書籍・雑誌

2017/06/27

『ある閉ざされた雪の山荘で』 東野圭吾

再読…のはず。ノベルス版あらすじで「一度限りの大技」と豪語するほど大胆なトリックものなのにまったく覚えていなかった。残念というかお得な頭というか。

大好き雪の山荘ものですがその設定の作り方が実に特殊です。なぜなら実際には雪なんて降ってない!あくまでも雪の山荘に閉じ込められたという体の芝居(の練習)である、外部と連絡を取った者はオーディションの合格を取り消すという心理的なクローズドサークルですね。

犯人の目星は探偵役と同じくらいに付きましたが、そのあとのどんでん返しまでは想像していませんでした。ラスト後、この芝居を描ききった能力を活かして演劇のシナリオを書いたら良いと思う。ちなみに冒頭からネタバレ全開のサービス精神が個人的に大好きです。

90年代前半、新本格ブーム真っ最中の講談社ノベルスらしい1冊。現在の東野圭吾にこれを書いてくれと頼んでも書けないのではないかと思う。とても好き。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017/06/26

『99%の誘拐』 岡嶋二人

タイトル通り誘拐モノのスピード感とスリリング感を味わえる名作。誘拐された側と誘拐する側のふたつの視点が楽しめます。

が、この作品のすごいところはもっと違うところにあるんですよね。初版は1988年なのですが、作中で最先端のコンピュータ技術がバンバン使われているのです。2017年に生きる我々にとっては当たり前(あるいは少し古い)の技術ですが、1988年当時の読者はこれを読んでどう感じたのかが気になります。あり得ない、遠い未来の技術だと思ったでしょうか。生活レベルになったのはやはり95年のWindows95以降だと思うので。

読み物である以上、最終的に犯罪者は裁かれるべきが信条ですが慎吾の心情もわからなくはないので復讐の成功おめでとうは言いたい。でもやはり犯罪は犯罪なので美談のように終わるのはどうかな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017/06/22

『ノッキンオン・ロックドドア』 青崎有吾

不可能専門探偵と不可解専門探偵がタッグを組んだ探偵事務所「ノッキンオン・ロックドドア」が舞台の連作短編集。かなり変わった事務所名は、インターホンを設置せずノックの音でどんな人物(依頼人)がやってきたのかを推理することから名づけられました。運送業のおじさん可哀想。

作品はどれもさっくり読めますが、トリックに趣向が凝らしてあってなかなかにおもしろいです。一見して不可解事件かと思いきや、調べが進むにつれ不可能事件に様変わりするなど見事。個人的ベストはズッコケたくなる「ダイヤルWを廻せ!」でしょうか。推理ゲームから始まる「十円玉が少なすぎる」も好き。

倒理の首元に潜む過去の事件と因縁が気になりますが、それは年内に発売が決定している第2弾に期待ですね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017/05/27

『夕暮れ密室』 村崎友

横溝正史ミステリ大賞落選作だが、綾辻行人と北村薫のプッシュで単行本化した本作。本ミス2016第14位。

タイトル通り密室ものです。密室トリックそのものは悪くなかったです。○○○な密室ってやつですね。それよりも、犯行時の犯人の行動原理(思考過程)がさっぱり理解できない。(ここからネタバレします)そもそもなぜシャワールームに死体を運んだのか。いや、一応説明はあるのですが星川のように川に突き落とすのではダメだったのでしょうか。ついでに言えば犯行は犯人の家で行われたわけですが、高校生の女の子が夜に出歩くとして行く先を家族に告げていない可能性はいかほどか。このあたり密室を作るためだけに犯人が行動しているように思えてならないですね。しかもその密室は○○の産物だし。

青春パートもあまり共感できなかったです。被害者がなぜ崇拝に近いレベルで男子に好かれているのか、冒頭の彼女の生存パートだけでは理解できませんでした。そういえば、陸上部女子の告白がなにかの伏線かと思っていたのですが、そんなことはありませんでしたね。

7章久保田くんのバカミス推理は「奇跡が起こった」だけで具体的(物理的)にどんなことがシャワールームで起こったのかを一切説明しようとしないところが清々しくて好きです(笑)キャラクタたちといっしょにずっこけました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017/05/22

『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』 雫井脩介

誘拐をテーマにした『犯人に告ぐ』シリーズ第2弾。

誘拐を外国のようにビジネスとして行い、「(今年を)日本における誘拐ビジネス元年」にしようと考える犯人グループ。緻密に計算され、用心されたその計画は成功するかに思えたのですが…。犯人側に感情移入するように書かれているので、正直なところ誘拐の成功が見たかったような気もします。最後も切ないです。RIPされちゃいましたから。

振り込め詐欺、誘拐、警察の捜査、身代金の受け渡しと物語は大きく動いているのに、「淡々と」という形容詞がぴったりくる作品です。実は『犯人に告ぐ』の感想でも似たようなことを書いているのでそれが作風なのかもしれませんが、もっとスピード感が欲しい。丁寧な描写は嬉しいのですが、とにかく先が読みたいときもある。

あとは人間関係やキャラクタの個性などが前作を読んでいる前提なのが少しストレスになりました。前作から期間も空いていますし、詳細に覚えていられる人ばかりではないので。前作ではああだったこうだったと言われてもそんなことあったっけ?と思うばかりでした。

それにしても淡野くんは何者。続きがあります!と宣言されたかのようなラスト。第3弾が待たれます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017/05/14

『札幌アンダーソング』 小路幸也

タイトルの通り、札幌を舞台にしたミステリ? と?を付けたのはいろいろと消化不良だからです。

(ここからネタバレします)結局のところ人に言えない性癖を持った者たちが集まる秘密クラブで事故死?があったため見せしめのために死体遺棄が行われた野菜事件と、春の挑発に乗る形で行われた3件の自殺教唆だと思うのですが、首謀者を罪に問えない(公にしても意味がない)とはなんという消化不良。半年間の営業停止=面目をつぶしたわけですが、その程度で良しとしたくない。シリーズが続いているようですが、組織との対決は続くのでしょうか。できれば壊滅にまで追い込んですっきりさせて欲しいです。特殊な性癖を持つ苦しみと、犯罪に手を染めることは別次元の話です。

春という天才の存在、その特殊能力についてはとても面白かったです。こうすると歴史とミステリがうまく絡むのかと感心しました。リアルな声なんですもの。ただ、私はキュウのようにさらりと春の存在に馴染むことはできないかな。どうにも怖いところがあります。家族の関係性とかね。犠牲という言葉が頭に浮かんできます。当人たちはそう思っていなくとも。

個人的には札幌駅の構造のおかしいところが気になります。あれは本当の話なのでしょうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017/05/09

『宝石商リチャード氏の謎鑑定』 辻村七子

読書メーターでお薦めされていたので読んでみました。宝石にまつわる日常系ミステリと紹介するのが正しいのだろうけれどミステリというよりお悩み解決系です。

さらっと読めるのはとてもポイントが高いです。個人的には宝石の蘊蓄がとても参考になりました。宝飾品にあまり興味のない私でも宝石店に行って石を眺めたくなります。1カラットは0.2グラム、鑑定書はダイヤモンドのみ、その他の石は鑑別書とかね。

リチャードの素性にもミステリがありそうですが、それはおいおいでしょうか。正義の性格は嫌いではないです。リチャードの毒舌?が程良く緩和してくれていると思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017/05/05

『名探偵 木更津悠也』 麻耶雄嵩

空前の麻耶ブーム襲来につき再読。『貴族探偵』毎週見てます。改変せず、御前様を装置としての名探偵のまま描写してくれたことに感謝です。

個人的にはこの木更津シリーズは麻耶作品のなかで最も一般受けすると思っているシリーズです。新書も文庫も絶版ですけど() 『弦チェレ』なる新刊が木更津シリーズらしいのでこの機に重版(復刊?)しましょう。

“一見”ステレオタイプな名探偵と助手ものです。“一見”なんですけどね。詳しい事情を知りたい方は『翼ある闇』を読んでください。後悔はさせません。個人的な麻耶ベストはいまだに『翼ある闇』ですね。あの衝撃と言ったら。って、随分と脱線しましたが(ここからネタバレします)私はずっと推理力が香月>>>木更津であることを木更津は気付いていないと思っていたのですが、本作収録の「時間外返却」でそうでもないような記述がありましたね。イタズラで死体を増やした人物にチクリと一言。

これは面白くなってきたぞ

推理力だけが探偵を名探偵たらしめるわけではないことは作中で何度も記述されています。振る舞いやプライド、信念、矜持、いろんな要素が名探偵には必要なのです。その意味で木更津は歴とした名探偵なのですが…その彼がどんな気持ちでヒントをもらい、どんな気持ちで自分が最初に真相に到達したかのように振る舞い、どんな気持ちでミステリでよくある“助手を馬鹿にする名探偵”の台詞を吐いているのでしょう。ああ、想像するだけで楽しい。これだから麻耶作品はたまらない。『弦チェレ』も楽しみです。

そうそう、本作収録作のなかの個人的ベストは「禁区」です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017/05/01

『パレードの明暗 座間味くんの推理』 石持浅海

座間味くんシリーズお馴染みの短編集。

座間味君の一言でこれまで見えていた事件の様相が一変する…という趣向ですが、今回もちょっと強引なものがちらほら。毎回書いていますが、その(座間味くんが指摘した)ように考えることもできる程度の書き方なら良いんです。でも、同席のふたりが座間味くんの言うことが唯一無二の真実であると盲信してしまうのがとても気持ち悪い。座間味くん、結構無理なこと言ってるよ?という気持ちになるのです。

今回は「アトリエのある家」のロジックはとても綺麗でした。「キルト地のバッグ」も良かったです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017/04/29

『スティグマータ』 近藤史恵

大好き『サクリファイス』シリーズ最新刊。とりあえず、

いますぐツールの結果を教えてください…!

と声を大にして言いたい。最高の終わり方でした。

今回は選手として下り坂に差し掛かったチカと、一度はレースの世界からドロップアウトした汚れた英雄の物語。メネンコの狙いは何なのか…というミステリ要素はそんなに難しくありませんし、言ってしまえばちょっとしたおまけです。それよりもレースです。ツール・ド・フランスです。

ラストの下り、ニコラの制止も聞かずに渾身の走り(アシスト)を魅せるチカ。最高でした。胸が躍りました。そして、ニコラの申し出を断るチカですよ。シリーズ初めからチカを追いかけてきた読者としては「一度くらい、アシストとしての役割を忘れてトップで走り抜けても良いんだよ」と言ってあげたいところですが…それをするとチカはチカでなくなるのでしょう。というわけで、チカがプレゼントした8秒。その8秒がどう活きたのかを知りたいのでいますぐレースの結果を教えてください。

個人的には8秒内差でニコラ総合優勝よりも、チカの男気に奮起したニコラが8秒以上の大差で優勝→チカ譲り損な展開が読みたい気がしますが(鬼)結果は次巻までお預けですね。それではいますぐシリーズの続きを()

次巻冒頭、チカの隣にスペイン美女がいても驚かないぞ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧