書籍・雑誌

2017/05/22

『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』 雫井脩介

誘拐をテーマにした『犯人に告ぐ』シリーズ第2弾。

誘拐を外国のようにビジネスとして行い、「(今年を)日本における誘拐ビジネス元年」にしようと考える犯人グループ。緻密に計算され、用心されたその計画は成功するかに思えたのですが…。犯人側に感情移入するように書かれているので、正直なところ誘拐の成功が見たかったような気もします。最後も切ないです。RIPされちゃいましたから。

振り込め詐欺、誘拐、警察の捜査、身代金の受け渡しと物語は大きく動いているのに、「淡々と」という形容詞がぴったりくる作品です。実は『犯人に告ぐ』の感想でも似たようなことを書いているのでそれが作風なのかもしれませんが、もっとスピード感が欲しい。丁寧な描写は嬉しいのですが、とにかく先が読みたいときもある。

あとは人間関係やキャラクタの個性などが前作を読んでいる前提なのが少しストレスになりました。前作から期間も空いていますし、詳細に覚えていられる人ばかりではないので。前作ではああだったこうだったと言われてもそんなことあったっけ?と思うばかりでした。

それにしても淡野くんは何者。続きがあります!と宣言されたかのようなラスト。第3弾が待たれます。

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2017/05/14

『札幌アンダーソング』 小路幸也

タイトルの通り、札幌を舞台にしたミステリ? と?を付けたのはいろいろと消化不良だからです。

(ここからネタバレします)結局のところ人に言えない性癖を持った者たちが集まる秘密クラブで事故死?があったため見せしめのために死体遺棄が行われた野菜事件と、春の挑発に乗る形で行われた3件の自殺教唆だと思うのですが、首謀者を罪に問えない(公にしても意味がない)とはなんという消化不良。半年間の営業停止=面目をつぶしたわけですが、その程度で良しとしたくない。シリーズが続いているようですが、組織との対決は続くのでしょうか。できれば壊滅にまで追い込んですっきりさせて欲しいです。特殊な性癖を持つ苦しみと、犯罪に手を染めることは別次元の話です。

春という天才の存在、その特殊能力についてはとても面白かったです。こうすると歴史とミステリがうまく絡むのかと感心しました。リアルな声なんですもの。ただ、私はキュウのようにさらりと春の存在に馴染むことはできないかな。どうにも怖いところがあります。家族の関係性とかね。犠牲という言葉が頭に浮かんできます。当人たちはそう思っていなくとも。

個人的には札幌駅の構造のおかしいところが気になります。あれは本当の話なのでしょうか。

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2017/05/09

『宝石商リチャード氏の謎鑑定』 辻村七子

読書メーターでお薦めされていたので読んでみました。宝石にまつわる日常系ミステリと紹介するのが正しいのだろうけれどミステリというよりお悩み解決系です。

さらっと読めるのはとてもポイントが高いです。個人的には宝石の蘊蓄がとても参考になりました。宝飾品にあまり興味のない私でも宝石店に行って石を眺めたくなります。1カラットは0.2グラム、鑑定書はダイヤモンドのみ、その他の石は鑑別書とかね。

リチャードの素性にもミステリがありそうですが、それはおいおいでしょうか。正義の性格は嫌いではないです。リチャードの毒舌?が程良く緩和してくれていると思います。

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2017/05/05

『名探偵 木更津悠也』 麻耶雄嵩

空前の麻耶ブーム襲来につき再読。『貴族探偵』毎週見てます。改変せず、御前様を装置としての名探偵のまま描写してくれたことに感謝です。

個人的にはこの木更津シリーズは麻耶作品のなかで最も一般受けすると思っているシリーズです。新書も文庫も絶版ですけど() 『弦チェレ』なる新刊が木更津シリーズらしいのでこの機に重版(復刊?)しましょう。

“一見”ステレオタイプな名探偵と助手ものです。“一見”なんですけどね。詳しい事情を知りたい方は『翼ある闇』を読んでください。後悔はさせません。個人的な麻耶ベストはいまだに『翼ある闇』ですね。あの衝撃と言ったら。って、随分と脱線しましたが(ここからネタバレします)私はずっと推理力が香月>>>木更津であることを木更津は気付いていないと思っていたのですが、本作収録の「時間外返却」でそうでもないような記述がありましたね。イタズラで死体を増やした人物にチクリと一言。

これは面白くなってきたぞ

推理力だけが探偵を名探偵たらしめるわけではないことは作中で何度も記述されています。振る舞いやプライド、信念、矜持、いろんな要素が名探偵には必要なのです。その意味で木更津は歴とした名探偵なのですが…その彼がどんな気持ちでヒントをもらい、どんな気持ちで自分が最初に真相に到達したかのように振る舞い、どんな気持ちでミステリでよくある“助手を馬鹿にする名探偵”の台詞を吐いているのでしょう。ああ、想像するだけで楽しい。これだから麻耶作品はたまらない。『弦チェレ』も楽しみです。

そうそう、本作収録作のなかの個人的ベストは「禁区」です。

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2017/05/01

『パレードの明暗 座間味くんの推理』 石持浅海

座間味くんシリーズお馴染みの短編集。

座間味君の一言でこれまで見えていた事件の様相が一変する…という趣向ですが、今回もちょっと強引なものがちらほら。毎回書いていますが、その(座間味くんが指摘した)ように考えることもできる程度の書き方なら良いんです。でも、同席のふたりが座間味くんの言うことが唯一無二の真実であると盲信してしまうのがとても気持ち悪い。座間味くん、結構無理なこと言ってるよ?という気持ちになるのです。

今回は「アトリエのある家」のロジックはとても綺麗でした。「キルト地のバッグ」も良かったです。

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2017/04/29

『スティグマータ』 近藤史恵

大好き『サクリファイス』シリーズ最新刊。とりあえず、

いますぐツールの結果を教えてください…!

と声を大にして言いたい。最高の終わり方でした。

今回は選手として下り坂に差し掛かったチカと、一度はレースの世界からドロップアウトした汚れた英雄の物語。メネンコの狙いは何なのか…というミステリ要素はそんなに難しくありませんし、言ってしまえばちょっとしたおまけです。それよりもレースです。ツール・ド・フランスです。

ラストの下り、ニコラの制止も聞かずに渾身の走り(アシスト)を魅せるチカ。最高でした。胸が躍りました。そして、ニコラの申し出を断るチカですよ。シリーズ初めからチカを追いかけてきた読者としては「一度くらい、アシストとしての役割を忘れてトップで走り抜けても良いんだよ」と言ってあげたいところですが…それをするとチカはチカでなくなるのでしょう。というわけで、チカがプレゼントした8秒。その8秒がどう活きたのかを知りたいのでいますぐレースの結果を教えてください。

個人的には8秒内差でニコラ総合優勝よりも、チカの男気に奮起したニコラが8秒以上の大差で優勝→チカ譲り損な展開が読みたい気がしますが(鬼)結果は次巻までお預けですね。それではいますぐシリーズの続きを()

次巻冒頭、チカの隣にスペイン美女がいても驚かないぞ。

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2017/04/23

『いまさら翼といわれても』 米澤穂信

古典部シリーズ最新短編集。

奉太郎の過去を扱った二編「鏡には映らない」と「長い休日」がとてもとても良かった。奉太郎をヒーローだという彼女の「会って話したら、嫌いになるでしょ?」が最高。

「箱の中の欠落」は動機が語られないところが良いですね。冒頭の伏線もとても自然で良いです。そしてラーメンが美味しそう。

「わたしたちの伝説の一冊」と「いまさら翼といわれても」は青春すぎて眩しい。表題作は翼の前の言葉が「いまさら」なのが辛く苦しいですね。いままで捨ててきたもの諦めてきたものが詰まっています。悩める彼女たちに幸あらんことを願うのでなるべく早く続編を。

それにしても奉太郎のお姉ちゃんは一体何者なんでしょうかね。私、いつも気になります。

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2017/04/17

『陽気なギャングは三つ数えろ』 伊坂幸太郎

9年ぶりシリーズ新刊に歓喜。

軽快で痛快な4人のやりとりが大好きです。脳内キャスティングは映画の4人なのですが本当にぴったりだと思います。何年かぶりに見たい。

今回は久遠の活躍が多めでしょうか。巻き込まれの原因作ったのも久遠ですが。成瀬は課長らしく地味にいい仕事します。雪子はまとう空気が美人。成瀬とそれっぽい関係だったはずですが、今回はまったくそういう描写がありませんでしたね。あとがきのしれっと変更した部分のひとつでしょうか。語り(視点)で一番楽しませてくれるのは響野だと思っているのですが、演説は4分も聞けば十分です。

個人的に好きなシーンは振り込み詐欺と藁の中から藁でしょうか。アルファベット3文字も好き。

ラストの展開に少し物足りなさを感じましたが、それでもやっぱりおもしろい。よたび彼らが事件に巻き込まれることを祈るばかりです。

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2017/04/15

『刑事の絆 警視庁追跡捜査係』 堂場瞬一

警視庁追跡捜査係シリーズにして『凍る炎 アナザーフェイス5』直後から物語が始まるコラボ作です。

大友はなぜ撃たれたのか、撃ったのは誰なのか。沖田と西川が犯人に迫る過程で大友が扱った過去の事件や私生活を暴いていくわけですが、それがなかなかおもしろい。なんだかアナザーフェイスシリーズを読むより大友のことがわかる1冊なような気がします。

犯人(真相)については予想通りでしたね。あの電話の件はあからさまでしたものね。

個人的には読んだばかりの『交錯』の内容がかなり物語に絡んできたのが驚きでした。『交錯』が2010年、本作が2013年出版ですが、いつかこの設定を使おうと温めておいたのでしょうか。『交錯』→『凍る炎』→『刑事の絆』の順で読んだ人で『凍る炎』の段階で彼らの正体に思い至った人はいるのかな。とにかくキャラの把握のためでしたが『交錯』を読んでおいて良かったです。

沖田と西川はすっかり仲良くなってましたね。いつか『交錯』と『刑事の絆』の間の物語も読みたいと思います。

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2017/04/07

『交錯 警視庁追跡捜査係』 堂場瞬一

追跡捜査係シリーズ第1弾。『凍る炎 アナザーフェイス5』 の続きはこちらの『刑事の絆』になると知り、シリーズキャラクタを知る目的で読んでみました。

行き詰った捜査を別の視点で見直すために存在する追跡捜査係。その係に所属する犬猿の仲、沖田と西川が本作のW主人公です。無差別殺傷事件と貴金属店強盗事件が次第に交錯し、沖田と西川の関係も交錯する。静と動、冷静と情熱の間()、なかなかよいコンビネーションです。

(ネタバレします)個人的には無差別殺傷事件の犯人を刺して逃亡した男が西川と懇意にしていた青年だったというのは都合が良すぎるような気がしましたが、それもまた物語でしょうか。いや、絶対に彼だと思ってましたけどね。そうじゃないと作中で彼の失踪に触れる意味がない。

続いては『刑事の絆』を読む予定ですが、シリーズも5弾まで進みふたりの距離はどこまで近づいているのか。楽しみです。

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