書籍・雑誌

2017/11/03

『二重螺旋の誘拐』 喜多喜久


読了から10日以上経っているので忘れかけている部分もありますが。タイトルの通り誘拐モノです。警察は出てきません。

(ここからネタバレします)叙述トリックがふたつ仕掛けられています。ふたつの誘拐が起こった日付とマナちゃんの存在。このどちらについてもトリックが登場した瞬間に「ああ、こういう趣向か」とわかってしまったのはなぜだろう。あからさま過ぎたわけでもないと思ったのですが。叙述が出てくるたびにニヤニヤしながら読むのは好きです。でも最後に世界をひっくり返されるのはもっと好き。

(本物の)マナちゃん誘拐事件の犯人が妻であることが判明したところがピークだったと思います。父親との確執とか暗躍とかはやや微妙かな。

文庫版の表紙はハードカバーより犯罪のニオイがしますね(笑)

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2017/10/08

『バチカン奇跡調査官 千年王国のしらべ』 藤木稟

奇跡調査官シリーズ第4弾。まさかのオチ。真面目に読んでいたら壁本ですが、第4弾まで読んできた読者なら余裕で楽しめると思います(褒めてる)

(ここからネタバレします)どんなに優秀な催眠術グループでも何年もの間、数百人もの人間に催眠術をかけて誰にもバレないというのはあり得ないと思うのですが、そこを突っ込むのは野暮というもの。そこをまるっと呑んだ上でこの作品をレビューするなら、平賀とロベルトが時間を盗まれている描写をもっと読者に提示しれくれたらミステリ度が上がって嬉しいですね。ヒントになりそうなのはロベルトのガブリエルくらいでしたので。もう少しあって良いと思います。

ロベルトは信仰心が薄い(本人談)ので奇跡認定に精神的な障害があるという件はとても良かったと思います。その障害を乗り越えるのが平賀の生還というのも筋道として受け入れやすかったですね。

第5弾はどんな荒唐無稽な物語なのか。今からとても楽しみです。

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2017/10/01

『鬼畜の家』 深木章子

保険金詐欺を繰り返す鬼畜な母親とその家族を追いかけるミステリ。

関係者へのインタビュー形式で物語が進み、徐々に真実が明らかになる仕組み。改めて考えるとインタビューが時系列だったのでとても読みやすかった。(ここからネタバレします)利き手の伏線には気付いたが、そこから発想を転換するに至らず正体は読み切れませんでした。おかしなところは確かにあったのです。父親の殺害に関与したにも関わらず壊れなかった姉(確かに壊れてはいたのですが)。いくら優秀な姉が教えてたとは言え、やはり社会に慣れるに早すぎる妹。

そして多田母へのインタビュー。あれを看破するのは無理なのかな。敢えて挙げるなら冒頭に榊原の名前が出ていない点だと思うのですが、あれだけで別人を疑えというのは無理な話でしょうか。

細やかな伏線が気持ちの良い作品。読了感もタイトルほどには悪くない。読みやすく、おもしろい一冊でした。

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2017/09/28

『つれづれ、北野坂探偵舎 著者には書けない物語』 河野裕

シリーズ第2弾。バラバラになった舞台脚本を並べ替え、欠けた部分を補うというのがメインのストーリー。そこに作者らしい登場人物の心の揺れや葛藤が描かれています。

舞台の内容が暗喩を用いた文学的なものだったのが個人的に苦手でした。雨坂の書く作品は読めないタイプだと自覚しています(笑)

今回はとても印象的なやりとりがありました。デビュー作は特別という件に出てきた「天才が、凡人に歩み寄らないでください」という言葉。とても良いです。作家としてデビューすることで読者を意識するようになり、個人の我儘が損なわれ、「もっとも鋭利な一欠片が、僅かに削れて丸くなる」。凡人の私でもよくわかる論理です。そして作家に掛ける言葉も同じくなるでしょう。

ちなみに↑の感想のなかに本作の鍵となるフレーズが入っています。伏線ってやつですね(違う)

作家と編集者、ふたりの過去・目的が明らかになり明らかに加速した物語。続きが気になります。

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2017/09/22

『教場2』 長岡弘樹

前作と同様の趣向。だた、読了後に後味が悪いとは思わなかったのは最後の話が爽やか(良い話)なのと全体的にマイルドになっているからですね。巧いこと隠して生きてきたはずの負の部分をああも見透かされるというのはさぞ背筋が冷たくなることでしょうが。

個人的ベストは「敬慕」かな。女の嫌な部分がよく書かれていました。好き。あとは桐沢の話し方とか在り方がなんとなく好きです。

ミステリ好きとしては講義の形で書かれる捜査テクニックが気になって仕方がない。厳しい訓練は嫌ですが、座学だけなら1日体験入校したい。即効で風間教官に追い出されそうですが。

現役時代も凄腕だったという風間教官。彼はどんな事件に関わり、どう捜査をし、どう犯人と対峙したのか。ぜひ風間刑事の物語が読みたい。そして今はなぜ警察学校にいるのか。いつか読めるのでしょうか。

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2017/09/12

『つれづれ、北野坂探偵舎 心理描写が足りてない』 河野裕

アニメ「サクラダリセット」視てます。1クール目はかなり厳しかったですが、2クール目15話くらいからの怒涛の展開は素晴らしいです。伏線しかない。脱落しなくて本当に良かった。

そんな「サクラダリセット」のCMで興味が湧いたので読んでみた本作。幽霊が視える編集者(左)と幽霊を追い求める作家のコンビものです。シリーズ第1弾は連作短編集と言えなくもない作りの長編で、各章でしっかり伏線張られています。伏線大好き。伏線が綺麗に回収される快感が欲しくてミステリを読んでいると言っても過言ではない。

そんな伏線だらけの中に編集者と作家の独特なやりとりが挟まってくるわけですが、これがなかなか洒落ていておもしろい。好き嫌いは分かれると思います。個人的には大好物です。パスティーシュもウエイトレスにしておくには惜しい人物なので、そのうち何者なのか明かされると思います楽しみ。

編集者の目的はつまるところ作家に物語を書かせることだと思いますが、作家の目的は未だ掴めませんね。なぜ「紫色の指先」を追いかけているのか。何巻くらいで明らかになるのでしょう。気になります。

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2017/09/10

『バチカン奇跡調査官 闇の黄金』 藤木稟

奇跡調査官シリーズ第3弾。

第1弾は平賀、第2弾はロベルトの物語でしたが第3弾はまさしく平賀&ロベルトの物語でした。平賀は科学的な分野から、ロベルトは暗号(古文書)の分野から奇跡にアプローチし謎を解く。どちらかに極端に偏ることなくまさにバディという感じでした。

凍死の謎だけはどうかと思いましたが。

表紙のジュリア司祭に関しては言葉で分かりあうことは100%無理でしょうね。育ち方、生き方、考え方そのすべてが違う。言葉も通じているかのようで通じていないのでしょう。そんな彼とどんな決着をつけるのか今から楽しみです。それにしても組織が大きすぎる。

ミステリ好きなので事件が起こり、それを追いかける展開はもちろん嬉しいのですが、がっつり奇跡調査という作品も読みたい。短編の方が望んでいる形に近いのでしょうか。短編を読むのも楽しみです。

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2017/09/07

『長い長い殺人』 宮部みゆき

登場人物の財布を語り部に保険金殺人事件を追う異色のミステリ。

語り部が財布であるがゆえに視ることができないもどかしさだったり、財布に小物や大切なものを入れる人が多いことを活かした描写があったりと物語の肝以外の部分も楽しめた。財布は購入者(選んでくれた人)を大切にする傾向があるようです(笑)

最終的にどんな物証で彼らの罪が暴かれるのかと期待して読んだが(ここからネタバレします)結局は罠に嵌った共犯者の供述からとは。犯罪に関わる人数は少なければ少ない方が良い派なので、殺人を専門に請け負う(立場の違う)共犯者がいたのは少し残念。でも、叔母さんを嘘で呼び出した人物がいることを考えると共犯者の存在は中盤から明らかだったんですよね。

皆がつらい作品だが、叔母を亡くした少年がやはり一番気にかかった。大人が信じられなくなりそうで。エピローグが彼をケアするために書かれていてとても良かった。

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2017/09/03

『そして、何も残らない』 森晶麿

廃校になった中学校で3年前の仲間の死の真相を追う青春ミステリ。森晶麿は初読。

『そして誰もいなくなった』のオマージュであることを考えると連続殺人の真相と意図が読めてくる。ミステリの趣向として悪くないのだが、登場人物たちの話し方や地の文が厨二臭くて少し引いてしまった。

全体的に少しずつ惜しいという感じ。(ここからネタバレします)全員のアリバイ的に連続殺人の成立必須条件が内山の介入なんだけれど、登場人物ほど読者は内山があの場にいると信じていなかったはず。だって内山が呼び出されるがまま現われて、彼らを殺害して回る必要性がない。とすると次に考えるのが彼らの中の何人かが結託している可能性なのだけれど、状況によって行動チームがコロコロと変わっているので結局アリバイなしの人物がいなくなり全員が結託していることがバレバレになってしまう。内山の介入をもっと信じ込ませるか、完全にアリバイなしの人物をひとり作っておくべきだったと思う。というか、最初の毒殺の時点で妹がもっと疑われていないとおかしい。趣向がとても良かったのでもっと作り込んで欲しかったです。

ちなみに、罪を犯した人物は作中で裁かれるべきが個人的なポリシーなのでラストも残念でした。

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2017/08/30

『戦場のコックたち』 深緑野分

このミス2016第2位。評判がとても良いので期待していたのですが、戦争の描写が想像していたよりもかなりヘビーで腰が引けてしまいあまり楽しませんでした。残念です。

ミステリが弱かったのも楽しめなかった一因かと。戦場でコックたちが謎を解き明かすというあらすじ説明は決して誤ってはいないのですが、この作品のメインはやはり戦場の描写、そこで生きて死んでいく兵士たちの描写なんですよね。ミステリは彼らを描くトッピングなんです。でも私はそのトッピングを一番楽しみにしているのでやはり物足りなさが残ります。

それでも「戦いの終わり」で明かされた彼の正体、その伏線の張り方はミステリ的でしたね。こういうのは大好きです。誰が夫婦を殺したか、が謎となる「ミソサザイと鷲」も(犯人は明らかでしたが)楽しめました。

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