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2016/07/27

『密室館殺人事件 名探偵の証明』 市川哲也

『名探偵の証明』に続くシリーズ第2弾。密室館という館で、『インシテミル』なデスゲームが行われ、名探偵にハウダニットの挑戦状が届くというミステリ好きには堪らない1作です。

本作の主題は「名探偵の使命」だと思いますが、とりあえず名探偵は神様じゃないよーと言いたい。いや、事件に巻き込まれてしまっただけの登場人物にとってはまるで神様のような存在だとは思いますが。神様のような存在であっても、神様ではない。全知全能ではないので事件を防ぐだなんて大それたことはできないのです。それを勘違いし、逆恨みした登場人物の視点で文章が進むので正直気分が悪いです。アンチ的手法で結果的に名探偵ageするんだとわかっていても。

(ここからネタバレします)事件の真相は2段階。1つ目は密室館事件の(シナリオ通りの)真相ですが、ハウダニットを宣言することでフーダニットやホワイダニットを遠ざける…というのはなかなかうまいし、蜜柑の推理も綺麗だと思いました。栖原の事件を蜜柑が鮮やかに解いたことで事件が大きく動き、そこからひとっ飛びに解明に繋がるという構成も好きです。そして2つ目の真相ですが、個人的には蛇足感ありますね。恋という存在は本作のなかでかなり異質です。端的に言うなら怪しいですし、彼女もまた名探偵ではないかと疑った読者は多かったのでは? そこから「名探偵の使命」を持つ者と持たざる者の対決に繋がっていく構成はわかるのだれど…なんだろう、うまく表現できないこの気持ち。恋は事件を未然に防ぐことができた(事件が発生する前に真相に到達していたので)=優秀な名探偵事件を防ぐことができる=名探偵は神様であるに通ずるような展開だから受け入れられないのだろうか。でも、恋が真相に気付いたのは偶然…も味方につけるのが名探偵だと言われたら()

妙に考えさせられる1冊。軽妙な語り口ですが、しっかりミステリです。ミステリ好きならば楽しめる小ネタも随所に散りばめられています。好き。

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