2008年5月23日 (金)

『ZOKU』 森博嗣

ZOKU Book ZOKU

著者:森 博嗣
販売元:光文社
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意味なき悪戯に命をかける“ZOKU”と

ZOKUの企てを阻止すべく動く“TAI”

さぁ、より仕様も無いのはどっちだ?

あれ?こんな中身の無い作品でしたっけ?

『ゾラ・一撃・さようなら』をてっきり「ZOKU」シリーズの続編だと思っておった私は、『ZOKU』と『ZOKUDAM』を再読しようと手配をしていたわけで。『ゾラ』が続編でないことを知っても、手元に残った2冊をそのまま返却するのは勿体無いと思ってしまった私は、根っからの貧乏性なわけで。とりあえず再読してみた私の脳裏に真っ先に浮かんだのが冒頭の呟き(の割りにフォントがでかい)なわけで。

トリアタマの私はラストに用意された仕掛けしか覚えておらず。あの仕掛けはなかなか好きだったので、『ZOKU』には好印象を持っていたのですが…今は森作品特有の意味なし(ジョーク)にお付き合いできる心の余裕が無いみたいです、私。

というわけで、もう書くことが無くなってしまった。そうねぇ…ロミ・品川は私の中で“外見=各務亜樹良 中身=香具山紫子7割+瀬在丸紅子3割”って感じなんですが、皆様いかがですか?しこさんのノリと、紅子さんの女王様を足し合わせるとあんな感じになるのではないかと…まぁ、どうでも良いのですが。

ただ、意味のないことに精力を傾けるという姿勢は凄く好きです。でも、精力を傾けた瞬間にそこには意味が生じてしまっていますよね。あら、矛盾。人間は自分の行為に何らかの(重大な)意味を持たせようとする生き物だから、本当に無意味な行為を取ることはできない。でも、生きるという行為そのものが無意味なのでは?

そんなことをほんの少しだけ(10秒くらい?)考えさせられた一作。この10秒こそ無意味な10秒であったのかもしれませんね。とりあえず、本作を読むのに費やした数時間が無意味で無かったことを祈りつつ。

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2008年5月16日 (金)

『ゾラ・一撃・さようなら』 森博嗣

ゾラ・一撃・さようなら Book ゾラ・一撃・さようなら

著者:森 博嗣
販売元:集英社
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「探していただきたいものは、古い美術品です」

突如現れた美女からのオファー

これを受けなきゃ…ハードボイルドじゃない

是非ともシリーズ化していただきたい一作

デイヴィッド・ハンドラーのホーギーシリーズを読んでいるかのような錯覚に陥ったハードボイルドな一作。森博嗣のこんな作品が読みたかったの!という夢が叶った一作。シリーズ化は無理だってわかっていても(森先生、長編はあと15作しか書かないって断言してるし)願わずにいられない一作。それが本作『ゾラ・一撃・さようなら』でございます。

主人公は頚城悦夫、その職業は探偵。薄暗いBarで怪しげな美女と待ち合わせ。そして美女が求めるは…“天使の演習”

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

エンジェル・マヌーヴァですよ、エンジェル・マヌーヴァ。“天使の演習”という文字を眼が捉えた瞬間、いろんな可能性が頭の中を過ぎる過ぎる。まずは主人公の頚城悦夫=愛しの保呂草さん♥を疑ったね。そして時代考証へ。「『魔剣天翔』から『捩れ屋敷の利鈍』の間か?」とか「もしや保呂草さんってば『捩れ屋敷』の後、さんざん堪能して売り飛ばした?」とか「まさか『魔剣天翔』の前ってことは無いよね!?」とか。煩悩煩悩。

とにかく“天使の演習”と聞いて、ピクっとしてしまう方にお読みいただきたい一作。そして、ハードボイルドがお好きな方も。正直申し上げると結末に目新しいものはなく、先は読めちゃいます。でも、結末以外が素晴らしい。まさに森節炸裂。

そうそう、『夏のレプリカ』に登場したあのお方もさりげなーく登場しておりましたね。あの衝撃のラストの後、彼がどんな生活を送っていたのか。それを少しだけ窺い知ることができるかと。きっと、この物語の後も同じような先に引き取られ、同じような生活を送っているのでしょう。書き取ってくれる人が居ないから、すべては彼の中で風化して。

物語が閉じられた後、保呂草さん並みに女ったらしな主人公(えっ?)の隣に座るのは誰なのか。女が切れないから良い男なのか、良い男だから女が切れないのか。誰にも打ち明けられない秘密を持った男に惹かれてしまうのが女の性ってやつですか?でも、女だって「A secret makes a woman woman」ですのよ(by 名探偵コナン)

私は「内容が無いのがハードボイルドの証明」だと考えている節があるので、この“全く内容について触れないレビュー”こそ私がこの作品をハードボイルドだと思った証拠かと(すみません、言い訳です)でも、最近読んだ森作品(講談社ノベルスまで含めて)の中で最も好みな一作でした。

ところで、講談社ノベルス『カクレカラクリ』のあとはXシリーズでなくGシリーズなんですよね?『目薬αで殺菌して』って、一体どんな作品?

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2008年4月24日 (木)

『もえない』 森博嗣

もえない―Incombustibles Book もえない―Incombustibles

著者:森 博嗣
販売元:角川書店
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自殺したクラスメイト

彼は単なるクラスメイトだったのに

何故?僕はこんなにも彼の死が気になるのだろう?

森先生の出版ペースにすっかり付いてゆけなくなりつつあります。この『もえない』もすっかりチェックを漏らしてまして。まぁ講談社ノベルスしかチェックできない、ざるチェックなんですけどね、元々。

本作は自殺したクラスメイトの死の真相を追う…というミステリ作品なのですが、いつの間にかミステリの主題が入れ替わるという「???????」作品で驚き。正直、そんな驚き方は要らなかったのですが…っていうのは、ラストの急展開に付いてゆけなかった駄目読者の毒吐きなんですけれどね。っていうか、本当にミステリ?という疑問が読書中に何度頭を過ぎったことか。

続々出てくる“いかにも怪しい”人間は、続々捨てられゆくし。結末がどう転んでも良き様にふわふわしちゃっているのは、連載という発表形態の所為なのでしょうか?でも、森先生は一気に書きますよね、作品。読者を煙に巻く森戦法は健在ですが、今回は煙が出過ぎて真っ白になっちゃった感じです。装丁のピンボケ具合が作品のピンボケ具合を表現していると云い換えても良いかと。

入口のミステリと出口のミステリ、どちらも魅力を持っているはずなのに。その間が巧く繋がっていないから、迷路で迷った感に襲われる読了後。本作は装丁が一番素敵だったかも…残念。

そういえば、ラストで辻褄合わない箇所ありましたよね?自殺した順番の件で。夢の世界に片足突っ込んでいた私のウッドフェアリーですかね?

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2008年1月20日 (日)

『キラレ×キラレ』 森博嗣

キラレ×キラレ (講談社ノベルス (モF-39)) Book キラレ×キラレ (講談社ノベルス (モF-39))

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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満員電車に出没する連続切り裂き魔

30代の女性ばかりを狙うその手口

被害者の女性たちにミッシングリンクはあるのか?

森博嗣待望の新シリーズ第2弾

『タカイ×タカイ』のレビューを書いていて、ふと「そういえば『キラレ×キラレ』のレビュー書いてないじゃん!」と思い立ち、早速再読&レビュー。当ブロ愚は森博嗣と有栖川有栖に特化したブロ愚なのに(この両者のレビューでお褒めの言葉を頂くことが多いので嬉しい、という意)うっかりしておりました。

さて、本作は満員電車で起こった連続切り裂き事件が主題となっております。私は徒歩5分通勤派なので(それって“派”なのか?)満員電車というものに縁が無いのですが、“鮨詰め”とはよく言ったものです。現代では鮨だってあんなにギュウギュウに詰め込まれないわよ…ギュウギュウに詰まった鮨が食べたい(機械で酢飯がギュウギュウという意味では無い、勿論)。

今回も椙田氏の経営方針の所為で(笑)まったく仕事の無い小川&真鍋の両者が、鷹知氏の要請を受けて調査に乗り出す(小川嬢の前職に関係する御仁からの依頼という縁もあるが)体で事件は動きます。被害者が増えゆくなか、小川&鷹知のコンビが見つけたささやかな手掛かり、取っ掛かり。「一見関係の無さそうな事象の中に、解明への道標は隠れているものだよ」とかなんとか、どこぞの名探偵が仰っていたと思いますが(心当たりが多すぎて、“こいつだ!”と指摘できない)今回もまさにそのケース、ビンゴでございました。

ようやく見つけた手掛かりに縋り付く二人。でも、犯人の方が一枚上手、キーパーソンたる人物が殺されるという事件が起こって。まぁ、結局のところキーパーソンでもなんでも無かったんですが(真相に辿り着けるということは、そういうことでしょ?)。とにかく殺人事件まで起こってしまって、ついに危機感を感じ始める小川嬢。そんな小川嬢を救うべく真鍋が取り出したのが

愛用カッタマットで作った自作プロテクタ〜(ドラ○もん風)

個人的には良い案だと思うんですけどね。カッタマットプロテクタ。しかし、そのプロテクタが活かされた場面というのが最悪でしたね。いきなり犯人が小川嬢の前で自供を始めたときには、なにが起こったかと眼を疑いましたよ。えぇぇぇぇぇ、探偵サイドが犯人を特定できてないってのに、解答編始めるってかっ!?これはもうミステリではない。残念なことに。

本作は椙田氏の登場も殆どありませんでしたし(小川嬢宅で家庭料理を頂く椙田氏は可愛い。彼の周りには初々しく家庭料理なぞを披露してくれる女は居なかったはずだから)、ミステリとしても成り立っておりません。しかも、西之園女史も登場しちゃうし…可哀想な一作でございました。

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2008年1月18日 (金)

『タカイ×タカイ』 森博嗣

タカイ×タカイ (講談社ノベルス モF- 41) Book タカイ×タカイ (講談社ノベルス モF- 41)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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地上15mのポールの上に、突如として現れた他殺死体

なぜ死体は遙か高みに昇らねばならなかったのか?

さぁ、森博嗣によるマジックショウを御覧あれ

講談社ノベルススキーにとっては一番美味しい月かもしれない1月。高田崇史氏に続いての登場は森博嗣氏Xシリーズ第3弾でございます。

有名マジシャン宅の上空に突如として現れた他殺死体。「なぜ死体は高所に現れねばならなかったのか?」「その方法は?」「そして、犯人は誰なのか?」が3大主題かと。森博嗣氏によってこれまでに発表された各シリーズに、それぞれ一貫したテーマを当てはめるならば「S&M=天才」「V=愛憎劇」「G=未知との遭遇」だと勝手に思っている私は、本作を読んで「X=正常と異常の狭間」なのかな、と思ったり思わなかったり。

さて、新シリーズ開幕当初から私が危惧しておりました「某西之園女史の介入」が本作では顕著に。個人的には、

西之園女史と遭遇することを極端に恐れる椙田氏

なんかは、超萌えポイントであったりするのですが。ただ、西之園女史が登場するとシリーズキャラクタである真鍋&小川&鷹知が霞むんですよね。犯人特定の契機となった4人のディスカッションでも真壁&小川&鷹知の3人がタッグを組んでも、西之園女史に及ばない感が蔓延しておりましたし。「正常と異常の狭間」がシリーズテーマならば(あくまでも個人的解釈です)そこに天才が介入してはならないのですよ。なぜなら、天才とは正常であり異常だから。そんな観点を超越したところに居るのが天才であって、俗世の3人(真鍋&小川&鷹知)と交わってはならないんですよね。キャラクタだけでなく、シリーズ自体が霞んでしまう。まぁ、「西之園女史の登場はもうご遠慮願いたい」という個人的主張を通すために、無理に理論付けしてみただけなんですが。

ミステリとしては「犯人は誰なのか?」が巧いこと煙に巻かれてて良かったと思います。読者それぞれに解答が有るのでは?ただ、真実はいつもひとつなんですが(笑)

そうそう、本作は森博嗣氏の大好きなマジシャンモノ(笑)ですが、ラストに颯爽と現れた鷲津伸輔は既出のキャラクタですか?マジシャンモノといえばS&Mシリーズの『幻惑の死と使途』ですが、『しとしと』で登場した弟子の誰かが鷲津なんでしょうね(未確認です)。犀川先生もご存知の様子でしたし。

やっぱり、どう考えても西之園女史の物語だった本作。いや、

西之園女史との邂逅がこの世の終わりと同義の椙田氏

には、キュンキュン☆なんですが(何度だって云おう)。ところで、椙田氏のデートのお相手ってやっぱり各務女史ですよね?また二人でなにかやらかす予定なんでしょうか…そちらのお仕事のこともちょっとだけで構わないので(新聞記事としてチラッと記述するとか)表記してくださると椙田スキーの私にとっては地上15mのポールの上へ昇る想いです。

ところで、次回以降の発刊予定『カクレカラクリ』って、あの『カクレカラクリ』ですか?

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2007年5月14日 (月)

『イナイ×イナイ』 森博嗣

イナイ×イナイ Book イナイ×イナイ

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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今日も退屈な探偵事務所の一室。

絶世の美人が持ち込んだ依頼は、密室事件へと開花し。

森博嗣、新シリーズここに開幕!

5月最初の読書レビュー(えっ?)は森博嗣新シリーズ=Xシリーズ第一弾『イナイ×イナイ』でございます。

森先生、おかえりなさい!

今回の森作品はなんとミステリでした(苦笑)ようやく愚痴ではないネタバレレビューができる…というわけで、今回もネタバレ全開フルスロットルレビューと相成りますので、未読の方はご注意を。

まずは、13頁(物語開始3頁)で私が感じた感動を声を大にして伝えたい。

保呂草探偵物語、ここに開幕!!!!

前作『ηなのに夢のよう』レビューに於いて、新シリーズについてこんな風に書いた私。

願わくば四季とか萌絵とか、一切合財放り出して、本当に新しいシリーズを。
お願いですからW大へと旅立つ萌絵のためのシリーズなんてのは止めてね。

いやぁ、私が唯一許容できる保呂草ルート、保呂草フラグを立ててきましたか。やるな、森博嗣(って、貴女の為に執筆しているわけではないから)。結局、保呂草さんが殆ど登場しなくたって私はこれだけで、もう満足。新シリーズ期待できる。

オチをここで明かしてしまうなら、萌絵もおまけ的に登場します。W大の講師(助教授?助手?)として保呂草さんとニアミス。それまで椙田=保呂草に気付いていなくても(保呂草さんに特に興味の無い人は気が付かないかもしれないなぁ。Gシリーズは最早どうでも良いし)ここで気付ける寸法になっている…はず!

とにかく保呂草さんラヴな私の為に始まったのではないかと錯覚する新シリーズ。もしかしたら四季との絡みも出てくるかもしれませんが(小川嬢の前職場とか?)保呂草ルートからの絡みは全然オッケーですので。

さて、肝心のミステリ部分。今回はちゃんと新キャラが探偵役を務めます。不憫だ、C大三人衆。今回の探偵役=眞鍋瞬市くんはとにかく喋る。読者の代弁者的役割?お喋りな眞鍋くんについて保呂草さん(椙田さん)が次のように述べたのが印象的でした。

「理屈っぽいところは、たしかにある。しかし、そうやって言葉で話しながら考えをまとめるタイプなんじゃないか。ようするに頭のバッファが足りない証拠だ。まぁ、簡単にいえば、頭が悪いんじゃないのかな」

うわぁ、私なんて頭悪い筆頭じゃないですか!?このブロ愚も思いつくまま書いては消し、書いては消しを繰り返す私。バッファ、確実に足りない。というわけで、寡黙(あるいは性格悪)な探偵役が多かった森作品に新しい方向性。

喋りすぎて読者を煙に巻く作戦か?と途中で思ってしまうほどでした。まぁ、森作品によくある“謎は極々シンプルなのに、キャラクタが勝手にややこしくしている”手法のひとつかと。

今回のメイントリックは性別誤認トリック。まだ確認していないのですが、きっと地の文では“美人”という表記はあっても、“美女”という表記はないのだろうなぁ。森先生のことですから、信頼して良いかと。読書中に『月は幽咽のデバイス』『黒猫の三角』を連想した私もまだまだ捨てたもんじゃないな。なんとなくこの2作に雰囲気が近いと思いませんか?

というわけで、Gシリーズよりは素敵な作品に出来上がっていると評価しました、新シリーズ。次回配本(9月)『キラレ×キラレ』もXシリーズ。次回作はマイラヴァ・保呂草さんがもうちょっと活躍してくれると嬉しい。

そうそう、装丁も好きです。

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2007年1月16日 (火)

『ηなのに夢のよう』 森博嗣

ηなのに夢のよう Book ηなのに夢のよう

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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久しぶりの再会がもたらしたのは、過去の秘密と新しい事件。

見え隠れするあの天才の影。

最初に彼女へ追いつくことができるのは誰だ?

えっと…どこからツッコミますか?

毎度お馴染みのやつから読みたいですか?それとも新しいとこからゆきますか?久しぶりにネタバレ渓谷へとアタックするつもりなので、いつものやつからツッコむことにしましょうか。

C大三人衆(今回は四人衆)まったく存在価値無し!!

既に可哀相とかそういうレベルは超えてしまいました。これまでのシリーズ名はS&MやらVやら、登場人物の頭文字から取られるのが通例でございましたが、Gシリーズはどうやらgrecia(ギリシア)のG…もう彼らはモブ扱いです。なんのために彼らを登場させたのでしょうね。海月くんの正体が、過去の登場人物と繋がる大物でもなんでも無かった場合、本当にその存在意義も価値も無い。アイスクリームのウエハースよりもその価値がないかもしれない。不憫です。

ここらあたりからネタバレ渓谷へのアタックを開始します。

しかも、今回の探偵役は紅子さん。犀川先生にそのお鉢を取られるならまだしも、C大三人衆が遭ったこともない紅子さんが、知らないところで勝手に事件を解決してしまうっていうんだから。

そもそも、今回は事件なんてひとっつも起こってないんですよ!!

謎のネット集団がちょっと変わった方法で連続自殺を繰り広げるってだけで、事件性は欠片も無い。つまり、犯人も居ない。ミステリじゃ…無い。なんなんだろ、なにがしたいんだろ、森先生。

ラブちゃん&金子くんが再登場したと思ったら、金子くんは萌絵によからぬことを吹き込むし。S&Mを執筆していたころから、あの飛行機事故がテロだった…だなんて考えていたとは到底思えないので、後からとってつけた感が否めません。あの飛行機事故は、萌絵が成長してゆく過程を描くためのものでは無かったのですか?そうまでして四季を物語に絡めなくてはなりませんか?これまで好きだったものが瓦解してゆく感覚。

もう、赤柳さんの正体にしか興味を持てない。赤柳さんは森川くんか稲沢さんだと思いますが(稲沢さん好きですが、それだと保呂草さんと対面したときの会話が妙ですよね。同じ船…には乗ってるのか。でも阿“漕”荘だと思うんだよなぁ)確信が持てない。もし、稲沢さんならばキャラ変えは勿体無いです。あのクールな感じが最高だったのに。

そうそう、保呂草さんは事務所を移転してなにをやらかそうとしてらっしゃるんでしょうね?保呂草さんのダンディさがどんどん失われてゆくのにも、困惑。

そして、次回作予告『イナイ×イナイ』が

Gシリーズじゃないなんて!!

Gシリーズ放り出して新シリーズ開始ですか…そんなに人気ないですか?Gシリーズ。10作一シリーズとかもう守らなくても良いので、せめてGシリーズ完結させてから始めてくださいよ、新シリーズ。

でも、これだけ愚痴って読むんです、新シリーズ。願わくば四季とか萌絵とか、一切合財放り出して、本当に新しいシリーズを。お願いですからW大へと旅立つ萌絵のためのシリーズなんてのは止めてね。

最後に、トーマの件はそれでもほろっときてしまった、私なのでした。

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2006年11月16日 (木)

『カクレカラクリ』 森博嗣

カクレカラクリ—An Automaton in Long Sleep Book カクレカラクリ—An Automaton in Long Sleep

著者:森 博嗣
販売元:メディアファクトリー
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天才絡繰り師によって生を受け、120年の時を刻み続ける“カクレカラクリ”

“カクレカラクリ”は伝説でしかないのか?本当に存在するのか?

ひと夏の冒険をコカ・コーラと共に。

いっ、いま頃!?

皆様からのそんな声が聞こえてきそうな『カクレカラクリ』レビュー。ドラマですっかり意気消沈、なかなか手が出せずにおりました。ドラマレビューの際に頂戴したコメントで、ドラマと原作がてんで異なる作りになっていることは推測できましたので、そのあたりに注目して読み進めたのですが、やっぱり原作の方が数倍、数百倍おもしろい。

まずキャラクタ。ドラマでは演技力の問題だったのか演出だったのか、とにかく無気力無感動おまけに無愛想に描かれていた主人公・郡司くんでしたが、原作ではメガネの(ここ、ポイント高いです)理系思考、廃墟を目にすればまるで少年というなかなか好感の持てるキャラクタに仕上がっておりました。“天然”という表現だけはどうも納得ゆかないのですが(理系故の思考の飛躍でしょ?)

そして、ドラマではただのチャラ男(うわぁ、古っ!)だった栗城くんや、魔女ですか?ってなくらい怪しげだった花梨お嬢様も、普通に馴染みやすいキャラクタで一安心。玲奈ちゃんだけはバイクの一件を除けば原作にかなり忠実でしたね。

一番ポイント高かったのは太一くんですね。エピローグの「どんな味でも…食べるしかありませんよ」と微笑むシーンで、お姉さま(私のことです)のハートを鷲掴みです!ドラマじゃ異常なほど腰の低いキャラクタに仕上がっておりましたが、原作じゃちょっと犀川先生を連想させる(本当はそうでもない)素敵青年として描かれているではありませんか。

とにかく、ドラマよりも数段魅力的なメンバで構成されております、原作。

そして、肝心の“カクレカラクリ”。巨大な建造物がにょきにょきと…というほどのカラクリではありませんでしたが、あれだけのエネルギィを用いてあの小さな人形を動かす…という一見(というか、かなり)無駄に思える仕様にロマンを感じますよね。好きです。あのカラクリ部屋でそれらが動く様を見たら、間違いなく感動すると思います。ドラマでは見事に描かれなかった部分でございますが。一体、なんだったんだ、ドラマ。でも、暗号(?)の難易度は変わらずでしたね。森博嗣作品の中では、最高に解きやすかろうと思います。そのあたり、一般向けを意識されましたか?森先生。

財宝云々の落とし方も良かったです。ドラマじゃ、財宝ネタは宙に放りっ放しで回収無しでしたからね。ちゃっかり着服(横領)しちゃうなんて、インキさんったらお茶目☆

玲奈と太一のラヴ模様も、ちゃんと救われるように描かれていて(ドラマでは絶対に結ばれてはならねぇ!みたいに描かれているように私には見えた)嬉しくなりました。従兄弟は結婚できますからね。両家を文字通り結んであげてくださいね。

というわけで、いつもの森作品ほどのキレはありませんでしたが、ドラマよりも数段おもしろい作品で一安心でした。今日はこのあと、録画したドラマをもう一度見てみようかなと思います。原作も読んだ今、きっとツッコミポイントは数倍に膨れ上がっていることでしょう。ある意味、楽しみ。

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2006年11月14日 (火)

『少し変わった子あります』 森博嗣

少し変わった子あります Book 少し変わった子あります

著者:森 博嗣
販売元:文藝春秋
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その店は極上の料理と一風変わった趣向を用意する。

その特別な趣向を楽しみながら自分の内面へと突き進み、そこで出逢うものとは?

森博嗣、新境地の連作短編集。

久しぶりの森作品。「ブログジャック!」とか云って、来る日も来る日も森作品だったあの夏の日々が懐かしい。すっかり秋めいて参りましたね。

さて、本作『少し変わった子あります』は一風変わった料理店が舞台。といっても体洗って来いだの、塩かけろだの、謎の注文が次々と舞い込む料理店ではありません。来店は必ず独りで、決まった店舗があるわけでなく、予約が入る度に廃墟となった小学校やら一般の民家やらを借り受け営業する、そして最も異質なのがその席に同席する“少し変わった女性”。

“少し変わった女性”との出逢いは一期一会。その日その場限りの女性。年齢も容姿もバラバラ、共通するのはつい見惚れてしまうほどとても上品に食事をする、ということだけ。一方的に捲くし立てるように話続ける女性もいれば、一言も言葉を発することなく黙々と食事を続けるだけの女性もいる。そんな料理店、なにが楽しいんじゃい!と思いきや、彼女たちと時を過ごすことで孤独と、内に秘めた自分の感情を知ることが出来る。

話を読み進めていくうちに、「もしやオチはこれかな?」と感じるものがあったのですが、読了しても正しいかどうか判断付きません。私的には

計画的誘拐組織

だと嬉しいのですが、皆様いかがでしょう。失踪促し集団でもアリなのですが、それだと彼女たちの目的がね。大学教授の優秀な(偏屈な?)頭脳を集めて、なにかデカイことをやらかそうとしているわけですよ(笑)

短編として一作ずつ解説するならば、2話目の「もう少し変わった子あります」が一番好みでした。指に残る苦味の話が具体的抽象的論旨へと帰着するあの流れが森博嗣的で一番落ち着く。森作品に必ず登場する天才ファクターを一番感じられる作品だからかもしれません。

もしこんな料理店があったら(私の場合、少し変わった男性、しかも美形で頭の良い方をお願いします)通うでしょうか?既に上記( )のように注文を付けている時点で通おうという意思が感じられるのですが(笑)自分のつまらない話を笑顔で聴いてくれて、しかも頭の良い返答をくれる美形が居たら行くだろうなぁ。まるでホストクラブのようですが(あっ、ホストクラブには行ったことないです)。

でも、このブロ愚は既にそういう場所になりつつありますよね。大好きなミステリ(本)のことをただただ話して、それを読んでくれている皆さんが居て、素敵なコメントをくださって。皆さん、もしかして組織的に私の誘拐を企んではいませんか?

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2006年9月14日 (木)

TBSドラマ「カクレカラクリ」

み、観ました「カクレカラクリ」。原作読まずに食べた…もとい観たのですが、原作読んでたら最後まで観ていられなかったかも。

OPからして「金田一少年の事件簿」を連想させる作り。チープな作品のにほいがプンプンするな!と思ったら、予想通りの出来映え。

いきなり登場したゴスロリ女子。スウィングボーイこと平岡祐太くん演じる栗本くんがプレイしていたPSPの恋愛シュミレーションは実在するゲームなのでしょうか?気になる木。

そして、ゴーゴー夕張こと栗山千明ちゃんの登場。あそこで『銀河鉄道の夜』ではなく、夢野久作の『ドグラ・マグラ』あたりを読んでくださると“魔女”って感じで良かったのに。せめて『注文の多い料理店』で。栗山千明ちゃんはメルヘンじゃないよ、魔女だよ(栗山千明ちゃん好きです。鼻高っ!)ひざをちょこんと折って切符(?)を置く様が可愛かったです。

さらに、デビット伊東。なぜか背中に“真心”を背負っておりましたが、あれにはなにか意味があったのでしょうか?べんばあとんで出逢った謎の三兄弟も数字背負ってたしな。加藤成亮くん演じる阿部ちゃんも“プラネタリウム”って書かれたTシャツ着てましたね。でも、同じくTBSドラマ「STAND UP!!」で釈由美子が着用していたおもしろTシャツには負ける。やっぱり、奇才・堤幸彦じゃないと。

さらに風見おぼっちゃま(腰低っ!)と花山次女(彼女のファッションは可愛かったです)も登場し、冒険へ赴く5人が勢揃い。そういえば、銃を構えたおじちゃんの意味もどこへ?

カラクリ自体は3分もかからずに看破。花山家に伝わる石碑なんて、

まったくカクレてないじゃない!

原作の方でもあの難度なのでしょうか?もしそうなら森博嗣作品随一の低難度。120年もあの程度の謎が解かれなったなんて、説得力に欠けます。もちろん誰も本気で取り組んでいなかったってことだよね?と思ったら、泉谷しげるがチャレンジしておりましたか。うん、彼なら解けなかったかもしれない。

事前の妄想では、村全体にとんでもないカラクリが仕掛けてあって、いきなり巨大な建造物が飛び出してくるくらいのことは予想していたのですが、単なるカラクリ人形でしたか。でも、あのカラクリ人形素敵でしたね。あれがこのドラマの中で一番素敵でございました。

主要登場人物5人もみんな常識人で、森作品特有の天才肌がひとりもいませんでしたね。気の利いた台詞がひとっつも出てこない…森博嗣ファンとしては意味なしジョークのひとつもかましてほしかったです。原作ではそこのところどうなのでしょうか?

総括としては、もうちょっと森博嗣カラーを全面に押し出して欲しかったです。このドラマで森博嗣に初めて触れた方に、森博嗣の実力があんなもんだと思われたらショックです。原作読まないと解らないネタがあったと信じて、原作読んでから再度ビデオを観直したいと思います。

そうそう、コカコーラ社製品連発のCMですが、キムタクと渡哲也のジョージアCMの「ぼくはきみのシンデレラボーイ♪」のメロディが現在頭から離れてくれません。これが一番私の中に残ったものかも…。

TBS「カクレカラクリ」公式ページはコチラ

カクレカラクリ―An Automation in Long Sleep Book カクレカラクリ―An Automation in Long Sleep

著者:森 博嗣
販売元:メディアファクトリー
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2006年9月12日 (火)

『λに歯がない』 森博嗣

λに歯がない Book λに歯がない

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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密室状態の研究所で発見された、身元不明の射殺死体×4。

死体が所有していた「λに歯がない」と書かれたカードの意味は?

Gシリーズ第5弾。あのお方も再登場。

「カクレカラクリ」O.A.目前にして、なんとか読了できました『λ』。この数日のうちに、“λ、保呂草”というキーワードで当ブロ愚にご来場くださる方が幾人かいらっしゃって、非常にボルテージが上がっておりました。

保呂草様、お逢いできて嬉しゅうございます☆

なんかもう、Gシリーズの様相とか真賀田四季とか“?”は山のようにあるのですが、最善とは云えないまでもso-soといった感じ。

この『λ』についてもこれまでのGシリーズと同様に、西之園萌絵がアクションパートを、犀川先生が探偵パートを、Gシリーズ新キャラ3名が頭脳パートを担当。Gシリーズキャラにもうちょっと日の目を見せてあげてもよいのではないか…という愚痴は語り尽くしましたので、くどくど申し上げませんが、ね。海月くんなんて、存在していないのと同じですよ。彼が居なくとも事件は解決してしまうわけですから。もし彼が活躍する場面に遭遇するとしたら、それは犀川先生や保呂草さんが真賀田四季に近すぎて、客観性を維持できないという舞台に上がったときのみだと思います。そのラストのためだけに登場させたキャラだとしたら、哀しすぎます。

と「くどくど申し上げない」と宣言した割に、数行費やしちゃって。得てして前置きというものはそういうものです。「簡単に」と前置きの付いたスピーチが簡単だった試しは無いというマーフィーの法則です(読んだことすら無いのに、適当なこと云っております)。

前作『εに誓って』が非常に消化不良だったわけですが、この『λ』で再び加速した感じ。密室状態での不可解な死という、ミステリのお約束事項がとてもセクシィに描かれていたと思います。解決に至るキーが、他所から唐突に得られる新情報であるというのが、若干物足りなさを感じる要因ですが。まぁ、Gシリーズに於ける犯人は、S&Mシリーズよりも蔑ろにされている項目ですからね。『τになるまで待って』がその点については詳しいです。ただ、シリーズ以降の巻に余韻を残す犯人(ラスト)でしたので、シリーズを通して一作の本に見立てるつもりではないかという漠然とした印象は強くなりました。Gシリーズは基本的に一作一作で完結していないですよね。また森マジックが見られるのでしょうか。本作の物理トリックは派手ではありませんが、『封印再度』を読んだときの読了感に近かったですね。

犀川先生と萌絵の関係も、どんどん加速。歳を重ねることによって、人間は馬鹿になるというのは犀川先生の談ですが、彼の変貌については西之園萌絵という外的なファクタだと思いたいです。犀川先生の不器用さは父親譲りの相変わらず加減でございますが。

さて、保呂草さん再登場に触れてもよろしいでしょうか?Gシリーズ最大の関心事は赤柳探偵と保呂草さんと真賀田四季の関係です。今回、公安が保呂草さんと接触を取りたいと赤柳探偵を通して申し出て参りました。一体、保呂草さんはどんな危険に足を突っ込んでしまったのでしょうか?あの日、あの場所で各務さんと再会して、第二の人生を歩き始めたのでは無かったのですか?彼はなにを掴んでしまったのでしょうか?それはVシリーズあたりで既に登場している情報ですか?謎が謎を呼ぶ保呂草さん再登場。ときどき思い出したように保呂草さんがGシリーズに登場してくださると、期待感が加速して個人的には良い傾向になります。

次回作『η(イータ)なのに夢のよう』はどんな作品になるのか。新展開はあるのか。保呂草さんの再登場は?定番の1月発売になるものと想像しますが、非常に楽しみです。やっぱり森作品からは離れられない私。

それでは明日の「カクレカラクリ」感想レビューでお逢いし魔性☆

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2006年9月 4日 (月)

閉幕宣言

開幕は7月26日のことでございまいた。

本日、無事閉幕を迎えることができ、感無量。

1ヵ月弱でS&Mシリーズ+Vシリーズ+四季の24作品を読み切ろう!というなんとも甘い考えで始めたこの企画。

来る日も来る日も森博嗣…しんどい時期もありました。積読本はまだかまだかとプレッシャーを与えてくるし。

でも、一気に読んだことで奥深さと云いますか、これまで気付かなかった伏線やポイントに気付くこともできました。結果的にはかなり楽しい1ヵ月でしたね。ブログジャックのお陰で知り合うことのできた方もたくさんいらっしゃいますし。

ここまでお付き合いくださいました皆様、どうもありがとうございました!

これからの私の予定としては積読本を解消した後に、有栖川有栖の「国名シリーズ」か綾辻行人の「館シリーズ」、小野不由美の「十二国記シリーズ」このいすれかのシリーズレビューをやりたいなと思っております。いずれも10作程度のシリーズなのが助かる。このシリーズのレビューが読みたい!というリクエストがもし万が一あれば、そのシリーズから取り掛かろうと思っております。

これからも当ブロ愚を何卒何卒よろしくお願い致します。

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2006年9月 3日 (日)

『四季 冬』 森博嗣

四季・冬 Book 四季・冬

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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真賀田四季。

彼女が求め、描いた世界とはどのようなものだったのか。

天才を映し出す『四季』四部作ついに完結。

ついにラスト!

この『冬』についてはもう難しくって、物語の半分も理解できていないことを最初に表明しておきましょう。

『すべてがFになる』からこの『四季』まで、真賀田四季博士に共通するキーワードは“孤独”です。孤独な7をレッドマジックの中に潜ませ、外の世界を手に入れた彼女。外の世界で得られたものは、自由ではなく孤独。

天才と呼ばれ、天才であることを周囲から期待され強要された彼女。彼女が欲しかったのは普通の愛と生活。しかし、その普通を彼女は得ることができませんでした。その要因は…彼女を取り巻く環境?それとも彼女自身?

この『冬』は犀川や萌絵と出逢った世界から100年後の未来。プロローグで犀川と名乗る人物が登場しますが、犀川先生の子孫でしょうか?100年の時が経過しても、四季の肉体は衰えを知らない。スワニィ博士の研究の成果でしょう。しかし、彼女は大人になり、その精神は随分と衰えをみせています。果たして肉体的な死を拒むことが彼女のしあわせなのでしょうか?彼女が最後に流した雨が、その答えだと思います。

この『冬』を私はどう評価してよいか未だに悩んでいます。真賀田四季という天才を掴みきることができない。未来の四季が置かれている環境への理解が追いついてゆかない。これが『秋』で犀川や萌絵に遭遇した5年後くらいの未来であるなら、なんとなくその影を掴むことができたかもしれません。しかし、経過した時は100年。彼女の思考・思想・倫理観は私たちとそこまでの相違がありましたか。しかも、時代はまだ彼女に追いついていない。100年経った未来であっても。

四季のすべてを掴むためには、この『四季』四部作の他に『女王の百年密室』を読む必要があるかもしれませんね。なんてったって、ミチルとの再会が待ち構えているのですから。ミチルと再会することで起こった彼女の変化。それが最後のキーになるのかもしれません。

この『冬』が四部作最後にあることで、森博嗣という作家の大きさがわかるような気がします。決して媚びない。落ちるべきところに落さない。謎を謎のまま残す。評価はまだ保留ということで。

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『四季 秋』 森博嗣

四季 秋 Book 四季 秋

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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「犀川先生は真賀田博士のことをどう思っているのだろう?」

これが西之園萌絵の専らの関心事。

そして、その答えがここに?

これまで四季サイドから物語が綴られていた『春』『夏』と趣向を変えて、西之園萌絵サイドから現在の四季像に迫るのがこの『秋』です。

すみません、さっそくですがこの『秋』も全面ネタバレレビューです。もう口を噤むことはできません。未読の方はとにかくとにかくご注意を!

「古いお友達なのですか?」萌絵は犀川に聞く。
「知り合い」彼は短く答えた。

「知り合い」…保呂草さん残念!!

『秋』を語る上で外すことのできないふたつの出逢い。そのひとつが保呂草&犀川の再会です。いやぁ、犀川先生が保呂草さんに駆け寄り(駆け寄ってないです。妄想です)「あれ?保呂草さん?」「本当に?」と声をかけるシーン。このシーンでは犀川先生はまさしくへっ君でございました。くそぅ、めんこいじゃないか。「ありがとう。覚えていてくれて」と返した保呂草さんも素敵。あの場面(萌絵にひっ捕らえられている)でそんな風に微笑むことは普通できません。いやぁ、ジェントル。

なんかもぉ、四季を追うとかどうでも良くって(おい!)とにかくS&MシリーズとVシリーズの関係を綺麗にしておきましょう!というのがメインではないかと疑ったり。もちろん、その役割もあっての『四季』なのですが、少なくとも私にとってはそれがメインです。

話は戻りまして保呂草&犀川の再会シーン。エンジェル・マヌーヴァの件でツー・カーぶりを発揮する二人。犀川先生がお母さん(紅子)から聞いてる話ってのは、どんな話なんだ、一体。紅子が保呂草さんについて正直に語るとは思えないし…でも、世津子の母親(七夏)が保呂草さんを追い続けていることは知ってるし…泥棒でも友人…あぁ、知り合いだったか。とにかく、いろんな妄想を膨らませるのに充分な再会でした。たった数頁の再会でしたが、その数頁だけでS&M+V=20作を読んだ価値があったというものです。

そして、重要な出逢いのもうひとつが紅子VS萌絵。なぜ“VS”なんだ、自分。堂々たる母親っぷりでした、紅子さん。それに比べて林さん…チキンなんだから。この二人が遭遇して初めて、紅子&萌絵はかなり気が合うかも…と犀川先生の身の危険を感じました。紅子が好きそうですよね、萌絵みたいな女の子は。レスポンスの速さやその思考の飛躍が紅子好み。そもそも、この二人は保呂草さんが『捩れ屋敷の利鈍』で指摘しているように似ている。この二人に迫られたら…犀川先生じゃなくてもタジタジです。「少なくとも、その場に僕はいたくない」と苦笑いした犀川先生の気持ちがよくわかります(よよよ…)

そうそう、出逢いといえば保呂草&各務っていうのもありましたね。逃げられた女を追いかける男…そんな保呂草さん見たくない!私的には各務さんがぞっこん(ふ、古っ!)で、保呂草さんも嫌ではないからいっしょに居る…というような妄想シュチュエーションだったものですから、まさか保呂草さんが各務女史を追いかけてゆくとは。武器を持っていると思った、と捻じ伏せるほどいっしょに居て危険なことは解っているのに、どうしても追いかけてしまう罠。これが恋ってやつですか?保呂草さんには『赤緑黒白』のラストでみせた紅子のナイトをずっとずっと続けていて欲しかったです。紅子と保呂草さんの関係って、本当に好きだなぁ私。

そういえばGシリーズの山吹くんが登場しておりましたね。こんなところに次シリーズへの伏線が。侮れません、森博嗣。さて、ブログジャックも次の『冬』で終了です。『冬』は『夏』『秋』の路線からは大きく逸れてしまいますので(しかも難しい)、こんなノリノリのレビューにはならないと思いますが、きっと今日中にレビューできると思います。

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『四季 夏』 森博嗣

四季 夏 Book 四季 夏

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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14歳の夏、彼女はひとりの男性に恋をし、そして両親を殺した。

すべては計算し尽くされたこと。

天才に触れる『四季』シリーズ第二弾。

いきなりですが、『四季 夏』のレビューは全面ネタバレレビューとなります。こんな美味しいネタを語らずにはいられません。もちろん、未読の方はご注意くださいませ。

おかえりなさい、保呂草さん☆

この『四季』シリーズを通して、なにが一番びっくりしたかって、各務亜樹良がいつの間にか保呂草さん無しでは生きられない女になっていたことです。保呂草さんと各務女史の間になにがあったのか…それは決して語られることのない物語ですが、彼女が幼少のころに失ったなにかを保呂草さんが補うことができれば素敵だと思います。

しっかし、保呂草さん。四季を誘拐して自らの目的を達しようなんて、末恐ろしい男ですね。保呂草さんといえば「決断が遅く、行動が早い男」だったはずなのですが、今回の決断はとにかく早かった。数分ではないでしょうか?それだけ四季という存在が大きくて、成功率を跳ね上げるファクターに成り得たということなのですが。あのとき、四季に誘われるまま、四季の手を取っていたら、保呂草さんの人生は720°変わっていたと思いますが(結局元に戻ってますよ!)、瀬在丸紅子・各務亜樹良・祖父江七夏という3強女性と対峙を繰り返した軟派・保呂草の中でエマージェンシィコールが鳴り響いた結果が“逃げる”という選択肢だったのだと思います。

そして、3強女性のひとり瀬在丸紅子。今回は四季の精神形成に大きな影響を与えた人物として登場です。紅子から得たスタイルを元に、子どもを身籠った真賀田四季。そして、紅子から産まれたへっ君と死闘(?)を繰り広げるっていうんだから、萌えるなっていう方が無理です。しかし、紅子と林さんの間にどんな変化があったのでしょうか?Vシリーズの頃は指輪なんてしていませんでしたよね?七夏もなんとなく諦め気味と云いましょうか、仕事に没頭することで忘れようとしているように見える。へっ君は現在、林さんの元で生活をしているようですが。“子はかすがい”ってやつですか?

そうそう、へっ君&紅子シーンがようやく登場。へっ君、ちゃんと喜多先生にお母様を紹介しなくちゃ駄目ではないですか。もしこの関係を知らずにこのシーンを読んだら…あぁ、親戚だったのだなぁと思うかいな!絶対に怪しいと思うはず。それはそれで衝撃的だったなぁ。あれ?ん?あれれ?とか云いながら首を捻る自分…容易に想像できて怖いわ。

そして、真賀田四季。彼女のあの気持ちは本当に恋だったのでしょうか?天才と呼ばれ、普通の人間が踏み込むことのできない領域に立ち続ける彼女。そんな彼女にも恋と呼ばれる普通の感情があったのなら…ちょっと素敵かもしれない。彼女の中に存在するすべての人格が拒否しても、押し切らずには居られなかった感情。行動。そして結果。すべてが計算から導かれた結末だったとしても、想定された結果の中で最もバッドなものであったと思いたい。あれがハッピィな結末であったのなら、真賀田四季、貴女は哀しすぎる。

それでは次回は夢の競演が果たされる『秋』です。これがまた最高です。再びネタバレレビューでお逢いしましょう。

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