2009年4月 4日 (土)

『思考機械の事件簿Ⅰ』 ジャック・フットレル

2プラス2は4だよ、ハッチ君

それもときどきではなくて、

いつ、いかなるときにもだ

ときどき自分の脳内連想ゲームはどうなっているのか疑問に思うことがあって。『推理作家になりたくて 謎』に収録された泡坂妻夫氏「DL2号機事件」からの連想がフットレルの「十三号独房の問題」で。この「十三号独房の問題」、名作の呼び声高く読みたくて読みたくて仕方が無いのですが出遭いがなく。そもそも『思考機械の事件簿』自体が既に絶版、古書店で買い求めるしかなく未だ出遭えず、今日は図書館様にお世話になったのです。

というわけで、ホームズのライヴァルとの呼び声高いオーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼンが本シリーズの名探偵役。哲学博士、法学博士、王立学会会員、医学博士などなど多数肩書きを所有し、素人にも関わらずチェスの世界チャンピオンを15手で詰み、「思考機械」という称号(?)を得た奇人です。冒頭でホームズよろしく、後の相棒であるハッチ記者のバックボーンを当ててみせた思考機械。まぁ、この手の推理は作者の思うまま…あわあわあわシャーロキアンに襲われる。

『事件簿Ⅰ』に収録されている作品のなかでは「情報漏れ」が好きかも。密室から漏れ出た機密情報。この情報を入手できるのは本人(依頼人)とタイプライターを打つ秘書だけ。指示が遂行されるまで本人も秘書も部屋からの外出は赦されず、絶対に情報が漏れるわけがないのに。2+2=4なので(なぜ1+1=2ではないのかずっと気になっておりました)本人が情報を無意識下でも漏らしていないなら…当然秘書が怪しいわけで。では、秘書はどうやって情報を外部に伝えたのか?

思考機械の取り組む謎(解)はシンプルなものが多くって。派手な捕り物劇はなく、そこにあるのはロジックだけ。ロジック最強。最近の犯人たちは自分の力(知能)を誇示し過ぎですね、「実際に偉大な犯罪者は、絶対に発見されぬものです。なぜかというと、偉大な犯罪そのものが-つまり、彼らの犯行が-明るみに出ることがないからです」

「いま、この部屋で、あなたを殺すこともできます」
「そしてそれを知る者は一人もありません。疑われることもないのです。なぜでしょうか?ぼくはミスをおかさないからです」

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2008年12月15日 (月)

『毒入りチョコレート事件』 アントニイ・バークリー

毒入りチョコレート事件 (創元推理文庫 123-1) Book 毒入りチョコレート事件 (創元推理文庫 123-1)

著者:アントニイ・バークリー
販売元:東京創元社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

一見、単純に見える毒入りチョコレートによる殺人事件

しかし、見る眼が変われば犯人すらも変わる!?

古典、名作!

約1ヶ月の放置期間、あの毒吐きレビューがトップページを飾っていたとはっ!?

ついフォントを大きくしてしまいました。今回はPSP失踪と申し上げるのが適当でしょうか。でも、「DISSIDIA」到着してからが本当のPSP失踪になりそうだしな…って早くも次回の失踪宣言ですか!?お久しぶりですまじょ。です。

この失踪中に愛しの本多孝好氏は新刊を発表し、辻村深月嬢に至っては2冊も上梓、さらに西尾維新氏まで!と出版ラッシュだったわけですが…全部買いましたがまだ1冊も読めてません。しかも「このミス」まで出てますね。ランキングだけチラ見しましたが、まぁ読んだことある作品少なかったです。いつものことですが。

そんなわけで、失踪前に読了しておりました『毒入りチョコレート事件』が復帰レビュー作。最初に読んだのは中学生のときなので…○年ぶり。もちろん○のなかの数字は二桁です。で、やっぱり中学生のころの私はこの作品の良さが判ってなかった!なんでもっと早く再読しておかなかったんだ!もっと早くにこの作品の良さに気付いていれば「3年に1回読み返す本リスト」に入れて4回は読めたというのに!!あっ、二桁の数字がバレる。

古典中の古典、名作中の名作ですので既読の方も多かろうと思いますが、今日はあまりネタバレしない方向で。復帰レビューですしね。

『毒チョコ』のあらすじをまじょ。的に書き出すならば「6名の犯罪研究家が独自の推理法、独自のアプローチを以ってして未解決事件に挑む。ただし、結末がひとつだとは限らないぜ☆」って感じでしょうか。ミステリといえば「唯一無二の名探偵が導き出した推理こそが正解マンセーマンセー」がお約束なのですが、この『毒チョコ』はそれに正面から喧嘩を売った作品(笑)

私は断トツでブラッドレーの推理が好きですね。しかも最初の方。繰り返しますか?

最初の方。

いやぁ、ユーモア利いてる。1929年の作品にこれをやられては脱帽です。

そして、このバカミス以降じりじりと真相に近づいてゆく様が圧巻ですね。毎晩毎晩新たな発見があり、毎晩毎晩グレードアップされた推理が展開される。そして、最後には最後に相応しい結末がしっかりと用意されて。個人的にはブラッドレーの推理が大好きなので、もうそれで良いんじゃない?(笑)と思ったりもしますが。つまりは読者の数だけ真相が違うってことなんですよね。最後に結末として用意された推理が気に入らないなら、それまでに発表されたものの中からでも、自分で考えついた推理でも、どれでも好きなものを結末にすれば良い。そんな遊び心に溢れた古典の名作。

『毒チョコ』って省略形が凄く可愛くて好きです。何度でも言いたくなる口に出したくなる『毒チョコ』。

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2008年11月16日 (日)

『あなたに不利な証拠として』 ローリー・リン・ドラモンド

あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫 ト 5-1) Book あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫 ト 5-1)

著者:ローリー・リン・ドラモンド
販売元:早川書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

アメリカ探偵作家クラブ最優秀短篇賞を受賞した「傷痕」をはじめとした

5人の女性警官を主人公とする10の短篇を

そこにあるのはリアル

『あなたに不利な証拠として』というタイトルが秀逸すぎて、読んでみたい読んでみたいと思いながら2年。文庫で並んでいるのを見てついつい購入ようやく読めました。

『あなたに不利な証拠として』というタイトルが秀逸すぎて、どんな内容なのかはさっぱり知らず。本作を知ったきっかけが「このミス」だったので、ミステリなんだろうなとは思っておったのですが…あれ?ミステリ?本作ってミステリ??

ミステリ小説=謎を解くという行為が描かれた小説、だと思っているので個人的には本作はミステリじゃないという判断なんですが…私のミステリ小説定義狭すぎます?アメリカ探偵作家クラブ最優秀短篇賞を受賞した「傷痕」が一番ミステリらしい作品だと思いましたが、結局どちらが真実が解らない(もちろんキャシーの中では結論は出ているのですが)ので、ミステリではないのではないか、と。でもアメリカ探偵作家クラブ最優秀短篇賞なんですよねやっぱり私の定義は狭すぎるのか。

「男らしい」「性別詐称」「生まれるとき性別間違ったでしょ」としばしば言われる私ですが、本作に登場する女性たちにはとてもとても敵いません。凄い。個人的にはキャサリンが好きです一番格好良い。でも、惚れない。何故なんだろう、彼女たちが抱えるものは重すぎるから?

池上冬樹氏の文庫版解説を読んでなるほど!と思った一節があったので引用を。

物語では、キャサリンがどのように事件と関わり、どのように射殺したかを振り返る。それだけである。十八頁、およそ三十枚の短篇なのに、まるで長編のように重く深い。

なので、読むにはとても気力が必要です。彼女たちが抱えているものと同じくらいの。

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2008年11月 8日 (土)

『九マイルは遠すぎる』 ハリイ・ケメルマン

九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2) Book 九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)

著者:ハリイ・ケメルマン
販売元:早川書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない

まして雨の中となるとなおさらだ」

貴方はこの言葉からなにを推理しますか?

あまりにも有名すぎるあまりにも秀逸すぎるタイトル『九マイルは遠すぎる』。高校生の頃、本作を読んだときにはその良さがよくわからなかったのごめんなさい。屋敷が傾いてたり、屋敷が十角形だったり、30人くらい被害者が居たりする小説ばっかり読んでいた弊害?でも、いまならわかるこの良さが。

『九マイルは遠すぎる』はニッキィ(ニコラス・ウェルト教授)と郡検事の“わたし”が、ああでもないこうでもないと主に“わたし”をからかいつつ、謎を墓暴きの如く掘り出してきては解決するシリーズ短編集。

この「謎を墓暴きの如く掘り出してきては」ってのがポイント。あまりにも有名な表題作「九マイルは遠すぎる」はニッキィの

「たとえば十語ないし十二語からなる一つの文章を作ってみたまえ」
「そうしたら、きみがその文章を考えたときにはまったく思いもかけなかった一連の論理的な推論を引きだしてお目にかけよう」

という挑発(?)から、すべてが始まるという秀逸すぎる物語。“わたし”が作った十一語からなる文章が、どんな論理的な推論を生み出すのか…は読んでのお楽しみ。

そんなわけで。事件すら、謎すら発生していない無から、ニッキィと“わたし”の掛け合いによって事件が、謎が形作られる。もちろん派手さはないけれど、じわっときますこの良さは。

表題作以外なら「おしゃべり湯沸かし」が好き。隣室で鳴った湯沸かしの音から事件を捏造して(笑)解決までしちゃう。しかも、終わりのユーモアも黒い。

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2008年5月14日 (水)

『ひらいたトランプ』 アガサ・クリスティ

ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) Book ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

著者:アガサ クリスティー
販売元:早川書房
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ブリッジを終えたとき、シャイタナ氏は死んでいた

パーティの参加者は全部で8名

その役割は…4名の探偵と4名の犯罪者

「洋モノが読みたい」(んまっ!)と思い立ち、既にカオスと化している本棚から最初に救出された洋モノがこの『ひらいたトランプ』でした。先日再読した篠田真由美『angels 天使たちの長い夜』でこの作品について触れていたので、これも何かの巡り合わせだろうとそのまま読書に入ったのですが…やっぱりクリスティは最高だ。

まずはクリスティから読者に対する挑戦文。

これは例のエルキュール・ポアロの自慢の手柄話である。しかし彼の親友ヘイスティングズ大尉は、ポアロから、この話を手紙で知らされ、非常に単調だと思った。
読者のみなさんは、果たしてどちらの意見に軍配をあげるであろうか。

ですよ。もちろん私は前者(ポアロ)に軍配を上げるわけですけれども。ヘイスティングズが云うように終盤までは単調な事件なんですが…単調だからってつまらないとは限らない。それは作中で取り扱われるブリッジについてもそう。私はブリッジの経験も無いしルールすら知らないけれども、知らないからと云って作品そのものを楽しめないとは限らない。うん、クリスティ(と訳者)の筆力ですね。

あっ、この挑戦文にはちょっとした叙述トリックも含まれておりますね!

そして終盤、単調から脱却した物語は二転三転。4人の容疑者のうち誰が犯人なのか、読者はわからなくなる。ポアロが執拗に迫っていた人物が犯人とは限らない。最も怪しいと思っていた人物が犯人とは限らない。もちろん最も怪しくないと思っていた人物が犯人だなんて…そんなことをクリスティがするとでも?

とにかく満足な一冊。『アクロイド殺し』がクリスティのベストだという個人的意見は変わらないけれど、『ひらいたトランプ』も大好きです。

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2007年6月 3日 (日)

『ロング・グッドバイ』 レイモンド・チャンドラー

ロング・グッドバイ Book ロング・グッドバイ

著者:レイモンド・チャンドラー
販売元:早川書房
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私立探偵フィリップ・マーロウ。

シニカルな思考と飛躍するカンバゼイション。

あの『長いお別れ』を村上春樹訳で読めるしあわせを。

「最近、洋モノ(笑)読んでないなぁ」ということで、話題の春樹プレゼンツ『ロング・グッドバイ』をチョイスしてみました。

『ロング・グッドバイ』と私の出逢いは高校生のとき。まだまだ“おこちゃま”だった私はマーロウの魅力の一片も、ハードボイルドがなんたるかも理解できず、

ただの皮肉屋さん

という認識しか持てなかった…アイタタタな過去。それから時を経て、四捨五入したら三十路という妙齢に達した私が、この『ロング・グッドバイ』をどう読むか。

やっぱり皮肉屋さん(笑)

でも、“ただの”は取れました。そして、マーロウの魅力もちょっとだけ、ちょっとだけ解ってきました。マーロウにとってシニカルは欠かせない要素。シニカルさのないマーロウなんて、ただのニートか?ってなもんで(それは俺の仕事じゃない、とか)

ひょんなことから知り合った駄目男・レノックス。とびきりの厄介事を持ち込んでくれた彼に、できる限りの友情を示すマーロウ。様々な表現で「この事件から手を引け」と忠告&脅迫を受けるマーロウであるが、彼は彼の信念の赴くまま。そんな中、マーロウに持ち込まれる新しい依頼。美女とのロマンス。意図したわけでも無いのに、軌道は自然とレノックス事件へと修正され。マーロウが最後に出逢う真実とは?

まじょ。的『ロング・グッドバイ』要約はこんな感じ。随所に“彩り”として配置されるハードボイルドの色合いが作品をさらに高めます。ミステリ作品としての『ロング・グッドバイ』は「だろうね」的結末。あそこで○○○○○が登場しなかったら詐欺だろ!と思うのは、世にミステリが溢れる今だからであって、本作の初出は1953年ですから。驚き。そして、不要とも思える描写たち。これこそが準古典に分類される本作の贅沢さ、なのでしょうか。物語に関係ない伏線や描写はいらないぜ!という、最近のコンパクトミステリには見られない姿勢かと。

本当にどうしてこんな云い回しができるのか…とうっとりすること数回。物語よりも、その美しい台詞に恍惚とさせられます。でも、やっぱりまだすべてを理解するには至らない。若いな、まだまだ。またいくつか歳を重ねたら再挑戦したい一作。素敵です。

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2006年11月15日 (水)

『ブルー・ブラッド』 ディヴィッド・ハンドラー

ブルー・ブラッド Book ブルー・ブラッド

著者:デイヴィッド・ハンドラー
販売元:講談社
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新進気鋭の映画評論家ミッチ・バーガーは妻を失った悲しみから“キノコ”生活を悪化させすっかり引きこもりに。

リハビリの一環として訪れたビッグシスター島で巻き込まれる殺人事件。

そして恋。

ホーギーに続くハンドラーの新シリーズがここに!

基本的に和製ミステリしか読まない私ですが、このディヴィッド・ハンドラーだけは別。翻訳ってどうもまわりくどくって、途中で投げ出してばかりなのですが、このディヴィッド・ハンドラーだけは別。訳者の北沢あかね氏が素晴らしいという噂もありますが、とにかくハンドラーだけは別なのです。

森博嗣氏に通じる意味なしジョークと、ハードボイルド。ホーギーシリーズが大好きな私ですが、本作はハンドラーが書き上げた新シリーズです。

主人公は妻を亡くし失意の日々を送るミッチ・バーガーです。ホーギーはまさにスマートという言葉がぴったりなダンディな男性でしたが、ミッチは若干ふくよかな体格をされている模様。ざ、残念です。でも、その中身はまさにスマート。ホーギーほどキザっぽくなく、それでいてセクシィ。うん、悪くない。

そしてヒロインはドレッドヘアの黒人女性警部補・ミトリー。ホーギーシリーズに登場したメリリーは女性的に「どうよ?」という感じでどうも馴染めなかったのですが、ミトリーはgood。好きになれそうだわ。

この二人が“ブルー・ブラッド=血統”に縛られた閉鎖社会で起こった殺人事件に挑む。この解決はあんまし好きじゃない(これだけで、当ブロ愚常連の方はトリックが読めたのではないでしょうか?)です。シリーズ一作目でこのトリックを用いてしまいますか。それがかなり残念。悪くは無いんですが。そこに落ち着く必然性はあるんですがね。

まぁ、ハンドラー作品のポイントはミステリじゃなくラヴですから。ミッチ&ミトリーのラヴはかなり見所ありますね!もう、じれったいのなんのって。愛する者を失い、一歩前進する勇気の無い二人。一目合ったそのときから、フォーリンラヴなのに。ミステリの結末より、この二人のラヴの結末、そしてこれからがかなり気になります。

そうそう、気になるといえば、「マジ」って言葉の多用にはちょっと閉口してしまいました。ハンドラー作品にはもっと綺麗で流れるような言葉を使用してもらいたいなぁ。「マジ」って言葉は、やっぱり汚いですよね。マジで。

全然、レビューになっておりませんが、ハンドラー作品はやっぱりそのキレ味が違います。和製ミステリしか読まない私でも、ついつい読みたくなってしまいますわ。翻訳ものはちょっと…と仰る方に是非オススメです。

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2006年2月15日 (水)

『そして誰もいなくなった』 アガサ・クリスティ

そして誰もいなくなった Book そして誰もいなくなった

著者:アガサ クリスティー
販売元:早川書房
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インディアン島に集められた10人の男女。マザーグースの通りに発生する殺人事件。

そして最期には誰もいなくなる…。

果たしてこの殺人計画を立てたのは誰なのか?

『アクロイド殺し』に並ぶクリスティの名作。あとひとつは『オリエント急行の殺人』だと思いますが、『オリエント~』については私は否定的でございます。

この『そして誰もいなくなった』についても『アクロイド殺し』と同様に、ミステリ界に与えた影響が大きいという点が評価されます。

綾辻行人氏の『十角館の殺人』だって、この作品がなければ生まれなかったかもしれない。

クリスティはそのチャレンジ精神と執筆スピードによって“ミステリの女王”にまで上り詰めました。

古典ミステリの作家の中では、私はクリスティが一番好きです。

まだミステリは初心者で、どんな作品を読んだら良いのかわからないとお思いの方は、是非手にとってみてください。

さて、本編とは関係ないところで気になった点があります。

私が所有しているのはアフィリで表示しているクリスティ文庫版ではなくて、赤い背表紙で御馴染みのハヤカワミステリ版ですが、この解説で各務三郎氏が次のように述べています。以下、解説より抜粋。

『そして誰もいなくなった』では、読者にとって信憑性のある描写を意図的に避けている。この手法が『アクロイド殺し』で失敗し、『そして誰もいなくなった』で成功したのは…(以下省略)

何事ですか!?

私の大好きな『アクロイド殺し』がここではアンフェアだと否定されているわけですが、まぁそこに目くじらを立てるのは止めましょうか。

ただ、『アクロイド殺し』に比べて『そして誰もいなくなった』の方がキレイにまとめられているのは確かです。

それはクリスティが用意したインディアン島という舞台設定と、巧みなマザーグースの演出によるものだと感じます。

薦められて『アクロイド殺し』読んでみたけど、アンフェアでやってられないよ!という貴方。是非とも次は『そして誰もいなくなった』をお読みくださいませ。

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『アクロイド殺し』 アガサ・クリスティ

アクロイド殺し Book アクロイド殺し

著者:アガサ クリスティー
販売元:早川書房
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村の名士・アクロイド氏が殺害された。

灰色の脳細胞ポアロがこの謎に挑む。

フェアかアンフェアか論争を巻き起こした不朽の名作。

フェアです。

いきなりの宣誓。私はバリバリのフェア論者でございます。

私がこの『アクロイド殺し』を読んだのは中学生のとき。この有名な結末のネタバレ被害には遭わずに読むことができました。

純粋な気持ちでこの本を読むことができたことを、私は神に感謝しています。

今でもあのときの興奮を忘れることができずに、「好きな本3冊」なんかを選ぶ場面では必ずこの本をチョイスするようにしています。あとは「ミステリ初心者に薦める一冊」とかいう場面もこの本。

結末を知らずにこの本を読めることの幸せを感じて欲しいんですよ。

そこの中学生、いますぐ読みなさい(笑)

たとえアンフェア論者であっても、この『アクロイド殺し』が発表されたことで生まれた名作がいくつもあったことは認めざるを得ないと思います。

その意味でもこの作品は素晴らしいのです。

結末の特異性からこの本については内容について触れることはできませんが、読んで損をしない貴重な一冊です。

騙されたと思って是非お読みください。

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2006年2月 8日 (水)

『怪盗ニック登場』 エドワード・D・ホック

怪盗ニック登場 Book 怪盗ニック登場

著者:エドワード・D. ホック
販売元:早川書房
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ニックは2万ドルの報酬と引き換えに“価値の無い(ようにみえる)モノ”を専門に盗む怪盗。

ニックが仕事を請け負うと、なぜか必ず事件が巻き起こる。

怪盗ニックシリーズ第一弾。

エドワード・D・ホックは「サム・ホーソン」シリーズから読み始めましたが、いまやすっかりニックシリーズの方が好みです。

サム・ホーソンは田舎派、ニックは都会派なんですよね。

ニックは腕も報酬も一流。しかし、盗むのは“価値の無いモノ”ばかり。

そんな奴に盗みを依頼する人間が、悪い事を考えていないはずがないんですよ。

まぁ、ニックも自分が楽しむために盗みを請け負っている感じ。じゃなきゃ、恋人とバカンスを過ごしている最中にも関わらず、ゴミを漁ったりしませんよ。

ニックシリーズは既に短編集が4冊出版されていますが、どれも上質です。

ちょっとした短編を読みたいときに最適。日本でいうと東野圭吾みたいな?

因みに、ちょっとした翻訳長編を読みたいときはデヴィット・ハンドラーを読むようにしております。

参考までに、今回ニックが盗んだものを紹介しておきましょう。虎。文字。野球チーム。カレンダー。木馬。恐竜の尾っぽの骨。陪審員。棺。埃。くもったフィルム。時計。手紙とゴミ。

うーん、変な泥棒。

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