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2016/10/16

『どこかでベートーヴェン』 中山七里

大好き岬洋介シリーズ第4弾。ラストがちょっとやり過ぎな『いつまでもショパン』から時は遡り、まさかの高校生・岬洋介。エピソード0とも言える本作の読みどころは思春期の醜い嫉妬です。

ミステリ要素もあります。岬洋介が死体の発見者であり第一容疑者であり探偵です。ただ難易度は低いので、ミステリを読み慣れた人なら事件発生前のある記述で犯人に到達できるはず。

でも、本作の読みどころはそこじゃないんです。いやあ、胸糞悪い。岬洋介という才能(と努力)の塊が現れて、その存在が才能もなければ努力もできない自分を否定しているかのように感じる思春期の機微はわかります。わかりますがあそこまで悪しざまに他人を罵れますかね。岬洋介→殺人犯に違いない→人格を否定しても構わないはずだの論法もわかるのですが…やはり気分は悪い。岬の左耳の件を嘲笑った個所が一番腹立たしかったですね。岬自身がクラスメイトなど眼中になかったからいいですけど。左耳の件も彼なりに克服したことを知っているからいいですけど。

最後の一行のような趣向は個人的に大好きです。(ネタバレします)作中のキャラクタと作者を同一視しない術はミステリで鍛えられています。大丈夫です。新たな道をきちんと見つけ歩んでいる彼の次回作、『もう一度ベートーヴェン』がいまからとても楽しみです。

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