■伊坂幸太郎

2017/04/17

『陽気なギャングは三つ数えろ』 伊坂幸太郎

9年ぶりシリーズ新刊に歓喜。

軽快で痛快な4人のやりとりが大好きです。脳内キャスティングは映画の4人なのですが本当にぴったりだと思います。何年かぶりに見たい。

今回は久遠の活躍が多めでしょうか。巻き込まれの原因作ったのも久遠ですが。成瀬は課長らしく地味にいい仕事します。雪子はまとう空気が美人。成瀬とそれっぽい関係だったはずですが、今回はまったくそういう描写がありませんでしたね。あとがきのしれっと変更した部分のひとつでしょうか。語り(視点)で一番楽しませてくれるのは響野だと思っているのですが、演説は4分も聞けば十分です。

個人的に好きなシーンは振り込み詐欺と藁の中から藁でしょうか。アルファベット3文字も好き。

ラストの展開に少し物足りなさを感じましたが、それでもやっぱりおもしろい。よたび彼らが事件に巻き込まれることを祈るばかりです。

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2015/08/13

『死神の浮力』 伊坂幸太郎

『死神の精度』の千葉が8年ぶりに帰ってきた。てっきり短編かと思ったらまさかの長編。千葉は相変わらず魅力的だけれど、彼の仕事ぶりを7日間追うのはさすがに長い。いや、きっと千葉なら読書とはそういうものだ、しっかり読めとかなんとか言いそうですが。

二十五人に一人の良心を持たない人間、サイコパスに愛娘を殺された山野辺夫妻が復讐を試みる7日間。山野辺夫妻が本気だってことはわかる。でも、どこかのほほんとしているように読めるのは千葉パワーなのか。というか、千葉がいなければ復讐のふの字すら果たせなかったように思えるのだけれど。

伏線の張り具合は10段階評価で5程度か。大きなものだと映画監督志望の彼とまんじゅうこわいとキャンペーンと。ただ、キャンペーン適用の結果が傑作なので6かも。本城が高裁で有罪になって20年後に刑が執行される…なんてありきたりな結末を思い描いていたので、あの終わり方は実に満足。

また千葉の仕事ぶりを読みたい。時代ものもいける。参勤交代の途中で籠の中の大名が「可」にされた場合、どんな死を迎えるのだろう。

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2014/10/12

『残り全部バケーション』 伊坂幸太郎


相手が泣きそうな顔になる仕事をしている溝口と岡田をめぐる5つの物語。実に伊坂らしい1冊なのだけれど、溝口&岡田以外の部分がおざなりになってしまっているのが残念。できることなら全部書き切って欲しかった。

第一章「残り全部バケーション」の解散家族とか実に魅力的じゃないですか。あのあと仁徳さんにどんな復讐をしたのかとか知りたいじゃないですか。第三章の「検問」だって果たして3人が導き出した答えが正解だったのか知りたいじゃないですか。というか、かなり無理のある設定なので納得のいく答えが欲しいじゃないですか。

その点、第二章の「タキオン作戦」は完璧でしたね。ああいうの大好きです。

でも、「飛べても8分」ラストを曖昧にしたのは良かったですね。書き切って欲しい気持ちはわかる。ただ、あれはもう間違いなく岡田からの返信でしょう。きっと「了解です。では、車で迎えに行くので~」って書かれているのでそう。でも、岡田が乗ってるのってバイクなのか…?だって、先生のところにきているフルフェイスの見舞客って岡田でしょう?

そうすると、先生って誰?って話になるんですけれど。仁徳さん?

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2014/02/15

『夜の国のクーパー』 伊坂幸太郎

いつおもしろくなるのだろう…と我慢して読み続けていたら、ついには終わってしまった。『オーデュボンの祈り』に雰囲気は似ている(こちらは猫が喋るのだけれど)が、伏線が回収…どころか張られることもなく、ただただ平坦に進む物語に欠伸が。

クーパーなどいないこと、あるいは、「私」とトムでは世界のスケールが異なることが吃驚ポイントなのかもしれないが、正直「で?」という感じ。伊坂がこの物語を通してなにを伝えたいのか、全く伝わって来なかった。もし伝えたいことなどないのだとしても、物語(ファンタジー)としての魅力も薄く、やはり楽しめなかった残念な一冊。

せめて伊坂流のエスプリが利いていれば。最近の伊坂作品はどうにも物足りない。

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2014/01/07

『PK』 伊坂幸太郎

よく似たふたつのお話、「PK」と「超人」で得たもやもやを「密使」ですっきりさせる三部作。最近読んだ伊坂作品、あるいは『ゴールデンスランバー』以後の伊坂作品の中ではなかなか良かった。

ゴキブリの出た世界と出なかった世界。「PK」と「超人」がAとA´の世界だとするのは簡単だけれど、A´の世界である「超人」で突然届いた誤報メールで「?????」 つまりは「PK」も「超人」も耐性菌の蔓延から世界が救われるお話で、そのアプローチが違うってことですよね?というか、「密使」でゴキブリが盗まれている以上、「PK」は起こらなかった未来なのか。うむ、深いな。

「PK」だとPKを外すように指示した組織が何者だったのか、「超人」だとレストランの壁にくっついて盗み聞きをしていたのは誰だったのか、という謎が残るのだけれど、彼等もやっぱり未来を変えようと切磋琢磨する組織の一員なのだろうか。それとも世界を滅ぼそうと企む組織の一員?

誰かのちょっとした選択で未来がほんの少し変わる。その当たり前の流れの中に私や貴方もいて、知らず知らず未来を大きく変えているのかもしれない。だから迷ったときには、「臆病は伝染する」「そして、勇気も伝染する」なんて言葉を思い出してみると良いのかもしれない…なんて真面目なことを6秒ほど考えさせられた一冊。

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2013/03/26

『仙台ぐらし』 伊坂幸太郎

伊坂のエッセイを読んだのは初めてだけれど。伊坂の頭の中はどうなっているのかといつも不思議に思っていたので→読了後、ますます不思議に思う結果に。だって心配性だったり自意識過剰だったり仙台が大好きだったりと意外と「普通」なんだもの。それがどうしてあんな物語だったりフレーズだったりを紡ぎだせるのか。見ている世界が違うのかと思ったら見ている世界が同じだったときの衝撃。

あんなことがあっても、見えている世界が皆おなじであったら良いと改めて。

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2013/01/29

『バイバイ、ブラックバード』 伊坂幸太郎


多額の借金を背負い、<あのバス>に乗せられることになった主人公が五股をしていた五人の女性にお別れを言うお話、それがこの『バイバイ、ブラックバード』です。

五股と聞くだけで「なにこの女の敵!」と罵られそうな主人公ですが…決して憎めません。作中、何度も描写されるのですが、この主人公・星野一彦は「計算してない」んですよね。よーし、五人の女とうまいこと付き合ってやろうとは決して思ってないし、ましてや、女から金を騙し取ってやろうとも思ってない。純粋に五人の女を同時に好きになってしまった、選び切れなったという正直者の優柔不断男なのです。

そしてそんな優柔不断男が<あのバス>から逃げたりしないようにとお目付け役を言い遣ったのが「身長180センチ、体重も180キロ、趣味は人の嫌がることをすること」の怪獣女・繭美なわけですが…この繭美がマツコ・デラックスで変換されなかった人は果てしているのでしょうか?もうね、繭美がマツコに見えてくるくらいマツコ・デラックスなわけですよ。このマツコも憎まれ口を叩く割に憎めないキャラクタなんですが、とにかくこのマツコと主人公と別れを切り出される女性の掛け合いがまさに伊坂ワールドです。

個人的にはふたりめ、バツイチ子持ちの霜月りさ子とのお別れが好きかな。名刺交換のくだりと、サンタクロースが辞書から消えてないところがとてもとても好きです。あたたかくなるよね。

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2012/03/15

『SOSの猿』 伊坂幸太郎

悪魔祓いと株誤発注と孫悟空のお話。正直、この作品の良さを見つけられなかったのだけれど、伊坂が愉しんで書いただろうことだけはわかった。でも、私は昔のような「どこを読んでも伏線」みたいな伊坂が読みたい。

悪魔祓いの方に主軸があれば感想もまた違ったんだろうな、とは思う。

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2012/02/26

『オー!ファザー』 伊坂幸太郎

キャラクタの異なる4人の父親に育てられた青年がちょっとし…てないトラブルに巻き込まれるお話。実に伊坂らしい、伏線でぐるぐる手足を縛られているようなお話でした。

4人の父親が皆、自分の子どもを自分なりの愛し方で大切にしている様を素敵に思いました。常人には理解できないけれど。とても4人と1人と1人がうまく共存できるとは思えないけれど…それができるだけの魅力を母親が持っているのでしょう。なんてたって、あの葵さんがあれだけ惚れた女なのですから。

由紀夫が生まれたことは「不測の事態」ではなかったと葵さんが云うシーンが好きです。由紀夫が4人の父親に愛されているシーンもどれも好きだけど…それだとこの本の全てってことになりますね。

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2012/02/06

『あるキング』 伊坂幸太郎

私にはよくわからなかった、が読了後の正直な感想。王として生まれ、王となることを約束され、紆余曲折しながらも王として生きた野球少年の物語。

伊坂氏はこれを「伝記」と呼んだが、果たして王は成功しただろうか?後世に残る記録を残しはしたかもしれないが、王はその記録を喜んだのであろうか?最後まで、野球をする王が野球を楽しんでいたように読めなかったことと、現れては消える登場人物の何人かが消えっぱなしなのが残念でした。

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