とはまったく関係のない、しかもあとがきを読んでいない方にはまったく理解もできないレビューをつらつらと書いてまいりましたが、『川に死体』に納められている6つの短編を個人的に順序付けるならば以下のような感じ。

①「捜索者」 大倉崇裕
②「玉川上死」 歌野昌午
③「桜川のオフィーリア」 有栖川有栖
④「悪霊憑き」 綾辻行人
⑤「水底の連鎖」 黒田研二
⑥「この世でいちばん珍しい水死人」 佳多山大地

トップ3がストレートに勝負してきているのに対し、綾辻氏はとにかく変化球、クロケンは…ちょっと有り得ない感じ?佳多山氏はいつになったらミステリになるのかと思ったら、よくわからないうちに解決編に突入していたという感じ。視点や時代の切り替えに難を感じてしまいました。

個人的にはこんなところでEMCのメンバーと再会できると思っていなかったので、とにかく嬉しい。『月光ゲーム』直後のストーリーのようで、アリスたちはとにかく暗いし、マリアも登場していないしで、ちょっと物足りないけれど。君たちの活躍を待ち望んでいる読者がここにいるからね。頑張れ。

さて、お次はなにを読もうかな。候補としてはまたもやアンソロジーか、135回直木賞候補にもなったあの作品です。さてさて、どちらを手にとることとなるのやら。

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2006年6月25日 (日)

『気分は名探偵 犯人当てアンソロジー』

気分は名探偵―犯人当てアンソロジー Book 気分は名探偵―犯人当てアンソロジー

著者:我孫子 武丸,霧舎 巧,貫井 徳郎,法月 綸太郎,有栖川 有栖
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

「夕刊フジ」に掲載された、ミステリ作家6人による犯人当てアンソロジー。

果たして君は作者が散りばめたヒントをもとに、犯人を指摘することができるか!?

真夜中は別の顔、まじょ。です☆

普通に眠たいです。でも、謎に背を向けることができないのは名探偵たる証!と夜な夜な読み進めました。解答編に突入する前に、せっせと読み返すものだから、読了するのにいつもの倍の時間がかかってしまいましたね。

さて、ここからは楽しいネタバレの時間です。作品ひとつひとつのレビューと、私の推理がどんなお粗末なものだったかを書き記してゆこうと思います。味読の方はくれぐれもスクロールさせませんように。

「ガラスの檻の殺人」 有栖川有栖
アンソロジー最初の作品。私の推理は犯人はストーカー被害を訴えている学生時代の友人だ!というもの。その根拠は時計。被害者にぶん殴られた探偵ですが、どうして自分が気絶していた時間が2分やそこらだと判る?というところから推理を進めました。だって、殴られる直前までの時間経過はさっぱり描かれていなかったので、そこに10分くらいの空白の時間があってもおかしくない!と思ったものですから。さては時計をいじったな?という推理です。まぁ、違ったわけですが。本当の結末である○○○については、気になる記述だなぁとは思ったのですが、じゃあ本来そこにあった○○○はどこに行ったの?と思います。凶器が落ちててもおかしいけれど、大量の○○○が落ちてたっておかしいでしょうよ!それだけがたまたま売り切れていたなんて、そんな偶然許しませんよ。だって、もっと売れてる○○○なんて、いっぱいありますからね!絶対抜いたはずなんですよ、と憤ってみる。

「蝶番の問題」 貫井徳郎
これは結構容易にわかりました。最初のヒントが出てきた時点で「あぁ、この人は○○○○○なんだな」と。唯一読み返さずに解答できた作品が貫井氏の一作。叙述トリックものは数こなしてますからね。ピンときちゃいました。一番正解率が低かったのが貫井氏の作品だったようですが、発表の場が「夕刊フジ」という大衆紙だったからでしょう。これがミステリ雑誌かなにかだったら、もっと正解率が高かったはず。ミステリマニアはまず叙述トリックを疑いますからね。叙述トリックさえ解ければ、犯人特定まではあっという間です。だって、二択ですもの。でも、このアンソロジーの中で一番好みの作品がこの貫井氏の「蝶番の問題」ですね。

「二つの凶器」 麻耶雄嵩
これも○○の矛盾点に気付いてから、犯人特定までは容易でした。というわけで正解。ミステリでありがちな犯人の利き○の問題をちょっと捻った形ですね。掲載作の中で、最もロジックを駆使した本格ものの作品だったと思います。これも好き。今回は実朝が木更津をリードしてゆく形ではなく、あくまでも純粋な木更津探偵ものでしたね。この程度の事件に実朝が出てゆく必要は無いってやつですか?それとも、実朝はそこまで直子先輩は苦手ですか(笑)探偵が妙に気にしている箇所をじっくりと読めば、自ずと正解は開けてくると思います。本格ミステリ初心者にぜひ挑戦してもらいたい一作。

「十五分間の出来事」 霧舎巧
霧舎氏のお顔を雑談会のお写真で初めて拝見いたしました。ちょっとイメージと違ったな…。お元気そうでなにより。早く「あかずの扉シリーズ」の新刊をお願いしますよ。さて、肝心の推理ですが、これはパーサーの彼女が犯人かと思いました。彼女は心臓が強そうですので、商品のビールで頭を殴って、それをあろうことか探偵役を務めた大神に売りつけたのだと推理しました。いや、大神が買ってすぐにビールを開けたときに泡もなにも吹き出さなかったので、違うなこれ…と思いながら解答編を読んだら、やっぱり違ってたというオチなのですが。霧舎氏らしい、なにが描きたいのかよくわからないドタバタミステリだったと思います。(←褒めてない褒めてない)

「漂流者」 我孫子武丸
唯一、当ブロ愚にカテゴリが存在しないのが我孫子氏。いや、我孫子氏の作品は最近読んでいないというだけで、『0の殺人』も『8の殺人』もマリオくんシリーズもしっかり読んではいるのですが…。この「漂流者」の人物当ては解答編で登場したヒントからきちんと当てさせていただきました。男三人で飲んだ○○○って件ね。そこから、人物の入れ替わりを組み立てるのに、ちょっと時間を費やしましたが。入れ替わりを示唆する○○○○○○○も、現物を直に見ることができたら、もっと違和感を感じれただろうに。

「ヒュドラ第十の首」 法月綸太郎
これも好きです。でも、眠くてもう推理どころじゃなかったよ。三択の犯人当てかと思いきや、とんでもないところから真犯人を持ってくるという、ミステリ好きにはたまらない結末でしたね。ミステリをあんまり読まない人にはアンフェアに見えるかも。でも、正解率は一番高いので、じっくり読めばわかる仕組みになっているのでしょう。如何せん、眠くて。法月氏、すみません!全く推理ぜすに解答編を読み進めてしまいました!『生首』以来、綸太郎の活躍を拝見しておりませんが、彼にも好い加減嫁を見つけてやってください…(とお茶を濁して逃げる)

以上、全作品のレビューでした。眠いを連呼しつつもこのレビューを書いてる私はまだまだ逝けるのかもしれません。さっきからカラスが五月蝿い。アンソロジーとしてこのレベルの作品が集まっているのは非常に珍しいことですので、是非ミステリ好きの方にも、そうでない方にも挑戦していただきたい一作です。寝て起きたら、皆様の正解率なんかをググってみよう。そうしよう。

おやすみなさい。

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2006年6月 3日 (土)

『月光ゲーム Yの悲劇’88』 有栖川有栖

月光ゲーム―Yの悲劇’88 Book 月光ゲーム―Yの悲劇’88

著者:有栖川 有栖
販売元:東京創元社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

EMC-英都大学推理小説研究会のメンバーが夏合宿に訪れたキャンプ場で噴火が発生。

孤立した大学生たちと、そこで発生する殺人事件。

クローズドサークルで起こった殺人事件を解決するのは、我等が江神二郎。

個人的に有栖川作品のベスト3に入ると思っていた本作…あれ?こんなちゃちぃなトリックだっけ?読んだのなにせ3年ぶりくらいだから。

この作品は有栖川氏渾身のデビュー作。あとがきにこの作品でデビューするまでの苦節と苦労が描かれておりますが、「力のある人はどうやってでも出てくるものですよ」という編集者の方の台詞は真だと思います。力というのは文章力や発想力だけではなくて、「継続は力なり」に言葉通り、努力できるかどうかにかなりの比重がかかっているのだと思います。有栖川氏はまさにその代表的な作家。一作一作丁寧に描かれる本格ミステリというのが、私の有栖川作品に対していつも持つ感想。有栖川氏は本当に本格ミステリが好きなんだなぁ、といつもいつも感じます。

さて、肝心の『月光ゲーム』の中身ですが、非常に気になった点がひとつあります…

呼称は統一できなかったのでしょうか?

この作品には17名の大学生が登場するのですが、それぞれに名字と名前とあだ名があって、その呼称があっちへこっちへと飛び回るものですから、「この場面に登場しているのは誰と誰やねん!」と憤ってしまいます。もうこれはミスディレクションの域だわ。読者に登場キャラクターを誤認させようとしているに違いない…といぶかしんでしまう程、登場人物の把握が難しいです。(お前がしっかり読んでないからだよ!というごもっともなツッコミはスルーで)

学生アリス作品の特徴といえば、謎解き前に挿入される“読者への挑戦”。エラリークイーンがその筋では有名ですが、ここでちょっと頁をめくる手を止めてじっくりと犯人を推理してくださいという、作者と読者の知的ゲーム。私自身は“読者への挑戦”で手を止めたって経験はないのですが(考えていないというわけではありません!読みながらちゃんと考えておりますよ…)この“読者への挑戦”を見るとゾクゾクゾクッとしますね。キターーーー!!!!!って感じ?(笑)

解決は…ちょっと弱いかも。犯人は抜け目なく、事件の中に著名すら遺さなかったなんて信長さんがおっしゃってましたが、そうか?って感じ。ボロボロ証拠品残っているじゃないですか。あとダイイングメッセージもね。○の書きかけといえば書きかけに見えなくもないけれど…って感じね。まぁ。ダイイングメッセージものといえば、どれもこれもそんな感じですけれど。

この学生アリスシリーズは全部で5部作。まだ3作目ね…

たのんます!有栖川先生!!

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2006年5月28日 (日)

『マジックミラー』 有栖川有栖

マジックミラー Book マジックミラー

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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双子の兄弟が持つ鉄壁のアリバイトリックに挑むのは、アリバイトリックメーカーの推理作家。

しかし、双子のどちらかが首なし手首なし死体で発見されて?

有栖川有栖によるアリバイ講義も収録!

最初にこの作品を読んだときに感じたのは「こんなにこねくり回さなくたって…」です。

私の両親も推理小説を嗜むのですが、西村京太郎氏オンリーなものですから時刻表トリックには多少寛容な心持ちで挑むことができました。でも、そんなに乗り換えだのなんだのしているうちに、犯人はどうでも良くなってくるのではないか?といつも思います。犯人は自分の構築したアリバイトリックに間違いなく酔っちゃってますね。東野圭吾氏の『名探偵の掟』にこの“アリバイトリックに酔っちゃった男”の話が出てきますが、私はあの話がとても好きです。

ここから『マジックミラー』の構想及びトリックについて触れます。ネタバレも良いところです。WARNING!

まずこの『マジックミラー』の面白いところは双子の兄弟の鉄壁のアリバイを崩すところに主題が置かれているかと思いきや、途中から双子の兄弟殺しの犯人が持つアリバイを崩すことに主題がスライドしていることです。謎が途中からすり替わっているのですね。当然犯人もすり替わってきますので、一冊で二回美味しい作品に出来上がっております。しかも、双子の兄弟殺しの犯人に以外性を持たせてます(?)ので、もしかしたら3回美味しい作品かもしれない。

有栖川氏の作品の中で、この『マジックミラー』はベスト3に入ってくると個人的に思っております。作家アリス編(火村編)はお手軽感が満載なので、ベスト3に食い込んでこれないのが残念。ベスト3のあとの2作は『月光ゲーム』と『双頭の悪魔』かな。『幽霊刑事』も捨て難いけれど。でも、作家アリス編待望の長編『乱鴉の島』が発表されますので、このベスト3が変動するような作品であることを願っております。

願うといえば学生アリス編の新作も頼みます。5部作だと知ったのはもうかれこれ10年以上前。まだ3作目…頼みますよ、有栖川先生!!

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2006年3月28日 (火)

『謎は解ける方が魅力的』 有栖川有栖

謎は解ける方が魅力的―有栖川有栖エッセイ集 Book 謎は解ける方が魅力的―有栖川有栖エッセイ集

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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“Alice in movieland”“Mystery cafe”“Eye of the tiger”からなる有栖川有栖エッセイ集。

映画、ミステリ、そして虎。貴方はどの有栖川有栖がお好みですか?

有栖川有栖氏はこのくらいの長さの文章を書くのがすごく巧いといつも思います。

これまで読んだショートショートでいっちばん好きなのが有栖川氏の「幸運の女神」(『ジュリエットの悲鳴』収録)だったりします。

今回のエッセイ集も有栖川氏の良さが随所に出ていて、存分に楽しむことができました。

エッセイ集というのは作者の思想がどうしても滲み出てしまうものですが(ブログもまた然り)、有栖川氏のエッセイは押し付けるでもなく、しかししっかりと主張するというそのスタンスが好きです。自分の考えがいかにも正しいと言わんばかりのエッセイには絶句してしまうものです。

ミステリについて書かれた“Mystery cafe”はもちろんですが、思いの他楽しめたのが“Eye of the tiger”。私は野球は見るよりやる派のアンチ巨人ファンを自称しておりますが、裏を返せばただのアンチ野球人間でございます。でも、有栖川氏をはじめとする虎ファンの方々の当時の熱気といいますか、盛り上がりが短かな文章ながらも滲み出ていてちょっと胸を熱くしました。

なにかを一途に想うのって切なくて幸せなことですね。

このエッセイ集でなによりも素晴らしいと思うのがタイトル。『謎は解ける方が魅力的』なんてなんと魅力的な言葉なのでしょうか。

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2006年3月 8日 (水)

ショック!

綾辻行人・有栖川有栖原作の

安楽椅子探偵の新作見忘れた!!

私の住んでいる地域では、今週の月曜日深夜に放送だったのです。

やっぱりアラートとか設定しておけば良かった…。

自分を信じた己の甘さに悔やむ。

来週の解決編だけ見てもなぁ。

綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状(5) 安楽椅子探偵と笛吹家の一族 DVD 綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状(5) 安楽椅子探偵と笛吹家の一族

販売元:メディアファクトリー
発売日:2006/04/28
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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2006年2月 3日 (金)

『幽霊刑事』 有栖川有栖

幽霊刑事(デカ) Book 幽霊刑事(デカ)

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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理由もわからないまま殺されてしまった神崎達也は幽霊となって再びこの世に舞い戻ってきた。

イタコの孫をパートナーに自分を殺した犯人と、その真相に迫る。

ミステリとラブストーリーを融合させた傑作。

感動した!

再読にもかかわらず感動いたしました。

ミステリとしては多少ご都合主義といいますか、実行犯がむざむざと犯行に及んだ理由がよくわかりません。

黒幕としては恩を売っておいただけで、殺人を犯させるほどの強制力はなかったような。

でも、ラブストーリーとしては秀逸です!

最後なんて涙が止まりませんでしたよ。

ラストの白紙ページも印象的かつ効果的。ちょっと量が多いような気はしますが。非常に斬新な手法だったと思います。

有栖川有栖の作品というよりも、東野圭吾の『秘密』や『トキオ』あたりを読んでいたような余韻に浸れます。

本格の旗手としてだけだなく、作家としての有栖川有栖を見直した感じです。

この作品はイタコの孫として幽霊刑事のパートナーを務める彼がすごく良い味出しております。彼の存在がこの作品を光らせていると私は感じました。彼にもしあわせがやってきますように。

しかし、この作品では警察の不祥事が次々と出てまいりますが、現実の警察でこんなにも不祥事が続いて、なおかつ隠されていたなら嫌だな。でも、警察だって人間なんだから、ひとつの警察署でこれだけの不祥事が起こることは無くても、どこかで似たようなことが起こっているんだろうなぁ。

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