2008年5月13日 (火)

『ブラックペアン1988』 海堂尊

ブラックペアン1988 Book ブラックペアン1988

著者:海堂 尊
販売元:講談社
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外科医の道を歩み始めたばかりの世良

世良が直面した医療の実態は思っていたよりも過酷で汚くて

けれども…その先にあるものを知りたくはないかい?

田口&白鳥シリーズの番外編と云える本作ですが…

番外編にするのは惜しい!
むしろこちらを本編に!!

ってくらい素敵な作品でございました『ブラックペアン1988』。1988年の東城大学医学部付属病院を舞台とした本作で描かれるのは、絶大なる権力を持った佐伯教授の下、考えることを放棄し腑抜けと化した外科医たちの姿。そこに颯爽と毒舌を従えて登場したのは…我らが腹黒たぬき・高階権太、その人であります。

誰にも若かりし頃というのはあるわけで。高階病院長はもちろん、黒崎教授・藤原さん・ネコ・ジュネラルルージュ・ガンガントンネル魔人・グッチー(あれ?動物はさんだあたりから変な呼称がずらずら)と主要キャラ総出演でございます。それだけでもう、田口&白鳥シリーズ好きには堪らないのに…作品そのものが読者をグッと惹き付けて離さないっていうんだから。脱帽。

個人的に涙腺緩ませちゃったのは、矍鑠とした癌患者・小川さんのシーンです。「世良先生、これに懲りずに、いいお医者さん、に、なって下され」なんて台詞、まともには読めない。いやもう、まさかここで泣くとは自分でもびっくり。そして、世良のこの経験が伏線となり、後にまた素晴らしい台詞&展開が待ち受けていようっていうんだから。侮れません。

そして、小天狗&悪魔が怒号を飛ばしながら必死に止血作業に取り組むシーンも好きです。あれだけでっかい口を叩いておきながら(とくに小天狗)術野に神が光臨するまで止血することのできなかった2人。世良だけでなく、この2人にとってもこの日は忘れられない幾日かの一日になったのだろうなぁ、と。

ちなみに本作中で一番笑ったのは、同じシーンのヒラ麻酔医が佐伯教授に毒を吐いたシーンです。

こんな過去こんな日々があったからこそ、高階病院長と藤原さんを毒を吐き合えるのだし、高階病院長と黒崎教授はいがみ合える。同じ術野を囲むということは、互いの信頼関係を確かめ合うということ。表に現れてこない彼らの胸の中の信頼関係をフィルターにして、今の関係を再確認してみたら…これまでの既出作品をもっと面白く読めるかもしれない。そんな風に感じた『ブラックペアン1988』でございました。

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2008年5月 5日 (月)

『夢見る黄金地球儀』 海堂尊

夢見る黄金地球儀 (ミステリ・フロンティア 38) Book 夢見る黄金地球儀 (ミステリ・フロンティア 38)

著者:海堂 尊
販売元:東京創元社
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8年ぶりに現れたチューリップハット

彼から発せられた「ジハード・ダイハード」

それは…僕らの冒険の合図

う~ん、微妙

微妙と云うか駄作?やっぱり海堂氏の本領は医療ミステリで発揮されるわけで。奇人変人役のガラスのジョーも白鳥ほどキャラ立ちしておらず。いろいろ微妙な『夢見る黄金地球儀』が本日のレビュー作。

ぼったくりフィリピンバーを8年前に潰して以来、消息を断っていたガラスのジョーが桜宮市に帰ってきたのがすべての契機。「ジュース飲まない?」くらいの軽い調子で発せられた「一億円欲しくない?」。作戦の骨子は桜宮水族館深海館に鎮座する黄金地球儀を戴くこと。けれど、ガラスのジョーが参加する作戦がスムースに進むわけがなく…。

ミステリというよりは単なるドタバタコメディ。あれ?これもミステリ・フロンティアから刊行されたんですよね?ミステリ・フロンティアについてそろそろ本気で考えるべきではないかと思っております、個人的に。

そのドタバタもテンポが無いんですよね。とにかく冗長。ラスト数ページでひっくり返そうとするのですが、そこまで至るのにもの凄くエネルギィ使うので、もうどうでも良かったり。ここまでズルズル付き合わせておいて、どんでん返しがなかったらむしろ驚くわ!ってなもんです。

この作品の愉しみ方は、田口&白鳥シリーズとのリンクを発見して喜ぶのが正しいのかも。『ナイチンゲールの沈黙』に登場した小夜ちゃんのその後とか、オープン初日をコンビナート火災によって水をさされたショッピングモール(『ジェネラル・ルージュの凱旋』参照)とか。さらに、これから起こるであろう出来事まで公開されておりまして。桜宮病院火災(『螺鈿迷宮』参照)の跡に立てられたガラスのお城が破壊されていたり、社会保険庁が解体されていたり(絶対、ロジカルモンスターが関係してると思うんだ)。

これからの海堂氏の活躍を愉しみに…ということで。たまにはこんな作品もあるでしょう。

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2007年12月26日 (水)

『ジェネラル・ルージュの凱旋』 海堂尊

ジェネラル・ルージュの凱旋 Book ジェネラル・ルージュの凱旋

著者:海堂 尊
販売元:宝島社
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救命救急センター部長、通称“ジェネラル・ルージュ”。

ドクターヘリ導入を悲願とする“血まみれ将軍”にかかった収賄疑惑。

リスクマネジメント委員長・白鳥は同期の危機を救うことができるのか?

いやぁ、『螺鈿迷宮』に続き傑作きました!決してミステリではない本作ですが、続きが気になって気になって、結局寝たのは4時…キョウノシゴトハツラカッタ…。『ナイチンゲールの沈黙』の表で進められていた(後出作品ではありますが、間違いなく本作が表だ)グッチー・ミッションは同じ窯の飯を喰った同期=ジェネラル・ルージュの収賄疑惑を晴らすこと。今回も腹黒たぬき・高階病院長に巧いこと丸め込まれて、それでも「私が速水を告発することはあり得ない、と確信しています」と言い切ったグッチーはちょっと素敵でした。本作はグッチー&ジュネラル・ルージュ&ガンガントンネル魔人の友情の物語。

本作は正当なるグッチー&白鳥シリーズではございますが、白鳥の活躍はちょっと薄め。でも、エシックス・コミティでAi導入検討が行われた際のロジカル・モンスターっぷりはゾクゾクきましたね!(なんてたって、唯一の魅せ場)エシックスの面々を相手取り、お得意のロジックで彼等をバッサバッサと切り捨ててゆく白鳥。痛快なんだけど…白鳥とは絶対にディベートでご一緒したくないわ。

あとは、読書中に「この件は絶対にブロ愚に書く」と心に決めた黒崎教授。

ちょっと、すんごい恰好良いオヤジ発見!!

「神の指図で動くことが、あれほどの愉悦を伴うものだということを…」「ワシのプライドや肩書きなんて、そうした瞬間には、すべてすっ飛んでしまうくらい、ささやかで他愛もないものなんだ」の素敵台詞は5回は読み返しました。将軍の救命救急センターに対する想いにもかなりグッときましたが、やっぱり本作の功労賞は黒崎教授じゃないかと。この一件で物語がキュッと締まりましたよね?あぁ、やっぱり将軍は東城大学に必要な人材なんだと改めて思い知らされたというか…そして将軍とは決して交わることのない道を行く黒崎教授も必要なんだと思い知らされたというか。いろんな人間が居て、いろんな想いがあるからこそ、人間の“生と死”を司る場として病院があるのだと感じました。

本作はミステリではないので「やれトリックが…」とか書けないのですが、とりあえず読んで損の無い作品だと思います。『ナイチンゲール』も「この作品の裏だと思えば読む価値あったかな」とまで思わせる、他作品の評価にまで影響を与える素敵作品。うん、愉しい読書タイムでございました。

どうでも良いのですが、本作『ジェネラル・ルージュ』と『ナイチンゲール』は元々ひとつの物語であったのを分割させられたのでは?と思ったり思わなかったり。もしこのふたつが同時に語られていたら…それはそれで破綻した物語だったんじゃないかと。分割して良かったね!(って、その前提自体が妄想だよ)

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2007年12月25日 (火)

『螺鈿迷宮』 海堂尊

螺鈿迷宮 Book 螺鈿迷宮

著者:海堂 尊
販売元:角川書店
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-この病院は人が死にすぎる

終末期医療の最先端施設に絶えることなき“黒い噂”。

その噂の正体を確かめるために、似非医学生“アンラッキー・トルネード”とロジカルモンスターの“懐刀”が敵内部に侵入する!

『ナイチンゲールの沈黙』の出来がちょっとばかしアレだったもんで、あんまり期待せずに読んだのですが…

個人的に『バチスタ』より面白かった!

「医学なんてクソッタレ」の似非医学生・天馬大吉(別称 アンラッキー・トルネード)は幼馴染・葉子にまんまと嵌められ、終末期医療=ホスピス病院の潜入捜査に乗り出す羽目に。老人介護センター→ホスピス施設→寺院までを併設した“エスカレータ式だたし天国逝き”のその施設では、前触れもなく人が死んでゆく。似非医学生であっても「異常だ」と感じるほどの唐突な死には、どんな裏側が隠されているのか?

まぁ、こんな感じのストーリーなのですが、終末期医療や大学病院の有り方といった海堂氏お得意の問題提起にファンタジーとセンチメンタルを取り入れた意欲作となっております。施設が隠し持つ闇に光を当ててゆく(解決してゆく)手法も見事だし、そこにセンチメンタリズムを挿入する手法も素晴らしいと感じました。『バチスタ』には無く『ナイチンゲール』ではやり過ぎた部分が綺麗にカチッと物語に填められた印象。

しかも“ロジカル・モンスター”とその懐刀“氷姫”の使い方も良い。ロジカルモンスターのロジカルモンスターたる所以を垣間見ることはできませんでしたが(今回は完全裏方、でも良い仕事してますよ相変わらず)その懐刀“氷姫”は良い意味で期待を裏切ってくれました。私は厚生労働省役人ふたりが火傷治療の為にああだこうだ言い合っているシーンがすごく好き。『家庭の医学』まではカバーしきれていない氷姫データベースが欲しい。あとは火傷の程度「水胞つきのⅡ度に格上げされたのは、姫宮のスペシャル・サービス」の件もね。こういうのたまらねぇっす。

んで、肝心のミステリ部分も“運命の巡り合わせ(ミステリ読者はこれを伏線と呼ぶ)”が見事に作用していて、全てが繋がった(ミステリ読者はこれを伏線の回収されたと呼ぶ…ってくどい?)ときの爽快感は極上。ちょっとやり過ぎかな?と感じる部分もセンチメンタリズムの延長と思えば許容範囲かな?と。闇の部分を闇としてきちんと読ませてくれる作品は好きです。

番外編(なんですよね?)でこれだけのクオリティのものを読ませられては積読本に控えている『ジェネラル・ルージュの凱旋』が楽しみで仕様がない。グッチー&白鳥コンビでもう一花咲かせてもらいたいと思うのが人情じゃないですか。次は柄刀一の『密室キングダム』を読むつもりでしたが、予定変更じゃわい。

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2007年12月11日 (火)

『ナイチンゲールの沈黙』 海堂尊

ナイチンゲールの沈黙 Book ナイチンゲールの沈黙

著者:海堂 尊
販売元:宝島社
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眼球摘出という苦しみから少年たちを救うのは、厚生労働省の秘密兵器・ロジカルモンスターか?

不定愁訴外来に次々と舞い込む厄介事を、グッチーは解決することができるのか?

メディカル・エンタテイメント第2弾!

レビューってどう書くんだっけ?と頭を悩まし、自分の過去レビューを読むという恥辱を強いてみたのですが…まったく参考にならなくてビツクリ。とりあえず毒を吐いておけば良いんだよね?

復活第1弾レビューは“えっ、貴女これ読んでなかったの?”な田口&白鳥シリーズの第2弾。えぇ、『チーム・バチスタの栄光』を読んだのもつい最近、文庫化してからでございますよ。『バチスタ』がなかなか斬新で、私の中でグググッとキタので、かなり期待して読みました『ナイチンゲール』でしたが…あれ?あれれ?

とりあえず、ミステリ部分に驚きもなにもあったもんじゃないのが残念。事件が起こった瞬間に犯人とトリックと死体解剖の意図が解ってしまって、「これはミステリでは無いのかもしれない」という思いが脳裏を掠めたのですが…『バチスタ』の解決に意外性があったがために意識と読み方の切り替えがうまくゆきませんでした。ミステリ読みをしなければ、ラストの歌の場面にもうちょっと感動できたのかもしれないんですが。

小夜の歌に秘められた能力は“百聞は一聴に如かず”ですが、読書というツールでそれを実践するのは不可能。ならば読者の想像力に期待するしかないのですが、その事象を説明するべく多用される医学用語に気を取られる!気を取られる!!起こっては放り投げられ、置き去りにされゆく小さなエピソードたちに散々気を取られて到達した終焉だけに、私の脳はもうパンク寸前です。2時間一気読みじゃなくて、ゆったり2日読みをすれば良かったのだろうか…いや、そんな読み方したら小さな伏線は忘却の彼方だ。

『バチスタ』で描ききれなかった部分になんちゃってミステリをくっつけて作品にしてみました感の漂う本作。『バチスタ』の爽快感・エンタテメント感を期待して読むと肩透かしを喰らうかもしれません。まぁ、グッチー&ロジカルモンスターのキャラ読みならば、辛うじて及第点でしょうか?

ところで、『バチスタ』映画化でグッチー=竹内○子って…『ガリレオ』に続くキャラクタの女性化大反対!!!いいじゃん、むさいオッサンとオッサンの組み合わせだってさ。グッチー&ロジカルモンスターの小気味良い応酬が女性化(&若返り)で消え去らないことだけを祈りつつ。

これにてリハビリレビュー終了!!

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