2008年9月15日 (月)

『シャドウ』 道尾秀介

シャドウ (ミステリ・フロンティア) Book シャドウ (ミステリ・フロンティア)

著者:道尾 秀介
販売元:東京創元社
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母の死からすべては…

すべては狂い始めた

もう僕には父しか居ないのに

もっと早くに読んでおけば良かった

ようやく読めました2007年本格ミステリ大賞受賞作『シャドウ』。道尾氏凄い。期待以上でございました。

既に道尾氏の作品に慣れ親しんでしまった今だから、「来るぞ来るぞどんでん返し」とか「このまま終わるはずがない」とか思って(解って)しまうのですが、『シャドウ』が出版された当時って未だ真備庄介シリーズのイメージが強かったはずだから…凄い衝撃的だったでしょうに。あっ、『向日葵の咲かない夏』は出てたのか。

とにかく最後まで充分に存分に愉しませてくれる良作。小学生が語り部(にして探偵!)なので、若干違和感ありますが(私は叙述トリックすら疑いました。凰介が息子と思わせといて父親なんじゃないの!?とか。阿呆)それすらも味付けとして美味しくいただけます。

犯人(悪)の意外性が弱いような気はしますが、全然知らない人をいきなり持ってこられるよりはよっぽど。もう少し聖人君主ぶりを強めに表現してくれてたら意外性出たかもしれないですね。登場人物の全てが怪しく思えてしまうのは残念。でも、全員が怪しいのにひとりだけそうじゃなかったらばれるのか難しいですね。

まぁ、作品のポイントはそこではないので。緻密に、練りに練られた殺人計画。敵を欺くにはまず味方から。敵を欺くにはまず読者から。すべての記述に意味がある。ゴミ箱なんて覗くものじゃない。

道尾氏らしい毒(狂気)はもちろん散りばめられているのだけれど。それでもだいぶ抑えめに。頁を捲る手の動きは早いです。良質な2時間の読書タイムに是非どうぞ。

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2008年9月12日 (金)

『ラットマン』 道尾秀介

ラットマン Book ラットマン

著者:道尾 秀介
販売元:光文社
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-俺は正しいことをした

時を経て蘇る父の声

父の声は僕の背中を押した

幼少の頃に背負わされた癒えない傷。もう道尾氏のお家芸と言っても過言ではない。本作『ラットマン』を読んでそう思いました。

両親に可愛がられ、惜しまれながら命を落とした姉。最後に「-俺は正しいことをした」と言い遺し息を引き取った父。ふたりの死から眼を背け、遺された唯一の息子からをも眼を背けるようになった母。誰にも言えない秘密を背負ってしまった僕。バラバラになった家族、バラバラになった心、そして…バラバラになりつつある仲間。そんなものが『ラットマン』では描かれております。

その痛みがミステリ(トリック)と絶妙に絡み合ってくるんだから…道尾氏素晴らしい。重たい主題の連続なのですが、その語り口、物語の展開はスムース。『ラットマン』読了に費やした時間は2時間弱といったところでしょうか?

ミステリとして読者を世界に導いてくれるからでしょうか。提示される謎はただひとつ…誰が彼女を殺したのか。けれど、ひとつしかない謎も見方を変えれば「ラットマン」のように、いくつもの解に分裂して。その分裂が読者の「騙された!」に、読了後の爽快感に繋がります。至福。

最初から最後まで、タイトル『ラットマン』からぶれない作品。もし、いろんな要素を混ぜ合って『ラットマン』から主題を離したとき…それはただの重たい作品に成り下がるとき。それをさせない、ぶれることなく最後まで読者を導いてゆく、道尾氏の筆力は素晴らしい。

でもやっぱり、『背の眼』『骸の爪』の真備庄介シリーズが読みたいの。

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2008年5月 8日 (木)

小説新潮別冊『Story Seller』

Story Seller (ストーリーセラー) 2008年 05月号 [雑誌] Book Story Seller (ストーリーセラー) 2008年 05月号 [雑誌]

販売元:新潮社
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この雑誌を編集した方とお友達になれると思ふ

凄い豪華な執筆陣。夢の共演といっても過言ではない。そんな素敵な一冊を紹すべく、今日は一作ずつレビューを。

「首折り男の周辺」 伊坂幸太郎
本屋大賞受賞第一作は“首折り殺人請負人の周辺で生きる人々”を描いた作品。伊坂的“改心の物語”でございます。本屋大賞を受賞したって直木賞を受賞できなくたって、伊坂節は決してブレることはないのですが…どこか物足りない。その理由を探ってみて、伊坂短編は連作で読みたいのだと気付く。伊坂短編集に収録されている短編たちは、ひとつひとつが完成されていながらも、通して読むことで新たな意味や印象が浮かび上がってきますよね。そんな“新しさ”や“改まり”を欲しているのだと。だって、長編や連作でもいけそうなんですもの、この作品。風合としては『ラッシュ・ライフ』に近い感じで出来上がるのではないかと。でも、伊坂らしい“改心の物語”にやっぱり快心の笑みを浮かべてしまうのです。

「プロトンの中の孤独」 近藤史恵
思わぬところで『サクリファイス』の番外編に出逢えました。この『Story Seller』を注文した時点ではまだ『サクリファイス』未読であったため、全くノーマークだった近藤氏。嬉しい誤算。本作はエースになるべく産まれてきた男・石尾と、石尾の名アシスト名女房であった赤城の若かりし頃を描いた一作。あの石尾にこんな頃があっただなんて、ちょっと意外。石尾の想いの深さ大きさに感動させられた後だけに。そして、この少ない枚数でロードレースの駆け引き清々しさ泥臭さを伝える近藤氏の筆力はさすが。『サクリファイス』の後編がいまから愉しみです。

「ストーリー・セラー」 有川浩
有川氏が恋愛エッセンスをふりかけに重い主題で真っ向勝負を挑んだのが本作「ストーリー・セラー」です。最初は有川氏らしい甘い恋愛小説かと思ったんですが…ラストまで読んで少しだけ鬱状態になりました。ので、卑怯にもその辺りには一切触れずにレビューを。本作の個人的お気に入り台詞は「心の中、レイプされてるって言ったら分かってもらえるかなぁ」なんですが…なんて生々しい台詞がお気に入りなんだ。でも、あの状況下で出てくるこの台詞はもの凄く秀逸です。こういう言葉選びが出来る有川氏が好き。そして、激怒するおっさんの霊が光臨した作中の彼女も。私は「最初っから私は何にも持ってないんだ!」なんて啖呵は切れないから。

「玉野五十鈴の誉れ」 米澤穂信
実は初めましての“バベルの会シリーズ”。下地が無いので(バベルの会がどんな如何わしい会か解らないので)米澤氏が作品に潜ませているだろう主題や狙いを察することが出来ず残念。テイストとしては…ホラーですよね?妄信や妄信にえも云われぬ恐怖を感じてしまう私。五十鈴のあの行動がタイトルにある「誉れ」であるならば、あの行動を「誉れ」として取れる人間は、もはや人間では無いのでは無いかと。感情を殺して“無”になったら、もうその時点で人は人で無くなり、唯の物質ですよね。物質に為ってまで守りたい「誉れ」を持たない私には、その感情はまさしくホラーです。

「333のテッペン」 佐藤友哉
佐藤氏の名前を見かけるたびに「あの絶筆宣言は何だったのだ?」とか思ってしまう私は腹の黒い仔です。でも、本作は収録作の中で唯一ミステリですよね。タイトルの「333」とは333mの高さを誇る東京タワーのこと。東京タワーのテッペンに突如現れた他殺死体の謎…うわぁ、美味しい垂涎設定。本作に登場した探偵は佐藤氏の既出キャラクタなのでしょうか?主人公の土江田の過去も、なかなか気になります。アナタハイッタイナニヲシデカシタンダ?でも、個人的に一番愉しめた(感動した)のは、あとがき(?)の筆者コメントだったりする罠。

「光の箱」 道尾秀介
私はこの作品に“ミステリを装った恋愛小説である”という判定を下したのですが、皆様はいかがでしょうか?心の開き方を知らない少年と少女の恋愛小説。サンタクロースが届ける「光の箱」に収められたクリスマスの奇跡を添えて。箱と聞くと“パンドラの箱”を思い浮かべずにはいられないワンパターン思考を持つ私ですが、最後に残された希望を失わなかったからこそ人間は生きてこれたというあの逸話が、この作品には存外ぴったりくると思います。

「ここじゃない場所」 本多孝好
一番愉しみにしていた本多氏の作品…なんですが、作風変わりましたね。本多氏の魅力は言葉選びと行間にあると信じて止まない私ですが、行間を読ませることもなく書き込まれている感情感情感情。そんなに丁寧に感情を解説してくれなくとも良いですから!って正直思っちゃいました。もっと流れるような美しさが本多氏の作品には有ったように記憶しているのですが。この作品に登場した“四人組とアゲハの物語”を現在進行形で執筆中だったからでしょうか?ほら、アウトプットしているうちに浮かんでくる設定をいつの間にか書き込んでいたことによって情報過多になった、とかいうオチで。四人組の能力に現実的な解釈が為されているのも残念に思いました。多少の無理が生じたとしても、不思議を不思議のまま処理して欲しかった。本多氏の初期作品にはそういった不思議能力を持った人間が多く登場してましたよね。でも、こんな風に酷評していても、やっぱり本多氏の作品が大好きです。新作を読めただけで幸せな気持ちになれるって嬉しい。私にとって本多氏はそういう作家です。

うわぁ、冗長なレビューに自分でもうんざり。でも、本当に「よくこれだけのメンバを集めることが出来ましたね!お疲れ様です!!」と伝えたくなるような一冊。第二弾の刊行も愉しみにしております。

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2008年4月26日 (土)

『ソロモンの犬』 道尾秀介

ソロモンの犬 Book ソロモンの犬

著者:道尾 秀介
販売元:文藝春秋
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幼き友人を喪った夏

恋よりも友情よりも何よりも

俺はその死の真相を知りたいと思った

奇しくも似たようなテイストの作品が続くことに。友人の死の真相を解き明かすべく学生たる主人公が立ち上がる…って森博嗣『もえない』と設定同じじゃないですかっ!?でも、個人的にはこちらの『ソロモンの犬』の方が好みです。いや、突っ込みポイントはいっぱいあるんですけれどね。

まずは、ノックスの十戒に抵触気味の(というか抵触している)犯人ね。ノックスの十戒とはミステリを書く上でのお約束事のことなんですが(お知りになりたい方はググってみてください)とりあえず登場していれば良いってもんじゃないでしょ?と。読了後直ぐに二階堂黎人『猪苗代マジック』を思い出しました。お読みになられた方は察してくだされば…(って、ものすごい勢いでネタ割ってるけど!)

まぁ、友人の中に犯人が居てもアレだったんですけれどね。というか、本作に犯人なんて存在するのか?死の真相を知りたいという主題を描いた作品は得てして、犯人という存在をチラつかせ読者を期待させておいて終焉を迎えたりしますから。あれ?書いてるうちに『もえない』も『ソロモンの犬』も善し悪しそう変わらないような気がしてきました(毒)

バベルの神話はなかなか良かったと思うのですが。最後にあんな駄洒落に利用されなければね。あの最後の展開は本作を陥れていると思う。大団円で終わらせたかったのやもしれませんが、なんか無理矢理臭が漂うというか。この手の作品は盛り上げるのは容易だけれども、落とすのが酷なのでしょうね。最近読んだ作品(上記2冊に石持浅海『セリヌンティウスの舟』も追加できますわね)は、どれもこれもオチに難有りです。

過去と喫茶店のシーンが交互に挿入され、続きが気になるように仕向けられていたのはとても良かったと思います。あぁ、やっと褒めることができた。道尾氏の真備庄介シリーズが読みたい。それが例え鬼門の民俗学とミステリの融合モノであっても。

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2007年5月19日 (土)

『骸の爪』 道尾秀介

Book 骸の爪

著者:道尾 秀介
販売元:幻冬舎
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割れた頭から血を流す仏像。

奇妙な心霊写真を再び撮影してしまったホラー作家・道尾が頼るのは?

霊現象探求所シリーズ、第二弾ここに開幕。

またもや逃亡、すみません。最近当ブロ愚を来訪してくださる方の殆どが『イナイ×イナイ』目当てなんだから、トップに置いておくのが親切ってもんじゃない?とか開き直っちゃったまじょ。です。すみません、自分を律することができなくて。

さて、本日のレビュー作品は『背の眼』に続く霊現象探求所(真備)シリーズ第二弾『骸の爪』です。『背の眼』レビューの際に、民俗学とミステリの融合!とか騒いでおりました私ですが、本作は民俗学テイストは弱め。バキバキの本格ミステリに仕上がっておりました。嬉しい悲鳴。

事件が起こるは山中にある仏所・瑞祥房。仏師(仏様を彫る職人)たちがむくろ(=もぐら)となって仏作りに勤しむ中、巻き起こる連続仏師失踪事件。失踪事件の裏には20年前の悲劇が潜んでおり、死んだと思われていた男が実は…?という素敵物語。

『背の眼』では真備の妖しいコネクションが事件解決に大きく貢献致しましたが、本作は推理が推理を生み出す、バリバリの本格。「名探偵、皆を集めてさてと云い」の標語(?)通りの展開に満足。伏線が次々に回収されてゆく様が快感。真備は前作で睨んだ通り、名探偵としての素質たっぷりです。でも、前作には真備の哀しい過去とリンクした切ないエピローグがついておりましたが、本作に霊の介入する余地は無かったため、その点がおざなりになっているのが残念。

犯人を改心(?)させる所作に某京極堂が見え隠れしましたが、“いきなり真実を突きつけても死者に憑かれている(と想い込んでいる)犯人を崩壊させてしまうかもしれない、少しばかり大仰な憑き物落としが必要だと思った”という真備の機転にはナルホドくん。そういう心遣いは民俗学的…というか都会的な名探偵には無い発想です。聖ヤヌアリウスの血とはよく云ったものです。このシリーズのこういうところが、好きよ。

というわけで、本作も満足させてくれました道尾秀介氏。このシリーズは続編が出ていないようですが、是非さらなる作品を!まだ読んでいないノンシリーズが概ね好評なので、これからの読書生活も期待できる。とりあえず『シャドウ』を早く読みたいものです。

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2007年4月 8日 (日)

『向日葵の咲かない夏』 道尾秀介

向日葵の咲かない夏 Book 向日葵の咲かない夏

著者:道尾 秀介
販売元:新潮社
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学校を休んだS君のために届け物をした僕が見たのは…S君の首吊死体。

S君の死の真相に“僕と妹・ミカとS君の生れ変わり”という3人組(?)が挑む。

さぁ、誰が物語を終わらせよう?

『背の眼』で美しく儚いホラー&ミステリを届けてくれた道尾秀介氏が、「このミス2007」17位に送り込んだ本作は…

グロテスク作品でございました。

「分類不能、説明不可、ネタバレ厳禁!超絶・不条理ミステリ」という帯の謳い文句が、まさにぴったり。ミステリでもあり、ホラーでもあり、怪談でもあるかもしれない。ネタバレ厳禁!の文句はさらっと無視して、当ブロ愚ではネタバレレビューと相成りますので、未読の方はご注意を。

もう、道尾氏の仕掛ける叙述トリックにひっかかりまくり!妹・ミカの言動が3歳児にしては大人過ぎる…とは思っておりましたが、まさか○○○だとは思いもよりませんでした。だって、お母さんがさ、「ミカ!ミカぁ!」って五月蝿いから…まさかミカ違いとは(しかもどっちもミカじゃない)。

S君の生れ変わりだという蜘蛛が吐く”嘘”にもやられっぱなし!嘘を吐かなかった登場人物も居なかったわけですけれども…トコお婆さんくらいか?でも、彼女もその存在自体が嘘みたいなものだからなぁ。そもそも主人公たる僕(ミチオ)自身が読者に秘密を抱えておりますからね。しかし、彼はいろんな意味で超絶だったわ。

そうそう、ミチオのフルネームは摩耶道夫とのことで。ミチオが名字であったならば、『向日葵~』のミチオが大人になって『背の眼』に登場した道尾秀介になった=だから『背の眼』で少年の声が聞こえた…みたいな妄想ネタが使えたのですが、違うようです。どうやら麻耶雄嵩へのオマージュ的名字のようですね。確かに、読了後の印象(不条理加減)なんかは麻耶作品に近かったです。

そして、作品全体に横たわるグロテスク描写!犬猫の連続虐待に始まり、死体への装飾、性的異常者、そして火事。もう、お腹いっぱいです。『向日葵~』への総合評価は☆で表すならば×4というところなのですが、あのホラー的雰囲気がもう少し薄まれば×5も点いたかもしれない。ホラーは苦手なんです。意味の無い要素は無いといえ(伏線の回収ぶりは見事です。下駄箱の鉢植えとか、百合のスミダさんとか)もうちょっと抑えた描写に徹していただけたら。ミチオが犯人(でも、偽の)を追い詰めた際なんて、小学生のミチオに本気で恐怖を感じました。道尾氏の力量故なのだと、評価は出来るのですが…。

最後に漸く家族を取り戻し、両親&ミカと親戚の家へと旅立つミチオ。その影がひとつしか無かったのは…きっと気のせいでしょう。ホラー。

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2007年3月31日 (土)

『背の眼』 道尾秀介

背の眼 Book 背の眼

著者:道尾 秀介
販売元:幻冬舎
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被写体の背中に浮き上がる二つの眼。眼を背負った者たちは、不可解な自殺を遂げる。

霊はこの世に存在するのか?

霊現象探求所所長・真備とホラー作家・道尾が挑む、美しく哀しいミステリ。

「このミス2007」第3位に『シャドウ』を、17位に『向日葵の咲かない夏』を送り込んだ道尾秀介氏とは本作が初めまして!以前から読みたい読みたいとは思っていたのですが、どうにもお名前を思い出せなくて(大きな声では云えませんが…地味じゃないですかお名前が)なかなか手にする機会を持てなかったのですが、伊坂幸太郎氏を特集しております「ダヴィンチ4月号」で小特集が組まれていたのをきっかけに頭に叩き込みました、お名前を

幻冬社第5回ホラーサスペンス大賞を受賞した本作ですが、民俗学(ホラー担当?)とミステリが融合した素敵作品に出来上がっております。『背の眼』の紹介ページで「京極夏彦を踏襲する…」といった記事を読んだのですが、京極とはちょっと違うような。彼は妖怪だもの。

民俗学とミステリの融合で思い出すのは『民俗学者 八雲樹』(ドラマ版八雲は我等がミッチー王子!!)なのですが、あのドラマは若干アイタタタ感が漂っていましたからね。ミッチーは天然キャラじゃないよ!ナイフより切れなきゃ!!でも、『背の眼』のテイストとしてはあんな感じ。

しかし、新たなる名探偵の登場じゃないですか?

もろ好みです真備庄介。科学的観点から霊的現象を分析する彼。アンチオカルティズムかと思いきや、その本心は本物の心霊現象に出遭いたいから。その理由がまた泣かせます。女性と見間違われるほど眉目秀麗な彼ですが、私の脳内ではなぜか某作品(QED)の毒草師と同じナリに変換(映像化)されていて嫌だ。

物語は真備の同窓生であり、ホラー作家の道尾秀介が心霊現象に遭遇することから始まります。貴重な友人からの頼みであるのと同時に、探していた本物の心霊現象に出遭えるかもしれないと重い腰を上げる真備。美しい山間の風景と美しい川の麓で彼らが出遭った真実とは?

まぁ、ミステリとの融合とか(私が)云っている割に推理パートは殆ど無くって、真備がコネを使って入手してくる情報とか突然の出会いとかを足し合わせていって、結末があるといった感じなのですが。でも、ラストの亮平少年の告白は胸が熱くなりました。真備、良かったね。貴方の探しているものは、貴方のすぐ側にあるってさ。

というわけで、期待以上でした道尾秀介氏。こりゃ、『シャドウ』と『向日葵』はどれだけの名作なんだと期待が高まります。真備庄介シリーズ第2弾『骸の爪』も今月発売されたばかり。これからの読書生活が愉しくなりそうです。

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