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2016/12/30

『ジェリーフィッシュは凍らない』 市川憂人

第26回鮎川哲也賞受賞作。2017年本ミス3位、このミス10位。帯には「21世紀の『そして誰もいなくなった』登場!」の文字、なるほど心が躍ります。

単刀直入に言って、とても良かったです。前評判が高かったのでハードル高くして読んだのですが、それでもおもしろかった。

新型小型飛行船ジェリーフィッシュの中で発生した連続殺人事件。乗組員は6人、そして雪山に不時着したジェリーフィッシュから発見された死体も6体。そして6体すべてが他殺。果たして犯人は誰か。生きているのか死んでいるのか。生きていたとして吹雪の雪山からどうやって脱出したのか。なんて素敵な謎でしょうか。

(ここからネタバレします)ミステリスキーなら犯人は誰かについては中盤でわかるのではないでしょうか。殺人の動機がレベッカの死にあるならば、6人の中で彼女の死に関係していない人物が殺される謂れはない。けれども警察はいつまで経ってもその人物(事実)について言及しない。もしかして人物誤認が起こってる?と思ったところで死体1体が切断されていたことが明らかになります。バラバラ死体と言えば死体の運搬。ああ、この死体が犯人の代わりなのだとわかったところで作中でも人物誤認のキーワード(名簿の名前)が登場します。

この情報を出すタイミングが本作はうまいんですよね。幾度か推理「させられている」という感覚を覚えました。

残すは犯人がどうやって雪山から姿を消したのか…ですが、これもまたうまい。140Pの傍点のセリフとか素晴らしいです。ここにこのセリフがあることでしっかり読者に推理する鍵を提示していることがわかる。本格ですよね。大好きです。

とてもおもしろかったです。これがデビュー作だなんて。次回作が楽しみで仕方ありませんね。

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2016/12/18

『賢者はベンチで思索する』 近藤史恵

電子書籍にて。さくさく読める日常の謎ものかと思いきや、探偵役である老人に驚きの秘密が。

収録されている作品(謎)は3編ですが、突出した作品はないです。でも、日常の謎ものによくある「偶然の産物」とか「勘違い」から謎が発生するのではなく、そこに明確な悪意があるのが良いと個人的に感じました。

そして、うっすらと伏線の張られていた国枝老人の正体。これはいい。(ネタバレします)根っからの善人ではないのでしょう。過去に詐欺行為を働いていたのは間違いないのだし。けれど悪人でもないんだろうなあ。続編ではもっと国枝老人について掘り下げているのでしょうか。それとも登場人物一新なのかな。まさか本物の国枝老人が…?

続編を読むのが俄然楽しみに。1編数十分で読めるので寝る前の読書におすすめです。

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2016/12/14

『東京結合人間』 白井智之

2016年本ミス8位。

いきなり始まるグロ描写と奇妙な世界観。胸糞悪い少女売買と監禁、そして殺人というキツイ前半を乗り越えるとロジックばりばりの本格ミステリが始まります。私もグロは決して得意ではありませんが、それでも読んで良かった、おもしろかったと思えた1冊。

愛し合った男女が結合し、4つの目、ドラム缶のような胴体、4本ずつの手足という結合人間が生活を送る世界。想像するとちょっとキツイので、覚えて欲しいのは結合の際にエラーが起こり、嘘を吐けないオネストマン(正直者)が生まれてしまうという事実。このオネストマンが集められた島で殺人事件が起こります。オネストマンは嘘が吐けないはずなのに、誰も殺人を犯していないという。つまりはオネストマンのなかにノーマルマン(正常に結合した嘘の吐ける人)がいるということ。さて、ノーマルマンは誰なのか。

読者はノーマルマンが島に2人いること、そのうちの1人が誰なのかを知っているわけですが、それでもすべての謎は解けません。(ここからネタバレします)寺田ハウスのオナコの生死がわかっていないので、オナコがスーツを着てメンバーの中に紛れ込んでいる可能性には思い至りましたが、羊歯病を発症した双里かと匂わせておいて○○とは。オナコの性別が○であることが少しトリックに絡んでましたが、どうしてオナコなんてあだ名にしたんだろう。いや、名字から…ってのはわかるんですが、やはり最後にコがつくと子を連想してしまうので○○トリックは少しやりにくいような?

今井、生き残りの3人、そしてエピローグで語られる3つの推理。うち2つは偽物なのでもちろん強引なところもありますが、やはりロジックで読ませる作品は好きです。頭がこんがらがりそうになりながら必死で読むのが良い。設定で喰わず嫌いしていましたが、読んで良かったです。おもしろかった。

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