2009年4月25日 (土)

『書物迷宮』 赤城毅

書物迷宮 (講談社ノベルス) Book 書物迷宮 (講談社ノベルス)

著者:赤城 毅
販売元:講談社
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世には出せない書物

世に出してはならない書物

貴方はそれを読んでみたいと思いませんか?

『書物狩人』に続くル・シャスールシリーズ第2弾です。第1弾はあくまでも依頼を受けて、SILABの“仕事人”としてのル・シャスールを描いておりましたが、今回はあくまでも個人として、蒐集家としてのル・シャスールを描いております。もちろん、第1弾同様の人間模様は健在ですが。

体系や顔立ちに特質すべき点はなく、どこにでもいそうな東洋人でしかないのに。それでも彼は人の眼を引く。それは…ポオの物語やマリー・アントワネットの如き白髪の所為。なぜ彼は白髪を染めることなく、書物を追い続けるのか狩り続けるのか。それが最大の謎。今回も彼の秘密は一切語られることはありませんでいしたが。いつか…きっと。

今回登場する稀覯本は4冊。幻の詩集に鉄道の時刻表、旧家の家系図にナチスの細菌研究書。歴史を揺るがすような…とは云えない書物ばかりだけれど、人ひとりの人生を揺るがすには充分な書物たち。スケールが小さくなったように感じられますが、ル・シャスールの推理のスケールはでっかいです。

個人的には「愛された娘」が好きです。ラストの娘の決断が良い。「美意識で行動される方は好きです」なんて台詞、美しい。今回はどの作品もラストが良いです。「長い長い眠り」の黒さにもうっとり。

KGBやCIAなんていう単語が並び、歴史とロマンに溢れる、もっと派手な作品を読みたいと少しだけ思ってしまいましたが。今回はル・シャスールの人となりを少しだけ垣間見れたので。まだまだこのシリーズ続くようなので(積読状態の「メフィスト 2009年4月号」には「書物法廷」が!)愉しみは取っておきます。

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2009年4月23日 (木)

『カーニバル 四輪の牛』 清涼院流水

カーニバル・デイ―新人類の記念日 (講談社ノベルス) Book カーニバル・デイ―新人類の記念日 (講談社ノベルス)

著者:清涼院 流水
販売元:講談社
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九十九十九、暗殺

衝撃のニュースを夜叉の視点で振り返りつつ

犯罪オリンピックは新たな展開を見せる

地味に続いてたんですよ、未だ。

こんな本、もう読みたくない

重量級文庫本片手に、何度こう思ったことか。だって、

おもしろくない

ごめんなさい。本当のこと云ってしまってごめんなさい。前半の夜叉視点はそうでもないんですよ。もともと『カーニバル 四輪の牛』はノベルス版『カーニバル・デイ』冒頭に該当するので、読者のための「これまでのお話はこんな話でしたよ、覚えてますか?」的役割を果たしてくれるのですが。そこが一番おもしろいって…。

『四輪の牛』後半には第27週から第39週までの事件(犯罪オリンピック)が収録されているのですが、これまでのような「読者を愉しませよう」という感覚が欠落しているような。これまでは事件現場の探偵視点で、時には犯人視点で、ひとつひとつの事件をSHOWとして愉しく読ませてくれていたように思うのだが…『四輪の牛』は「こういうことがあったんですよ~」と3週まとめて披露とか普通ですから。しかも、舞台に関する薀蓄の方が頁数多いし。

では、その他の部分、たとえばRISE内部について明るいのかと云うと…決してそうでは無く。中途半端に(しかも断片的に)情報が開示されるので、全然おもしろくないんですよ。ミステリ読みは「これこれこうだから→こうなった」という過程(ロジックと云い換えても良い)を愉しむ人種だと思うので。いきなり「犯人はこの人です。じゃ、これで事件解決ですね。推理の過程は省略します、犯人わかればそれで良いでしょう?」って云われたら(書かれたら)きっと私はその本、投げつけるね。でも、本作もその状態に近いです。

とりあえず、RISE幹部は九十九十九を除く6人のS探偵…と思わせといて、もの凄いレベルダウンを見せましたね。そんな普通の人たちがRISE幹部だって云われても貴方。そうそう、

ブラック・ルークは龍宮のクローンなんですって

あとね、龍宮の祖先は桃太郎だそうです。あっ、RISEのトップ(総統)は

アドルフ・ヒ○ラーさんだそうですよ

本当はそっくりさんですけれど。血縁関係はお有りになるようです。もうなんか…絶句?

これが最終巻『五輪の書』で大団円、「うわぁ名作!これまですみませんでした」状態になってくれれば良いのですけれど。そうなった覚えはなく。絶賛レビューを書きたいところなんですがね。

そうそう、RISEは「本を斜め読みして大事なことを残らず読み落とし、的外れな批判をする人種」を抹殺するために活動しているそうですよ。私か?次の大量被害者のひとりは私か?

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2009年4月20日 (月)

『制服捜査』 佐々木譲

制服捜査 (新潮文庫) Book 制服捜査 (新潮文庫)

著者:佐々木 譲
販売元:新潮社
発売日:2008/12/20
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不祥事をめぐる玉突き人事のあおりで

駐在勤務に押し込まれた川久保

そこには、連綿と続く腐敗臭が漂っていて

道警シリーズ番外編とも云える本作『制服捜査』。佐々木氏との出会いは最近なので(遅)この名作の呼び声高い『制服捜査』も未読でした。やっぱり「このミス」2位は伊達じゃないですね。

強行班係から畑違いとも云える駐在所勤務へと人事発令された川久保。駐在に求められている役割は「町から被害者を出さないこと」ではなく「町から犯罪者を出さないこと」。犯罪者として囃し立てられ書き立てられることがなければ、人々は「この町は安全だ」と思ってくれる。思い込まされてしまう。けれど、そこにあるのは詐称でしょう?だって、犯罪者は出なくとも、被害者は間違いなく出ているのだから。

というわけで、川久保が暴く罪は5つ。これまでの“駐在さん”ならきっと見逃したような(それが故意なのか過失なのかは別として)事件ばかり。町から便利屋としての“駐在さん”が消えたことに戸惑い苛立ち皮肉を浴びせる人々に、新しくやってきた“警察官”としての川久保を慕い助けてくれる人々。複雑な人間関係のなかで、自分の仕事をしっかりやってみせる川久保。うん、職業人です。

個人的には「割れガラス」が好きです。「町が荒れるのは、最初は窓ガラス一枚からだ」という有力者。けれど、なにが窓ガラスなのかについては意見の相違があって。町に前科者が現れたことが窓ガラス?川久保には、窓ガラスはとうの昔に(川久保が赴任してくる前から)割られているように見えるのに。傷ついたひとりの少年すら守れないのに、町の平和を守ろうなんて笑わせる。そんな川久保の想いが透けて見えるかのような、ラストの意趣返し。

ラストの「仮装祭」で町の悪習を暴いて見せた川久保は、これからどんな駐在生活を送るのか。また読みたい気もするし、川久保が迎合していたら…なんて思うと読みたくない気もするし。名作でした。

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2009年4月19日 (日)

『迷える羊に愛の手を』 若木未生

迷える羊に愛の手を ハイスクール・オーラバスター  /若木未生/著 [本] 迷える羊に愛の手を ハイスクール・オーラバスター /若木未生/著 [本]
販売元:セブンアンドワイ ヤフー店
セブンアンドワイ ヤフー店で詳細を確認する

術者にも日々の生活があって

その一面を垣間見ることのできる

オーラバ短編集

最中ではありますが1時間の気分転換オーラバ。気分転換は大切。大切ですよ。

本短編集には4つの作品が収録されていて。うち、術者が術者らしく妖の者と対峙するのは2作品。やはりこちらの2作品の方が好きで…オーラバは珍しくキャラ読みでなく筋読みなのか?そういえば、本短編集に亮介が亮介として登場した箇所はございませんでしたね。いつも誰かの想いとして登場…もう、亮介ってばみんなに愛されちゃってるんだから。

まずは、昔取った杵柄、優等生(っぽい)諒が堪能できる表題作「迷える羊に愛の手を」。舞台は秀才ばかりが集まる男子校…なんて美味しそうな。先生とは気が合いそうだ同じ性癖を持っているような気がします。羨ましい。先生は男子高生を食べたくて食べたくて妖の者に憑かれてしまったのでしょうか?欲望って怖いね。しかし、先生に迫られた諒のかわしっぷりったら…なかなか。

そして、作者自ら「里見十九郎くんの優雅な私生活」と云ってのける「アニバーサリー」。再読で十九郎の良さを再認識した私としては、なかなか。腐女子が狂喜乱舞しそうな設定。だって、成績優秀(平家物語に対する教師の解釈に違和感を覚えて図書館へ文献を当たりにゆく)、ピアノを弾きこなし、引退してなお生徒会に多大な影響力を持ち、バイクを乗り回す財閥後継者候補…居ねぇよ(笑)そんな十九郎に対する希沙良の想いは黙殺させていただきます。BL要素には興味ない。いや、これ本当に。

そして、やっぱり亜衣ちゃんは元ヤンでしたか。しかし、「入学式の時に理想のカタマリを発見」って(笑)亮介ちゃん、本当にみんなから愛されてるんだから。

って、本当にこれってキャラ読みしてないって云い切れるんだろうか。

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2009年4月18日 (土)

『警官の紋章』 佐々木譲

警官の紋章 Book 警官の紋章

著者:佐々木 譲
販売元:角川春樹事務所
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道警最悪の1週間から2年

サミットを控えた道警に忍び寄る

その存在を揺るがしかねない疑惑とは?

最中ではありますが『笑う警官』『警察庁から来た男』に続く道警シリーズ第3弾です。JDCシリーズとは異なり(笑)もう読みたくて読みたくて仕方なかったんですよ!

第3弾は洞爺湖サミットを間近に控えた道警が舞台。実際、洞爺湖サミットあたりの札幌市内は、それはそれは仰々しい雰囲気に包まれておったものです。おじいちゃんと孫が交差点に立って「今日は道警以外のパトカー、何台見れるかな?」とか、警察署100mのところでひったくりが起きて、朝礼(?)中だった捜査員100人が「肩慣らしだ!」とばかりに署を飛び出したとか、笑い話ばかりが耳に聞こえてきましたが(笑)要人が居住していると思われるマンションの立ち番をしている警官の方にいつも「お疲れ様です」と思っておりました。

って、『警官の紋章』のお話。今回も佐伯サイド、津久井サイド、百合サイドという3つの視点で物語が形成されます。2年前に取り上げられた密輸業者摘発事件を再度追いかけることに決めた佐伯と、拳銃を所持したまま失踪した若手警官を追う津久井、ストーカー逮捕で評価を上げ、要人警護の応援に駆り出された百合。3人の視点はラストまで交わらないけれど、3人が(運命的に)その場に揃うことで、自然とはかられる意思疎通。それは2年前、最悪の1週間を乗り切った仲間たちだから。

正直、物足りない感じもしたのですが。今回は(『警察庁から来た男』もそうだったから“も”かな?)山場といいますが、このままではこの捜査を続けられないぜ!どうする俺?みたいな展開がなかったので。坦々と進む物語。蓄積された緊張がラストの場面で爆発する…ということもなく。失踪した若手警官を優しく迎える面々。

でも、その優しさには厳しさが内包されていて。佐伯をストーキングして(笑)咄嗟の場面で飛び出してきた新宮。怯える同僚を尻目に、片膝をつき両手で拳銃を構える津久井。その向こうには、新調した黒いスーツで同じく拳銃を構えた百合が。

うわぁ、佐伯班最高!

佐伯班なんて存在しないけれど。けれどあの場面、間違いなく彼等は佐伯班でした。2年前のリプレイ。

佐伯の用意した公判がどうなるかはわからないけれど。百合のリベンジが果たされなかった今回、第4弾ももちろんあるんですよね?もう、もの凄く愉しみです。映画も観る。

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2009年4月15日 (水)

『カーニバル 三輪の層』 清涼院流水

カーニバル―人類最後の事件 (講談社ノベルス) Book カーニバル―人類最後の事件 (講談社ノベルス)

著者:清涼院 流水
販売元:講談社
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犯罪オリンピック開催中

貴方もいますぐ参加しましょう

ちなみに「犯人側」「探偵側」「被害者側」のご用意がございます

どの立場でご参加されますか?えっ?読者側?

とりあえず折り返し地点に立てた(はず)『カーニバル 三輪の層』レビュ。明らかに読書スピード落ちてますが…今月中には終わらせたいね、この企画(弱気)

この『三輪の層』は犯罪オリンピック第14週から第26週までが収められておりますが…もともと(ノベルス時は)時系列がバラバラだったためか、記述があっちこっちに飛んでおりまして非常に読み辛い仕様となっております。とりあえず、私は九十九音夢の失踪を読み飛ばしました。乙姫といっしょに神聖城(サンクチュアリ)に居て驚愕。

驚愕と云えば、もっと凄い発表があったんですけれど。

総代と漂馬が異母兄弟だったなんて!!

そんな設定すっかり忘れておりました。『三輪の層』では漂馬の過去が明らかになるのですが…まさかの展開です。四大悲劇に数えられる(けれども詳細は明らかとなっていなかった)鴉城家殺人事件が漂馬を契機に起こっていたなんて。っていうか、総代のパパってば悪ね。あと、その解決(真相)も悪ですね。

奇しくも468頁、架空山菅家の口から出たこんな台詞。

「超常現象にしても謎物語にしても、やっぱりミステリは現実的に解決せんと」

そうですよね!私もそう思います

この大阪城天守閣が消えたり、イースター島にスペースシャトルが着陸したり、ナスカの鳥っぽい地上絵の目に該当する部分にミステリーサークルが登場したり、赤道に血液の帯が現れたりした謎を現実的に解決してくれるんですねさすが清涼院氏ありがとうございます少しでも疑った私を赦してください。

そうそう、この『三輪の層』にも「まえがき」が挿入されていて。「まえがき」によると人気事件は第16週「イースター島のモアイ」、第20週「ギザの三大ピラミッド」、第24週「コスタリカの巨大石球」らしいのですが。第16週と第20週はともにクリスマス・水野関係ですね…ごめんなさいキャラ読みなのでクリスマスがそんなに得意ではない私は愉しめませんでした。龍宮系キャラ読み代表としては第17週「ナスカの地上絵」は外せません。

ブラック龍宮は好みではないのですが

まさに「彼になにがあったのか」ですよ。星野多恵(あえての本名)のみを側に置き、(笑)を捨ててしまった龍宮。そんな星野さんも不遇の死を遂げてしまったわけですが。いやいや、私は新JDCビルの前で星野さんに殴る蹴るの暴行を加えてなどいませんよ?えっ?眼なんて泳いでいませんよ?とにかく、死んだと思っていた(思われていた)人物が復活しまくる『カーニバル』ですが、星野さんは復活しなかったように記憶しているので、やはり「普通の」お嬢さんだったようです。婚約は当方で勝手に破棄させていただきましたお粗末さまです。

あとはなにに触れておけば良いのでしょう。「RISEの要職はS探偵メンバ」ってやつ?それとも「各国首脳はすべてRISEの配下」なので、犯罪オリンピックは国家(世界)ぐるみの犯行ってやつかしら?あっ、「宮本武蔵が記した『五輪書』に、真理は宿る」ってやつに違いないわ(笑)

とにかく無茶設定のオンパレード。暇で暇で仕方がなく、壮大な冗談が赦せる方は是非お読みくださいまし。

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2009年4月13日 (月)

『カーニバル 二輪の草』 清涼院流水

カーニバル―人類最後の事件 (講談社ノベルス) Book カーニバル―人類最後の事件 (講談社ノベルス)

著者:清涼院 流水
販売元:講談社
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毎週土曜日午後1時

世界のどこかで起こる超常現象的殺人事件

探偵たちは…ただ見ているしかない

なぜか文庫版アフィリが表示されない(報酬対象外な)罠。この『二輪の草』と『三輪の層』で『カーニバル(無印)』が形成されますので、とりあえずこのアフィリで。この週末はプレイ時間50時間オーバにも関わらず未だ11月の「ペル○ナ3」にうっかり手を出してしまったので、このレビュ進まず。申し訳。

JDC本部ビル爆破で開幕した「犯罪オリンピック」。第1週から第13週までがこの『二輪の草』には収められております。エッフェル塔、ストーン・ヘンジ、カッパドギア…世界の名勝・観光地で次々と起こる不可思議殺人事件。これらは『二輪の草』『三輪の層』では解決しませんので…余興としてお愉しみいただけたら。いや、『四輪の牛』『五輪の書』を読んだって解決するとは限らないんですけれども。

とりあえず、ビリオン・キラーの手による大事件は置いといて。ときどき挿入される小さな事件にスポットを当てることに致しましょうか。清涼院氏の手により「まえがき」では第9週「シベリア鉄道」、第2週「アンパイアステートビル」、第12週「アマゾン麻薬工場」、第13週「ボロブドゥール寺院」が人気とのことですが…私も第2週、第9週、第13週が好きですね。皆さんと意見が一致して良かったむしろ皆さんもそこしか愉しめなかったのでしょうか?

第2週はエラリィ・クイーンのW隠し子(笑)ロンリー・クイーンがディープ・カット事件(喉元をスッパリ斬られ男性器を押し込まれるというセクハラシリアルキラー)を解決するというもの。「ある言葉」を口にすることで、あんなに大人しかった犬がまるで別犬になったかのように喉元に襲い掛かる…けれど、犬の牙に血は付いておらず。被害者が死に際に残したメッセージ?その真相とは?というミステリ。なかなか優秀。

そして、第9週。JDC第1班班長たる刃仙人が、なんと少年を誘拐し逃亡。その逃亡劇の最中に出遭った密室殺人事件。走るシベリア鉄道、鍵の掛かったコンパートメント。犯人と被害者の首はどこに?第9週はミステリとしても優秀ですが、天人少年(仙人の死した弟)の件が素晴らしいんですよね。仙人を殺してくれと頼まれた犯人、けれど仙人と同行している天野少年はロシア語を操ることはできず。仙人の殺害を依頼したのは一体誰?

『二輪の草』ラスト第13週は愛しの龍宮が登場。ベチャ(ガイド)のエルフィ・ゲッペンと龍宮の「賭け」。それは相手の質問にすべてウソで答えること。もちろんホントを混ぜてもよいが、それを相手に悟られてはいけない。ゲッペンがこの「賭け」を受けた時点で、すべては龍宮の思惑通り。いつの間にか、自分も知らないはずの忘れたはずの忘れたかったはずの「ドット」としての過去を思い出してゆくゲッペン。けれど…この龍宮って本当にあの龍宮?

冒頭で挑まれた「読者への挑戦状」はニセモノ名探偵探し。どうやらニセモノ名探偵は霧華舞衣→実は浮悠香澄水、とのことですが。殆ど登場しない浮悠香澄水がなぜ霧華舞衣を名乗っているのか。その意図は?その秘密は?

とりあえず『三輪の層』を早めに読了したく。『二輪』『三輪』が事件篇なら、『四輪』『五輪』が解決篇。解決篇に着手する前に、何冊か読んでしまいたい本があるんですよ…って一気読みレビュ中に堂々の浮気宣言!?

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2009年4月 9日 (木)

『カーニバル 一輪の花』 清涼院流水

カーニバル・イヴ―人類最大の事件 (講談社ノベルス) Book カーニバル・イヴ―人類最大の事件 (講談社ノベルス)

著者:清涼院 流水
販売元:講談社
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犯罪オリンピック

ネットの波、まことしやかに囁かれる噂

8.10(オーガスト・テンス)すべては始まった

巻を増す毎に厚さも増してゆく『カーニバル』。『五輪』とかもう見るだけで卒倒しそうだ。しかし、なぜ文庫版のアフィリが出ない。

とりあえずこの『一輪の花』は1冊284頁を使った序章に過ぎず、最後の二文にしか価値はなく。『コズミック』から2年、幾人かを失い、幾人かを得たJDCの変革を愉しめるのは重度のJDCファンだけでしょう。

とりあえず各キャラの立ち居地を確認しておきましょうか。特筆すべき事件が起こらずレビュ書くことないときの最終手段。前回は愛しの♥龍宮様と九十九十九について書きましたので、今回は他の主要メンバを。

JDCの上位団体(?)DOLLにレンタル移籍の決まった氷姫宮幽弥…フラウ・Dから貞操を守ってください。九十九十九への恋心を封印し、新しい恋、新しい自分、新しい謎に向かい始めた霧華舞衣…なんとなく違和感、本気ですか?運命の女に逃げられ、相棒に裏切られ、それでも総代の居るJDCから離れられない天城漂馬…漂馬の本気を見てみたい。雨霧冬香の名を捨て、新しい男と涙の刺青を得た浮悠香澄水…漂馬との復縁は無理ですか?全ては流れる血の所為なのか、精神を病み休養中の刃仙人…少年を庇った真意は弟?

既出キャラはこんなところでしょうか?次は新キャラを紹介しようと思うのですが…以前も書きましたが新キャラあまり好きじゃないんですよ。サムダーリン雨恋ちゃん、もうお願いだから龍宮にまとわり付かないでください。クリスマス・水野は再読してみたら意外と可愛かったのですが…でも、龍宮や香澄水が惹かれるような人物には思えないんだ。あと、御戸村正さんってのも居ましたね特にコメントは無いです。

新キャラを受け入れられないのはなんでだろう?と考察をしてみる。『コズミック』『ジョーカー』既出キャラたちはバックグラウンドが感じられるんですよね。キャラに深みがあるというか。もちろん充分トンデモ奇人変人なんですが…新キャラはその上に位置できない。軽い浅い。あるいは私が古い硬い懐古主義。もうニューウエーブを受け入れられないんですよ。

ただ、『コズミック』『ジョーカー』から参加していたからといって諸手を挙げて「好き」ってわけじゃないんですけれど。あっ、もちろん星野多恵さんのことなんですが。だって、彼女、普通でしょ?持ち込みでJDC4班スタート?JDCも随分門戸下げたんですねぇ。普通な彼女に嫌悪感を感じるのは、きっと自分が普通だからなんでしょうが。あと、

龍宮は誰にも渡しません

とりあえず、最後の二文と2年という月日を埋めるための序章『一輪の花』。ミステリもあったような気もするけれど…まぁ、いいや。犯罪オリンピックが始まったら嫌って云うほど(本当に嫌になるほど)読めますので。

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2009年4月 8日 (水)

『コズミック 水』 清涼院流水

コズミック 水  /清涼院流水/〔著〕 [本] コズミック 水 /清涼院流水/〔著〕 [本]
販売元:セブンアンドワイ ヤフー店
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すべての殺人は密室殺人である

中には何を閉じ込める?

憎い相手?それとも自分自身?

もうストックがなくなった。『コズミック 水』を読了したのが2分前。次のレビュはいつお送りできるだろう(遠い眼)とりあえず、

超ド級バカミス、ここに見参(笑)

何度読んでも凄いな。そういえば『コズミック』ってメフィスト賞受賞作でしたねすっかり忘れてた。 リストも更新できますねなんか得した気分です。

さて、バカミスの王様『コズミック』のレビュですよ。「1200個の密室で、1200人が殺される」との予告通り全国各地津々浦々繰り返される密室殺人。犯人(と目される)密室卿を追うJDCメンバのもとに届いた、とある小説が事件を急展開へと導く。タイトルは『1200年密室伝説』、作者は濁暑院溜水!?『コズミック』の舞台は『ジョーカー』のおよそ2ヵ月後…死者からの手紙?

さらに、『1200年密室伝説』は内容がこれまた問題で…密室卿による大量殺人は平安時代、江戸時代にも確認されているだなんて。平安時代は早良親王の祟りとして記録され、江戸時代には幕府隠密として松尾芭蕉が探偵役を務め、密室卿を追う旅をカモフラージュするために書かれたのが『奥の細道』…

これ、本当に書いてあることですからね!

危ない危ない、精神異常実験体としてER3に送られるところだった。というわけで、いろんなことを愉しく赦せる方のみ本作をお読みください。でも、大森望氏の文庫版解説は面白い。まさに「あぁ、これ私もやったわ」のオンパレード。鮎哲賞受賞パーティの2次会で有栖川、綾辻、法月、二階堂に混じって私も『コズミック』を語りたかったものです(笑)

そうそう、せっかく清涼IN流水読みをしたので、それらしいレビュも残しておきましょうか。とりあえず、『ジョーカー』(=幻影城殺人事件)は

全員共謀ということでよろしいでしょうか?

なんせ全員、密室教。濁暑院さんなんて中枢も中枢じゃないですか。あれですよね?『コズミック』のリハーサルかなんかだったんですよね?だってそうじゃなきゃ小杉少年が犯人だなんて無理があるもの。実行犯は彼だったやもしれませんが、それを全員でサポートさせていただいたという。もしかしたら次の幹部候補でしたか?それが罪の意識に苛まれるようになって20番目の被害者とさせていただいた?って、候補は最後のフロッピィにきちんとまとめられていたんだっけか妄想妄想。

この幻影城関係の記述って、初版『コズミック』から加筆修正されてます?いきなり『コズミック』を読んだ方は「は?」ってなもんですよね。とりあえず清涼院氏の言う、清涼IN流水の順で読むと「とある仕掛けが浮かび上がります」っていうのはこれのことだともう○年も思っていたのですが…

違ってたら恥ずかしいですね!!

でも、違ってたら違ってたでまた「眼から鱗」を体験できるのか、それは嬉しいかも。

そういえば、38番目の被害者は森博嗣氏でしたね(笑)

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2009年4月 7日 (火)

『ジョーカー 涼』 清涼院流水

ジョーカー 涼  /清涼院流水/〔著〕 [本] ジョーカー 涼 /清涼院流水/〔著〕 [本]
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八つの生贄は出揃い

読者の前に全てのヒントは提示された

さぁ、謎を解くのは…誰?

頑張って読んでますJDCシリーズレビュ第3弾。清涼院氏の言葉遊びにお付き合いするのには精力と胆力が要るんだ。

とりあえず、前回レビュで宣言しました冒頭シャウト

若様、カムバックプリーズ!!!

老いた螽斯さんならまだしも(おいっ)若様の命まで奪ってしまわれるなんて…憎き芸術家。もうね、若様の最期はまともには読めない。「死の瞬間。蒼也は、父を越える神々しい推理力を手に入れた」って越えなくて良いから生きててくださいよ若様!どんだけ『Xの悲劇』なんですか!!って、超ネタ割ってますが、このレビュ誰も読まないだろうから良いや(おい、清涼院氏に失礼だ)。今日は思う存分ネタバレレビュ。だって(一応)『ジョーカー』解決編ですし完結編ですし。

とりあえず、

犯人は誰でもないってどういうことね?

スミレさんかと思わせといて小杉少年かと思わせといて誰でもないって。しかも、「その正体なんて、誰でもいい」って貴方、ここまで読んできた読者にその仕打ちは…まぁ、これも『コズミック』への伏線なんですが。伏線なんですよね?私これまで○年の間、ずっとそう認識してきたんですが違ったらどうしようそれこそ「生涯で未体験の刺激」だわ恐るべし清涼IN流水。

とにかく意外な犯人を追及しようとダミーの犯人がごろごろ登場します。虹川氏の推理で3人(かわいそうなD氏)、その場で龍宮が2人追加し、改めて龍宮が意気揚々と誤爆、傾界の美貌・九十九十九が2人。あっ、誰でもないんだっけか3人か?とりあえず9人ダミー…覚えていないだけでもっと多いと思われます。登場人物表に記載されている約30%が該当って素人探偵(読者)の競馬的犯人予想じゃないんだから。

しかし、虹川氏の推理を霧華嬢が退けたときの台詞には参った。「虹川さんの推理では論理とは呼べませんわ。露骨に言えば『こじつけ』です」って

えっ?それを貴女が云うの???

龍宮の「きりきり舞い」を聞いて驚嘆の声を上げていたような気がするんですけれど(笑)そもそも龍宮の推理なんて殆どがこじつけ、龍宮どころか十九の推理(特に『源氏物語』の件)だってこじつけやん!!興奮のあまり似非関西弁が出てしまいました。危ない危ない。とにかく、物理的に犯行が可能か否かよりも、現場に残されたサイン(要するに言葉遊び)を拾うことで犯人を特定するという

ミステリにあるまじき行為が罷り通る物語

まさに、JDCシリーズは読者を選ぶ。私は大好きですけれども(愛しているが故の酷評)受け入れられない方は徹底的に受け入れられないと思います。なんせ

ほったらかしの密室もありますし

名探偵揃って「あの密室は解く必要のない密室、解けない密室なのです」「奇跡が起こったか、トンネル効果で首が甲冑を通過してしまった」って本気ですか?もしかしてどこかで(他作品で)この謎解かれているのかもしれませんが、寡聞にして存じません。まぁ、私の読み込みは相当甘いんですけれど。なんせキャラ読み。

というわけで、キャラ小説として若様の復活を願わずにはおれません。無理な話なんですけれども。とりあえず『コズミック 水』で漂馬に癒されてこようと思います。

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2009年4月 6日 (月)

『ジョーカー 清』 清涼院流水

ジョーカー 清  /清涼院流水/〔著〕 [本] ジョーカー 清 /清涼院流水/〔著〕 [本]
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聖なる眠りにつく前に、我は八つの生贄を求める

すべては、(華麗なる没落のために)

芸術家

レビュ第2弾。清涼IN流水で読むと宣言しましたので、『コズミック』ではなく本日のレビュは『ジョーカー』。『ジョーカー』は私の中で「JDCシリーズ」ベストですので、必然的に読む手に力が入ります。

ベストと宣言する理由は
龍宮の活躍が多いからなんですけど!

江戸川乱歩と同じ名を持つ男・平井太郎が主人を務める幻影城。その幻影城で行われていたミステリ作家「関西本格の会」合宿。虹川良、風紋寺光世、氷龍祥子といった第一線で活躍する作家が顔を揃える中、濁暑院溜水から提示された「推理小説の構成要素三十項」。「十戒」「二十則」を上回る制約、その先にある究極のエンタテイメント!しかし、その「三十項」が芸術家(アーティスト)と名乗る凶悪殺人犯に悪用され、幻影城を舞台とする連続殺人事件に発展するとは誰が予想したものか…という物語。

この『ジョーカー』で探偵役を務めるのは龍宮城之介、霧華舞衣、螽斯太郎といったJDCを代表する錚々たる面々。けれど、このメンツをもってしても芸術家の凶行は止められず。上巻である『清』が終わるまでに(華と麗の双子を含めて)9つの命が奪われております…ってあれ?芸術家が欲しているのは「八つの生贄」なので、既にオーバ?芸術家の真意が読めませんねぇ。まぁ、ダリアの花びらに錐で穴を開けて「きりきり舞い」とか云っちゃう犯人だからな(龍宮の独りよがりという可能性ももちろん捨てきれないが。なんせ駄洒落王)。

でも、龍宮vs霧華の形で展開される推理対決は嬉しい。若様、音夢、螽斯が揃って口にする「JDC第1班と第2班の見えない壁」。無残な殺人現場に遭遇したときにどこまで冷静さを保っていられるか、どこまで観察することができるか、その観察を以ってどこまで推理を飛躍させることができるか。圧倒的な差、現状では追いつけない速度、見えない壁。まぁ、第1の殺人「シャンデリア圧殺事件」くらいは解けないとお話にならないのでしょうが。若様の仰る「なんか幼稚なトリックだな。今時、推理小説でも使われないような…」とか伏線張られまくりでゾクゾクします。

とにかく『ジョーカー 清』は伏線のオンパレード。人間を書くために(?)書かれている意味無さそうな描写も全て伏線でございますので、皆様ご注意を。

そうそう、いつも読んでいて違和感を感じるのが龍宮が「スラリとした長身」だという事実。童顔=低身長=龍宮可愛い♥イメージの私としては意外すぎて脳内からいつも抹殺。脳内映像化するときは若様の方がいつも龍宮を見下ろしております。あれ?漫画版はどうなってたかしら?そのあたり原作に忠実?いま確認してきました、若様の方が背が高い。やっぱりね!私の脳内映像化はこの漫画の影響をかなり受けております。今度この漫画版のレビュもおまけと称してやってしまおうそうしよう。なんてったってオリジナル結末だし。

私はもう『ジョーカー』を幾度と無く読んでいるので、下巻である『涼』で誰が殺されて誰が犯人として指摘されどんなトリックを清涼院氏が仕掛けてくるかを把握しているのですが…次回の冒頭シャウトはもう決まっているんだ。次回のレビューは某様いっぱいでお送りする予定。

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2009年4月 5日 (日)

『コズミック 流』 清涼院流水

コズミック 流  /清涼院流水/〔著〕 [本] コズミック 流 /清涼院流水/〔著〕 [本]
販売元:セブンアンドワイ ヤフー店
セブンアンドワイ ヤフー店で詳細を確認する

犯罪予告状

今年、1200個の密室で、1200人が殺される

誰にも止めることはできない

密室卿

開幕でございます。

私が「JDCシリーズ」に手を染めたのが高校生の時。後に改題されましたが『カーニバル・イヴ』を読んだのが大学受験後だったのを鮮明に記憶しているので…かれこれ○年前。○は1桁と2桁の狭間、時が移ろうのは早い。

本作『コズミック』は文庫化の際に『コズミック 流』と『コズミック 水』に2分割され、間に『ジョーカー 清』『ジョーカー 涼』を挟むという清涼IN流水の形を取っております。この形で2作を読むと「生涯で未体験の刺激」を得れるという眉唾モノ…『ジョーカー』を「JDCシリーズ」ベストとする私は、『ジョーカー』単体での再読は幾度と無く繰り返しておりますが、この形で通して読んだことはなく。今回は清涼IN流水で読み、レビューもその順とさせていただきます。

というわけで『コズミック 流』。マスコミ各社、警察庁、日本探偵倶楽部(JDC)に一斉送信された犯罪予告状。「今年、1200個の密室で、1200人が殺される」という犯罪史上類を見ない荒唐無稽さ。1年365日、1日あたり3人強が密室で殺されるなんて…ジョークにもならない。けれど、発信者にして犯人“密室卿”はそれをやり遂げるべく、総代・鴉城蒼司率いるJDCをそれを食い止めるべく、頭脳と頭脳の戦いは始まる…といった内容でしょうか(笑)つい自然と(笑)が入っちゃうのはご容赦ください。

とりあえず『コズミック 流』で披露される密室は19。基本的に19の密室が完成される様が描かれているだけであり、JDCの面々は殆ど登場しないのでレビュすることは多くありません。ので、今回は

私のJDC愛を語らせていただこうかと(笑)

これまで「JDCシリーズ」のレビュはしてこなかったのに、当ブロ愚内に幾度となくお名前が登場しております龍宮城之介がマイ・フェイバリット・JDC探偵です。黒服に黒ズボン、黒ブーツ、黒マント、黒フェルト帽、黒手袋と真夜中に女性の後を歩いたもんなら一発アウトな彼ですが、中身も相当キテます。とりあえず駄洒落(?)オンパレード。『カーニバル』の大事なところで駄洒落オチかましたことは未だに忘れられません。それが場を和ます彼の才能だったとしても!!どうも九十九十九を登場させるまでのピエロ的役割しか与えられていないような気のする龍宮が不憫で大好きです。

そして九十九十九。世界に7人しか存在しないDOLL(国際立法探偵機構)のS探偵にして、絶世の美人。警察庁からサングラスの着用を義務付けられているのは、あまりの美しさで(通りすがりの)人々を失神させないように。どんだけ(笑)そんな十九は、推理に必要な手掛かりが全てそろうと、一瞬にして真相を悟ってしまう、という「神通理気」の使い手なので登場はいつも最後です。というか、ある程度事件が進まないと(手掛かりが得られないと)犯人指摘できないので…あれ?名探偵なの?

そして、この2人をサポートする(えっ?)JDCの面々。基本的に私は霧華舞衣、若様を代表する幻影城出張組が好きなので、『カーニバル』以降に登場するサムダーリン雨恋ちゃんやクリスマス・水野は苦手。クリスマスについては漂馬の件と無関係とは云い切れませんが。でも、私がJDCメンバの中で唯一「嫌い」と表現するのは星野多恵だけなのです。それだって、龍宮の件が無関係とは決して云えないんだけれども。

というわけで、奇人変人オンパレード、特殊ルビオンパレードの「JDCシリーズ」。読む人を選ぶシリーズだと思いますが、西尾維新に多大な影響を与えた本シリーズ、西尾作品スキーならきっと大丈夫(小声)是非、挑戦くださいませ。

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2009年4月 4日 (土)

『思考機械の事件簿Ⅰ』 ジャック・フットレル

2プラス2は4だよ、ハッチ君

それもときどきではなくて、

いつ、いかなるときにもだ

ときどき自分の脳内連想ゲームはどうなっているのか疑問に思うことがあって。『推理作家になりたくて 謎』に収録された泡坂妻夫氏「DL2号機事件」からの連想がフットレルの「十三号独房の問題」で。この「十三号独房の問題」、名作の呼び声高く読みたくて読みたくて仕方が無いのですが出遭いがなく。そもそも『思考機械の事件簿』自体が既に絶版、古書店で買い求めるしかなく未だ出遭えず、今日は図書館様にお世話になったのです。

というわけで、ホームズのライヴァルとの呼び声高いオーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼンが本シリーズの名探偵役。哲学博士、法学博士、王立学会会員、医学博士などなど多数肩書きを所有し、素人にも関わらずチェスの世界チャンピオンを15手で詰み、「思考機械」という称号(?)を得た奇人です。冒頭でホームズよろしく、後の相棒であるハッチ記者のバックボーンを当ててみせた思考機械。まぁ、この手の推理は作者の思うまま…あわあわあわシャーロキアンに襲われる。

『事件簿Ⅰ』に収録されている作品のなかでは「情報漏れ」が好きかも。密室から漏れ出た機密情報。この情報を入手できるのは本人(依頼人)とタイプライターを打つ秘書だけ。指示が遂行されるまで本人も秘書も部屋からの外出は赦されず、絶対に情報が漏れるわけがないのに。2+2=4なので(なぜ1+1=2ではないのかずっと気になっておりました)本人が情報を無意識下でも漏らしていないなら…当然秘書が怪しいわけで。では、秘書はどうやって情報を外部に伝えたのか?

思考機械の取り組む謎(解)はシンプルなものが多くって。派手な捕り物劇はなく、そこにあるのはロジックだけ。ロジック最強。最近の犯人たちは自分の力(知能)を誇示し過ぎですね、「実際に偉大な犯罪者は、絶対に発見されぬものです。なぜかというと、偉大な犯罪そのものが-つまり、彼らの犯行が-明るみに出ることがないからです」

「いま、この部屋で、あなたを殺すこともできます」
「そしてそれを知る者は一人もありません。疑われることもないのです。なぜでしょうか?ぼくはミスをおかさないからです」

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2009年4月 3日 (金)

『荒野』 桜庭一樹

荒野 Book 荒野

著者:桜庭 一樹
販売元:文藝春秋
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世界とは?

人間とは?

青春とは?

青年は荒野に旅立つ

『赤朽葉家の伝説』と『私の男』を読み残している私。桜庭氏の表面だけを攫っている感が否めませんが、狂気を孕む物語って苦手なので。でも、本作『荒野』はなかなか。装丁も素敵。

本作は山野内荒野が少女から女性へと…違うな、子どもから少女へと成長を遂げる物語。そこには恋があって、友情があって、家族があって。少しだけ複雑な恋、少しだけ複雑な友情、少しだけ複雑な家族。でも、全ては微妙なバランスで成り立っていて。

微妙なバランスを軽快に痛快に描く桜庭氏の筆力はさすが。これまで読んできたどの桜庭作品よりも爽快。けれど、どうしても外せない奥底に潜む狂気。異性を愛したり、友人を愛したり、家族を愛したり。それって当たり前のことで、誰しもが現在進行形で経験していることだけれど…そこにこんな狂気はあるのかい?当たり前すぎて、体に馴染みきっていて、気付いていないだけ?それを桜庭氏は真っ向勝負で切り捨てるから、私たちはそこに痛みを感じるの?畏れを感じるの?

個人的には荒野と悠也の吊り橋効果が気に入っていて。悠也がきちんと想いを秘めたまま帰ってきたのは意外で。荒野に教えてあげたい「変わらないものなど無い」ことを。荒野だってこんなに変わったのに。

普段からミステリを愛好している私は、物語にオチとかまとめとか総括を求めてしまう癖があって。基本的にオチのない(なかったですよね?)本作をどう評価したら良いのかわかりません。最後の1頁までどんなどんでん返し(オチ)が来るのか!?と構えながら。この癖、直した方が良いですね純文学方面に弱くなる。

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2009年4月 2日 (木)

『推理作家になりたくて 謎』

推理作家になりたくて〈第6巻〉謎―マイベストミステリー Book 推理作家になりたくて〈第6巻〉謎―マイベストミステリー

販売元:文藝春秋
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推理作家になりたくて

推理小説を貪り読んだあの頃

自薦短編と大好きな短編を推理作家がご紹介

泡坂妻夫氏の訃報を聞いて、「DL2号機事件」が読みたくなって。『亜愛一郎の狼狽』も所有してはいるのだけれど…せっかくなら有栖川有栖氏や法月綸太郎氏の作品も読める本短編集で、と。

とりあえず冒頭、有栖川有栖氏の「望月周平の秘かな旅」から。タイトルから丸判りですが、学生アリスシリーズ望月周平スピンオフ(?)作品でございます。学生アリスシリーズの短編はこのトリアタマが記憶しているだけでも4編になるので…そろそろ短編集が出てもよろしいのではないかと思うのですが如何でしょう有栖川氏?とにかく、少しセンチで少しミステリな本作。ミステリ部分については江神さんが早々に解かれたようですが(というか誰でも解かる…しかし正解はない)それに沿ってモチさんがとった行動が。いつもの元気なモチさんとは少し違ったセンチな1作。

そして登場順、次に惹き込まれた作品が小杉健治氏の「原島弁護士の処置」。小杉氏、地味に読んだこと無くてそれでも逆転裁判が大好きな私としては、法廷モノミステリも良いな、と。法廷モノってどうしても映像作品の印象が強い。読者を法廷内で驚かそうとすると、どうしてもアンフェアな書き方になるんじゃないだろうか、とも思うし。でも、論理を築き上げるという意味では最高の場所、シチュエーションだよな…と妄想すると新ジャンル開拓できたようで嬉しい。法廷ミステリ、読みます。

そして、泡坂妻夫氏「DL2号機事件」。“日本のチェスタトン”の異名を取った泡坂氏の訃報。ブラウン神父よりも亜愛一郎を手に取ったのが早かった私としては、逆説といえば泡坂氏なんです。って、本作が逆説バリバリか?と問われるとそうでもないんですが。でも、久しぶりの亜愛一郎は至福でした。泡坂氏のご冥福をお祈りいたします。

ところで、「DL2号機事件」からもれなく「DL6号事件」を連想してしまう私はどんだけ逆転裁判スキー?

あと、泡坂氏を推薦(?)した加納朋子氏の「最上階のアリス」も愉しませていただきました。さすが貫井徳郎氏の嫁(笑)

そういえば本短編集には江戸川乱歩の「挿絵と旅する男」も収録されていて。坂木司氏の『先生と僕』を読んだときに、「挿絵と旅する男」を再読したいな…と思ったのが脳内に残っていて。それが本短編集を選んだ最大の契機だったかもしれないですね。

って、法月綸太郎氏「ロスマク」レビューしてない!!っていうか、今日はレビューというより思い出話ばっかりだ。でも、この『推理作家になりたくて』は第6巻が最も素晴らしいと思います。いろんなミステリが読みたいわ、という方にお薦め。本当にいろんなジャンルのミステリが詰まってます。ナビ本としてどうぞ。

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2009年4月 1日 (水)

『十字架の少女』 若木未生

十字架の少女 ハイスクール・オーラバスター  /若木未生/著 [本] 十字架の少女 ハイスクール・オーラバスター /若木未生/著 [本]
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少女の背負った十字架は

罪の証?それとも赦し?

諒の過去が明らかになるオーラバ第3弾

1時間の気分転換オーラバ再読中。アフィリの表示非表示はどんなルールなんでしょうか?古いとか絶版とか関係ないような気がしてきた…在庫の有無?ならば1990年発行の本作を在庫として持っているセブンアンドワイは凄いな。って、どうも良いことから始めるのはミステリスキーとして悔しいからです。

本作は諒の過去を主題に。優等生な諒ってあまりイメージ湧かないんですが…苦しみをストレスを発散できずに妖の者に憑かれた過去の諒、そして家族の死。唯一の生存者、唯一の希望、妹の彩ちゃんが今回のゲスト(?)キャラ。どうやら彩ちゃんも術者のようですが…私が読んだことある巻までに彩ちゃんが術者として活躍した巻は無かったように思いますが。その後バリバリ活躍してくれてるのでしょうか?でも「静」の術者なのか…っていうより諒と和解してもらわないと(それが一番難しいから)。

って、牙ですよ。このレビューは紹介というより個人的備忘録なので(懐かしい久しぶりに読んでみようかなオーラバ、と思っていただけると至極だけれど)予告なしにネタバレしてます。って、伽羅王の遣いである牙ですよ。またもや新たな力を自陣に引き込んだ伽羅王ですが…

「犠牲は免れぬでしょう…彼らの内には」
「やむを得ぬ」

って!そうまでして妖の者…っていうか九那妃に一矢報いなくてはなりませんか。本当にこの夫婦にはどんな因縁があるんだか。再読&途中からはじめましてが俄然愉しみです。

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2009年3月31日 (火)

『生首に聞いてみろ』 法月綸太郎

生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2) Book 生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)

著者:法月 綸太郎
販売元:角川書店
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切断された石膏像と、切断された生首

首の上、秘められたものとは?

2005年ミステリ界を風靡した法月綸太郎代表作

ワントリックもののミステリは風化してしまうけれど、ロジックに足を着けたミステリは風化しないのだな、と思った再読通勤本。一度読んだはずなのに、実に愉しませていただきました(トリアタマによる犯人忘却は秘密)。

本作、相当長く相当厚いのですが、無駄な箇所はそうそう無く。綸太郎のああでもないこうでもないは健在。でも、いきなりピコーンと閃いて「犯人は貴方だ!」とかやられるより、ひとつひとつ可能性を潰して、ときには犯人の掌の上で騙され欺かれながら、唯一といえる真相に辿り着く…その過程を愉しみたいときってのがあるんです。本作はまさにその過程を愉しむ1冊。綸太郎(登場人物の方)がやけに人間臭い、ときには(いつもか?)それが良いのです。

本作はもう各所でレビューされ尽くしていて、いまさら「やれトリックが~」とか「やれロジックが~」とかの検証は不要かと。というか、

読めば判る

ので。回収し損ねた伏線もないでしょうし。綸太郎と同じ過程で犯人まで辿り着けると思います読者も。親切な本格ミステリ。

なので、読書中に私が猛烈に気になったポイントを。それは妻の自殺に心を痛める各務に対して放たれた法月警視のこんな一言。

「私の家内も同じ死に方をしましたから」

えっ?初耳です。法月綸太郎シリーズはエラリー・クイーンへの強烈なオマージュなので、母親が居ないことを気に掛けたことも無かったのですが(まるでそれが当たり前のように)、そうですよね居ますよね母親。でも、その母親が病死でも事故死でもなく自殺って。綸太郎が母親に関して述べた作品(箇所)って他にありましたっけ?少なくとも私のトリアタマデータベースには残っておりません。だって、母親が居ないのなんて当たり前だと思っていたので…この件、いつか描かれますか?それとも本家と同様藪の中ですか?

しかし、綸太郎と警視(父親)の関係は作品によって随分違いますね(本家同様)。絶大な信頼を寄せてみたり、邪魔者扱いしたり。「今回のふたりはどんな関係かな?」と思いながら読むのが最近の愉しみ方だったりします。

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2009年3月30日 (月)

『短劇』 坂木司

短劇 Book 短劇

著者:坂木 司
販売元:光文社
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ささやかな悪夢を、お目にかけましょう

…醒めないかもしれないけれど

坂木司が贈る、奇想短編集

「本が好き!」で連載された坂木司氏のショートショートをまとめた奇想短編集。収録されているのは26作品、恋愛あり、コメディあり、ホラーあり、悪夢あり。坂木氏の引き出しの多さを実感する1作。

個人的には冒頭「カフェラテのない日」と「雨やどり」が好きで。個人的坂木ベストが『シンデレラ・ティース』な私としては、もっと坂木流恋愛小説が読みたかったのだけれど…恋愛モノはこの2編だけでしたね残念。「カフェラテのない日」に登場するバリスタは格好良すぎで胡散臭さ抜群。「雨やどり」に秘められた想いとパイナップルは痛過ぎて。でも、出来れば長編に仕立てていただきたいものです「雨やどり」。

あとは基本的にホラーが多いような。後味の悪い気味の悪い気持ちの納まりの悪い作品が続きます。坂木氏らしくないと云えばらしくない。でも、人間誰しもこのくらいの“悪”は心に秘めているもので。ここまでの数を一気に披露されると若干うんざりしますが、連載として定期的にエッセンスとして読むならば、上質。でも、ホラー作品からタイトルを挙げてレビューを披露したいと思うような名作は見つけられませんでした残念。

あとがきで示された「この本の中で、なぜか繰り返し出てくるモチーフがあることを」。すぐには想起できなかったのだけれど、そのモチーフとは○ですか?人は○を見る度に、それを覗き込まずには、それに手を差し込まずには、その先にあるものを思わずにはいられない。そんな不思議な○に堕ちる日がやってきたとしたら?

って、書いてみましたが…坂木氏の狙いを○から拾い上げることはできませんでした。私ってばダメ読者。

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2009年3月29日 (日)

『銀河不動産の超越』 森博嗣

銀河不動産の超越 Book 銀河不動産の超越

著者:森 博嗣
販売元:文藝春秋
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この銀河不動産という会社はどんなところですか?

うちの大学から行くようなところではない

悪いことは言わない、ここだけはやめておけ

森博嗣引退カウントダウンは15ですが、地味にまだ読めていない作品は15以上あって。そんな読めていなかった(というか、あまり話題にならなかったので出版されたこともよう知らなかった)1作が『銀河不動産の超越』です。

帯の「“省エネ青年”の運命がある日、一変!」を確認し、あら?小市民に続き古典部新作?と思ったのは内緒。でも、森博嗣版古典部は省エネをモットーとしておきながら厄介事についつい首を突っ込んでしまう…こともなく、本当に省エネでした。奇人変人を寄せ付ける力はお持ちのようですが。

個人的には「銀河不動産の忌避」のサブワーキングの件が好きです。議長選出とか素晴らしいセンス。森博嗣引退が急に寂しくなる瞬間。でも、やっぱり登美子さんと結婚とか子作りとか強引過ぎると思うんだ。あの部屋に奇人変人が一時的に集まるのはわかる、でも登美子さんの一件は次元が違うと思うんだ。

というわけで、森博嗣的素敵センテンスを愉しむ1冊で、内容を吟味して愉しむ1冊ではないでしょう。往年の森ファンならきっと愉しめる、でも本作から森博嗣に入る人には向かない「えっ?これってジョーク?」状態かも。

ミニチュアの件は…うん、そういうこともあるかもね。

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2009年3月28日 (土)

『別冊 図書館戦争Ⅱ』 有川浩

別冊 図書館戦争〈2〉 Book 別冊 図書館戦争〈2〉

著者:有川 浩
販売元:アスキーメディアワークス
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図書館シリーズスピンアウト第Ⅱ弾

えっ?今度は手塚♥柴崎!?

これを読まずしてなにを読む

逃亡中に読んだので未レビューだった本作。昨夜、

ゲロ甘を寄越せぇ!!!!

と禁断症状が出て、そのまま朝4時まで…そうだった、第Ⅱ弾は決してゲロ甘とは云えないんだった。

収録された物語はざっくり3篇。第Ⅰ弾で堂上に土足でデスクに上がられた緒形副隊長の「もしもタイムマシンがあったら」と、堂上&小牧がとにかく可愛らしい「昔の話を聞かせて」、そしてとにかく痛い「背中合わせの二人」。とりあえず甘いところからレビューいきましょうか。

「もしもタイムマシンがあったら」はまさかの緒形副隊長。第Ⅱ弾は玄田♥折口がくると思っていただけに意外。でも、緒形副隊長素敵すぎるまさに漢。喧嘩屋中年がアレなだけに(笑)図書隊の渋いところを一手に引き受けている感のある緒形副隊長。ごめんなさい緒形副隊長が元・良化隊員だって知りませんでした本編でそんな記述ありましたっけ?本編は堂上♥郁のゲロ甘っぷりしか記憶にないもので(酷)そんな緒形副隊長が情けなくも傷つけてしまった女性を想う本作。「心が振れない」って表現が素敵。有川嬢の恋愛表現はいちいち素晴らしい。真似したい。でも、一番私の心を振ってくれたのは緒形副隊長と進藤一正の「あんたは図書隊に人間だ」なんですが。

そして「昔の話を聞かせて」。郁からすれば完璧人間な堂上&小牧にも若かりし頃はあるわけで。堂上を班長に据えて、小牧がそのサポートに回るという図式が確立した現在では信じられないチグハグなふたり。昔の堂上が郁のようだった、というのは何度も語られていて第Ⅰ弾で指揮権置忘れる件からも納得なんですが、小牧が意地になって時計と睨めっこなんて…想像できない。いや、鞠江ちゃん関係になると小牧別人になるからな今回も新人に「殺すよ?」とか云ってたしな。正論ドコイッタ?

でも、やっぱり私は小牧が好きなようで(石田ボイスが影響を与えていないと云ったら嘘になる)さっきDVD第3巻に収録された「恋ノ障害」を動画サイトで視聴してきちゃいました。あの名言「もう子供に見えないから困ってるよ」はもちろんですが、堂上班が駆け込む直前の小牧の独白と、鞠江ちゃんの姿を確認したときの爽やかすぎる笑顔に胸キュン♥

って、突然「恋ノ障害」の話なんかを始めたのには訳があって。それはもちろん「背中合わせの二人」がとんでもなく痛いから。手塚♥柴崎は勝手に大人の駆け引きラヴが来ると思っていたのでまさかの。「柴崎が美人なのは柴崎のせい」じゃないのに、図書館シリーズに登場した誰よりも痛い思いをしたに違いない柴崎。なまはげ(笑)の全身蜂の巣は物理的に痛いだけであって、精神面の痛さは量れないから。

だから、ラストで手塚と結ばれたときの柴崎はまるで別人で。極度の緊張と屈辱が柴崎を病ませたのだとは判っていても、どうしても別人のようで。大人ラヴを期待するような浅はかな私の妄想の斜め上を飛んでいった柴崎。まさか柴崎があんな風に子どものように泣き叫ぶなんて。そのくらい退化しないと心情を吐露できないところに自分を、柴崎麻子というブランドを造り上げてしまった弊害かもしれないのだけれど。とにかく、しあわせになってねと声をかけることしかできない、ゲロ甘どころかゲロ重だった(有川嬢の旦那様曰く「後味があまりにも気持ち悪くて」納得)「背中合わせの二人」。

一番ほんわかできたのはブーケを受け取った鞠江ちゃんの頑張りと、それを温かく見守る小牧。やっぱり小牧が好きなんだわ私。

これで図書館シリーズは本当に終焉なんですよね?本当に本当に寂しい勿体無い虚しい。また書きたくなったらいつでも戻ってきてください有川嬢。また動きたくなったらいつでも戻ってきてください図書隊の皆。素敵な作品をどうもありがとうございました。

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2009年3月27日 (金)

『セイレーンの聖母』 若木未生

セイレーンの聖母 ハイスクール・オーラバスター  /若木未生/著 [本] セイレーンの聖母 ハイスクール・オーラバスター /若木未生/著 [本]
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セイレーンは美しい歌声で航行中の人を惑わす

それは幼い頃の記憶

覚えていないけれど、なぜか温かい子守唄

セブンアンドワイでいつもの形態とは違うとはいえアフィリが出るんです。ミステリのどんだけ過疎なことかよよよ。というわけで、ときどき混じるハイスクールオーラバスターレビュー。1時間少々で読めるので良い気分転換になります。

今回は希沙良&十九郎が主役で。あとがきで若木未生嬢自身が仰っているように「前回のと二冊あわせてようやくシリーズの序章」がまさに。空の者の寿命のこととか、空の者が妖の者を喰って生きているとか、九那妃に伽羅王に…うわぁキーワード満載。私も途中でリタイヤした口なので、全貌は知りえてないんですが…知った上で読むとどれだけ伏線張られてるんでしょうか!

女性キャラは断トツで冴子さんスキーなんですが、男性キャラは迷うところです。昔は希沙良が好きだったんですが…歳をとって好みが変わったのか今回は十九郎が好きかも。希沙良や諒にはまだ「子どもっぽさ」が残るから。それが成長の物語であるオーラバの醍醐味なのかもしれませんが…ツマラナイオトナになったようでなんだか哀しい。

って、今回は(も、か?)忍様最強!オチで。「伽羅王自らの手により封じられるに値する者とも思えん」ってどんだけS!!そういえば十九郎もSですよね。冴子もS…なんだ私の愛情は同族愛か?

とりあえず、作者自ら「シリーズの序章」と言い切っておりますので、トップ3が出てこようが序章は序章。もうすっかり忘れているので、これからの展開が愉しみ愉しみ。

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2009年3月26日 (木)

『心霊探偵八雲4 守るべき想い』 神永学

心霊探偵八雲4  守るべき想い (角川文庫) Book 心霊探偵八雲4 守るべき想い (角川文庫)

著者:神永 学
販売元:角川グループパブリッシング
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教育実習で出逢った呪われた少年

その少年に八雲を重ねる晴香

晴香は少年を、八雲を救えるのか

一気読みも4巻にもなるとしんどい。展開が一辺倒なだけにしんどい。文庫になっているのが4巻までで良かった。しばらくは八雲は良いです、はい。

今回は呪われた少年を主題に。晴香は少年に八雲を重ね、八雲は少年に晴香を重ね。事件はいつもよりも手が込んでいて、入り組んでいたような。けれど、その糸を引いていたのはいつもの両目の赤い男=八雲の父親ではなく…

八雲の姉ってマジですか?

想定外想定外。悪はひとりで良いのではないかと思うのですが。

今回は八雲の悪態も活躍も薄かったですし。後手に後手に回った印象。晴香のピンチに颯爽と現れ…たようにも見えなかった。早くも八雲♥晴香のラヴ模様の方が気になるようになってしまった危ない危ない。

そういえば、一心さんはなにを言おうとしたんだろう。幽霊が見えてしまう八雲にとって一心の家に帰るのは辛い…けれど「今日はある人の命日なんだよ」、誰の?情報が小出し小出しで忘れそうです。備忘録と化しつつあるな、このレビュー。

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2009年3月25日 (水)

『心霊探偵八雲3 闇の先にある光』 神永学

心霊探偵八雲3  闇の先にある光 (角川文庫) Book 心霊探偵八雲3 闇の先にある光 (角川文庫)

著者:神永 学
販売元:角川グループパブリッシング
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飛び降り続ける女性

彼女はなぜ死を迎えられないのか

彼女をこの世に縛り続けているものとは?

「心霊探偵八雲シリーズ」一気読み。先程4巻も読み終えたので、文庫化している分まで一気読みレビューできそうです…が、どんどん読むのがしんどくなる罠。なんだろう、こんなに読み易いのに…展開が一辺倒だからか?

今回は婦女暴行事件を主題に。このシリーズはホラーではなくあくまでもミステリなので、事件を起こすのも解決するのも人間。今回は強姦魔を陥れるべく一致団結した被害者(周辺人物)分けが鍵なのですが。

霊媒師って怪しすぎませんか?

しかもまさかの被害者サイド。読者をミスリードすべく登場させて、実は無関係だったんです引っ掛かりました?がミステリのお約束かと思いますが、今回は捻りなくストレートに読めば良かった様です。

そういえば今回は警察の事件握りつぶし…なんていう一面もあったんでしたっけ。忘れておりました。上司の井出内さんは実に嫌味なお人でしたので、いなくなっても特に寂しくはありませんが。4巻から登場の宮川さんは話わかりそうですし。八雲の過去にも関わっていそうですし…中学生八雲の遭遇した事件ってなんですか?どこで読めますか?

そうそう、今回の八雲♥晴香ですが、セクハラ?「服の上からでも充分にわかるよ」って八雲にそこまでの経験値はないと思うんですが!!このふたりの進展スピードをもう少し速めてくれると嬉しい。遅々として進まない恋愛関係は某QEDだけでたくさんです。八雲の外見描写を読む度に某タタルを思い出す。

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2009年3月24日 (火)

『心霊探偵八雲2 魂をつなぐもの』 神永学

心霊探偵八雲2  魂をつなぐもの (角川文庫) Book 心霊探偵八雲2 魂をつなぐもの (角川文庫)

著者:神永 学
販売元:角川グループパブリッシング
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連続少女誘拐殺人事件発生

被害者の少女が発見された川辺で

聞こえる声、足を掴み引き擦り込む手

出先で3巻まで一気読みしましたので(3巻も読める時間があったなら、どうしてもっとたくさんの本か厚い本を持ち出さなかったのか阿呆)今日もレビューは「心霊探偵八雲シリーズ」です。

1巻と同様に短編が来るのかと思っていたらまさかの長編。なんとなく心霊探偵ってワントリックのイメージがあって、長編大丈夫?とか思っていたのですが…ごめんなさい全然いけました失礼致しました。そうはいっても、2章でこの事件は一旦終わりを迎えたんですよ。事件が続いて驚いたのは登場人物だけではない私も驚かせていただきました。短編だと思わせといて実は長編トリックってやつ?

探偵役・八雲は間違えたわけではない。確かに真相は掴んだし、犯人も指摘した…それが一部に過ぎなかっただけで。ただ、そこから真相までは一本道でしたよね、捻りは特に無く。あったのは…後味の悪さのみ。

娘を復活させるために生贄を川に沈める。冷静な頭で考えたら、生贄に娘の命が宿ったとして…再度娘が溺れてしまうことくらいわかりそうなものなのに。既に破綻した復活計画。それに気付かないのは…犯人がもう正常ではない証。そもそも死者が生き還ることなんて有り得ないのに。犯人は人よりも死に携わる機会が多かったはずなのに。どうして自分にだけ奇跡が起こるだなんて思ってしまったのだろう。

それを思わせたのが両目の赤い男=八雲の父親なのでしょうけれど。その目的は?単行本最新巻ではそのあたり明かされているのでしょうか?気になります。

ところで、晴香を助けた八雲はやっぱり格好良すぎると思う。罪。

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2009年3月23日 (月)

『心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている』 神永学

心霊探偵八雲〈1〉赤い瞳は知っている (角川文庫) Book 心霊探偵八雲〈1〉赤い瞳は知っている (角川文庫)

著者:神永 学
販売元:角川書店
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呪われた赤い左目

この左目は死者を捉え

死者の声を聞く

外出先、従えていった本を読みきってしまうと途端に寂しくなるもので。今回も寂しさに負けて書店に飛び込み、前から気になっていた本シリーズを大人買い。ほくほくしながら一気に読了、あぁ面白かった。

以前、新相棒(笑)ミッチーでドラマ化した某八雲と混同せずにはおれない本シリーズ…奇人変人っぷりはどっこいでしょうか?こちらの(赤い瞳の)八雲もドラマ化するならミッチーが相応かと思います。寝癖さえ直せば男前なのでしょう…って、高田さんとこのタタルさんもそんな設定じゃなかったかしら。ってことは、タタルもミッチーが相応ってことに?

って、お約束のように脱線失礼しました。本作はシリーズ名からして明らかなように「心霊探偵」なのですが、某陰陽師や霊媒師のように「ぬぉぉぉぉぉぉぉ」と幽霊に真っ向勝負を挑んで除霊する…といった展開ではございません。本シリーズにおける幽霊とは死者の想いであって、死者が居るからにはその者を殺した生者が居るのであって。ご都合主義的に死者が「私を殺したのは○○で~」と明かしてくれることもなく、あくまでも死者の想いと状況から犯人を指摘してゆく歴としたミステリでございます。

シリーズ第1巻には3つの短篇が収録されていて。探偵役・八雲と八雲曰くトラブルメーカー・晴香との出逢いが描かれているのですが…このふたり良いですね。無関心を装い人との交わりを避けたがる八雲と、無関心を装えず人と交わることで安心を得ようとする晴香と。八雲の不意に出る優しさは反則だと思うんだ。天然スケコマシ?

そうそう、ミステリミステリ忘れてた。ミステリ部分は素直に読めば良い難易度低め設定です。どんでん返しもあるにはありますが、ミステリスキーにとっては想定の範囲内、むしろこのくらい返してくれないと読む意味なし?でも、解決が物象からなされるというその姿勢がお見事です。霊象から犯人特定なんてナンセンス!それはミステリではなくホラーです。

とりあえず第3巻までは読了済みなので、このまま一気にレビューする予定ですが…八雲と父親の怨念とか凄く気になります。このあたりの人間関係にも深みを持たせていて、侮れないわ心霊探偵八雲シリーズ。

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2009年3月22日 (日)

『秋期限定栗きんとん事件』 米澤穂信

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫) Book 秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

著者:米澤 穂信
販売元:東京創元社
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小市民を貫くべく選択した別れ

小市民を貫くべく選択した彼女

小市民を貫くべく選択した…告発

ようやく上下巻出揃いましたので、意気揚々と読書。上下分冊での出版には大人の事情が透けて見える厚さですが…内容は栗きんとんの如くどっしり。高校2年の秋から高校3年の夏に亘り、連続放火魔を追いかけた物語。

当初『秋期限定モンブラン事件』だったはずが、いつの間にやら『秋期限定マロングラッセ事件』となり、結局は『秋期限定栗きんとん事件』に落ち着いた本作。もちろんマロングラッセと栗きんとんの違いはわかりません。でも、相変わらず小山内のチョイスするスイーツは美味しそうだ。

今回『上巻』は小鳩くんの新しい彼女をメインに据えて。「あたたかな冬」で演じた座席争奪戦については…私もよくやります地下鉄での座席奪い合いあぁ小市民たる証。あの局面を「こうした思考の過程を、仲丸さんはわかってくれるだろうか」「あ、ラッキー」と描く米澤氏は巧いと思いました。決定的な相違。

そして、その相違がさらに顕著な「とまどう春」。仲丸さんの兄貴宅に押し入った泥棒。この一件の顛末…素敵です。不動産屋から帰った兄貴を迎えたのが「泥棒」であった、という結末を言い当てることは小市民でも充分可能だと思うのですが(物語には山が必要ですからね)、泥棒が室内に侵入した理由を言い当てるのは…仲丸さんがひいてしまうようなことなのでしょうか?私だったら興奮してしまうだろうに。小市民代表ならここはひくべき?うーん、難しいな小市民。

そして『下巻』。一連の連続放火魔事件は「情報操作で片がつく」と云い切った小鳩くん。どんな柴崎麻子っぷりを披露してくれるのかと思いきや…地味!地味!!いや、もとより情報操作とは地味なもので、派手な情報操作は情報操作ではなく公開捜査なわけですが。大変だったろうに、五日市くん。

でも、そんな五日市くんが最後に寄せたコラムは印象的でした。「友達が大騒ぎするのが面白かった」というコメントは辛辣ですね悪意の塊だ寒気がします。小山内さんにもこてんぱんにやられたのに…不憫。しかし米澤氏巧いな、と思ったのは、「籠絡とか懐柔とかはぼくの専門じゃない。そういうのは…」と小鳩くんに言わせておいて、実際に小山内さんのその手際の良さを後に披露してくれること。瓜野くんクラスの小市民なら罠にかかるわ、そりゃ。

というわけで、なかなか愉しませていただきました『秋期限定栗きんとん事件』。やっぱり小山内さんは黒い。「恋とはどんなものかしら」なんてフィガロってる場合じゃないです、「他愛ない」なんて発する機会私には一度も巡ってこないだろうな…ははは。小鳩くんと小山内さんの関係がどう終幕するのか『冬期限定』が愉しみ。ところで冬のスイーツってなんでしょうね?炬燵でみかんでしょうか?

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6) Book 秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

著者:米澤 穂信
販売元:東京創元社
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2009年3月21日 (土)

『1/2の騎士』 初野晴

1/2の騎士 harujion (講談社ノベルス) Book 1/2の騎士 harujion (講談社ノベルス)

著者:初野 晴
販売元:講談社
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戦う私の側には、いつもサファイアがいてくれた

サファイアがいてくれたから、私は頑張れた

だから、どうか、消えないで

『退出ゲーム』で新境地を拓いた感のある初野晴氏、講談社ノベルス進出作品です。本作は『退出ゲーム』ほど軽くなく、『水の時計』『漆黒の王子』ほど重くなく、でも、悪くない。

物語は、とあるマイノリティ代表のマドカとサファイアとの出逢いから始まる。サファイアに懐かれてしまったマドカが、生粋の正義感でドッグキラー、インベイジョン、ラフレシア、グレイマンから街を、仲間を、自分自身を守るために戦う…もちろん戦うと云っても本作はファンタジーであってもファイター(戦隊)モノではないので、その戦い方はミステリ。

個人的には序盤戦・ドッグキラーとの戦いが好きかも。大切な人を守るために沈黙を守る少女と、大切な人を守るために吸入器を握り締め走り続ける少女と。思うように走れない自分自身に戸惑いながら、サファイアとの関係にも戸惑いながら、試行錯誤で辿り着いたドッグキラーの言葉「言葉が通じないのは、お前ら多数派のほうなんだよ」

マジョリティとマイノリティ。人は誰しもマイノリティたる一面を持っていて、その部分だけを切り取れば誰しも独り。それを強烈に強固に強靭に強行してしまった狂人が本作の犯人たちで。

って、全く意味のわからないレビュー。この作品、表現するのが凄く難しい。ミステリなんだけれど、登場するのは猟奇殺人犯なんだけれど、主人公であるマドカは全能の探偵ではなく。サファイアをはじめとする仲間がいて、運を味方にすることができて、初めて真相に到達できる。マドカとサファイアと…登場人物全員の成長の物語。

だから、後半になればなるほど冗長に感じるのは残念。マドカの騎士としてのサファイア、その秘密が明らかとなったときに少しだけ感じた感動と絶望。マドカの戦いはこれからも続く。でも、きっと大丈夫だよね?

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2009年3月18日 (水)

『千里眼の復讐』 松岡圭祐

千里眼の復讐 (角川文庫) Book 千里眼の復讐 (角川文庫)

著者:松岡 圭祐
販売元:角川グループパブリッシング
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地獄絵図

見たいとも思わなかったけれど

それはきっと…ここのことを指すのだろう

期待を裏切らない
お馬鹿エンタテイメント!!

褒めてます。これでも精一杯褒めてます。今回も凄い愉しませていただきましたありがとうございます。

岬美由紀の超人っぷりはいつものことですが、今回は設定も凄い。いや、これまでだって充分に凄かったんですが…今回は一般人を巻き込んで撒き込んで一体何人死んだの?というテロルっぷりです。いやぁ、凄い。

首都高山手トンネルで起こった爆発事故。事故というよりテロなんですが、とにかく崩落によりトンネルから出られなくなった人々。死傷者が折り重なる中…送り込まれたイリミネーター=殺戮者たち。イリミネーターはプロレタリアート・ブルジョワ・ジェントリの3階級に分かれており…当然、階級が増す毎に強くなる。階級が増す毎に必勝法が無くなる。階級が増す毎に死に近づく。

もちろん我らが岬美由紀が立ち向かうわけですが。これまで岬美由紀を助けてくれた蒲生や嵯峨はここには居ない…でも、ご都合主義的に(笑)いろんな特殊技能を持った人間が現れては美由紀を助け、ひとりひとりと散ってゆくのでご安心ください。

って、こんなおちゃらけたレビュー書いてますが、地味に感動して涙しそうになった箇所が。出産シーン、ジェントリからひとりの妊婦を助けるべく自然と出来上がった人垣、新しい命。ここは凄い、松岡氏ってジェントリから妊婦を守ったことあるんですか?ってくらいの臨場感。美由紀の頑張りは「彼女は超人だから」「彼女は英雄だから」で済ましてしまうのですが、平凡なモブでしかない人たちの頑張りには…心揺さぶられました。感動します、本気で。

それにしても…

14歳の少年とフォーリンラヴ

ってのはどうなんでしょうね?あらゆる学問に長けた心理学の専門家も、恋愛経験だけは中学生並みってことでしょうか?美由紀の唯一の弱点、それが恋。ごめんなさい、嗤うところじゃないんだけど可笑しくて。美由紀は嵯峨と恋仲になるんだと(勝手に)思っていただけに驚愕です。

ところで友里との決着は旧シリーズで完結するのでしょうか?新シリーズもこのネタですか?

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2009年3月17日 (火)

『天使はうまく踊れない』 若木未生

天使はうまく踊れない―ハイスクール・オーラバスター (集英社文庫―コバルトシリーズ) Book 天使はうまく踊れない―ハイスクール・オーラバスター (集英社文庫―コバルトシリーズ)

著者:若木 未生
販売元:集英社
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未知との遭遇

未知との邂逅

未知なる力を発揮せよ

まさかアフィリが表示できるとはっ!?メフィスト賞受賞作でさえ軒並み非表示なのに…どんだけ人気無いんだミステリ。

というわけで、中学生に戻った気分で(まさかの二桁)再読してみましたハイスクールオーラバスター。契機は仙台旅行…もう歩けないしんどい、と弱音を吐いた我々の前にそびえ立った漫画喫茶。そこで杜真琴さんの漫画版を発見したものですから。しかし、漫画版は何度読んでも諒と希沙良の区別が付かない…合掌。

そんなわけで1時間ほどで読めてしまった『天使はうまく踊れない』が本日のレビュー。『天冥の剣』あたりで読むのを止めてしまったので、高河ゆん版は一度も読んだこと無い。そんな俄ファンですので、空の者vs妖の者がどうなったのかは知らず…というか完結していないんですよね?

とりあえず簡単に解説すると、空の者と妖の者が戦うティーンズ向けのファンタジー小説です。アフィリで丸判りだと思いますが。でも、設定や人物像がきちんとしていて深みもあって、侮れないと思うんです。ティーンズ小説だから、と切り捨ててしまうのは勿体無い。ライトノベルくらい許容されても良いのでは無いかと…十二国記だってもともとはティーンズ小説ですし!!コバルト・ノベル大賞の選考委員には北方謙三先生のお名前もありますし(笑)

って、いつものことですが全く本作のレビューになっておらず申し訳。本作は主人公たる亮介と術者一行との出逢い、そして世界観の説明に終始しておりますので、事件自体は重くなく。むしろ学ランからのぞく先輩の赤いTシャツに時代を感じました。1989年だもんなぁ。このシリーズは基本的に亮介の成長を描く物語ですが、実は亮介だけが足りないんじゃなくて、皆なんらかの傷を負っていて。それをベッタベタに寄り添いあって舐め合うのではなく、基本的には無関心を装いながら癒し合っていく様が好きです。亮介も知らないうちに諒の傷を治してあげたようですし。

よし、とりあえず出版されている分まで読んでみますかオーラバ!

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2009年3月16日 (月)

『名探偵の掟』 東野圭吾

名探偵の掟 (講談社文庫) Book 名探偵の掟 (講談社文庫)

著者:東野 圭吾
販売元:講談社
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「犯人は貴方だ!」なんて宣言、

どうして皆を集めて云わなくちゃならないんでしょうかね?

名探偵も辛いんです

「ライアーゲーム」で私の心を鷲掴みにした松田翔太くんが、「TRICK」枠で、東野圭吾氏の名著『名探偵の掟』をドラマ化するって…

期待するなって云うほうが無理!!

もの凄い愉しみで愉しみで、思わず再々々々読しちゃいました。でも、何度読んでも面白い、風刺とエスプリが効いてます。

収録されているのは14の短篇(プロローグやらなんやらも含めて)。これってミステリ大好きな私にとっては、最早「お約束」との云えるトリックやネタばかりなのですが…普段ミステリを読まない方が読むと、どんな感想になるんでしょうか?風刺が風刺にならないのかしら?

そんな意味で「アンフェアの見本」はこれから初めてミステリの扉を叩こうという方にとっては鬼門。作中で天下一が申し上げている通り、

「今回のトリックは、一部の例外を除くと、たった一種類しかない。つまりこのトリックを使った記念すべき第一作以降の作品は、すべて盗作だという言い方だってできるのです」

という言葉通り。私はその「記念すべき第一作」をネタバレなしで読めたことをいまでも至福と考えていて、読書人生長いですがあの衝撃を超えた経験をしたことがない。だから、この「アンフェアの見本」で「へぇ、そういうトリックもあるんだ~」という余計な予備知識をミステリ入門希望の方に持っていただくのはしのびないのです。ミステリにどっぷり浸かる予定のない方には充分にお薦めできる内容となっておるのですが。

そんなわけで、個人的ベストを選ぶならば「トリックの正体」でしょうか(笑)「アンフェアの見本」といい、やっぱり私は叙述トリックが好きなんだなぁ。この「トリックの正体」は「明らかにお前…○だろっ!!」と犯人にツッコミを入れたくなる登場人物たちの葛藤が描かれた素敵作。これをドラマ化するときはどうするんでしょう?もの凄いおっさんを敢えてぶつけてきてくれたら本望です。

あとは密室アレルギーの天下一も素敵。「密室宣言」に現れる雪密室には秘密があって、『毒笑小説』に詳しいので、お好きな方は是非どうぞ。

あぁ、どんなドラマになるんだろう…もの凄い愉しみです。毎話毎話レビューしちゃおうかしら。ちなみの公式サイトはこちらです。

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2009年3月15日 (日)

『野球の国のアリス』 北村薫

野球の国のアリス (ミステリーランド) Book 野球の国のアリス (ミステリーランド)

著者:北村 薫
販売元:講談社
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不思議の国のアリスは知ってる

鏡の国のアリスも知ってる

じゃあ、野球の国のアリスは?

目指せミステリーランドコンプ!ということで、本日は北村薫氏の『野球の国のアリス』をレビュー。ミステリーランドと云いつつもミステリーじゃない作品も混ざっておりまして、本作はそんな非ミステリー作品の中でも1、2を争う個人的好みです。

アリスは野球の大好きな女の子。けれど、女の子が野球の世界で生きてゆけるのは…精々小学生のうち。中学生にもなれば体型だって力だって…悔しいけれど男の子には敵わない。そんなアリスの野球とのお別れをファンタジーで味付けして描いたのが本作。『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』を大胆にオマージュ、宇佐木を追って鏡の世界への迷い込んだアリス。そこは裏の世界、下手くそな野球を見世物にする世界。

もちろん野球少女・アリスが世間を「ぎゃふん」と云わせるサクセスストーリー。北村氏の筆力によるドキワクな試合展開も良し。そして、何よりも、アリスと共に戦う仲間たちの存在が素晴らしいんですよね。

アリスの女房役・兵頭くんはもちろん…

五堂くんが最高なのよ!

お姉さんキラーの中学生。ハ○カチ王子やハ○カミ王子に夢中になるオバサマの気持ちが少しだけ理解できました。五堂くんが「所詮、女のピッチャーなんて」的なことをのたまった相手チームに食って掛かるところに胸キュン。そして、帰りのバスの中…

「ほれろよ」っておいっ!この女ったらし!!

なぜアリスがこれだけ良い漢である五堂くんに惚れないのか謎。いや、惚れる日も近いと思いますけれども。

って、こんなしょーもない話をするのは是非読んでいただきたいから。大人向けの1冊とは云えませんが、童心に戻って読んでみてください。読了後、キャッチボールかバッティングセンターに行きたくなるはず。

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2009年3月14日 (土)

『イノセント・ゲリラの祝祭』 海堂尊

イノセント・ゲリラの祝祭 Book イノセント・ゲリラの祝祭

著者:海堂 尊
販売元:宝島社
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今日もまた黒腹たぬきに呼び出され

向かった先は厚生労働省

グッチー、遂に本丸を攻める!?

グッチー&白鳥シリーズ第4弾でございますが…

グッチー&白鳥が活躍した場面ってありましたっけ?

これを正統な「シリーズ第4弾」とは呼べないような気がします。少なくとも私は呼びたくない。

グッチー&白鳥シリーズといえば、東城大学内の御家騒動に否応なく巻き込まれ不本意ながら黒腹たぬきの懐刀として本人の意思とは関係なく出世街道まっしぐら…がお約束だと思っていたのですが。今回の戦場は厚生労働省「診療関連死死因究明等の在り方に関する検討会」…やっぱり一息では読めなかった。しかも今回、

白鳥が真っ当な官僚に見えたんですけど!!

これは重症だ。今回「火喰い鳥」として戦場を焼き尽くすことなく、むしろ講和会議へのご案内までしてみせた白鳥…そんな白鳥が見たいわけじゃない。今回の戦場、白鳥が用意したかのように見えますが…違いますよね?白鳥、喰われた?

今回の主役は間違いなく彦根新吾。彦根の熱弁については…現状の医療について詳しい知識を持っているわけではないのでスルーさせていただきます悪しからず。けれど、まさしく過激派テロル。

『バチスタ』に続き『ジェネラル・ルージュ』も映画化され、海堂氏の知名度も鰻登り、著作も売れに売れまくっておりますが…海堂氏はずっとこれが書きたかったんだろうなぁ、と。実現可能な否かは横に置いて、警鐘を鳴らしたかったんだと思います。でも、私はあくまでも小説が読みたかった。痛快なエンタメ小説をグッチー&白鳥シリーズには求めていました。だから、残念。

そういえば、「このミス2008年」に掲載された短篇が間に挟まってましたね。

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2009年3月12日 (木)

『カンナ 吉野の暗闇』 高田崇史

カンナ 吉野の暗闘 (講談社ノベルス) Book カンナ 吉野の暗闘 (講談社ノベルス)

著者:高田 崇史
販売元:講談社
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失踪中の諒司を追いかけて

かもしぃ御一行が向かった先は

桜のない吉野

このたび帯には「痛快無比!!歴史アドベンチャーシリーズ」と…どの辺りが「痛快」で「無比」で「アドベンチャー」なのかどなたか教えてください。

というわけで、実は仙台で購入し北海道に持ち込んだ本作。北海道の書籍入荷は2日遅れるので、さらに道内のカンナシリーズ読者数はそんなに多くないと思われるので、対道民では指折りの速さで入手したんじゃないだろうか。読了に時間かけてたら意味ないですけど。

今回も

殺人事件発生

殺人事件とは全く関係無く、舞台へと赴く主人公一行

主人公一行薀蓄三昧

主人公、全く意図せず推理せず犯人自供のうちに事件解決

という高田氏のお家芸は健在。犯人が聞いてもいないことまで(父親殺害の件まで)ペラペラペラペラと喋り出したときにはどうしようかと思いました。しかも、今回は主人公一行のうち2名が早々と戦線離脱。貴方たち、なにしに吉野に行ったの?

本作の(というか高田作品の)売りは「歴史の影に光を当てる」だと思うのですが、今回主人公一行の頭を悩ませた謎については

流行らない民宿に置いてあった本&パンフレットが解決

っておいっ!!いや、現地(吉野)に行かなければ、そこで彼に会わなければ、そして彼の気前が良くなければ、届かなかった解なのかもしれませんが…なにか違う気がする。今回は寺社仏閣の類も殆ど登場しませんでしたし…高田作品片手に(エア・タタルを連れて)寺社仏閣を廻るとよしとする私にとっては、なんとも残念な結果に。

火遁の術についても、私の想像力が貧困だからなのか、さっぱり映像化できなかったし。なに?爆発するの?忍法雲隠れ?

どうして高田作品のレビューはこうも辛口になってしまうのでしょうか。早く「QED」の新刊を与えてくださいきっと潤い不足なんだ枯渇してるんだ。でも、次回作でもタタル♥奈々が進展しなかったらどうしよう…枯れるわきっと。

とりあえずご朱印帳欲しさにもう1冊は買います。でも、残り5作(全9作とのことなので)は買うかどうかわかりません。ちなみに、現在のマイご朱印帳は明治神宮のもので、とっても可愛らしい。ご朱印を貰うと挟めてくれる案内に「ご朱印は記念スタンプではありません」と書かれているのを読むと、いつも胸が苦しくなりますごめんなさい。

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2009年3月11日 (水)

『ラブコメ今昔』 有川浩

ラブコメ今昔 Book ラブコメ今昔

著者:有川 浩
販売元:角川グループパブリッシング
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自衛隊とベタ甘ラヴをミックスすると

『ラブコメ今昔』が出来上がる

覚悟の上、お読みください

『クジラの彼』に続く自衛隊ベタ甘恋愛小説第2弾。入手するまでに時間がかかったためか、有川嬢の自衛隊モノ久々ひゃっほい!からか、勝手にハードル上げちゃって

もっとベタ甘ゲロ甘期待してたのにぃ

とか思ってしまった私、ごめんなさい。正直、『ラブコメ今昔』に収録されている作品のなかで気に入ったのは「ダンディ・ライオン」だけです。でも、その「ダンディ・ライオン」が最高なんだこれが。

表題作「ラブコメ今昔」のラストで「えっ、このふたりって出来てんの!?」とサプライズをくれた千尋&吉敷…まさかこんな胸キュンときどき涙目物語だったとは。私は有川嬢の書く男目線が好きなので(世の男性がこんな風に胸を切なくさせているとは限りませんが…是非そうあってもらいたいという願望の顕れ)吉敷一馬の場合258頁はもう悶絶。「命令なら従いますが」って、階級のある会社に身を置いたことのない私では(上司は掌で転がすもの)この台詞の本当の重さ辛さは理解できませんが、階級が全て=階級を無視すると有事の時の指揮系統がおかしくなるから、と叩き込まれた(であろう)千尋にとって凄い痛さだったんだろうなぁ。あぁ、本当に「ダンディ・ライオン」は泣ける。

あとは…どれも物足りなくて。「軍事とオタクと彼」の出逢いは素晴らしかったのですが(あの展開は惚れる)…もっと糖度高めでよろしいのですよ有川嬢。遠慮することなしに、さぁ!

装丁を担当されている徒花スクモさんは今回も素晴らしくって。装丁部門でもやっぱり「ダンディ・ライオン」が一番だとは思いますけれど。

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2009年3月10日 (火)

『退出ゲーム』 初野晴

退出ゲーム Book 退出ゲーム

著者:初野 晴
販売元:角川グループパブリッシング
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高校生活には事件がいっぱい

だけど、わたしは逃げない投げ出さない

だって

ハルタはわたしの最大のライバルなのだから

評判があまりに良すぎてちょっと懐疑的だった初野晴氏『退出ゲーム』が本日のレビュー。初野氏といえば『水の時計』『漆黒の王子』両作に共通する「深く暗く黒い闇の中に一筋の“幸福”という名の光」というイメージだったのですが(もの凄く私的なイメージを詩的に表現してみました)本作は脱皮というか真逆な作風で驚き。分類するならば米澤穂信・坂木司ラインです。米澤穂信はもう“まんま”と表現しても良いでしょう。古典部を読んでいる感覚に何度陥ったことか。

作中では4つの事件(?)が描かれていて。個人的には表題作「退出ゲーム」が好きなんですけれども。退出ゲームやってみたいけれども…いちゃもんをつけるのは得意だけれどもアドリブの利かない私には難易度高いわ。とにかく予想外の展開でミステリスキーを愉しませてくれる「退出ゲーム」。「ガチャピンをはねた日」で電柱から巨体をはみ出させるムックも見たかったですけれども(笑)あれでサックス奏者をゲットするのはまず無理でしょう。

「エレファンツ・ブレス」に登場したマッド・サイエンティスト萩原兄弟も最高でした。どんだけレパートリーあるんですか土下座。

うーん、やっぱりミステリとしての評価よりもキャラ小説としての評価が先に立つような気がします。チカ&ハルタをはじめ、前述の萩原兄弟といい生徒会長の日野原とか…有象無象海千山千ですね。そして、チカとハルタの三角関係。冒頭で「すわ、恋愛小説か?」と思わせておいて殆ど回収していないところを見ると、このシリーズまだまだ続けるおつもりのようで。草薙先生が挫折した理由も明らかになっておりませんしね。

これまでの初野氏らしさは成りを潜めて。愉しい時間を頂戴しましたが、それが少し哀しい。このまま≒米澤穂信にはなって欲しくないです。だから、もう少し暗黒を、もう少し挫折を、そこから少しの希望を。初野氏のこれからに期待しています。

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2009年3月 9日 (月)

『ラッシュライフ』 伊坂幸太郎

ラッシュライフ (新潮文庫) Book ラッシュライフ (新潮文庫)

著者:伊坂 幸太郎
販売元:新潮社
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豊潤な人生を手に入れるため

人は自分に鞭打ち、せっかちに、

突進してゆくものさ

仙台に行ってきました

「1泊2日という強行軍」「死ぬまでに一度は行きたい」「歴史的名所は必須」という条件を唯一満たした(大抵の観光地は「1泊2日なんて勿体無い」という理由で棄却された)仙台に行ってきました。旅のお供は『ラッシュライフ』。川内キャンパスに潜入し、伊坂幸太郎の空気を吸ってきました。

空の見えない仙台駅、仙台駅前に新規オープンした珈琲店(PR○NTOか?)、拳銃の受け渡しに使われたコインロッカー(もちろんどのコインロッカーかなんてわかるわけない)など『ラッシュライフ』的名所を巡って。まだレビューしていない伊坂作品ということで本作をチョイスしたのですが…あまり仙台市内の描写がなかった残念。『ゴールデンスランバー』で投降の舞台となった匂当台公園なんかにも、もちろん行ってきましたけれども!

「仙台」の連想ゲームは「伊坂幸太郎」である私にとって、仙台に行くと伊坂の情報が溢れているものと期待していたのですが…「仙台」の連想ゲームはあくまで「伊達政宗」のようです。フリーペーパーを捲っても伊坂に関する情報は得られず残念。

というわけで、仙台で読み始め仙台で読了した『ラッシュライフ』。本作や『オーデュボンの祈り』のような緻密なプロットが活きた作品よりも、『死神の精度』『重力ピエロ』のような小気味の良い会話と雰囲気が好きな私。黒澤は好きですけどね、あのエスプリは会得したい。

淡々と物語が流れるために、もの凄い展開になっていることに気付けない罠。神をバラバラにしたり、拳銃を手に入れてみたり、それで人を打ってみたり、郵便局に強盗に入ってみたり。あら、殆ど豊田のことじゃないですか。とにかく、長い人生のうち自分が主役となれる1日があって…その1日にこんな破天荒なことが起こるなら主役になって抜擢されなくても良いかもしれない。私が主役の1日は、人生最期の日でお願いします。

仙台の描写を読み取ることに夢中で、あまり話の筋を追っていなかったことが丸判りの本日レビュー。でも、再読であっても「僕、伏線です」と自己主張する様子を確認できなかった。さすが、伊坂幸太郎。

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2009年3月 7日 (土)

『フォークの先、希望の後』 汀こるもの

フォークの先、希望の後 THANATOS (講談社ノベルス) Book フォークの先、希望の後 THANATOS (講談社ノベルス)

著者:汀 こるもの
販売元:講談社
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日給5万円

ただし、死へのカウントダウンが始まる

THANATOSシリーズ第3弾

ミステリではない。うん、ミステリではない。最後の方に“名探偵”がなにか仰っていたような気もしますが…ミステリではない。でも、なかなか面白かったTHANATOSシリーズ第3弾『フォークの先、希望の後』が本日のメニューです。

正直「HOW TO アクアリスト」部分と国家一種の演説部分はナナメ読みも良いとこなので、本作のタイトル『フォークの先、希望の後』がどんな意味なのか、意味はあるのか、それすらも理解できておりません。本作の愉しみ方はミキちゃんの恋と高槻刑事の壊れっぷりにあると思います。

シリーズを重ねる毎に男前になっているような気のする高槻刑事。交番に発砲した精神異常者(?)を特殊警棒で倒し、彼方を優しくなだめる件は特に男前でございました。壊れっぷりは…正論は正しいとは限らないと思った箇所。正論は正論でしかなく、正論は時に人を縛り、人を傷つける。

そんな正論にオーバードーズで挑んだミキちゃん。それは恋の為せる技。真樹からオーバードーズの事実(=ミキちゃんの恋心)を告げられたときには度胆を抜かれました。アクアリストの恋心は総じて判り辛く偏るものなのか。少なくとも2/2だからな…彼方まで含めれば2/3なのか?彼方の恋心は真樹曰く「バレバレ」だそうなので。でも、恋心と下心はバレバレくらいの方が宜しいと思います。

ミキちゃんがかましたセクハラくらいね。なかなか難度高かったと思います。左手。

というわけで、『パラダイス・クローズド』を挟む込むような形で物語が進行した今回。彼方はレギュラメンバ入りしたのでしょうか?死へのカウントダウン開始。次回作が愉しみです。

でも、やっぱりミステリが読みたい。

あら、奇しくも前作『まごころを、君に』と同じ台詞で締めてしまいました。

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2009年3月 6日 (金)

『透明人間の納屋』 島田荘司

透明人間の納屋 (講談社ノベルス) Book 透明人間の納屋 (講談社ノベルス)

著者:島田 荘司
販売元:講談社
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僕は真鍋さんが大好き

真鍋さんは僕にいろんなことを教えてくれる

星のこと、宇宙のこと、透明人間のこと

ミステリーランド再読中。本日も第一回配本から。そして、当ブロ愚4年目にして初めての島田荘司氏…あら意外。

舞台は昭和52年、題材は密室、透明人間なんて眉唾がタイトルに付されてますが、中身は本格。そして、裏主題まで。裏主題の方は重過ぎるので今日はスルーさせていただきます悪しからず。ここはミステリブロ愚なので悪しからず。

ホテル・エルシノア401号室で起こった女性消失事件。テーブルには食べかけの寿司とカラオケの歌本…そこに荒れた様子はなく、まるで彼女が自発的に部屋を去ったかの様。けれど、窓は嵌め殺し、唯一のドアの前には従業員の眼が4つ。そして証言する「誰も401号室から出てきてなどいない」。

わぉ、不思議ですね。魅力的ですね。ただ、素敵な謎に素敵な答えが用意されているとは限らないのですが…用意されていた答えは非常に現実的でした。いや、その現実性こそが島田荘司氏だし、その脱出劇を想像するだけでゾッとしますし、ここで本当に透明人間が登場しても興ざめなんですが。

それよりも僕と真鍋さんの触れ合いの方が素敵。ふたりの交差点はもう少しで交わるところだったのに…信号が狂ったばっかりに。真鍋さんが僕を凄く凄く大切にしていることがわかって、本の外に居る私にもわかるのに…どうして本の中の僕には伝わらないんだろう。悲しい虚しい切ない。

ミステリとしての難度も裏主題の難度も高めで、かつて子どもだったあなた向けの1冊だと思います。でも、やっぱり、島田荘司氏は面白い。

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2009年3月 4日 (水)

『千里眼 運命の暗示 完全版』 松岡圭祐

千里眼 運命の暗示 完全版―クラシックシリーズ〈3〉 (角川文庫) Book 千里眼 運命の暗示 完全版―クラシックシリーズ〈3〉 (角川文庫)

著者:松岡 圭祐
販売元:角川書店
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CSS2ミサイルが日本にロックオンを続ける中、

敵国へと降り立った岬美由紀

頼れるは自分自身と、ふたりの仲間

お馬鹿エンタテイメント炸裂!!

思わずフォントを最大にしてしまいました。お馬鹿エンタテイメント(笑)の傑作『千里眼 運命の暗示 完全版』が本日のメニューです。前作『千里眼 ミドリの猿 完全版』(完全版の表記に蛇足感ありますが、旧作と完全版は別物とのことなので。ところで「きゅうさく」と入力して、最初に「久作」が出てくるマイパソ…ドグラ・マグラ)がまさかの「つづく」、岬美由紀ってばどうなっちゃうの!?ともどかしい思いを数日。ようやく読了。

もうね、凄いの。岬美由紀の超人ハルクっぷりはもちろんですが、スケールが超弩級。日本VS中国というWWⅢを前提に、岬美由紀は13億人に命狙われてます。そして、10年の月日をかけてこのWWⅢを演出したというメフィスト・コンサルティング…一切の証拠を残すことなく、歴史の表舞台に立つことなく、いかにして13億人の民意を開戦に向かわせたのか。

どんな策略、陰謀かと思ったら、やってることは結構地味です。対して、嵯峨敏也によるトランス解説は伏線となり、後々凄い方法で回収されるのでお楽しみに。日の丸いちゃもんも凄かった(笑)

いやもう、エンタテイメントとしか云えない。『千里眼』でも相当無理あるだろ…と思ったものですが、『ミドリの猿』と本作『運命の暗示』を読んでしまったら、『千里眼』なんて可愛いもんです。F15からジャンボジェットへの飛び移り?岬美由紀ならできるんじゃね?といまなら思えます。

嵯峨&蒲生のふたりが岬美由紀に守られっぱなしなのが気になりますが(笑)蒲生はまだしも嵯峨はもうちょっと活躍して欲しかった。だって、『ミドリの猿』ラストであんな格好良い台詞吐いてたじゃない!!そういえば、ミドリの猿設定も凄かったね(笑)

(笑)の頻度が多い気がします今日。でも、決して批難している訳ではないです。読者を愉しませる=エンタテイメント小説の役目ならば、その役目は十二分に果たしていただきました。いろんなところに眼をつぶれば、きっと愉しめるはず。本シリーズの立ち位置は究極のエンタテイメント小説だと思います、心底。

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2009年3月 1日 (日)

『くらのかみ』 小野不由美

くらのかみ (ミステリーランド) Book くらのかみ (ミステリーランド)

著者:小野 不由美
販売元:講談社
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子どもの育たない家

行者の祟り、座敷童子

夏休みの思い出

ミステリーランド再読中。本日は「ミステリーランドってなぁに?」状態のときに出逢った小野不由美女史『くらのかみ』。「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」というコンセプトだけ伝えられて既出作品のない中…小野不由美女史の試行錯誤が窺えます。

面白半分に始めた「四人ゲーム」が全ての契機。「四人ゲーム」とは部屋の四隅に4人が散らばり、ひとりずつ壁伝いに移動しぐるぐるぐるぐる…遭難時睡魔対策として有名なアレです(この説明だけで理解できた方は凄いわ)。当然このゲームは成立しないので、だからこその怪談なのですが、この物語でも成立しちゃったんですね、成立させてくれたのはくらのかみさま=座敷童子。増えてしまった子ども。居なかった子どもは誰?

この増えた子ども問題とは別に、田舎の旧家に起こる相続争い。御家を繁栄させるために、御家の存続のために、子どもを持つ親が相続権を持つ。けれど、一度当主になってしまったが最後…子どもには恵まれない運命が待ち受ける。だから御家は続かない、だから良くない噂が広まる。

内容はバキバキの本格ミステリ(アリバイ崩し?)なのですが、難易度は「かつて子どもだったあなたには普通、少年少女には難しめ」でしょうか。それもまぁ…ミステリを解こうと思えば、ですけれども。少なくとも私はそんな気持ちさっぱり起こりませんでした。なんででしょう、記述がもの凄くわかり辛いんですよね、登場人物多すぎる所為だと思うのですが。「最後に犯人の名が明かされれば誰であっても良い」と本気で思っていた。

まぁ、少しトリックも用意してあるのですが。子どもを持つ親が相続権を持つことは先程お伝えしました。では、その子どもを持つ親の命を狙うのは?ヒントはひとつ、ひとり座敷童子が化けた子どもが居るよ。

ミステリーランドにしては、ちょっとおどろおどろしい雰囲気あふれ過ぎかな?もうちょっとドキワクが欲しい…そんな1作でございました。

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2009年2月28日 (土)

『漆黒の王子』 初野晴

漆黒の王子 Book 漆黒の王子

著者:初野 晴
販売元:角川書店
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砂の城の哀れな王に告ぐ

私の名はガネーシャ

王の側近と騎士達の命を握る者

『水の時計』が素敵だった初野晴氏。読みたい読みたいと思っていながら…フォント小さめ2段組400頁超に挑む前から心が折れて、手を出せていなかった『漆黒の王子』。表紙に違わず重苦しい1作。それでも、全体像把握できなかったけど、おもしろかった。

「上側の世界」と「下側の世界」。ふたつの世界、ふたつの物語を交互に描き、ひとつに纏め上げる。正直申し上げて、ひとつに纏まった世界を私は見通すことができなかったのだけれども。“王の側近と騎士達の命”を狙った人間とその意図は汲み上げることができました。その手法も、その武器も認識しました。そして、王の世界が破綻してゆく様も目撃しました。

けれど、ひとつだけ理解できなかったこと。それはガネーシャが暗渠で過ごした時間、出逢った人々、出逢った≪王子≫…それは実際にあった出来事なのか、そうでないのか。ガネーシャが意識を失っていた数時間の間に見た夢に過ぎないのか。脅迫メールに潜ませた≪王子≫≪時計師≫≪ブラシ職人≫…をなぞるように、彼らの人生を夢に見たのか。けれど、その割りに彼らと過ごした時間と思い出はリアルで。

あの場所には廃棄物不法投機に関わったホームレスの死体が埋められている。あの場所には彼らの無念が漂っていたから…その無念を偶然とはいえ晴らす形となったガネーシャに共鳴したのか。こうしてレビューしながらも考えているのですが…わからない。ただ、ガネーシャの時計の歩みは酷く遅かった。それだけは事実。

ちなみに帯に「超本格ミステリ」と銘打ってありますが、誇大広告です。むしろ「ミステリ」と書くことで読者層が狭められてしまうので取り払った方が良いのでは?と思ったり思わなかったり。終盤に突如現れた水樹の友人が、いきなり暗号解読(?)からカーチェイスまで始めたときには苦笑しました。

『水の時計』もそうでしたが、初野氏は「幸福の王子」が好きなのでしょうね。オマージュ。

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2009年2月27日 (金)

『鏡姉妹の飛ぶ教室 <鏡家サーガ>例外編』 佐藤友哉

鏡姉妹の飛ぶ教室 (講談社ノベルス) Book 鏡姉妹の飛ぶ教室 (講談社ノベルス)

著者:佐藤 友哉
販売元:講談社
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鏡一家の隠し玉

三女と四女を襲う飛ぶ教室止まった世界

鏡家サーガ例外編

あれ?佐藤友哉氏に対する評価を変えねばならない気がする。前作『水没ピアノ』に頂戴したコメント返信で

孤独や苦痛や悪意を言葉遊びで煙に巻いて綺麗事に見せかけるか、大掛かりな仕掛けの中に仕舞い込んでしまうか、どうやっても綺麗事には出来なくて正直に吐露してしまうか。
前者は西尾維新氏、中者(こんな言葉はあるのか?)浦賀和宏氏、佐藤友哉氏は後者の作家ですよね、だから佐藤友哉作品の読了後は苦しい

とか書いた私なんですが…

西尾維新化してる!?

途中から西尾維新が鏡家サーガをトリビュートした作品かと錯覚しました。『テロル』で一戦離脱→復帰してからの佐藤友哉氏はこの作風なのか。ふうん。

というわけで、『鏡姉妹の飛ぶ教室』が本日のメニュー。鏡姉妹=三女・佐奈と四女・那緒美が主人公…例外編と銘打ってあるのはなんでだ?正統派鏡家サーガじゃないか。物語の舞台は、大地震により液状化現象が起こり地中に埋まってしまった中学校…やっぱり正統派鏡家サーガじゃないか。

殆どの生徒が死に絶える中、残されたのは「選ばれるべくして選ばれた」生徒たち。鏡姉妹だったり、裏財閥・祁答院一家だったり、典型的弱者だったり、痛みというものを知らなかったり、復讐を糧に生きていたり、闘牛だったり、闘牛士だったり。あれ?人間じゃないものを挟んだような気がしますが気のせいでしょう。弱者同盟の皆様は、その被害者妄想被害者意識負の連鎖を聞いていると物語が進まないので、盛大に鬱陶しかったのですが、本当は本来は彼らが一番真っ当だったんだろうに。

とにかく「生き残るべくして生き残った」メンバが闘って、下剋上して、放棄して、恋愛して、憑依して、さらに未来を生きるべく助け合う物語。物語を紡ぐは小気味良い西尾維新的言葉遊び。これまでの作品と比べて格段と読み易くなってますし、エンタメ度は格段と上昇しているのですが…佐藤友哉氏らしさはどこに?本当に西尾維新を読んでいる感覚でした。これを脱皮と呼ぶのが適当なのか、埋没と呼ぶのが適当なのか。でもきっと、愉しむことができた私にとっては脱皮なのでしょう。

そして、兵藤くん&佐奈のピュアラブには心動かされました。兵藤くん可愛いな本当、じゅる。そんな兵藤くんとデートに出掛ける佐奈…ラストの展開がまさか。まさか、まさかの『フリッカー式』再び。ある意味「昔からこうだったんだ」と納得なのですが…公彦はこの事実を知らなかったということでオーケイなのでしょうかね?でもやっぱりあれが2体目(3体目)だとすると『フリッカー式』の表記はおかしいような気がしますね。確認して無いけど(笑)

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2009年2月24日 (火)

『千里眼 ミドリの猿 完全版』 松岡圭祐

千里眼 ミドリの猿 完全版―クラシックシリーズ〈2〉 (角川文庫) Book 千里眼 ミドリの猿 完全版―クラシックシリーズ〈2〉 (角川文庫)

著者:松岡 圭祐
販売元:角川書店
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突然の宣戦布告

CSS2ミサイルが日本を捉える

きみも、緑色の猿を見たのかい?

恥ずかしくてカミングアウトできずにいた「千里眼シリーズを読んだこと無い」。カミングアウトして良かったこんなに無茶展開の奇天烈小説だと思ってなかったんだよおもしろい!私が読んでいるのは「完全版」、どうやら旧シリーズとは別物も別物な様子ですが、旧シリーズもここまでおもしろかったのでしょうか?本当に読書人生を無駄にするところだった危ない危ない。

それにしても、

まさかの「つづく」

おいおいおい、まだ『千里眼 運命の暗示』は購入してないんだよ!CSS2ミサイルはいまもなお日本に向いているというのに!!最寄の本屋さんはつい先日閉店してしまったし…愛用していたのに。ガッテム!!

というわけで、前作『千里眼 完全版』にてF15からジャンボジェットに飛び移るという超人ハルクぶりを披露してくれた岬美由紀でございますが、本作も吃驚人間健在です。今回は岬美由紀云々よりも国民全員で飛び上がってご覧よ地震起こるぜ大国がやってくれました。すげー。この展開はすげー。有り得ないと断言できないだけにすげー。

野口官房長官の緊急会見と、航空自衛隊の防衛網配備指示のシーンが好きです。岬美由紀を影で支える2人のオッサン。このふたりが『運命の暗示』でもっと活躍してくれることを望む。そして、活躍間違いなしのあと2人…『千里眼』で岬美由紀とタッグを組んだ蒲生と、初登場・嵯峨敏也。当然『催眠』も読んでいない私は、嵯峨敏也登場時に「絶対こいつは悪だ」確信したものです。病室とチョコレートの件でかなり株上げちゃって…本当にごめんなさい悪人呼ばわりしてごめんなさい。

とりあえず物語が終焉を迎えていないので、ここまで大きく広げた風呂敷をどう畳むのか畳めるのかが気になります。もっと突っ込んだ感想は後編にして次回作『運命の暗示』で。

そうそう、本作のなかでグッときた箇所を引用。個人的メモ。

この世に、英知で解き明かせないものなどない

だから

同じ地面に足をつけている人間同士。だから僕らにも、きっと手が届く

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2009年2月22日 (日)

『水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪』 佐藤友哉

水没ピアノ―鏡創士がひきもどす犯罪 (講談社文庫) Book 水没ピアノ―鏡創士がひきもどす犯罪 (講談社文庫)

著者:佐藤 友哉
販売元:講談社
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まだ見ぬ“紘子”を夢想する青年

“奴”から伽耶子を守ろうとする少年

妹に殺されるのを待ち望む家族

鏡創士が全てを引き戻す

鏡家サーガ第3弾『水没ピアノ』が本日のメニュー。今回の主役は『フリッカー式』にも登場した鏡家次男・創士。引用癖のある次男がなかなか好きだっただけに、なかなか愉しみにしていたのですが…なかなか読み終わらずなかなか難儀な1冊でした。

3人の男性の視線で紡がれる物語。携帯バッテリー裏のシール貼りを生業とする青年、全ての不幸を相手取ろうとする少年、壊れた家族から文字通り逃げ出そうともがく画家。三者三様の物語をひとつに纏めてみせるのはもちろん鏡創士なのですが…読了後「で?」。

創士はなにをしたかったのでしょう?彼女が大切だった?彼女をあのような姿に変えてしまった原因を排除したかった?それって本当に彼?彼女のお兄さんを殺したのは確かに彼だけれど、彼女に恐怖を味あわせた殺人鬼は彼だけれど、彼をあんな風に壊してしまった原因を初瀬川研究所に求めることも可能なわけで、その意味では彼も被害者で。そもそも原因なんて探ってどうなるの?それって奴に敵対する行為を変わらなくてよ?奴にはどうやっても届かないから、身近な原因で妥協した?

鏡家サーガの愉しみ方はキャラクタの壊れっぷりを堪能することなのだと思いますが、その壊れっぷりが痛々しくて愉しむどころではない私はやはり佐藤友哉氏は向かないのでしょうか?バラバラに思えた物語を集約してゆく様は素晴らしいと思いましたが…壊れたものを元通りにすることはやはり不可能なのでしょう。なにも残らなかった読了後。

もっと全ての作品が絡み合って、1作1作読み進める度に”鏡家”を見渡せるような理解を深めてゆけるような趣向としてくれれば良いのに。少なくとも『水没ピアノ』では他の兄妹の情報を入手することはできなかったのが残念です。

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2009年2月21日 (土)

『魔女の死んだ家』 篠田真由美

魔女の死んだ家 (ミステリーランド) Book 魔女の死んだ家 (ミステリーランド)

著者:篠田 真由美
販売元:講談社
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美しく咲き誇るしだれ桜の下、

倒れゆく「おかあさま」

「おかあさま」を撃ったのはこのピストル?

ミステリーランド再読フェア中にも関わらず、うっかり「ペル○ナ3」に手を出してしまい、就寝前数分と地下鉄通勤中にしか読書タイムを設けていないので、更新スピードが鈍化しております。ミステリーランドなんて1時間半もあれば読めるのに。ぺさんをクリアするまで(あと50時間もプレイすればクリアできると思います)ご容赦くださいまし。

さて、篠田真由美女史の『魔女の死んだ家』が本日のメニュー。ミステリーランドであることを意識し過ぎた所為か、平仮名と漢字の割合がおかしくないですか篠田女史?すっごい読み辛かったのですけれども。「『すうはいしゃ』は漢字じゃなくって『螺旋階段』は漢字かよ!」みたいなツッコミに忙しくって、内容よく覚えておりませんのおほほ。

とりあえず『すうはいしゃ』を従えた『魔女』もしくは『女王陛下』の死の真相を辿る物語。叙述トリックもどきが仕掛けられておりましたけれども…伏線があからさま過ぎるので感想は特にありません。ミステリとして読んでみた感想も特にありません。死ぬ必要はあったのか?守り通すことはできなかったのか?とは思いますけれども。

それよりも前髪で顔を隠した青年が桜井京介ではないか?とか思ってしまったことの方が。桜井京介にしては話が長く、毒舌も控えめで、親切心あふれ過ぎかな?とは思いましたが、いわくつきの洋館と桜井京介はセットですからね。篠田女史もHPで名前なしの登場人物が現れたら桜井京介である可能性を疑え!なんて仰っていたし…でも、年代については考えてなかったわ。古めかしい感じはするけれども。

というわけで(どんなわけだ)更新滞ります。ぺさん頑張ります。

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2009年2月19日 (木)

『魔王城殺人事件』 歌野晶午

魔王城殺人事件 (ミステリーランド) Book 魔王城殺人事件 (ミステリーランド)

著者:歌野 晶午
販売元:講談社
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「レジドラ」って知ってる?

いま人気のゲームなんだけど

そのね、最終決戦の場“デオドロス城”が

僕の町にはあるんだ

「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」ミステリーランド再読中フェア。同時平行的に歌野晶午も再読中フェア。となると必然的に本日のメニューは決まるわけで。

本作『魔王城殺人事件』はタイトルから丸判り、殺人事件がその主題です。でも、主人公は名探偵じゃない。“51分署捜査1課”の面々=5年1組第1班の5人のメンバがこの作品を動かします。彼らの町には“デオドロス城”と呼ばれる不気味な洋館があって。小学生=冒険大好き不法侵入?そんなもの「犬が迷いこんじゃって」「サッカーボールが飛び込んじゃって」でなんとかなるわい!と意気揚々と忍び込む彼ら。けれど、彼らはその行為を悔やむことになる。

だって、死体なんて見つけてしまった日には。

おぉ、ミステリだミステリだ。けれど、ここからが歌野晶午氏のミステリーランド。普通なら“51分署捜査1課”が小学生ながらに死体消失トリックの謎を解き、犯人へと続く道筋を辿る…というお約束展開が待ち受けているのですが、

本作はそういった過程はすべてスルー

いや、それが現実というものです。どこの世界に警察の捜査会議にバリバリ参加する小学生が居る?居るわけないじゃない。というわけで、彼らはある情報をもたらす事で事件解決に貢献しますが…貢献した瞬間に月日は過ぎてもうすっかり犯人逮捕です。逮捕劇?んなもん知らねー。

でも、死体消失トリックなんかは奇天烈刑事・ヒデ兄が解説してくれるので(小学生サービス)ご安心を。これを解かねば犯人を追い詰められないぜ!という類のものではないので、解けなくても支障ないですし。犯人逮捕にも支障ないと思う。いつも思うのですが、どうして犯罪に見ず知らずの他人を巻き込めるのでしょうか?人の口に戸は立てられないのに。

というわけで、本作を読む少年少女にしてみたらもっと“51分署捜査1課”に活躍してもらいたいんじゃないか?と思った1作。大人にしてみたら妥当なんですけれどね。

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2009年2月18日 (水)

『禅定の弓』 椹野道流

禅定の弓 鬼籍通覧 (講談社ノベルズ) Book 禅定の弓 鬼籍通覧 (講談社ノベルズ)

著者:椹野 道流
販売元:講談社
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新人刑事・筧兼継が初めて任された事件…

動物連続殺害事件!?

でも、事件に大小なんてない

命に大小なんてないんだから

さくさく読み進めております、法医学教室オカルトファイル。今日もフォントを少し大きくしてみましたが、本作もオカルトではない。どちらかと云うとミステリ、どちらかと云わなくてもミステリ、歴としたミステリなんですが…

ミステリを求めていたはずなのに、
ミステリを読まされると物足りないなんて

ミステリの難易度の問題です。『暁天の星』『無明の闇』はその難易度が高く、「これがミステリだったら名作」状態だったのですが(だからこそのオカルトオチなのかもしれませんが)本作の難易度は普通どころかジュブナイル並みです。いや、伏線の張り方次第だと思うのですよ、張り方次第ではミステリとして上質なものになったと思うのですが…この展開で犯人が○○○だとわからないわけがない。

既にオカルトファイルですらなく、伊月崇成長の物語でもなく、立ち位置はすっかりBL小説。今回も思わず突っ込まずにはおれないBL要素を披露したく。まずね、「誰かと(他人と)いっしょに過ごすのが苦手」と云って叔父の家を出ることにした伊月ですが…

だからって筧と同棲してどうする

叔父にはまだ血の繋がりがあるのに、筧は全くの他人なのに。しかも、龍村に筧を紹介するときに「(俺の)ツレ」って…

伴侶を紹介するときの言葉よね?

別に筧と漫才コンビを組んでいるわけではないので。ししゃも(猫)は愛娘呼ばわりだし。うーん、この展開は凄いな。男性読者&婦女子(not腐)の皆様がこの展開を読んでどう思うのか聞いてみたい。

全く内容に触れていないな。今回は解剖シーンも少なかったですしね、メインの解剖はうさぎさんだったし。でも、この鬼籍通覧シリーズの解剖に対するスタンスは決して派手なものじゃないから。伊月の言葉を借りるなら「すげえ地味な仕事で、一生懸命やったって報われない」仕事で、テレビドラマのように「難解な事件の解決に貢献する」ことなんて無くって。それが真実で現実なのだろうと思う。でも、必要な仕事。

とりあえず次の『亡羊の嘆』で出版されている分は読み終わりですね。でも、これからも追いかけてゆきたいナイスシリーズです。

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2009年2月16日 (月)

『そして名探偵は生まれた』 歌野晶午

そして名探偵は生まれた (祥伝社文庫 う 2-3) (祥伝社文庫 う 2-3) Book そして名探偵は生まれた (祥伝社文庫 う 2-3) (祥伝社文庫 う 2-3)

著者:歌野 晶午
販売元:祥伝社
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「雪の山荘」「孤島」「館」

ミステリファンなら垂涎モノの

密室トリックを召し上がれ

文庫化したばかりとは知らずに読んだ歌野晶午氏による密室トリック短編集。歌野晶午氏の代表作はもう『葉桜』で決まりかもしれませんが、『葉桜』よりももっともっと本格本格した作品の方が私は好きです。『葉桜』はもう、あのワントリックしか覚えておりませんの。

本作は「雪の山荘」「孤島」「館」というミステリのミステリによるミステリのための舞台に用意された3つの密室を主題に。個人的好みは圧倒的に「館」モノ=「館という名の楽園で」なんですが。この「館という名の楽園で」は良いですねミステリスキーの夢が詰まっております。ミステリ好きが高じて、ミステリに登場するような、ミステリにしか向かない生活に支障をきたすような「館」を造った冬木。探偵小説研究会のメンバを召集して、「館」にまつわる“いわく”を披露して、半ば無理矢理に推理ゲームに巻き込んで。もちろん提示される謎は美味。スケールが必然的にでっかくなるんですよね「館」モノって。堪らないです。

あとの2編は…普通?「生存者、一名」はミステリというよりサバイバルホラーかと存じます。表題作「そして名探偵は生まれた」は「えっ?いつ名探偵生まれた??」という出来でしょうか。名探偵風刺として読むのが宜しいかも。

歌野晶午作品はアグレッシブ過ぎて、どうもそのスタイルを掴みきれない。『葉桜』みたいな大作があったり、『密室殺人ゲーム王手飛車取り』みたいな性悪腹黒ミステリがあったり、本作のような本格があったり。でも「新本格ムーブメント」出身だもの、やっぱり本格本格ミステリミステリした作品に期待したい。

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2009年2月14日 (土)

『千里眼 完全版』 松岡圭祐

千里眼 完全版―クラシックシリーズ〈1〉 (角川文庫) Book 千里眼 完全版―クラシックシリーズ〈1〉 (角川文庫)

著者:松岡 圭祐
販売元:角川書店
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あらゆる宗教を支配下に置き、国教となることを目指す

無差別テロ集団のテロ行為に立ち向かうは

ひとりの…女性臨床心理士

恥ずかしくて云えなかった「千里眼シリーズを読んだこと無い」をようやくカミングアウトできたので、おおっぴらに「千里眼シリーズ」に手を出せます。興味はあったが知識はないので、「千里眼シリーズ」がどんなジャンルに分類されるかも知らなかったのですが(なんとなくオカルトめいたバイオレンス小説だと思っていた)、まさかの自衛隊アクション小説とは!?これは嬉しい誤算。

今回、私が購入したのは「クラシックシリーズ」と銘打たれた大幅改稿版なのですが、このクラシック(旧)シリーズと新シリーズにはどんな違いがあるのでしょうか?どれから読んでも大丈夫!みたいなことが書いてあるのでクラシックシリーズを順々に→読了後新シリーズへと移行してゆこうと思っているのですが…もしベストな読み方があるのならご教授ください。

さて、「千里眼シリーズ」の主人公・岬美由紀。興味だけはあったので、実写化イメージキャラに釈お酌が選ばれたことだけは知っていて。だからなのか無意識かもしれないけれど、岬美由紀を脳内で追いかけるときは(私は物語を脳内で映像化して読むので、詳細や伏線を覚えられないトリアタマなんです)釈お酌の姿に自動変換されておりました。でも、ぴったりだったと思う。

まぁ、ドラグシュートの原理(どんな原理なのかは知らない)でF15からジャンボジェットに飛び移ることが可能かどうかは別として。人間技ではないですね、蘭姉ちゃん(by コナソ)かと思いました。でも、臨床心理士としての岬美由紀よりも、二等空尉としての岬美由紀の方が魅力的だったし無理を感じなかった。人のコンマ何秒の表情の変化を見つけて、そこから心理を見透かして…愉しい?確かに、彼女のカウンセリングで救われた子がいたけれど。でも、二等空尉としてパイロットとして救った彼女たちの命の方が、岬美由紀に充実感を与えたような気がします。個人的見解ですけれど。

なので、これからも毎話毎話自衛隊が絡んでくれると良いな、と思った「千里眼シリーズ」。まぁ、自衛隊サイドにしてみれば毎話毎話F15撃ち落されてたら堪らないんですけれど。でも、パトリオットの活躍も見てみたい気がする。

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2009年2月13日 (金)

『隻手の声』 椹野道流

隻手の声―鬼籍通覧 (講談社ノベルス) Book 隻手の声―鬼籍通覧 (講談社ノベルス)

著者:椹野 道流
販売元:講談社
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法医学教室期待の新人・伊月崇

いま彼が嵌まっているもの

寝ても覚めても…オンラインゲーム

法医学教室オカルトファイル=鬼籍通覧シリーズ第4弾『隻手の声』が本日のメニューです。

オカルトファイルを最大フォントにして強調してみましたが、今回は驚くことにオカルトじゃない。ただ、ミステリでもないので…どう分類したら良いのだろう。今回の主題は“傷を負う子どもたち”。「私がお父ちゃんのホンマの子供やったら、お金ようけもらえるて。なーんも心配なくなるて」なんて褪めたこと云わなくて良いのに。ママのしあわせを壊したくないから内縁の夫に暴力を振るわれることを秘密になんてしなくて良いのに。愛情を注がれる妹に嫉妬なんてしなくて良いのに…我慢さえしなければ、あんな最悪な事態に陥ることも無かったのに。

うーん、この展開ならばオカルトの方がマシ…とか思っちゃった私は悪でしょうか。やっぱりミステリ脳なんだ、文学系は合わないんだ、生まれ育った環境だから仕方無いんだ、うんうん。なので、物語として面白くなかったわけではないんだけど、物足りなさが残る本作。こうなったら

BL要素で擬似満足を

と云わんばかりに。今回のX文庫版は表紙からしてヤヴァイです。アフィリが表示できないのが非常に残念です。挿絵も凄いんだから、45頁とかもうBL以外の何物でもない。

とにかく、どんどんBL要素の増している鬼籍通覧シリーズ。でも、タイトル『隻手の声』とラストの伊月&ミチルのやりとりは、これまでのどの作品よりもしっくりきました(悪く云えばクサカッタ!)。このふたりの連携も、BL要素と同じくらいのスピードで増してるんですよね?ミチルン?

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2009年2月12日 (木)

『虹果て村の秘密』 有栖川有栖

虹果て村の秘密 (ミステリーランド) Book 虹果て村の秘密 (ミステリーランド)

著者:有栖川 有栖
販売元:講談社
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父親は刑事、自分は推理小説家になりたい僕と

母親は推理小説家、自分は刑事になりたいユーと

夏休み、ふたりが出遭った事件とは?

ミステリーランドもコンプ出来てないよなぁ、それどころか『銃チョコ』以来は新刊チェックすら忘れてた、あら北村薫はアリスモノなの?読まなきゃ、っていうか殆ど配本進んでないじゃない!と思ったとか思ってないとか。今日は有栖川有栖氏のミステリーランド第2回配本『虹果て村の秘密』をレビュー。

『虹果て村の秘密』と題しておきながら、「虹の麓には宝物が埋まっている」を使った冒険ものか?と思わせておきながら、密室殺人モノの本作。行間の広さや文字の大きさは児童向けですが、内容はきっと児童向けではない。だって、その推理はロジカル。

物語の主人公は「父親は刑事、自分は推理小説家になりたい」僕と、「母親は推理小説家、自分は刑事になりたい」ユーと。男の子と女の子、ふたりの小学生探偵が大人の力を借りながら…最後の最後は自分たちの力だけで…殺人の罪を告発する物語。

虹果て村には、ある意味お約束とも云える「殺人事件など扱ったことはございません」駐在さんと、新米(イケメン)刑事休暇中が居て。土砂崩れで警察の介入が遅れる中(古典!)虹果て村内部に「犯人を見つけてやろう」と思っていた人物は彼ら2人しかおらず。彼らは推理小説家になるために、刑事になるために、夢を叶えるために、よく動き、よく観察し、よく考えていたから…だから少し(いや、かなり)非現実的だけれど、事件を解決した賛美は彼らのものに。

大人が読むと少し物足りない内容でしょうか?ロジックの道筋は犯人と対峙したときに明かされますが、ある意味「天啓」のような閃きに近いものだったので、その道筋ができあがる過程が見事に抜けているのが残念(むしろ一方は寝ておった)。犯人を怪しむべき契機はきっと「あれ?」と思います。「えっ、この人、云ってることおかしくね?」系ね。

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2009年2月11日 (水)

『エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室』 佐藤友哉

エナメルを塗った魂の比重<鏡稜子ときせかえ密室> (講談社文庫) Book エナメルを塗った魂の比重<鏡稜子ときせかえ密室> (講談社文庫)

著者:佐藤 友哉
販売元:講談社
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コスプレする少女

カニバリズムの少女

ドッペルゲンガーに遭った少女

『フリッカー式』に続く、鏡家サーガ第2弾『エナメルを塗った魂の比重』が本日のメニュー。本作の主人公は予言者にして突き刺しジャック、鏡一家の次女・鏡稜子です。

舞台は稜子の高校生時代に遡り。鷹乃羽高校二年B組に所属する異質な少女たち。カニバリズム、コスプレ、虐められっ子、女王様…そして鏡稜子。それぞれの少女たちが、それぞれの視線で、それぞれの生の為に、それぞれの物語を進めていたはずだったのに。まさかの世界崩壊。

まさかの前作からのネタ引っ張り。このサーガ(シリーズ)とは云っても別の設定で別の舞台で別の演技を演じてくれるものと思っていたのに。根幹は同じ、根源は同じ、すべては件の所為。

カニバリズムの描写とか虐めの描写とか、「これ読まなきゃ駄目なんだろうか?」と思わせる箇所も多くって。それが後々重要なファクターとなるのならまだしも…ほぼユヤタンの趣味ではなかろうか「やっぱり読まなくても支障なかったね」状態。

ただ、王田さんの職業は良かった。なぜ依頼者は彼女が浦野宏美に成り代わることを死の時点で知っていたのか(だって、宏美の写真がメールに添付されてきたのよね?)が謎だけれども。あれ?もしかして件?

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2009年2月10日 (火)

『モダンタイムス』 伊坂幸太郎

モダンタイムス (Morning NOVELS) Book モダンタイムス (Morning NOVELS)

著者:伊坂 幸太郎
販売元:講談社
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徴兵制の布かれた未来の日本

変わったようで変わらない未来の日本

検索から、監視が始まる

雑誌「モーニング」で連載されていた本作。読み進めている際に感じた「『ゴールデンスランバー』の対のような作品だな」という感想は強ち間違っていなかった模様。『ゴールデンスランバー』は逃げる物語、本作『モダンタイムス』は追いかける物語…いや、システムから逃げているのか?

本作は『魔王』で描かれた未来の日本から、さらに50年後が舞台。カセットテープやビデオテープは既に化石扱い、ジョン・レノンも「誰それ?」。そして、人は知らないことに出遭ったとき、わからないことがあったとき、まずは「検索する」。そして、監視が始まる?

「播磨崎中学校」「個別カウンセリング」「小林友里子」共通点の見出せない、むしろ「これって重要?」みたいな組み合わせで検索をかけると…集団陵辱の主犯(赤穂浪士の討ち入りだ!)にされたり、自殺に追い込まれたり、失明させられたり、指を切り落とされそうになったり。浮気をして妻に脅迫されるよりも納得がいかないだってただ検索しただけなのに。

もうひとつ物語を動かすのに物語に巻き込まれるのに有効な検索語は「安藤商会」。安藤ってどっかで聞いたことあるな…『魔王』だ『魔王』だ「消灯ですよ」。兄を失い不思議な能力に目覚めた弟と可愛らしい嫁の、その後の人生を本作では垣間見れます。弟が手に入れた能力が強力で、その使い方如何によっては世界を征服することも、独裁者になることも、皇帝になることだってできたかもしれないのに。でも、それをしなかった弟。あくまで「人のためになること」を「人を救うこと」を、そのためにお金を使うことを選んだ弟。

弟の選択した「ノーガード戦法」を実は私も支持していて。もちろん私みたいな小市民はノーガードどころか、パソコンにいろんなセキュリティソフトをインストールしては「これでネットショッピングを存分に愉しめる」と微笑むような小心者なんだけれども。でも、情報を操る掌握するなんて無理。だから監視が始まったのだから。情報を操るのが無理なら…人を操れば良い、人を脅せば良い、人を殺せば良い。

伊坂幸太郎らしいエンタメ小説とは云えない本作。でも、ちょっと背筋に冷たいものが奔る。私はもう監視の対象になっているのではないか?ある日突然「勇気はあるか?」と声をかけられるのではないか?(「ロマンはどこだ?」なら3分お付き合いしたい)私は歯車のシステムの一部なのではないか?少しでもそう思ったら…伊坂氏は満足なのだろう。

最初はかなり印象の悪かった嫁・渡辺佳代子。彼女は本当に夫を愛していた。

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2009年2月 9日 (月)

『壷中の天』 椹野道流

壷中の天―鬼籍通覧 (講談社ノベルス) Book 壷中の天―鬼籍通覧 (講談社ノベルス)

著者:椹野 道流
販売元:講談社
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私は間違いなく、この眼で死体を見た

私は間違いなく、この手で死体を触った

なのに、なぜ、死体は消えた?

ミチルンこと椹野道流嬢の鬼籍通覧シリーズ第3弾『壷中の天』が本日のメニューです。えーっと、本作は

法医学教室オカルトファイル

なので、その結末は非科学的、オカルト、ホラーです。なぜこのようにフォントを最大にして宣言しておくかというと、そうでもしないと自分を騙せないからです。いつも思う、

この謎に論理的な解決をもたらせたら最高のミステリになるのに

と。というわけで、『壷中の天』で提示される謎は死体消失です。

いつもは解剖のシーンから始まるのですが、本作は死体消失が主題ですので解剖は行われず。ただ、偶然とはいえ現場に遭遇し、まさに温かい死体と対面したから…その行方はどうしても気になるわけで。

本作は大阪と兵庫、ふたつの法医学教室が舞台となっていて。新キャラがナチュラルに登場したのですが、ミチルとの関係はどういった?私はアフィリに表示してあるノベルス版ではなく、X文庫版で本作を読んでいるので、

挿絵がどうもBL風味でして

普通なら伊月とミチルがくっつくところなのでしょうが、どうも伊月は筧とくっつけようとしているようで(伊月も筧も男性)読書中に幾度か苦笑が漏れました。ノベルスで読めばここまでBL風味を感じることはないのかもしれませんが…挿絵の力って偉大。

って、話が脱線しましたね。でも、結末について書くべきことは特になく。これがミステリなら「トリックがどうした」「伏線がどうした」って書けるのですが…オカルトは作者の匙加減でどうとでもなっちゃうから。決して批判しているわけではないのですが…本当に書くことがない。せめて論理的な結末のなかにひとつだけオカルトを残してくれるような書き方をしてくれたら…きっと、もっと、ゾクッとできるだろうに。いつもそう思う。

まだ本シリーズの主題や意図を理解できているとは云い難く。もうちょっと読めば…判ってくるのかな?そう願います。

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2009年2月 8日 (日)

『MOMENT』 本多孝好

MOMENT (集英社文庫) Book MOMENT (集英社文庫)

著者:本多 孝好
販売元:集英社
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死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら

貴方はなにを願いますか?

死の瞬間、その刹那、なにが見えますか?

『MOMENT』はハードカバ2冊(サイン本と読書本)と文庫(通勤本)を所有しているというなんとも勿体無いお金の使い方。本多氏の懐が少しでも暖かくなってくれれば本望、そして新しい物語がひとつでも多く生まれてくれたら感激、それくらい愛して止まない本多孝好氏の作品『MOMENT』が本日のメニューです。

いまでも本多氏のベストは『MISSING』の「瑠璃」だと疑わない私ですが、『MOMENT』も好き。キャラクタという意味では『MOMENT』の僕は『真夜中の五分前 side‐B』の捻くれた彼と同じくらい好きです。そういえば、本多氏の作品で主人公の名前を思い出せるものって無いかも(『MOMENT』の僕が神田だってことも、いま確認するまで思い出せなかった…トリアタマ)。

本作は病院の清掃夫に身を窶した僕が、貰いすぎた報酬を返済すべく働く4つの物語。死ぬ前にひとつだけ僕の出来る範囲で貴方の願いを叶えましょう…その中でその刹那、浮き彫りにされゆく生と死の肖像。個人的には復讐とか脅しとか、そんなものとは無縁の、ただただ意味のないただただスマートな会話がその場を支配する「FIREFLY」が好みでしょうか。

価値のない人間なんていなくって、価値のない人生なんてなくって。最終的にそれを判断するのは自分だから…そんなわけないじゃない。表題作「MOMENT」の言葉が印象的。

自分の勝手な事情で、自分で勝手に死にたいのなら、自分が関わったすべての人の同意を取り付けるべきです

なにも考えていないように見えて、常に冷静であるように見せて、いつくもの死を見送っておきながら、むしろいくつもの死を見送ってきたからこそ、生まれることのできた言葉…そんな印象を持った印象的な言葉に同意したい。

『MOMENT』にはもうひとつ物語があって、それは読書が大好きな私たちみたいな人種には死と同義かもしれない物語で。必殺仕事人は登場しないけれど、本作よりも少し未来が見える物語も是非とも堪能ください。

もうひとつの『MOMENT』はこちら

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2009年2月 7日 (土)

『蝉の羽』 高里椎奈

蝉の羽―薬屋探偵妖綺談 (講談社文庫) Book 蝉の羽―薬屋探偵妖綺談 (講談社文庫)

著者:高里 椎奈
販売元:講談社
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死体から生える植物

向日葵が見下ろす死体

響き渡る蝉の声

再読中の薬屋探偵シリーズ第10弾。どうしていつもいつも

ちゃんと読んでるのに置いてけ堀に遭うのだろう?

今回も途中から「( ゜Д゜)ポカーン」となってしまいました。えっ?そんなの初耳なんですけど!?と思ったこと…数えるのも面倒臭くなるほど。とことん相性悪いのでしょうか、薬屋探偵シリーズ。

今回は色の付かない異色作。この異色作の定義がいまだに解らないのですが、「人間が妖怪を利用する」のか「妖怪が人間を利用する」のかの違いなのでしょうか?今回は「妖怪が人間を駆逐する」「妖怪が人間を支配する」だったように思います、本人にその木はなくても…ナチュラルにネタバレ。

そういえば、本シリーズの年代を特定できる記述がありましたね。

「一九九四年、住民転移完了。(ダム計画が中止され)売り出したのがそれから五年後の二十三年前」

1994+5+23=2022年のお話だったんですか、本作。主人公3人は妖怪なので、人間とは違う時間軸で生きているとはいえ…あれ?舞台を未来に設定した理由はどこに?もしかして、これが異色作たる所以?って、座木が高校生だった『蒼い千鳥 花霞に泳ぐ』は色付き正統シリーズだからこの説は違うか。

とりあえず(相性悪いようですが)第1部完結まではちゃんと読みたいと思っております。いろんな伏線がきちんと回収されますように。秋は何者か?とかもう必須。

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2009年2月 6日 (金)

『伏魔殿』 松岡圭祐

毎年ひとりの男が神人になる

神人は裸で2万人の男たちのなかへ

群集の先にあるのは…真実?

「千里眼シリーズ」でお馴染みの松岡圭祐氏ですが、

私、はじめましてなんですよ(汗)

いまさら「読んでません」とか云うの相当恥ずかしいんですけれど。でも、そろそろ「千里眼シリーズ」に挑戦してみようと思って。その前に松岡氏の他作品で慣らしておこうと思って。ちょっとリサーチこいたところ総じて評判の高かった本作『伏魔殿』に挑戦してみました。

ラスト50頁くらいまで「あぁ、本作は中年の中年による中年のための懐古物語なんだ…裏表紙の“推理エンタテイメントの傑作!”はガセか」と思っておった私ですが、

ごめんなさい、侮ってました松岡氏

そうかそうかそうくるか。正直、死の世界や神人や祭には興味がなくって(それが全てだ)でも、榎木という男には、その思考には大変興味が湧きました。狡賢い、詐欺師でしかないかもしれないけれど…榎木は生きる力を持っていたんだと。だから、生きるために必要な道が、真相が見えたのだと思う。

「あれ?この人必要?」と思った澤村刑事が意外にも最後まで活躍してくれて、松岡氏の懐の広さを感じた次第。ただ、(文庫版のみの仕様なのかいつもなのかは不明ですが)短いセンテンスが改行無しに、ぎっちぎちに詰め込まれているのは若干読み辛いかも。個人的好みに過ぎませんが。

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2009年2月 4日 (水)

『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』 深水黎一郎

ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス) Book ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)

著者:深水 黎一郎
販売元:講談社
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読者が犯人

眉唾モノのトリック

それが…ついに成立したと言ったら貴方は信じますか?

消化すべく、今日は初読。

えっと…

犯人は私だぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

とかフォント最大にして叫んでおけば良いのかしら(毒)

本作は眉唾も眉唾、ミステリ界最後にして最強の不可能トリック“読者が犯人モノ”に真っ向から勝負した1作です。いろいろ云いたいことはあるのですが…

成立していると云えるかもしれない

そのためには、とある前提をまるっと丸呑みしなくてはならないんですけれど。ネタバレ必至でレビューを続けますが、自らの(稚拙な)文章が不特定多数の人間に読まれることで精神(体)に偏重をきたし、死に至る…ってそんなのアリですか?トリック成立の根幹に、いきなり殴り込みをかけてみました。ご本人がそうだと云うならば、そうかもしれないのですが…もう少し読者に「あるかも」と思わせる仕掛けを混ぜ込んで欲しかった。

もちろん、超能力研究の第一人者・古瀬博士の件がそれに該当するのでしょうが。あの種類の超能力(サイ能力)って、発信者と受信者が居てなんぼだと思うのですが如何でしょうか?もちろん香坂は超優秀な受信者なのでしょう。けれど、発信者(新聞を読む不特定多数の人間)は超能力なんてマスターしていない。えっ?誰しもが奥に仕舞い込んでいる古い脳にその発信装置が眠っているって?それってどこかで証明されましたっけ?

作者である深水氏の書きたかった主題取り組みたかった主題はもう充分すぎるほど理解しているつもり。どんな結末に落ち着くんだろう、「読者が犯人」なんて放り出して香坂の事件に終始してしまうんだろうか、このポエムに意味はあるのか…いろいろ心配しながらも楽しい読書をさせていただきました。だから、成立しいていると云えるかもしれないことは認めます。

「読者が犯人」のトリックが正しくいちゃもん付けられる隙もなく成立してしまったら、きっとミステリ界は終末を迎えてしまうと思う。だから、いつか来てしまうかもしれないその日まで、こういうチャレンジスピリットに溢れた作品を読み続けたいと思います。

ところで、『ウルチモ・トルッコ』ってどういう意味ですか?

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2009年2月 3日 (火)

『無明の闇』 椹野道流

無明の闇―鬼籍通覧 (講談社文庫) Book 無明の闇―鬼籍通覧 (講談社文庫)

著者:椹野 道流
販売元:講談社
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ミチルの法則その1

「続くときは同じような解剖ばかり続く」

でも…解剖なんて本当は無い方が良いんだ

『暁天の星』に続く鬼籍通覧シリーズ第2弾です。前回、

まさかのホラー!!

を2回言った私ですが、そもそもこの鬼籍通覧シリーズって「法医学教室奇談(オカルトファイル)」なんですね。ホラーで当たり前、もちろん第2弾もホラーです。

今回は先輩医師ミチルにスポットを当てて。ミチルの哀しいトラウマを癒すことを主題に。前回のように「法医学者の立場から事象を正しく検証し、警察の捜査に介入する」なんていう展開にならなかったのが少し残念ですが。あくまでもオカルトファイルですからね(ミステリでは無かったのが相当悔しい模様…だって凄く魅力的な謎が提示されているのに)。

1件目2件目と赤ちゃんの解剖が続き…心が痛くなりました。けれど、医師が勝手に解剖記録を改竄する(死因を捻じ曲げる)ことが如何に思い上がった行為であるか…あまりにも重要で重大なことをルーキー・伊月に判らせるあの場面は凄く印象的で良かった。死体に口なし生者のこれからの人生が大事、なんてこと無い。誰しもが平等。そうじゃなきゃ、殺人を犯した加害者(生者)が被害者(死者)よりも守るべき存在だってことになっちゃう。

本作のオカルトな部分には興味がないので(おいっ!)事件の幕引きについては特に触れることはなく。それよりも、私が今回手にしたのがX文庫版(アフィリは講談社文庫版)だったので、挿絵が挿入されているのですが…国試に合格し晴れて医者となった伊月に筧が花束を持って駆けつける場面!!

これなんてBL??

珈琲噴出しそうになったよ。私の脳内イメージでは、筧刑事はイトノコ刑事みたいなナリなので、あの挿絵の筧刑事はスマートすぎる。そして、花束を渡されたほうの伊月よ…頬を染めないでくれ。

ノベルスよりは文庫版の方が持ち運び易い読み易い、という理由で文庫版を購入したのですが…これはちょっと考えものだな地下鉄で読めないじゃないか。ぎゃふん。

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2009年2月 2日 (月)

『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』 佐藤友哉

フリッカー式<鏡公彦にうってつけの殺人 > (講談社文庫) Book フリッカー式 <鏡公彦にうってつけの殺人 > (講談社文庫)

著者:佐藤 友哉
販売元:講談社
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佐奈が…妹が死んだ

自殺だなんて嘘、佐奈はあいつらに殺されたんだ

だから、復讐してやるのさ

こんな歪んだ感情、俺にはうってつけだろう?

消化すべく再読。実は佐藤友哉氏の作品は本作『フリッカー式』と『クリスマス・テロル』しか読んだことが無く、『クロスマス・テロル』のあまりのテロルっぷりに辟易して「さようなら」した経緯があります。なので、鏡家サーガと呼ばれる一連の壊れっぷりについては特筆できない今日のレビュー、先に謝っておきます申し訳。

久方ぶりに読んだ『フリッカー式』。以前よりは…愉しめたと思うむしろ続きを(鏡家サーガを)読みたいとさえ思った。本作はメフィスト賞受賞作なのですが、ミステリではなくエンタメ作品ですよね?如何にして人間は壊れるか、如何にして壊れた人間は創られるか、壊れた人間の思考は如何にして繋がるか、そんな物語。

再読前に覚えていたのは「スパイクとビシャスみたいね」という台詞が存在するということだけ。佐藤氏はアニメやゲームが相当お好きみたいですね、半分くらいネタ元不明でした。

読んでいて感じたのは、「メフィスト受賞作だ!ひゃっほい」と思ってよむ読者に優しくない作品だよな、ということ。2009年に生きる私はこの作品に続きがあること(鏡家サーガの序章であること)を知っているけれど。けれど、この作品だけを発売日に手にした人は怒濤の「?」に襲われるわけで。しかもこのあと続編が出るのかどうかわからず、伏線が回収されるのかわからずに。まるで物語のなりかけを、作者の脳内を覗かされたような、創作ノートをうっかり拾ってしまったかのような、そんな感覚に陥らせる作品。一見の読者に優しくない作品。

だからの「絶筆宣言」だったのだと思うのですが。それにしても佐藤友哉氏の復活は見事でしたよね。佐藤氏が世に出てくるのが早過ぎたのか、佐藤氏が世に順応したのか。復活以降の作品を読んでいないので判断つかないのですが。

とりあえず、2月には『青酸クリームソーダ』 が発売になるのもなにかの縁。鏡家サーガ、読んでみます。

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2009年2月 1日 (日)

『彼女は存在しない』 浦賀和宏

彼女は存在しない (幻冬舎文庫) Book 彼女は存在しない (幻冬舎文庫)

著者:浦賀 和宏
販売元:幻冬舎
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私が彼女と向き合うたびに思い出すものは、

夕方の横浜駅と、オービタルの『ハルシオン』と、

貴治が演じたバズ・ライトイヤーだった。

私のオールタイムベスト10

にグイッと喰い込んでくる浦賀和宏『彼女は存在しない』が本日のメニューです。『時の鳥籠』と迷ったのですが、あの厚さのノベルス本を通勤のお供に据えるのはどうかと…でも『天帝のはしたなき果実』をノーカバーでお供に据えている男性と車輌を同じくしたことがあるな。あの男性の読書癖を聞いてみたい。

というわけで、奇才・浦賀和宏の本領発揮。安藤直樹シリーズは積極的にはお薦めしないけれど、この『彼女は存在しない』はもう積極的にお薦めしちゃう。

読め!読むべきだ!!

って、命令になってるからすみません。でも、そのくらいお薦めです。騙されたと思って騙されながら読んでください。作中のエログロは浦賀作品には必須なので、そこだけ眼を瞑ってくださると嬉しい。

ふたりの人物の視点を交互に切り替えて進む物語。いま5行くらいあらすじを書いたのですが、うっかりネタを割りそうになりました。ネタを割らずにレビューを書こうレビューを書こうとすればするほど、ネタを割っている罠。本作には『こわれもの』指定が必須です。とりあえず文庫版裏のあらすじを丸写ししよう。こんなこと、このブロ愚始まって以来だわ。

平凡だが幸せな生活を謳歌していた香奈子の日常は、恋人・貴治がある日突然、何者かに殺されたのを契機に狂い始める……。同じ頃、妹の度重なる異常行動を目撃し、多重人格の疑いを強めていた根本。次々と発生する凄惨な事件が香奈子と根本を結びつけていく。その出会いが意味したものはー。

バズ・ライトイヤーが物語の良いところでモノローグ的に登場するのが最高なんですよね。バズなのに綺麗。もの凄く綺麗。綺麗といえば表紙も。「なぜこんな陰湿な作品に、こんな爽やかな表紙を?」と最初は思っていて欲しい。最後まで読めばこの表紙の良さがわかるはず。

私はこの作品をミステリとは捉えていない節があって。いや、もうどこをどう切り取ってもミステリでしかないのだけれど…でも、私はいつも本作を恋愛小説だと思って読んでいる。既読の方からは「頭、大丈夫ですか~?」って聞かれてしまいそうだけれど(苦笑)主題は重いし、グロいし、救えないけれど、最後と表紙のあの爽やかさは異常だと思うんだ。

できれば、あまり頭を使わずに、流れに文章にまかせるままに読んでもらいたい作品。あと、登場する浦田先生は浦賀ではないと思って読んでもらいたい(笑)浦田先生、あの作品で新人賞って凄いね斬新だわ…

って、また知らないうちにネタ割ってる!?

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2009年1月31日 (土)

『町長選挙』 奥田英朗

町長選挙 Book 町長選挙

著者:奥田 英朗
販売元:文藝春秋
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「いらっしゃ~い」

今日も陽気なお出迎え

あれ?貴方、どこかでお逢いしたことありませんでしたっけ?

『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』に続くトンデモ精神科医・伊良部シリーズの第3弾。今回は4件の治療を敢行しておるのですが…あれ?どっかで見たことあるような聞いたことあるような?

いつも私の頭を悩ませるのが、「伊良部の行為は治療か?悪ふざけか?」という命題なのですが…どうなんでしょうか?『空中ブランコ』のレビューでは

本作を読んで確信しました。
伊良部の行為は治療でも悪ふざけでもなく…本気だと。

なんて書いた私ですが、今回は表題作「町長選挙」以外は治療行為に見えるな。逆にちょっと怖い。

さらに残念だったのは、この伊良部シリーズは程度の差こそあれ「私もちょっとこの気あるな…」と読者に思わせるところだと思っていたのですが、今回それがちょっと薄かったような。ナベ○ネの「死が怖い」は若い読者では実感が伴なわないし、ホリ○モンの「ひらがな忘れる」はそもそも良く判らないし(あっ、でも漢字忘れるのといっしょか)、女優の(モデルは誰なんでしょう?白木だから黒○瞳さんですかね?)「老化に逆らえ!痩せたい!」に至っては思わない女性の方が少数派だと思うし。ちなみに私は疾うに諦めの境地です。このワガママボディめっ!

まぁ、本作の主旨は風刺だったんでしょうから。

そうすると表題作「町長選挙」の主旨が読めなくなるな。政治家のお食事券(byTRICK)について書きたかったわけじゃないだろうし、伊良部の老人受けが書きたかったわけじゃないだろうし。治療らしい行為も見当たらなかったので、単なるドタバタコメディと化していたような…私の読み込みが甘いのでしょうか?

ごめんなさい今回はちょっと残念だったので、第4弾に期待して!

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2009年1月30日 (金)

『探偵伯爵と僕』 森博嗣

探偵伯爵と僕  /森博嗣/〔著〕 [本] 探偵伯爵と僕 /森博嗣/〔著〕 [本]
販売元:セブンアンドワイ ヤフー店
セブンアンドワイ ヤフー店で詳細を確認する

夏休み

次々と消えてゆく友達と新しい出逢い

はじめての冒険

なぜか密林のアフィリが非表示だったので、今日はセブンアンドワイのアフィリにしてみました。1500円以上送料無料なのはどちらも共通ですが、密林はメール便の確率が高いのが玉に瑕。なので、本はあまり密林では買わなかったりする。

って、レビューしなさいよ貴女。

今日のメニューはミステリーランドとして配本された森博嗣『探偵伯爵と僕』。個人的ミステリーランドベスト3に入る1作。ちなみに残りの2作は『いつか、ふたりは二匹』『ラインの虜囚』ですね。『怪盗グリフィン、絶体絶命』も捨てがたいのですが。

「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」と銘打たれたこのミステリーランドには時々まったく少年少女のために書かれていない作品が紛れ込んでいるのですが(笑)森先生がここまで少年少女のための作品が書けるとは思ってませんでした。森先生の文章は綺麗だけれど、解かり易さに軸足が置かれているとは思っていなかったので。むしろ、付いてこれる奴だけ付いて来いのスパルタだから。

だから、まるで本当に、主人公たる新太くんが夏休みの日記(宿題)として物語を綴っていると言われたら信じてしまいそうな文章に嬉しい誤算。心なしか漢字が少なかった気がするのは木の精?

そして、なによりも誰よりも、伯爵について。再読の今回、私は伯爵がどんな人間でどんな立場でなにを目標としているか知っているから。だから、恥ずかしながらラストで眼を潤ませてしまった。犯人を追い詰めた伯爵が一体なにを思ってその手を強めたのか、その手を弱めたのか。初読よりも再読の方が数段良いと感じた箇所。

そして、最後におまけ的に明かされる○○トリック。別に読者を騙そうと用意されたものでは無いから、トリックとは呼べないかもしれないけれど。けれど、それを明かされたとき本気でゾクッとしたし、森先生は凄いと心底思った。きっと、正しく物語を紡いでいたら伯爵の言う「人間の醜さ」「社会の未熟さ」が全面に押し出された、少年少女のためとは言えないような物語が出来ていたと思うから。確かにそれはいつかは知らなくてはならないことだけど。けれど、もう少しモラトリアムを…だって、今は夏休みなんだもの。森先生がそう言っているように感じた。

ミステリーランド版(新書版)の山田章博氏の挿絵が好きだったので、文庫版には挿入されていなくて残念。そうそう、チャフラフスカさんは東京オリンピックで活躍した体操選手ってことでOKなのでしょうか?

探偵伯爵と僕 (ミステリーランド) Book 探偵伯爵と僕 (ミステリーランド)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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2009年1月28日 (水)

『トリプルプレイ助悪郎』 西尾維新

トリプルプレイ助悪郎 (講談社ノベルス) Book トリプルプレイ助悪郎 (講談社ノベルス)

著者:西尾 維新
販売元:講談社
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トリプルプレイのスケアクロウ

一回の盗みにつき三人殺す

維新×流水、JDCトリビュート!!

失踪中に読んだ(らしく)未レビューだった本作。大好きなJDCと西尾維新がコラボしたJDC トリビュート『トリプルプレイ助悪郎』が本作のメニューです。

本作は比較的、西尾維新色の強い作品に出来上がっておりましたね。JDC読んでいる、というよりは西尾維新を読んでいる、と言った方が正しいと思いました。西尾維新らしい遊び心満載。

総著作数53冊、総文字数が一体どのくらいかなんて考えたくもない髑髏畑百足の小説には誤植が一切ない。そんな、完璧人間・緒川○まきもびっくりな髑髏畑百足の最後の小説を廻って、ふたりの娘、執事、編集者、探偵、怪盗が裏腹亭に集まる。『あかずの間』の前に陣取った探偵…にも関わらず、扉は開かれていないにも関わらず、室内で見つかった他殺死体。そして、犯行声明。

果たして怪盗・スケアクロウは如何にして最後の小説を奪っていったのか。もちろん西尾作品ですので、ありきたりな結末は用意されておらず。西尾作品では珍しい(初めての?)「読者への挑戦状」付き。確かに、挑戦状にも書かれているように、殺人事件の真相と最後の小説については解けるかもしれない。けれど、あまりにも堂々と張られた伏線に気付ける読者はどのくらいいるのだろうか。そういえば、石崎幸二氏『あなたがいない島』レビューのときに、このトリックについて言及してますね…まさかお眼にかかれるとは思っておりませんでした単なる冗談だと思っていたので。

今回もオリジナルJDC探偵で登場したのは龍宮のみですか。西尾氏は龍宮がお好き?私は龍宮が大好きです。あぁ、JDC読みたくなってきた。でも、本棚に陣取るあのピンクの背表紙を眺めるだけでやる気が無くなっちゃうんだごめんね龍宮。

人間は誰しも小説の登場人物。けれども、それは、誰かに操られているわけではなく。いつでも、いつまでも、作者は自分で居たいものです。

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2009年1月27日 (火)

『火村英生に捧げる犯罪』 有栖川有栖

火村英生に捧げる犯罪 Book 火村英生に捧げる犯罪

著者:有栖川 有栖
販売元:文藝春秋
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これは火村英生に捧げる犯罪だ

とっておきの探偵に

きわめつけの謎を

ようやく読むことができました火村&アリスシリーズの新刊『火村英生に捧げる犯罪』。タイトルは秀逸、内容は…有栖川作品に多いですよねタイトルが秀逸すぎてパターン。

8つの短篇・掌篇が収録された本作。趣向やトリックは様々。これまでの短編集以上にバラエティに富んだ1作だったことは間違いなし太鼓判を押します。

個人的に好みだったのは「あるいは四風荘殺人事件」。これもまたタイトルが秀逸。「あるいは」が良いですよね、「あるいは」が。内容もまた趣向が凝らされていて。アリス&片桐の癒し系コンビが火村の元に持ち込んだ、とある殺人事件。まるで推理小説のように閉ざされた山荘で、まるで推理小説のように雪密室に彩られた謎を、まるで推理小説のように“名探偵”と“警部”が手を組んで解決する…はずだったのだが。長編でもいけるんじゃないかと思った本作、館モノと呼ぶのが相応しい、有栖川作品初の館モノか!?

あとはやっぱり掌篇が好きで。有栖川氏の作品は短ければ短いほど良いなぁ(失礼発言)「鸚鵡返し」が良い。そんなしょーもないトリック仕掛けるなよ(笑)と犯人の肩に手を置きたくなる1作。「悪意と善意の顛末」はタイトルが好き。内容は…コナソの2時間スペシャルかと思った(こんな阿呆な犯人居たんだ、の意)1作。

では、短篇はと言いますと…「長い影」は綺麗にまとまってましたね動機が自然。時効の停止なんていう社会派(?)ネタを有栖川氏が書くとはおもっておりませんでした。社会派とうよりベタネタか?そして表題作「火村英生に捧げる犯罪」と「殺風景な部屋」ではアリスが活躍。茅野&森下に密かに莫迦にされるアリスが可哀想ですが(ただし、すべて真実)火村がアリスを連れまわすのには何か理由があるはず。きっとたぶんね。

というわけで、タイトルがなによりも秀逸だった本作。有栖川作品は掌篇が大好きなんだけれど…たまには長編が読みたい。国名シリーズで長編、いっちょよろしくお願いします。

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2009年1月26日 (月)

『未完成』 古処誠二

アンフィニッシュト (文春文庫) Book アンフィニッシュト (文春文庫)

著者:古処 誠二
販売元:文藝春秋
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自衛隊内から忽然と小銃が消え失せた

決して表沙汰にはできない難問に

立ち向かうのは…もちろんあのふたり

またもやアフィリ非表示。『UNKNOWN』と違い、こちらは文庫化されていないのですね。『少年たちの密室』が先に文庫化されてみたり(ちなみに文庫化された際の改題が『フラグメント』)…どういう大人の事情なんでしょう気になる。

1/27追記:『未完成』も『アンフィニッシュト』と改題し文庫化されているという情報を頂戴しました!ご指摘いただいた通りすがりさん、ありがとうございました!!

そんなわけで朝香二尉&野上三曹シリーズの第2弾にしていまのところ最新作です。もうこのふたりの活躍は拝めないのでしょうか。残念。今回ふたりが挑む謎(問題)は小銃の消失。それも“ついうっかり”などではなく(それはそれで大問題なのだが)明らかに悪意を持って。銃撃訓練中に、ほんの1~2分、飛来するヘリコプターに眼を向けた隙に消えた小銃。誰が、なぜ、どんな目的をもって小銃を消してみせたのか。

本作の主題は小銃の消失(ミステリ)ではなく、天国に一番近い島に見ることの出来る(縮小された)民族問題。非常にデリケートな題材。この『未完成』あたりから古処氏の作風に大きな変化が現れたと云っても過言ではないと思います。少なくとも『UNKNOWN』は自衛隊内で起こったミステリが主題でしたもの。

そうは云ってもここはミステリブロ愚ですので、ミステリについて語ります。うーん、やっぱり小粒と云わざるを得ない。そもそも、犯人たちの目的がここ(小銃の取得)ではないから仕様がないのですが。小銃が消失することで、調査班の朝香二尉が動くことで、なにかが変わることを期待して。それは事件を複雑にした影の協力者にも同じことは云えて。だから犯人は、犯人であることを指摘されても逃げない隠さない、むしろ悪いことをしたとも思っていない。あれ?これってミステリ??

重苦しい…いや、私たちが受け止めなくてはならない主題に正面から立ち向かえる方にはお薦めの1作。ちょっとミステリでも読みたいわ、という方にはお薦めできない1作。でも、いつかは読んで欲しい1作。

個人的には朝香二意尉が所有しているというカノン砲が気になります(下ネタじゃねーかよ!!)

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2009年1月25日 (日)

『日曜日の沈黙』 石崎幸二

『ミステリィの館』へようこそ

これから行われる推理イベントでは

来木来人の死にまつわる謎と究極のトリックを

探していただきましょう

またもやアフィリ非表示!ガッテム!

消化すべく、なんとか見つけました『日曜日の沈黙』。まさか“本棚に並べなくても良いだろうBOX”にぶち込まれているとは思わなんだ…いや、正しかったのか?

本作では殺人事件は起こりません。『ミステリィの館』と銘打ったホテルの推理イベントがその舞台。イベントの主旨に沿って(偽の)死を迎えてゆくゲストたち。けれど、この死はあくまでも「来木来人の死にまつわる謎」と「究極のトリック」を見つけ出すための鍵にすぎない…石崎&ユリ&ミリアは主催者の用意したダミーの解答にひっかかることなく、真相を手にすることが出来るのか!?

という内容なのですが…まさかこのネタでメフィスト賞受賞できたとは驚き。2作目か3作目でやるようなネタじゃないかと思うのですがいかがでしょう?なぜかラストは小奇麗にまとめちゃって…石崎さんが真顔でそんな甘い台詞吐いたら、笑い死にするわ。

そもそも、石崎さんとユリ&ミリアの出逢いがあんなに唐突なものだったとは。謎を追いかけるうちに意気投合(?)して…という展開ならまだしも、あんな無茶苦茶な逆ナン(笑)状態だったとは。トリアタマが脳内から抹消した事実。

それでも、3人の掛け合いとミステリに対する風刺はデビュー作から変わらず。「おまえ計算速いな。西之園萌絵か」あたりはどこかで読んだ気もしますけれども(高田崇史氏の千波くんシリーズだったように記憶)。上書き保存しちゃうお馬鹿な警部の件なんかが好きです。

とにかく、石崎さんの凄さが全く伝わってこない本シリーズですが、まだまだ読みたいたくさん読みたい。でも、『袋綴じ事件』から『首鳴き鬼の島』まで5年もかかったという前科があるからなぁ…次の新刊は2013年でしょうか?いやいやいや、是非期待を裏切ってくださいね!!

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2009年1月24日 (土)

『ドッペルゲンガー宮』 霧舎巧

ドッペルゲンガー宮―“あかずの扉”研究会流氷館へ (講談社文庫) Book ドッペルゲンガー宮―“あかずの扉”研究会流氷館へ (講談社文庫)

著者:霧舎 巧
販売元:講談社
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≪あかずの扉≫研究会へようこそ

この研究会では≪あかずの扉≫の真相を、歴史を、真贋を

調査し、壊さずに開けてみせます

そこからなにが飛び出すかは…おたのしみに

消化すべく再読。まだ半分にも到達していないんですかさくさく読み進めているような気がしたのは錯覚か…受賞作レビュ。

メフィスト受賞作の中でも新本格の色合いが特に強い、霧舎巧氏の≪あかずの扉≫シリーズが本日のメニュー。とんと新作が発表されておりませんが…あと2~3作は続きます設定も決まってます、みたいなことを霧舎氏が仰った(書いた)ものを読んだことがあるような気がするのですが。このトリアタマの捏造でしょうか。

なんてったって、このトリアタマは『ドッペルゲンガー宮』の印象も捏造してましたから。

あれ?こんなに読み難かったっけ?

あぁ、毒吐いたまた毒吐いちゃった。でも、「名探偵、皆を集めてさてと云い」の前に棄却した意見(推理)の再登場率高すぎる。しかも、文章が下…むにゃむにゃ…なので、その推理が棄却されたのかグレーのまま維持されたのかよーわからんのですよ。

いろんな要素詰め込みましたミステリ愛!は充分に感じるんですけれど。館モノ、モチーフに『そして誰もいなくなった』、W名探偵にお馬鹿なワトソン。双子トリックに入れ替わり、毒殺刺殺絞殺のオンパレード。動機も異常。主だったミステリ要素は全て収められていると云っても過言ではないかと…それらが喧嘩しないとは限りませんが。

館に仕掛けられたトリックはかなり大胆ですよね。なんてたって『斜め屋敷の犯罪』に出てくる「流氷館」と同じ名前を持つ館ですしね!!そして、そのトリックを解いたのはジョーマエさん…この≪あかずの扉≫シリーズは登場人物多くってしんどいんですけれど、それぞれにしっかりと役割が振られていて要らない人間がいない。そのあたりに霧舎氏の信念を感じます。あっ、でも集められた10人の方は誰が誰だかさっぱりわからなかったので…捨て駒感満載。ニンゲンガカケテナイ。

そんな私はカケル♥ユイの恋愛模様が楽しみで楽しみで。2番目同士の恋、素直になれないふたりが可愛いですね。

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2009年1月22日 (木)

『ウェディング・ドレス』 黒田研二

ウェディング・ドレス (講談社文庫) Book ウェディング・ドレス (講談社文庫)

著者:黒田 研二
販売元:講談社
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陵辱を受けた花嫁×交通事故死した花婿

姿を消した花嫁×三股をかけられていた花婿

平行する世界が交差したとき、真相は明らかになる

消化すべく再読。

やっぱりこうじゃないとクロケン!!

驚嘆の魔術師(トリックメーカー)・黒田研二、なんて(ノベルス)背表紙あらすじに書いてありますが(笑)本作の出来は「これからクロケンのことをそう呼んでもいいかも」なんてちょっとだけ思わせる素敵作です。

メフィスト受賞作を新本格度合の強い順に並べたら、もしかして1位に輝くのでは?と思った本作。対抗馬は『ドッペルゲンガー宮』か『真っ暗な夜明け』か?第12~16回受賞作はどう見ても本格ミステリ作家育てるべく力入れてみましたラインナップですね。

そんな新本格ミステリ『ウィディング・ドレス』。仕掛けられているのは○○トリック。物語は花嫁サイド、花婿サイドに分かれて交互に進み…あれ?明らかにおかしい。ふたりの供述が噛み合わない。どちらかが嘘を吐いているようにも思えないのに。つまりはなにかの前提がズレている…そしてズレているのは。

どの前提がズレているのか、は比較的簡単にわかるはず。丹念に、頁を捲る手を一度止めて、じっくりと考えればきっと全てが見渡せるはず。面倒臭いから基本やらないと思いますが(笑)

作中に登場する物理トリックは正直「どうよ?」っていう出来なんですが。むしろ爆笑の出来なんですが。このあたりに往年のクロケンバカミススピリットを感じます。あぁ、デビュー作からこんなことやってたのかって(笑)無理ではないけれど、いくら興奮していたとはいえ…見間違えるだろうかパラパラ。こんなバカトリックしか用意していないのに他人を事件に巻き込もうとか思った犯人の過信が笑える。

でも、メフィスト受賞作のなかでも一、二を争う本格度合なのは間違いないかと。あと、クロケン作品のなかでも一、二を争う出来ではないかと。クロケンの初期作品の方が好き、と言わしめる原動力になってます。うん、良いミステリだ。

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2009年1月21日 (水)

『夜の光』 坂木司

夜の光 Book 夜の光

著者:坂木 司
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私はスパイ、コードネームはジョー

私には3人の仲間が居て

皆、それぞれの戦場で闘っている

スパイ小説かつ青春小説、えっそれってどういう新ジャンル?と思った坂木司氏の新刊『夜の光』。読んでみて納得、これはスパイ小説かつ青春小説だわ。

普通に学生生活を謳歌していたならば、決して集うことのなかった4人のスパイ。本当ならば自分独りで自分の戦場で、孤独な闘いを続けるはずだったのに。天文部に入ってみようと思ったがばかりに…出逢ってしまったじゃない本当の仲間に。

それぞれが、それぞれに、悩みを抱えて。それは家族のことだったり、定まらない自分であったり、恋だったり。スパイ同士は決して自分の戦場のことを語らない戦況を尋ねたりもしない。けれど、一番辛いときに一番しんどいときに、狙い定めたかのように援護射撃をしてくれるから。それはつまらないジョークだったり、美味しい野菜だったり、薫り高き珈琲だったり。

そして、4人のスパイを遙か彼方から照らす夜の光。何億光年か先に存在した星を静かに眺めているうちに、また頑張ろうって思えるから。まだ闘えるって思うから。だから4人は集う星の下に夜の光に。

坂木司氏らしいミステリもテイストとして残されてはいるのだけれど。この作品の良さはそこではないと思うから。(個人的には「スペシャル」のピザの謎が好き。よくできている私もいつかやってみたい)

ゲージの軽いノリと、ジョーの丁寧な訂正が好き。ギィが珈琲を淹れるたびに私は手元のマグカップを口に運んでいたし、ブッチの作る野菜なら食べても良いと思った。偏食の大家たる私が。そして、田代のような話のわかる教師がこの世に居るわけないと哀しくなった。

実は私もスパイ業を営んでいて。私にも同じ戦場で闘う仲間が居ることを再確認して、ちょっと笑った。

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2009年1月20日 (火)

『暁天の星』 椹野道流

暁天の星―鬼籍通覧 (講談社文庫) Book 暁天の星―鬼籍通覧 (講談社文庫)

著者:椹野 道流
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死者の声を聞く仕事

法医学教室に迷い込んだヤクザ医師

彼は死者の声を聞くことができるのか?

ミチルンこと椹野道流嬢の鬼籍通覧シリーズ、初めましてです。『メフィスト 2009年1月号』に収録されたQEDトリビュート「薬剤師とヤクザ医師の長い夜」にて薀蓄薬剤師と対峙することとなったヤクザ医師・伊月崇の物語。

物語の舞台は法医学教室。司法解剖を行う教室…と言えば通りが良いのか?死者の声を聞く~なんてあらすじ紹介をしましたが、トゥルーコーリングとは違います。もっと現実的な…

現実的な??

なぜ、彼あるいは彼女は死ななくてはならないかったのか。どんな手段によって死はもたらされたのか。物言わぬ体にメスを入れ、その答えを聞く。新人歓迎会とばかりに、次々と運び込まれてくる死体に…なんとなく無視し難い共通点が。捜査は警察の仕事だけれど、その仮説は一笑されるような信じ難いものだから。だから、ヤクザ医師は死者の声を聞くものとして、独自の捜査を開始する。単なる自己満足かもしれないけれど。

なんとなくですが、法医学という「(死体に現れる)事象物象が全て」である教室が舞台なだけあって、現実的な結末に落ち着くんだろうなぁと思っていたのですが…

まさかのホラー!!

堂々たる結末で、流れに身を任せれば違和感を感じる隙を与えないのですが…

まさかのホラー!!

大事なことなので2回言いました。もし、この謎に現実的な結末を持ってこれたら名ミステリになったと思う。そのくらい謎が魅力的。魅力的だからこそ…不思議は不思議のままにしたいと思ったのでしょうか椹野道流嬢。

まさかのホラーではありましたが(3回目)シリーズとして、とても魅力的だと思いました続きも絶対読む。そういえば、たったいま偶然にもCMが流れたので知ったのですが、今クールドラマ「ヴォイス」の舞台も法医学教室なんですね。

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2009年1月19日 (月)

『書物狩人』 赤城 毅

書物狩人 (講談社ノベルス) Book 書物狩人 (講談社ノベルス)

著者:赤城 毅
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国を、政治を、歴史を揺るがしかねない稀覯本を

合法非合法問わずに入手する書物狩人

さぁ、貴方はどんな本をご所望で?

なんとなくファンタジー小説だと思い込んで嫌煙していた本作ですが、

まさかこんなにも現実的、即物的な小説だったとはっ!

もちろんファンタジー要素は含まれておるのですが…SILABがこの世に存在しないとは誰にも言い切れない。そんな、なんとも不思議な感覚に襲われる一作『書物狩人』が本日のメニューです。

フランス語で狩人を意味する“ル・シャスール”と呼ばれることを好む書物狩人・半井優一。体系や顔立ちに特質すべき点はなく、典型的な日本人であるにも関わらず…彼は常に人の眼を集める。それは、見事としか言いようの無い、銀と見紛うような白髪の所為。染めているようには見えないから…どんな精神的ショックが彼の髪をそうさせたのか。

そんな秘密めいたル・シャスールを探偵的役割に据え、4冊の稀覯本をめぐる物語を集めた本作。どの作品も、どの稀覯本も、どの歴史も、有りそうで無さそうでもの凄く魅力的。ケネディ暗殺の真相を握る1冊の教科書、存在してはならない第五福音書、ナポレオンの旧蔵書に散逸した中国の歴史書…そんな有りそうで無さそうな4冊の稀覯本を廻って張り巡らされる罠、暗躍、推理。

なぜ依頼人はその古書を望むのか。依頼人がル・シャスールに本当のことを言っているとは限らない…むしろ偽りを告げていることの方が多く。そして、そういった人間は悪事に手を染めていることが殆どで。そんな人間に稀覯本を渡してしまって、世界を揺るがすような歴史を変えてしまうような1冊を渡してしまって良いものか。そんなドキドキワクワクを読者に与えてくれる素敵な作品。

ファンタジーだと誤認したまま、読む機会を失わなくて良かった。そう思った素敵作。お薦め。

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2009年1月18日 (日)

『黒影の館』 篠田真由美

黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社ノベルス) Book 黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社ノベルス)

著者:篠田 真由美
販売元:講談社
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一切の消息を絶った桜井京介

蒼と深春は京介を取り戻すべく

彼の過去を…禁断の扉を開く

ついにラス一となった建築探偵シリーズ、ついに桜井京介の過去が明かされましたが…

やっぱり篠田女史、ハードル上げすぎたよ!!

前作『一角獣の繭』にてこんなレビューを書いた私。

シリーズ序盤から匂わされつつも明かされなかった京介の過去。一体“桜井京介”とは何者なのか?次巻、遂に明かされる??ここまで引っ張ってきて『原罪の庭』を越える名作じゃなくっちゃ、許さなくてよ!!!(かなりハードル高いな。でも、篠田女子自らハードル上げてるからさ…)

確かに異質にして異端。やはり人間ではなかった桜井京介。でも、『原罪の庭』クラスの名作がくるに違いないと思っていた私にとっては物足りなさが残る。

義父の死によって、再び日本へと舞い戻ってきた神代宗。自分は義父になにもしてやれなかった、なにも返してやれなかったと自責の念に駆られる神代の前に現れたのは、門野貴邦。門野の口車に乗せられ神代が向かった“地図にない場所”には、邑を支配する一族とあやうい美貌と知性を湛えた少年、そして殺人事件が待ち構えていた。訳も解からずに一族の住まう屋敷に連れ込まれた神代は、美しいステンドグラスに見惚れるかのように、自分の立ち位置を確認するかのように、過去と現代に起こった複数の殺人事件の謎を追う。

『黒影の館』はこんな物語です。隠しても隠しきれるものではないので言っちゃいますが、上記あらすじの“あやうい美貌と知性を湛えた少年”というのは桜井京介です。ちなみに屋敷内での名は久遠 叡(アレクセイ)。

驚いたことにしっかりミステリです。館モノです。本格の風味、あると思います。正直、神代さんと京介の出逢いや行く末が気になってミステリどころじゃないので、犯人が誰であろうとどうも良いのですが(酷い)意外性、あると思います。犯人のこれまでの言動を見れば、動機も理解できる。でも、篠田女史が読んでもらいたいのはそこじゃないと思うから。

じゃ、どこ読んでもらいたいのかというと…

肝心なとこ書いてないですよね!!

『原罪の庭』はミステリ部分はもちろん、石になりかけていた蒼をどうやって取り戻すか、蒼の成長と心の繋がりを描いた部分が秀逸で号泣で名作だったわけですが。本作にはそういった部分皆無じゃないですか。神代さんがアレクセイをどうしてそこまで助けたいと思ったのか…読み取れない。アレクセイは確かに可哀想だったけれど、存在しない人間と変わらなかったけれど、でもきっとあのまま生きてゆくことはできた。それがアレクセイの望んだ形ではなかったにせよ。

もちろん、義父を喪ったばかりの神代さんにとって贖罪の意味もあったのだと思う。あんなに愛してくれた義父に、最後まで礼すら言えなかったなにも返してやれなかった。その後悔を、愛された経験のないアレクセイを愛してやることで払拭する。きっとそういうことだったのだと思うのだけれど…なぜか読み取れなかった書かれてました?

感動巨編が来る!と勝手に思い込んだ私が悪いのでしょうか?面白かったんです建築探偵ここ最近酷い作品が多かったので久しぶりに満足のゆく作品が読めて嬉しいんです。でも、やっぱり物足りない。次回が本当のラスト。感動巨編は次回作までお預け。蒼&深春、頑張れ。

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2009年1月17日 (土)

『さいえんす?』 東野圭吾

さいえんす? (角川文庫) Book さいえんす? (角川文庫)

著者:東野 圭吾
販売元:角川書店
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理系作家・東野圭吾が

理系視点で綴る

理系エッセイ集

『ちゃれんじ?』を念頭に置いて読み始めたので、意外とまじめなことが書いてあって(失礼)びっくりした覚えのあるエッセイ集、『さいえんす?』が本日のメニューです。通勤本としてちょいすしたのですが、行って帰ってこいで読めてしまった。

『さいえんす?』はタイトルからも判るとおり、東野氏が雑誌などに投稿した理系エッセイを集めた1冊。どのテーマも簡潔にまとめられているので読み易いです。1エッセイ1分くらいで読めるのではないかしら?(1分は言い過ぎ?3分?カップラーメン?)でも、そんな親切設計の本作でも…どうしても読むのが苦痛だった1篇が。

その名も「堀内はヘボなのか?」というプロ野球・巨人軍について書かれたエッセイなのですが(本作は2005年発行でございます)、数字がね数字が踊っているわけですよ!得失点差や防御率を用いてデータ分析を試みているのですが、私が野球に興味ないことを差し引いても読めない苦痛だ!「超理系殺人事件」を思い出した…やっぱり私は生粋の文系だ、うん。

なので、「理系はメリットか」には「YES」と答えます。

そうそう、本作で一番グッときた一文は「滅びるものは滅びるままに」の

あなたのDNAが保存されていて、人類滅亡後に何者かによって、あなたのクローンが復活させられたとする。
彼あるいは彼女は、果たして幸せだろうか。

ですね。絶滅種を復活させるべきか否か、について書かれたエッセイですが、最後のこの一文にゾクッとしました。凄い説得力のある一文。凄い。

そして、「本は誰が作っているのか」。読書が唯一の趣味で読書が大好きで人生の10分の1くらいの時間は読書に費やしている私にとっては、切実な問題です。このエッセイも最後の一文が重い。

図書館やブックオフを利用することを、まかり間違っても「賢い生活術だ」と思ってもらいたくない。そう考えることは、出版業界を支えている購買読者たちへの、とんでもない侮辱である。

薄給なので読みたい本全てを新刊で買うことはできませんが、それでも出来る限り頑張ります。だからどうか、本よ絶滅しないで。

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2009年1月16日 (金)

『ダブ(エ)ストン街道』 浅暮三文

僕の彼女を見かけませんでしたか?

っていうか、ここはどこですか?

さっきからどうも迷っているような気がするんですけれど

消化すべく再読に勤しんでおります。それにしてもなぜこうもアフィリの表示されない絶版(?)本ばかりなんだメフィスト賞。

というわけで、本日のレビューは第8回受賞作『ダブ(エ)ストン街道』です。メフィスト賞受賞なのにノーミステリオールファンタジーという1作。でも、好きなんだよなぁこの淡々とした感じが。

アトランティスよろしく、謎の大陸として名高いダブ(エ)ストン。どこにあるのか、どうやって行けば良いのか、そこにはなにがあるのか、全ては霧の中。けれども僕はそこに行かなければならないんだ。なぜならそこには僕の彼女が居るから。酷い夢遊病のタニア(彼女)よ、どうか僕が迎えに行くまでそこに居て。本作はそんな物語。

ダブ(エ)ストンに棲む人たち(熊にハンギョジンに王様に、もっこりタイツの英雄に幽霊船に)は皆、生きてから死ぬまで…いや死んでからも迷っていて。五里霧中、一寸先は霧。それはきっと私たちの人生といっしょで。私たちはずっと迷い続けてる。意識してか無意識にかは知らないけれど。

郵便配達員・アップルがすごく好青年で。初読の際、アップルの正体を知ってタニアに逢って…そこに運命を感じました。うん、やっぱり好きだわ『ダブ(エ)ストン街道』もっと評価されても良いと思うなぜに絶版。

個人的には王様とピエールが大好きなんだけれど。頑張れピエール絨毯巻き取れ巻き取れ!!あと蝶ネクタイ熊さんも好きよ。ガオー!!

ゆるゆるしたいときにお薦めの1作。念押ししますが、

メフィスト賞受賞作ですが全くミステリではありませんのでご注意ください。

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2009年1月15日 (木)

『誰が疑問符を付けたか?』 太田忠司

誰が疑問符を付けたか? Book 誰が疑問符を付けたか?

著者:太田 忠司
販売元:幻冬舎
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“鉄の女”と畏れられる京堂景子警部補の秘密

それは…ツンデレ?

主夫があざやかに解き明かす8つの疑問符

いま思えば景子さんのアレはツンデレだったんだなぁ…『ミステリなふたり』の発売って何年前ですか?ハードカバで出たのが2001年ですか。そのころには“ツンデレ”なんて言葉ありませんでしたね。ツンデレのはしりか?そんな8年ぶりの京堂夫妻シリーズ『誰が疑問符を付けたか?』が本日のメニューです。

警察署長すらも一瞥で退職に追い込み、抵抗した暴力団員をプロレスラー顔負けの技で行動不能にし、現場で彼女に睨まれれば刑事生命をも絶たれると噂される、愛知県警の“鉄の女”最強警部補・京堂景子。そんな彼女には大いなる秘密、唯一の弱点が。それはイラストレーターにして主夫、愛しの旦那様・京堂新太郎にメロメロ(古い)であるということ。

主夫・新太郎の作る家庭料理に舌鼓を打ちながら“鉄の仮面”を脱ぎ捨て、その日起こった不思議な事件を語る。それは死体といっしょに大量のぬいぐるみがぶら下げられた殺人事件であったり、死体にハマチが盛られていたり、死体が女装をしていたり。けれど、主夫・新太郎はそんなおかしな装飾に目を奪われたりしない。いつも新太郎は冷静沈着に解決への糸口を見つけ出す。それはなぜ?だって、新太郎の目はいつも景子(最強の妻)に向けられているから♥(ってのは冗談ですが、このふたりはラヴラヴです)

ミステリとしての難易度や捻りはそんなに高く(多く)ありません。一風変わった事件を取り揃えてはおりますが、小説として他作品と比較するならレベルはノーマルでしょうか。怪人とか少年少女探偵団とかは登場しないので。あくまでも景子のツンデレぶりとか、新太郎の良夫ぶりを楽しむ1冊かと。

個人的には「京堂警部補に知らせますか?」が好きかしら…ってツンデレ妻、登場しないですね。“鉄の女”唯一のウィークポイントが同僚とニアミス(ニアミスどころか捜査協力)というこのハラハラドキドキ感が良いです。ミステリとしてのまとまりも一番あったように思いますし。

ミステリといえば、本作のタイトル『誰が疑問符を付けたか?』は別に短篇のタイトルではないんですよね。収録されている8つの作品、すべての末尾に「?」が付いてはおりますが…どんな意図でこのタイトルを付けることになったのか知りたい。なにか伏線でもあるのだろうか?と勘ぐってしまう。ミステリスキーにとっては興味の惹かれる、なかなか美しいタイトルだと思います。

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2009年1月14日 (水)

『UNKNOWN』 古処誠二

アンノウン (文春文庫) Book アンノウン (文春文庫)

著者:古処 誠二
販売元:文藝春秋
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国防最前線に仕掛けられた盗聴器

盗聴器を仕掛けた犯人の目的とは?

メフィスト賞受賞の自衛隊ミステリ

消化すべく再読。知らぬうちにタイトルを微妙に変えて出版社すら変えて文庫化していたとは。個人的に『アンノウン』より『アンノン』の方が好きなんですけれど。ちなみに私が所有しているのはノベルス版なので、もし文庫版に加筆修正があっても対応していないので悪しからず。

この『UNKNOWN』がメフィスト賞を受賞したときに「初の自衛隊ミステリ」ということで一部のミステリスキーの間で話題になったように記憶しておるのですが、いまやミステリを放り出して自衛隊(戦争)モノというジャンルで一旗上げた感のある古処氏。すっかり直木賞候補の常連ですし。申し訳ないことに候補作は一作も読んだことないのですけれど。

本作は、自衛隊内に突如として現れた盗聴器が「いつ、どこで、だれが、なにを、どうやって」仕掛けられたのかを探る物語。ついでに「どうして」も付け加えることもできるかもしれませんが…動機は本人にしか、その組織に所属している人間にしかわからないから省きましょうか。だけど、それにしても、私は本作の犯人を浅はかだと思う。一般の会社(組織)にも往々にしてこういったことはありますが(なんせそれで転職をした私が言うのだから間違いない)だからといって犯罪まで犯すほどのことか?正義ってなぁに?少なくとも、同じ境遇に置かれたことのある私でも、犯人が抱いた動機を理解することはできなかった。

というわけで、本作はロジック重視で読みましょう。「いつ、どこで、だれが、なにを、どうやって」これを常に念頭に置いて。ミステリの難易度は決して高くないので、すぐに犯人の動きはトレースできるかと。ここでポイントとなるのは「いつ」でしょうか。盛大なネタバレになるので遠回し表現ですが、あの瞬間を狙う=既に犯人は自衛隊員ではないと思うんですよね。だから、先程(上記)考察したようなくだらない理由で犯行を犯せる。やっぱり正義ってなぁに?と思ってしまうわけです。

そういえば、『UNKNOWN』に登場するメロンタワーですが、私は高校生のころアレを「たまねぎ」と呼んでおりました。私の見ていた「たまねぎ」がメロンタワーかどうか定かではありませんが、もしそうなら「たまねぎ」の下には最先端レーダー基地が埋まってたのか…格好良いな。そうそう、格好良いといえば基地司令のことを「雲の上の人」ではなく「成層圏に達してしまわれた人」と呼ぶセンスは相当格好良いと思います。

あと、朝香二尉は私の好みど真ん中です♥エリート自衛官♥制服♥♥

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2009年1月13日 (火)

『カンナ 天草の神兵』 高田崇史

カンナ 天草の神兵 (講談社ノベルス タS- 25) Book カンナ 天草の神兵 (講談社ノベルス タS- 25)

著者:高田 崇史
販売元:講談社
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行方不明になった幼馴染の足跡を辿って

向かったのは九州・天草

天草四郎に秘された謎を解く

話題沸騰、歴史アドベンチャーシリーズと帯に書かれておりますが、どのあたりで話題沸騰なのでしょうかいまいちピンと来ません。どうしてもQEDの縮小版、簡易版にしか思えない「カンナシリーズ」。一段組だし文献からの引用少ないし…いや、決して引用だらけの「えっ?これってただの書き写し?」ってのが良いと言っているわけではないのですが。

今回の主題は「天草四郎」。このあたりはQEDでは取り扱わない分野なので(QEDは古代に古代に行きたがるから)新鮮。メインの謎は「天草四郎はなぜ長男なのに“四郎”なのか」「どうして幕府はキリシタンたちをひとり残らず殲滅したのか」「島原の乱と一般に言われているけれど、この戦いは“乱”だったのか“一揆”だったのか」といったところでしょうか?

「なぜ長男なのに“四郎”なのか」については「茶屋四郎次郎」よろしく茶屋四郎さんとこの次郎(次男)みたいな意味かな?と思ったのですが(天草四郎さんことの時貞くん的なね)、この点は巧いこと(?)物語と絡めて提示してくれましたでしょうか。まぁ、冒険活劇は特に求めていないわけですが。そもそも忍者の末裔と言われても…いや、本当にそういう方々が居るのかもしれないので全否定はしませんが。

この「カンナシリーズ」はなにをやりたいのでしょうか?まさかと思いますが、ミステリをやりたいわけじゃないですよね?えっ、だって、今回またしても「警察がちょっと時間かければ解けちゃう程度」の難易度でしたし。過去との因果?それを全面に押し出したいのなら、もっと作品に深みを加えてくれないと。しかも、意味不明に主人公一行が襲われる図式も前回といっしょ…伊勢の海女だからって生体活性反応力をギリギリまで落として(脈を沈めて)30分潜ってられるって…。

本作で一番楽しめたのは徳川将軍(家康、秀忠、家光、綱吉、吉宗)のフィボナッチ数列もどきでしょうか。この発想は素晴らしいと思った。

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2009年1月12日 (月)

『しらみつぶしの時計』 法月綸太郎

しらみつぶしの時計 Book しらみつぶしの時計

著者:法月 綸太郎
販売元:祥伝社
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ロジックの申し子が織りなす

ロジックだらけの

ロジックコレクション

法月綸太郎のノンシリーズ短編集。1998年~2008年という10年間分の仕事…これだけが全てだとは思わないけれど、さすが遅筆で有名・法月綸太郎。

10の作品が詰まっておりますが、異色作もいくつか。異色作は本当に異色作で(『猫の巡礼』を指しております)えっ?なにこれ?状態なので脳内から消し去るとして…やっぱり私が一番好きなのは表題作「しらみつぶしの時計」でしょうか。

「しらみつぶしの時計」は1分ずつ異なる時を刻む1440個の時計から、正しい時を指す時計をロジックで見つけ出せ!というもの。タイムリミットは6時間。どうしてこんな状況に陥ってしまったのか…なんてことは瑣末。そんなことを考えている暇があったら、さっさとロジックを展開しなさい!ってなもんです。読んでいる間中、「ひゃっほう!ロジックひゃっほう!!」と思っておったわけですが、最後の駄洒落にやられました。駄洒落なんだけど、カメラに揚々と時計を差し出す絵を想像したら…ちょっとゾクッとしました。ちなみに「自分だったら…」と置き換えて読んでみましたが、全く見付けられる気がしませんでした文系万歳!

あとは「使用中」「ダブル・プレイ」「四色問題」あたりが個人的好みに該当しますでしょうか…ってやっぱり本格ミステリ寄りですね。「ダブル・プレイ」を読みながら「法月作品に他にも○○殺人を扱ったものあったよなぁ…綸太郎もので」と思ってはみましたが…思い出せるわけが無くなんてったってトリアタマ。「四色問題」は本家(地図塗り分け)とほとんどリンクしていないのが悲しかったですが(卑猥な語呂合わせシリーズとは巧いことリンクしてたとは思います)タイトルの付け方として秀逸だと思いました。

そういえば「盗まれた手紙」はなんとなくグリフィンシリーズに通じたものがありますね。法月流ハードボイルド。けれど「幽霊をやとった女」は実はあまり好きじゃなかったりする罠。

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2009年1月11日 (日)

『長く短い呪文』 石崎幸二

呪い

果たしてそんなものがこの世に存在するのか

石崎&ユリ&ミリアシリーズ第3弾

またもやアフィリが表示されません。無念。『あなたがいない島』が相当おもしろかったので、そのまま再読してしまいました本作…蛇足だったか?

前作でユリ&ミリアの子分(?)になり、ミステリ研に入部(入研っていうのかしら?)したまみちゃん。今回はそんなまみちゃんが厄介事を持ち込みます。「わたしには呪いがかけられています」そう書き残してさった友人。その友人を追って、またもや孤島へと乗り込んだ奇天烈三人衆。果たして石崎&ユリ&ミリアは「呪い」を科学的に解き明かすことはできるのか!?

まず、本作の読みどころは「ミリア日本史講座」です。前作も瞬殺ミリアで楽しませてくれましたが…ミリアは力ありますね。「710すごいよ平城京」はいつの間にか「日本の館もの(ミステリ)発祥」に、「小野妹子」はいつの間にか「日本最初の叙述トリック」に、「鎖国」はいつの間にか「日本全部が密室(ミステリ)」に…やるなミリア!!

そして、今回は石崎さんにも一本取られた!今回も田舎の祖母を殺害して孤島に乗り込むことにした壁際サラリーマンですが、まさかこんなこともあろうかと「ばあさんは双子ってことにしてある」とは!まさに双子トリック!!ユリの「やっぱ石崎さんはすごいわ。家族計画がしっかりしてるわ」にも笑かしていただきました。

そうそう肝心のミステリ部分、なにを「呪い」と定義しているかについては解り易いかと。けれど、「犯人はなぜそんなことをしたのか」についてはねぇ…動機じゃないですか?はっきり言ってどうでも良い。動機なんてその人(犯人)にしかわからない。だから、本作はミステリ(推理小説と言い換えた方が良いかしら)とか言えないと思ったり思わなかったり。

そういえば、石崎さんが「科学の子」だとは思いもよりませんでした。変態の子じゃないんだ。

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2009年1月 8日 (木)

『あなたがいない島』 石崎幸二

無人島サバイバル生活

持ち込めるものはひとつだけ

さぁ、貴方ならなにを持ち込みますか?

報酬いらないのでアフィリ表示させてくださいお願いします(何度目だ)っていうか、こんなにおもしろいのに絶版扱いって!?文庫化しなさいよ文庫化!!

というわけで、石崎&ユリ&ミリアシリーズ再読です。本当は 消化すべく『日曜日の沈黙』を探したのですが発見できず…引越しのどさくさにまぎれて消滅した模様。

でも、本作『あなたがいない島』の方が好きだったように記憶してるし!石崎&ユリ&ミリアシリーズ(長いな…)はこの3人の掛け合いが売りなのですが、もう最高です。最初からユリ&ミリアには遠慮なんて欠片も存在しませんでしたが、第2弾はさらにその上をゆく出来。

何度が爆笑させていただいた「瞬殺のミリア、古典ミステリネタバレシリーズ」がとにかくお薦め。クリスティの超有名作をお読みになったことのある方なら、このウイットなジョークを解ってくださるかと。むしろ、未読の方はこの素敵なジョークを楽しめないなんて損。読んでからいらっしゃってください、と入場をお断りしたい気分です。

そして、石崎さんってもの凄く出来た人間だよなぁなんでセクハラなんてしちゃったんだろう壁際どころか壁に喰い込んじゃってるんでしょ手取り20万円か結構もらってるじゃん、とか思ったり思わなかったり。その心の広さに改めて驚かされた一作。まぁ、友だちができて嬉しいのか。

そしてミステリ。3人の掛け合いに紛れて目立ちませんが、なかなか優秀だと思うのですが。「この心理学研究イベントの意味は?」「持ち物がひとつに限定されている理由は?」「ひとつ、またひとつと持ち物が消えてゆくのは何故?」そして、「殺人犯人は誰?」。全ての疑問が綺麗に解決されてゆく様にうっとり。

さらに「事件解決だ!」と思っていたらエピローグでもやってくるんだから。なかなかやるな石崎幸二氏。純粋なミステリ部分の解決は石崎(登場人物の方)にしっかり任せるあたりも憎い演出だと思います。

ところで、やっぱり今回もユリとミリアの読み分けはつきませんでした。ユリとミリアの名前を全て入れ替えて文庫版発売してみませんか?

まさに誤植トリック。

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2009年1月 7日 (水)

『予告探偵 木塚家の謎』 太田忠司

予告探偵―木塚家の謎 (C・NOVELS) Book 予告探偵―木塚家の謎 (C・NOVELS)

著者:太田 忠司
販売元:中央公論新社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

バカミス中のバカミス

あの予告探偵が帰ってきた!

KING OF バカミスとして大絶賛させていただきました(笑)『予告探偵 西郷家の謎』の続編です。天に届かんとするほどの徳と神のごとき英知を持った尊ぶべき人間・摩神尊が帰ってきました。折り返しの「著者のことば」が素敵。

ベタなくらい古典的なミステリがお好きな方
腰が抜けるくらいおバカな話でも許せる方
傲岸不遜で傍若無人な探偵に我慢できる方
ワトソン訳がとことん情けなくても大丈夫な方
どうぞ、この本を開いてください

って(笑)もちろん全てに合致する私は開かせていただきましたよ本作を。

前作のネタがあれなので(笑)二番煎じは通用しないとは思っておりましたが、比較的まともな作品がきて逆にびっくり。5つの短篇が収録されておるのですが、そこに少しだけ秘密が…って短篇の題名読み上げるだけで丸判りなのでネタバレにならないですよね、5人の木塚君が登場します。しかし、摩神尊はひとり。摩神尊とは何者なのか?が本作の主題です。

でもまぁもちろんご期待通り、まともな(論理的なと言い換えた方が良いだろうか)結末は用意されておりませんのでご安心を。ちなみに、収録されている5つの短篇=5つの謎(殺人事件)なのですが、こちらもまともな結末は用意されておりません。頁数の都合なのか、推理は非常お粗末です。素材自体は悪くないと思うのですが、全て摩神尊の思いつきで解決してみました…というか、警察がちょちょいと現場検証すれば判ってしまう程度の謎なんですよね。まさに傲岸不遜で傍若無人といった感じ。

なので、あくまでバカミスを読む優しい気持ちで本作を開いてあげてください。そうすれば、「それなりにまともな作品じゃないか」という方向で楽しめるのではないかと。

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