■篠田真由美

2015/12/25

『桜闇』 篠田真由美

鋭意再読中の建築探偵シリーズ初の短編集です。二重螺旋四部作を収録していることに触れるべきだと思うのですが、どうしても「君の名は空の色」についてから書きたい。

「君の名は空の色」は蒼と深春の出会いを描いた作品。『原罪の庭』で蒼として生きることを選んだ少年の前に現れたのは毛むくじゃらのまるで熊のような男。京介、神代の3人での生活に深春が加わっただけで、心を乱し、また殻の中に逆戻りしてしまった蒼。そんな蒼が初めて深春の名を呼んだときのエピソードがたまりません。

蒼がかわいくてかわいくて

抱き締めるように掴んだ腕、そこにどんな想いを込めたのかと思ったら泣けてきます。その直前の、まるで夜驚症のような症状の中で京介に感情と暴言をぶつける蒼でも泣いてしまうんですが、そちらはもうつらくてつらくて。蒼もそんなことを京介に言いたいわけではないだろうに、言わずにはおれないんだろうなあと思ったら。『原罪の庭』と合わせて読んでいただきたい作品です。

その他の収録作の中では「塔の中の姫君」が好きでしょうか。絶交宣言をしておきながらも京介の真意を知りあっさりと許してしまう深春の懐の深さと、絶交なんて大したことではないように振舞っておきながら気にし過ぎの京介と。建築探偵シリーズらしいやりとり。

ところで、表題作「桜闇」で京介の○○○を描く必要はあったんですかねえ?愛すること、その重要性を説くだけでは不足だったのでしょうか。解せぬ。

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2015/12/19

『原罪の庭』 篠田真由美

建築探偵シリーズ第1部のラストを飾る名作。京介と蒼の出会いの物語。

私は読んだ本の内容をほとんど覚えられないのですが、この作品だけはどんなに忘れようとしても忘れらない。それだけ衝撃的で胸に突き刺さる1作です。大好き。

一家4人が惨殺され温室の天井から吊るされるという凄惨な事件。たったひとりの生き残りである7歳の少年は心を閉ざしてしまい、その日その場所でなにが起こったのかを語ることはできない。そして疑いの目はいつしか彼自身に。当時7歳の少年があんなにも残虐な行為を行うことはできたのか、もし彼が行ったのならその理由は何なのか、彼の心を閉ざす扉の鍵は一体どこにあるのか。そして、それを開くのは誰なのか。

(ここからすべてネタバレ)蒼が自分の母親を守るためにその力(記憶力)を使い、母が殺人を犯したという痕跡のすべてを隠したという真相。とにかく胸を打ちます。蒼が温室で血まみれになって隠蔽を行っている映像イメージはもう十何年も脳から離れてゆきません。もちろんそのときの蒼は神代が見たような笑っている顔じゃないと信じたい。そして、必ず迎えに来るからと約束した母との再会が期待したものではなかった絶望。母の顔に浮かんだ恐怖を見て、心を閉ざし続けるしかなかった蒼のこと思ったら苦しくて苦しくて。

でも、そんな蒼の心を開いたのは京介なんですよね。なぜ京介と蒼が引かれ合ったのか。それはシリーズ完結まで読んでようやくわかることなのですが、引かれ合ったのは必然でしたね。これまでまったく喋らなかった彼が自分で選んで呼んだ名前。それは一般的な、よくある選択肢ではなかったけれど、ベストな選択肢だったと思います。蒼も一度だって後悔したことはないでしょう。もちろん京介だって。

その後も数年は落ち着かなかった彼のために、京介がどれだけ献身的だったか。それを想像するだけでまた、泣けてきます。『桜闇』も読まなくちゃ。

尚、ミステリ的にも概ね満足ですが、園梨々都の思惑は理解不能です。絶対になにもしない方が良かった。完全に逆効果。やったこともどれも的外れですしね。焦っていたのだとは思いますが、○○さんが付いていながら情けない…ってあの人も大概なんでした。

いやもう本当に大好きな作品です。建築探偵シリーズ不動のNO.1。名作です。思い入れが強すぎてとても気持ち悪いレビューになりまして、申し訳ないです。でも、大好きです。

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2015/12/15

『灰色の砦』 篠田真由美

鋭意再読中の建築シリーズ第4弾。京介と深春の出会いの物語。

登場人物が少なく、そこからさらに人が減るので犯人が限られてくる上に、犯人(と○○○)の行動があからさま(あそこで深春に話しかけちゃダメだよ。そうしたかった気持ちはわかるけど)なので動機を推理して読むのが良いかと。その動機も普通に物語を読んでいれば明白なわけですが。でも、おもしろくなかったかと言われればそうじゃない。しっかり本格ミステリです。毎回言ってますが、90年代の講談社ノベルスは最高です。

京介の蒼っぽいところが出てきて少し驚きました。京介と蒼は良く似ている。差し伸べられた手を取った後、蒼の方が少し周りに人が多くて、甘やかしてくれる人も絶対的な安心をくれる人もいたから今の蒼がいるだけで。京介は蒼になれたかもしれないし、蒼は京介になったかもしれない。そんなことを考えたシーンでした。

そして、シリーズが完結し京介の過去を知ったからよりわかる京介の涙。このときどこまで京介の過去に関して構想が練られていたかはわかりませんが、再読していて本当にたのしいです。

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2015/12/03

『翡翠の城』 篠田真由美

十数年前、最初に読んだ建築探偵シリーズだったと記憶。シリーズ第3弾。

和洋折衷の異形の館、名門一族の血塗られた過去、次期社長争いと交錯する思惑というミステリによくあるガジェットてんこもり。『未明の家』のレビューにも似たようなこと書きましたが、90年代に流行った講談社ノベルスらしいミステリです。もちろん大好きです。

ミステリ的は驚きどころは真理亜おばあさまの正体だったと思いますが、描写があからさまなのでまあわかるかと。そして、全てとは言わないまでも殆どが真理亜おばあさまの勘違いや思い違いなんだろうなあというのも察するのも容易かと。でも、建築探偵らしい作品をひとつ推せと言われたらこれを推すかもしれないくらい建築にもミステリにも重きを置いた1冊です。もちろん一番の名作をと言われれば『原罪の庭』ですけれど。

蒼の過去にも少し触れましたね。何も知らずに読んだ十数年前と今とでは感じ入り方が違う。蒼がなぜあのようなパニックに陥るのかがわかるのはつらい。知らなければ単純に蒼の過去が知りたい!作品化はやく!って気持ちの方が強いですから。そして、学校に通うことに決めた蒼の決断もね。いやー、『原罪』と蒼が好きすぎて自分でも感情移入おかしいのわかります。でも、好きなものは好きなんだよー。

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2015/11/24

『玄い女神』 篠田真由美

建築探偵シリーズ再読中。家にあったのはシリーズ完結記念の篠田女史蔵書プレゼント企画でいただいた1冊でした。2009年の日付が入っていたのでシリーズ完結からもう6年なのか。

10年前のインドで起こった殺人事件の謎を解くように昔の想い人に頼まれ、群馬山中のホテルまで出向いた桜井京介。そこで起こった新たな殺人事件。果たして過去と今、ふたつの事件の真相とは?という1冊ですが、この本の読みどころはそこじゃない。

事件の方は胸の陥没跡が出来た原因が微妙ですが納得です。メンバーが○をやってるのは至る所に描写されていますし。(ここからネタバレしてます)それよりもカリとナンディの秘密ですよ。伏線やあやしい記述がたくさんなので、看破するのは難しくないです。まあ、わかってて読んでもナンディはナンディなのでカリは見事な女優…そう、女優なのですよ。

ああ、京介の台詞を全部確認したい。

そう思わせてくれる本は大好きです。人称がほぼ蒼なので地の文で女優と書かれていてもOKですが(認識違いにより蒼がその時点でカリを女性だと思っていたら正しい文章)、京介がカリを女優と称していたらアウトですよね。でも、呼称としての女優はセーフだから…などと考えるのは本当にたのしい。

京介が少し蒼に冷たいような気がするし、蒼が京介に愛されてないと感じるなんて有り得ないことですが、それはシリーズ第2弾だからでしょうか。愛され蒼が大好きです。

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2015/11/05

『未明の家』 篠田真由美

このブログを始めた頃には第3部が始まっていた建築探偵シリーズ。いつか再読したいと思いながら叶わないまま十余年。久しぶりにシリーズ第1弾を読みました。

シリーズが完結し、伏線の数々が回収された今となっては思わせぶりな記述の全てににやり。父親と呼ばれる存在に対して思うところありそうな京介とか。蒼が蒼であることは既に当たり前になっている私ですが、そうでなければ蒼の本名の件とかワクワクするんでしょうね。もちろん『原罪の庭』は名作です。

ミステリとしては至ってシンプル。良くも悪くも90年代によくあった(流行った)本格ミステリです。人物相関図と関係性に関する記述とアリバイを丁寧に読み説けば真相に到達するのは容易かと。失意と孤独に身を置いた故人の過去もまあ想像の範囲内ですね。驚きは特にないです。あの○○○○によるアリバイトリックはあからさま過ぎてどうかと思いますが。

それでもたのしく読めるのはやはりキャラクタの魅力なのでしょう。京介の不遜とも取れる態度すらも可愛らしく思えるのは私が歳をとった所為でしょうか。読み始めは京介も深春も年上で大人に思えたものですが。

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2015/06/17

『さくらゆき』 篠田真由美

建築探偵シリーズ番外編。桜井京介returns。

あのかわいいかわいい蒼がまさかの34歳。神代と京介、そして蒼がまだあの家でいっしょに暮らしていることを良しとするかは人によるところか。とりあえず翳の名が出て来ないのが残念。門野さんすらご存命だと言うのに。

収録されている作品は4編。敢えてあげるなら「白くてちっちゃな死の天使」が好みか。敢えてあげるならだけれど。

あとがきで神代が言っていたよう晩節を汚すことになりそうで、好きなシリーズだけれど気持ちは複雑。大人の事情なんて書いてあってまるで作者の本意ではないようだけれど、今月には桜井京介returns第2弾が出ているのよねえ…(遠い目

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2013/11/09

『桜の園』 篠田真由美

『風信子の家』に続く神代教授の日常と謎シリーズ第2弾。このシリーズの楽しみったら蒼の可愛さ以外にないと言っても過言ではないけれど…

今回、蒼の出番が少ねえええええええ!
もっと蒼を出せええええええええええ!!!

収録されているのは中編2つ。そのうち表題作「桜の園」には蒼が登場しないだなんてくそう。ますます『原罪の庭』を再読したくなってしまったではないか。

謎の部分もね、面白味に欠けるというか何と言うか、ただひたすらに地味です。時効が成立しているとは言え「桜の園」の方は一応、殺人事件なんですけどね。やはり名探偵の不在が大きいか。「花の形見に」の方は殺人のようなわかりやすい事件が起こったわけではないけれど、京介が謎を解く、それだけで物語が締まったような気がするもの(まあ、偶然が過ぎるような気がしないでもないけれど。それは京介自身が指摘しているので今回は何も言うまい)

とりあえず、神代教授の日常もイマイチ、謎もイマイチではなんとも残念で残念で仕方がないので、もっとかわいい蒼を出すべきだと思うの。ああ、『風信子の家』ばりにはっちゃけたレビューを書きたかったなあ。

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2013/10/13

『燔祭の丘』 篠田真由美

建築探偵シリーズを初めて読んだのは高校生のときで、『原罪の庭』で号泣してからもう何年経ったのか数えるのも面倒なほど。そんな長いお付き合いも本作で最後、シリーズ完結です。

建築探偵は2部に入ってからかなり露骨に伏線を残していたけれど、それがどんなに露骨でも月日とともに色あせていくのは避けられないわけで、

回収された伏線がどこでどう張られたものなのか、むしろそんな伏線あったっけ?状態だったのはもう仕方のないことだと思うの

記録によると前作『黒影の館』の読了が2009年1月なので、すでに4年以上前。いや、本作の発売は2011年1月で、そこから2年以上も放置していた私が悪いのだけれども。これで最後、終わってしまうと思ったら読めないのが人情。RPGもラストダンジョン残してレベルアップしているうちに他のゲーム始めちゃうとかあるあるじゃないですか。そのため、伏線に関しては差し出されるまま鵜呑みにして「へぇ、そういうことだったのかー(棒」と読み進めた本作。想像以上に大団円でした。

いろいろ突っ込みたいところはあるのよ。主に神代先生とか神代先生とか神代先生とか。けれどそれは胸に閉まって。本作がミステリでないってところも(ニコライとは誰なのか、だけが唯一の謎だったかもしれないけれど、少し考えれば誰でもわかることなのでやっぱり謎でもなんでもない)忘れましょう。そして、

深春と綾乃のことは一体どういうことなの。

とりあえず、自分を含めたこれまでシリーズを読んできた全ての人にお疲れ様、な一冊。そして、桜井京介returns…だと…?ということで、『さくらゆき』も急いで読みたいものです。あと、香澄と翳のこれからも読みたい。けれどやっぱり今は、

『原罪の庭』をもう一度読みたい。『原罪の庭』サイコー!!!

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2009/02/21

『魔女の死んだ家』 篠田真由美

魔女の死んだ家 (ミステリーランド) Book 魔女の死んだ家 (ミステリーランド)

著者:篠田 真由美
販売元:講談社
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美しく咲き誇るしだれ桜の下、

倒れゆく「おかあさま」

「おかあさま」を撃ったのはこのピストル?

ミステリーランド再読フェア中にも関わらず、うっかり「ペル○ナ3」に手を出してしまい、就寝前数分と地下鉄通勤中にしか読書タイムを設けていないので、更新スピードが鈍化しております。ミステリーランドなんて1時間半もあれば読めるのに。ぺさんをクリアするまで(あと50時間もプレイすればクリアできると思います)ご容赦くださいまし。

さて、篠田真由美女史の『魔女の死んだ家』が本日のメニュー。ミステリーランドであることを意識し過ぎた所為か、平仮名と漢字の割合がおかしくないですか篠田女史?すっごい読み辛かったのですけれども。「『すうはいしゃ』は漢字じゃなくって『螺旋階段』は漢字かよ!」みたいなツッコミに忙しくって、内容よく覚えておりませんのおほほ。

とりあえず『すうはいしゃ』を従えた『魔女』もしくは『女王陛下』の死の真相を辿る物語。叙述トリックもどきが仕掛けられておりましたけれども…伏線があからさま過ぎるので感想は特にありません。ミステリとして読んでみた感想も特にありません。死ぬ必要はあったのか?守り通すことはできなかったのか?とは思いますけれども。

それよりも前髪で顔を隠した青年が桜井京介ではないか?とか思ってしまったことの方が。桜井京介にしては話が長く、毒舌も控えめで、親切心あふれ過ぎかな?とは思いましたが、いわくつきの洋館と桜井京介はセットですからね。篠田女史もHPで名前なしの登場人物が現れたら桜井京介である可能性を疑え!なんて仰っていたし…でも、年代については考えてなかったわ。古めかしい感じはするけれども。

というわけで(どんなわけだ)更新滞ります。ぺさん頑張ります。

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