2008年5月15日 (木)

『本からはじまる物語』

本からはじまる物語 Book 本からはじまる物語

著者:恩田 陸
販売元:メディア・パル
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私たちの大好きな「本」或いは「本屋」を主題に

18つの物語が集い、羽ばたく

大好きな本多孝好氏が寄稿しているというので手に取ってみた一冊。直木賞やら芥川賞受賞した大御所も軒並み参加しておりまして、かなり豪華なラインナップ。ただ主題を「本」或いは「本屋」に限定してしまうと…似たような作品が顔を合わせて「あちゃ~」となっちゃうこともあるわけで。

個人的ベストだったのは贔屓目を抜きにして(声を大にして)本多孝好氏の「十一月の約束」でした。先日レビューした『Story Seller』「作風変わりましたね」なんて申し上げたのが嘘のような本多節炸裂、素敵な物語でございました。『Story Seller』で熱望した「不思議を不思議のまま」、むしろ不思議なことなどなくそれが自然で自明なことであったかのように閉じられた物語に「そう、これが読みたかったのよ」と嬉しさが。主人公の少年も良い具合に捻くれていて、本多作品らしさに溢れておりました。

二階堂黎人氏の「白ヒゲの紳士」にはシリーズキャラクタの水乃サトルが登場しましたね。このトリック(?)を使った作品は他にもありましたので、目新しさはありませんでしたが(しかも、もう一方は家族愛を主題にしたハートフルな作品)サトルはやっぱり奇人変人として本屋でも認定されているのだと納得。あと、サトルが叫んだ「ユーレカ!」ってなんですか?宇宙人との交信?

有栖川有栖氏の「迷宮書房」は某古典へのオマージュを込めて。有栖川氏のショートショートが大好きな私。収録作の中で最もユーモアに溢れていたと思います。そして、私がこの「迷宮書房」に迷い込んだらと妄想してみる。私ならどんなオーダーをするのか…きっと「これまで出逢ったことのないような驚きとトリックに溢れたミステリ」とかうっかりオーダーしちゃうんだろうな。そしてえらい目に遭うんだ。

そうそう、私は純文学畑の人間でないので、本が飛んだり、本屋での些細な一コマ系の作品の良さがさぱーり解りませんでした。すみません。想像力に乏しくて。特に些細な一コマ系は「なにが哀しくて他人の(どうでも良い)頭の中を覗かねばならんのか」とか思っちゃいました。自分でも駄目な仔だと思います、本当に。

あっ、石田衣良氏の「23時のブックストア」は結構好きかも。好きな作家を10人挙げて、そのうちの7人が重なるような方とお近づきになってみたいという欲求は良く良く理解できるので!

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2008年5月 8日 (木)

小説新潮別冊『Story Seller』

Story Seller (ストーリーセラー) 2008年 05月号 [雑誌] Book Story Seller (ストーリーセラー) 2008年 05月号 [雑誌]

販売元:新潮社
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この雑誌を編集した方とお友達になれると思ふ

凄い豪華な執筆陣。夢の共演といっても過言ではない。そんな素敵な一冊を紹すべく、今日は一作ずつレビューを。

「首折り男の周辺」 伊坂幸太郎
本屋大賞受賞第一作は“首折り殺人請負人の周辺で生きる人々”を描いた作品。伊坂的“改心の物語”でございます。本屋大賞を受賞したって直木賞を受賞できなくたって、伊坂節は決してブレることはないのですが…どこか物足りない。その理由を探ってみて、伊坂短編は連作で読みたいのだと気付く。伊坂短編集に収録されている短編たちは、ひとつひとつが完成されていながらも、通して読むことで新たな意味や印象が浮かび上がってきますよね。そんな“新しさ”や“改まり”を欲しているのだと。だって、長編や連作でもいけそうなんですもの、この作品。風合としては『ラッシュ・ライフ』に近い感じで出来上がるのではないかと。でも、伊坂らしい“改心の物語”にやっぱり快心の笑みを浮かべてしまうのです。

「プロトンの中の孤独」 近藤史恵
思わぬところで『サクリファイス』の番外編に出逢えました。この『Story Seller』を注文した時点ではまだ『サクリファイス』未読であったため、全くノーマークだった近藤氏。嬉しい誤算。本作はエースになるべく産まれてきた男・石尾と、石尾の名アシスト名女房であった赤城の若かりし頃を描いた一作。あの石尾にこんな頃があっただなんて、ちょっと意外。石尾の想いの深さ大きさに感動させられた後だけに。そして、この少ない枚数でロードレースの駆け引き清々しさ泥臭さを伝える近藤氏の筆力はさすが。『サクリファイス』の後編がいまから愉しみです。

「ストーリー・セラー」 有川浩
有川氏が恋愛エッセンスをふりかけに重い主題で真っ向勝負を挑んだのが本作「ストーリー・セラー」です。最初は有川氏らしい甘い恋愛小説かと思ったんですが…ラストまで読んで少しだけ鬱状態になりました。ので、卑怯にもその辺りには一切触れずにレビューを。本作の個人的お気に入り台詞は「心の中、レイプされてるって言ったら分かってもらえるかなぁ」なんですが…なんて生々しい台詞がお気に入りなんだ。でも、あの状況下で出てくるこの台詞はもの凄く秀逸です。こういう言葉選びが出来る有川氏が好き。そして、激怒するおっさんの霊が光臨した作中の彼女も。私は「最初っから私は何にも持ってないんだ!」なんて啖呵は切れないから。

「玉野五十鈴の誉れ」 米澤穂信
実は初めましての“バベルの会シリーズ”。下地が無いので(バベルの会がどんな如何わしい会か解らないので)米澤氏が作品に潜ませているだろう主題や狙いを察することが出来ず残念。テイストとしては…ホラーですよね?妄信や妄信にえも云われぬ恐怖を感じてしまう私。五十鈴のあの行動がタイトルにある「誉れ」であるならば、あの行動を「誉れ」として取れる人間は、もはや人間では無いのでは無いかと。感情を殺して“無”になったら、もうその時点で人は人で無くなり、唯の物質ですよね。物質に為ってまで守りたい「誉れ」を持たない私には、その感情はまさしくホラーです。

「333のテッペン」 佐藤友哉
佐藤氏の名前を見かけるたびに「あの絶筆宣言は何だったのだ?」とか思ってしまう私は腹の黒い仔です。でも、本作は収録作の中で唯一ミステリですよね。タイトルの「333」とは333mの高さを誇る東京タワーのこと。東京タワーのテッペンに突如現れた他殺死体の謎…うわぁ、美味しい垂涎設定。本作に登場した探偵は佐藤氏の既出キャラクタなのでしょうか?主人公の土江田の過去も、なかなか気になります。アナタハイッタイナニヲシデカシタンダ?でも、個人的に一番愉しめた(感動した)のは、あとがき(?)の筆者コメントだったりする罠。

「光の箱」 道尾秀介
私はこの作品に“ミステリを装った恋愛小説である”という判定を下したのですが、皆様はいかがでしょうか?心の開き方を知らない少年と少女の恋愛小説。サンタクロースが届ける「光の箱」に収められたクリスマスの奇跡を添えて。箱と聞くと“パンドラの箱”を思い浮かべずにはいられないワンパターン思考を持つ私ですが、最後に残された希望を失わなかったからこそ人間は生きてこれたというあの逸話が、この作品には存外ぴったりくると思います。

「ここじゃない場所」 本多孝好
一番愉しみにしていた本多氏の作品…なんですが、作風変わりましたね。本多氏の魅力は言葉選びと行間にあると信じて止まない私ですが、行間を読ませることもなく書き込まれている感情感情感情。そんなに丁寧に感情を解説してくれなくとも良いですから!って正直思っちゃいました。もっと流れるような美しさが本多氏の作品には有ったように記憶しているのですが。この作品に登場した“四人組とアゲハの物語”を現在進行形で執筆中だったからでしょうか?ほら、アウトプットしているうちに浮かんでくる設定をいつの間にか書き込んでいたことによって情報過多になった、とかいうオチで。四人組の能力に現実的な解釈が為されているのも残念に思いました。多少の無理が生じたとしても、不思議を不思議のまま処理して欲しかった。本多氏の初期作品にはそういった不思議能力を持った人間が多く登場してましたよね。でも、こんな風に酷評していても、やっぱり本多氏の作品が大好きです。新作を読めただけで幸せな気持ちになれるって嬉しい。私にとって本多氏はそういう作家です。

うわぁ、冗長なレビューに自分でもうんざり。でも、本当に「よくこれだけのメンバを集めることが出来ましたね!お疲れ様です!!」と伝えたくなるような一冊。第二弾の刊行も愉しみにしております。

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2007年5月29日 (火)

『正義のミカタ ~I'm a loser~』 本多孝好

正義のミカタ―I’m a loser Book 正義のミカタ―I’m a loser

著者:本多 孝好
販売元:双葉社
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変わろう。

このままでは独り寂しく、次の人生に夢を見ながら死んでゆく姿が容易に想像できてしまう。

僕は変わるんだ。

2年半ぶりの本多孝好氏新作、まさに至福。この至福モードのまま冷静なレビューは書けない…と一晩寝かせてみましたが、やっぱり冷静なレビューは書けそうにありません。そのくらい本多孝好氏が好きです。

ミステリから恋愛小説へとその幅を広げてゆく本多氏ですが、新作は「このミス 2007」でも予告されていた青春小説でした。前半は、本多氏と同窓である金城一紀氏のゾンビーズシリーズ(このシリーズも大好き)を彷彿とさせる爽快感と疾走感。でも、本多氏特有の、私の大好きな流れるような優しい綺麗な文章は…奥に潜める。

主人公にとって高校生活とはいじめられること同義。そんな生活からさよならするため、新しい自分と出逢うため、クラスメイトの誰ともいっしょにならないように大学を選んだ…はずだったのに、出逢ってしまった最悪の人間。今日も図書館裏に連れ込まれ、殴る蹴るの暴行。大学なんて辞めよう、帰り道には就職情報誌を買おうと決めた主人公の前に現れた、

正義のミカタ。

正義のミカタに連れてゆかれたサークル会館で出逢ったのも、正義のミカタ。正義とはなんなのかを探求する・正義の味方研究部で交わした聖杯は、主人公の人生を変える第一歩。

本多作品主人公の特徴と云えば、思考・思想・視線の捻くれ具合なのですが、本作主人公は負の方向にとにかく捻くれております。でも、どことなくおもしろい。ラストで真正のいじめられっ子と遭遇する主人公ですが、隠された彼の姿が一般的なら主人公のそれはいじめられていたことが偽りであったかのような思考。でも、いつもの本多文章の美しさは成りを潜める。

研究部のメンバも個性的。初めての親友・トモイチはどことなくゾンビーズシリーズ(by金城一紀氏)のスンシンとだぶるが…気にしない気にしない。各々の方向から“正義とはなにか?”を追いかける彼等。でも、でも、それって本当の正義かな?

その答えのひとつを本多氏は最後に提示してくれます。その答えまでの過程に、ひとつ大きな事件が起こるのですが、その事件が提示するテーマは重くって、まさに青春小説なのですが、爽快感や疾走感に溢れた前半とのギャップは隠せません。本多氏の作品にしては珍しく、ちょっとバランス感の悪さを感じてしまいました。

主人公が研究部のメンバを裏切るのか信じぬくのか。どちらを選んだのかはっきり(明記)せぬまま。これまでは主人公の内面を追っていたはずなのに、唐突に外からの目線に切り替わったのも原因かもしれませんが。朝4時のふにゃけた頭ではすぐには判別できませんでした。

うーん、前半のスピードのまま最後まで突っ走ってくれてれば…という思いは一晩経っても拭い去れず、強くなるばかり。でも、心に残る一言はしっかり後半部分のそれだったり。そして、主人公は変われたのか、変わることで広がった世界はどんなものだったのか、きっちりと読者に提示してくれたのは評価。

本多氏の素敵思考を活かせる題材では無かったのかもしれない、青春小説という舞台。でも、頁を捲る手が止まることはありませんでした。本多ファンとしては物足りなさも感じますが、作品としては上質だったと思います。それをどう評価するべきか、いまでも悩む。

これは再読が必要でしょうか。そのとき私は、どんな正義に出逢うのでしょうか。

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2007年1月18日 (木)

『LOVE or LIKE』

LOVE or LIKE Book LOVE or LIKE

著者:石田 衣良,中村 航,本多 孝好,真伏 修三,中田 永一,山本 幸久
販売元:祥伝社
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6人の男性作家が男女の間に生まれる微妙かつ複雑な感情を描く。

アイシテル それとも スキ なだけ?

『I LOVE YOU』に続く恋愛アンソロジー。もちろん本多孝好氏が目当てです。本多氏、昨年はこの『LOVE or LIKE』に短編を寄せたのみ…本多氏にゆっくり書いてよいと許可を出した編集者、出て来い。

そんな冗談はさておいて。しょっぱなの石田衣良氏の作品が、いきなり際どいシーンから始まりまして、これはこういう作品集なのかと疑いましたが、そういうカラーの作品が多かったのも事実。本多氏の作品でも、そういう描写があったのですが、氏の作品ではいつもその辺りがぼやかしてあるので、新鮮と云うか戸惑いというか。

本多作品をレビューするならば、初恋の君が登場して…なんていうお安い展開にならなかったのは評価。でも、このお題で長編が読みたいかもしれない。彼女にどんな紆余曲折があって、どんな想いを持って、どんな環境で“今”を生きているのか。その中であの夏の想い出にどんな意味があるのか。彼らほど大切に想ってはいないかもしれないけれど、そんな想い出は捨て去ってしまったかもしれないけれど、彼女の“今”が知りたい。本多氏、よろしく。

一番好みだったのは、中村航氏の「ハミングライフ」でしょうか。逢いたい or 逢いたくないという気持ちの揺れの中で行われるハミング。こんなピュアな恋愛、してみたいようなしてみたくないような。もどかしさが、この作品のすべてであり、味です。

一番読ませたのは中田栄一氏の「なみうちぎわ」かしら。自分の所為で、時を失った彼女に自分がしてやれることはあるのか。そんな罪悪感からくる愛もまた、良い。

やっぱり恋愛小説は読み慣れてないため、レビューものりませんね。本多氏の作品もいまひとつでしたし。本多氏の最新作が今年こそ読めることを祈って。

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2006年9月10日 (日)

『I LOVE YOU』

I love you Book I love you

著者:伊坂 幸太郎,石田 衣良,市川 拓司,中田 永一,中村 航,本多 孝好
販売元:祥伝社
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さまざまな断片から生まれるストーリーを、

現在もっとも注目を集める男性作家たちが紡ぐ、至高の恋愛アンソロジー

(帯より)

やっぱり伊坂幸太郎は巧いですね。

伊坂幸太郎と本多孝好目当てでこの『I LOVE YOU』を手に取りました。やっぱり最初と最後を飾ったこの二人の作品が良かった。もちろん波長もあるのだと思いますが、小説として最も完成されていたであろう石田衣良の作品よりも、この二人の作品にぞくっときました。

私は基本的に恋愛小説って読まないのですが(山田詠美のみ例外)、嫌いではないのです。ただ、恋愛こそ全て!と云わんばかりの小説が苦手で。恋愛って確かに大切なものだけれど、恋愛と同等、もしくはそれ以上に大切なものがあると思うのです。「恋愛!恋愛!」と声を大にして訴えている作品は、人生のごくごく一瞬を捉えているのみで、どうしても深みに欠けるような気がして。その意味でも『I LOVE YOU』は「これ恋愛小説?」とつい聞き返したくなる強者揃いで、安心して読めました。恋愛小説らしかったのって、石田衣良と本多孝好くらいでしたね。

伊坂作品はいつもの伊坂節が炸裂です。恋愛小説のはずなのに、テーマはシロクマです。伊坂作品お馴染みのちょっと冷めた主人公が奇天烈な姉を思い出すお話。物語の半ばで登場した伏線がラストで綺麗に回収されるという、短編でも力抜きませんなぁ、な一作。

そして、本多作品。本多孝好の恋愛小説は『真夜中の五分前』で既に経験済なのですが、やはり本多孝好は短編でこそ力を発揮する作家だと、改めて確信しました。最後の「ごめんなさいごめんなさい」が胸にぐっと突き刺さる。あのラストが無ければ、大人のキレイゴトに見えてしまう雰囲気が、キュッと引き締まった感じ。やっぱり本多孝好は良いなぁ。好きだなぁ。

そうそう、中村航氏の作品を読んでいて、伊坂幸太郎の『砂漠』に登場した“平和(ピンフ)を作り続ける彼”を思い出しました。全然関係ないけれど。

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2006年3月27日 (月)

『真夜中の五分前 side‐B』 本多孝好

真夜中の五分前five minutes to tomorrow side-B Book 真夜中の五分前five minutes to tomorrow side-B

著者:本多 孝好
販売元:新潮社
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五分ずれた世界に住み続ける彼。

彼女はもうそこにはいない…のだろうか?彼女は本当は彼女ではないのだろうか?

side‐Aより続く衝撃の後編。

side-Bの仕事のできちゃう彼が好きです(告白)。

side-Bは心の動きが主なので、ストーリーとしてなにか大きな山場があるというわけではありませんが、ここまでダークな感情をそう読ませない本多孝好氏の才能が好きです。

side-Aで彼を取り巻いていた人物が次々と去ってゆく中、彼はなにを想い、なにを背負って生きているのか。

本当はこういった重たい話は好きではないのですが、それを複雑にさせない手法というか作風に本多氏らしさをとにかく感じます。

重たいテーマを重たく書くのは案外簡単。それを如何に噛み砕いて、なんでもないかのように読ませるか。あくまでも選択するのは読者なのですね。

それの最たる例はラストのシーン。彼女は彼女であって彼女ではないのか。

ずれた五分を彼女のために使い、残りをいまの大切な彼女のために使う。なんてグッとくるラストなのでしょうか。

早く本多氏の最新作が読みたいです。次の新作は『MOMENT』でしょうか?

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2006年3月25日 (土)

『真夜中の五分前 side‐A』 本多孝好

真夜中の五分前five minutes to tomorrow side-A Book 真夜中の五分前five minutes to tomorrow side-A

著者:本多 孝好
販売元:新潮社
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五分遅れた世界に住む彼が出会った一卵性双生児の彼女。

彼女は彼の五分遅れた世界を元に戻してくれるのだろうか。

本多孝好が描く恋愛小説。

私の愛して已まない本多孝好氏ですが、この『真夜中の五分前』は本多節はそのままに、主題は恋愛という、本多氏の新境地でございます。『FAIN DAY』は恋愛小説にカテゴリしておりませんので、当方。

さて、『真夜中の五分前』の主人公ですが、本多氏の作品の中で「瑠璃」の彼に続く好感度2位にランクインしております。本当はside‐Bのさらにひねくれた彼の方が好みなのですが。

いやぁ、本多氏の作品に登場する“3回は角を曲がって、あれ?元に戻っちゃった?”っていうくらいひねくれた性格している登場人物がとにかく好きです。こんな人物描けるのは本多氏か森博嗣氏くらいだと勝手に思っているのですがいかがでしょう?本多氏を理系にしたら森博嗣氏が出来上がると思っております。とにかく好き。

この『真夜中の五分前』はside-Aとside-Bに分かれていて、前編後編としても読めるし、独立した作品としても読めるという、二度美味しいシステムとなっております。私としては前編後編と定義して読むのが好きなのですが。どちらがより好きかと問われればside-Bなのですがね。side-Bはこのあと読みますので、いい加減感想を書きなさい、自分。

恋愛小説としてこの『真夜中の五分前』をレビューするのであれば、あまり好みではないと答えざるを得ません。恋や愛に自分を見失ってしまう様子を見せられるのがあまり好きではないからです。

恋愛に対し興味や情熱を持ち合わせていないかのように見える彼(世の中すべてに対してと言い換えることができる)が、どのような傷を負い、どのように出来上がってしまったのかが今回の主題ではありますが、私の興味を惹きつけるのはあくまでも無機質無感動な彼なのですね。

“無”って何よりも下層の最悪の状態と言われるからこそ、惹きつけられてしまうのです。

やっぱり冷たい人間だなぁ。と改めて自己確認。これからside-Bのより“無”な彼に出会うことに致しましょうか。

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2006年2月17日 (金)

『MISSING』 本多孝好

Book MISSING

著者:本多 孝好
販売元:双葉社
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「このミス2000」で10位ランクインし、いきなり脚光を浴びた本多孝好の珠玉の短編集。

私が愛して愛して愛して止まない一冊。

私と『MISSING』の出会いは大学受験を終え、禁読書の反動からか活字中毒に陥っていたとき。図書館から借りてきた『人狼城の恐怖』や『死鬼』の中に『MISSING』はひっそりと混ざっておりました。

読後の感想は「なんなんだ、これは」。

『MISSING』のような本には、それまで出会ったことがありませんでした。

どう表現したら良いのかわからない感情がどわーっと溢れ出してきて、この本に出逢えたことを心の底から感謝しました。

本当にすごい。

私の陳腐な言葉では、この本の良さを的確に表現することはできません。

ただ、読んでください、と。

本多孝好氏は“ミステリ界の村上春樹”と評価されることがあるようですが、村上春樹氏は『ノルウェイの森』しか読んだことの無い私でも、そう評価されることがどんなに高評価であるかはわかります。

その世界観とスマートな表現で他を圧倒する存在。

本多孝好氏はそういった作家です。

執筆スピードはあまり速い方ではなく、締め切りに追われて作品を書くような仕事はされない方なので、新刊が出る度に「いよっ!待ってました!!」と拍手喝采。そして、作品を読んでまた拍手喝采。

『MISSING』のような雷に打たれたような感覚に出逢えることは少なくなりましたが、いつも独特の世界観と趣のある表現で私をうっとりさせてくれます。

私が愛して止まない作家の一人です。

因みに『MISSING』に収録されている「瑠璃」が本多氏の全作品の中でいっとぅ好きです。

右のサイドバーにある“UNION”の中の「honda fan union」は本多孝好氏のファン同盟です。本多氏が好きな方は是非訪れてみてください。

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