« 2016年6月 | トップページ | 2016年8月 »

2016/07/31

『暗闇坂の人喰いの木』 島田荘司

今年の重点目標でもある御手洗シリーズ。かなり厚かった(671p)もののおどろおどろしい設定、次々と起こる事件、死体、謎と読ませる1冊でした。

トリックはまあ御手洗だし…という感じなのですが、(ネタバレします)偶然です(キリッ はちょっと笑います。あの場所から空中ブランコのように…という肝の部分は十分に推理?可能なので良いのですが。犯人も意図しない不可思議な状況ってのはミステリあるあるです。

対して、巨人の家の一件は綺麗にまとまってましたね。納得です。素晴らしい。

ところどころ挿入される手記を読みとれば犯人とその動機は自明かと。大楠を中心とした奇想な世界観と御手洗の名探偵っぷりを楽しむ1冊。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016/07/27

『密室館殺人事件 名探偵の証明』 市川哲也

『名探偵の証明』に続くシリーズ第2弾。密室館という館で、『インシテミル』なデスゲームが行われ、名探偵にハウダニットの挑戦状が届くというミステリ好きには堪らない1作です。

本作の主題は「名探偵の使命」だと思いますが、とりあえず名探偵は神様じゃないよーと言いたい。いや、事件に巻き込まれてしまっただけの登場人物にとってはまるで神様のような存在だとは思いますが。神様のような存在であっても、神様ではない。全知全能ではないので事件を防ぐだなんて大それたことはできないのです。それを勘違いし、逆恨みした登場人物の視点で文章が進むので正直気分が悪いです。アンチ的手法で結果的に名探偵ageするんだとわかっていても。

(ここからネタバレします)事件の真相は2段階。1つ目は密室館事件の(シナリオ通りの)真相ですが、ハウダニットを宣言することでフーダニットやホワイダニットを遠ざける…というのはなかなかうまいし、蜜柑の推理も綺麗だと思いました。栖原の事件を蜜柑が鮮やかに解いたことで事件が大きく動き、そこからひとっ飛びに解明に繋がるという構成も好きです。そして2つ目の真相ですが、個人的には蛇足感ありますね。恋という存在は本作のなかでかなり異質です。端的に言うなら怪しいですし、彼女もまた名探偵ではないかと疑った読者は多かったのでは? そこから「名探偵の使命」を持つ者と持たざる者の対決に繋がっていく構成はわかるのだれど…なんだろう、うまく表現できないこの気持ち。恋は事件を未然に防ぐことができた(事件が発生する前に真相に到達していたので)=優秀な名探偵事件を防ぐことができる=名探偵は神様であるに通ずるような展開だから受け入れられないのだろうか。でも、恋が真相に気付いたのは偶然…も味方につけるのが名探偵だと言われたら()

妙に考えさせられる1冊。軽妙な語り口ですが、しっかりミステリです。ミステリ好きならば楽しめる小ネタも随所に散りばめられています。好き。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016/07/23

『検事の死命』 柚月裕子

『最後の証人』 『検事の本懐』に続く佐方貞人シリーズ第3弾。

中編と言える「死命を賭ける」「死命を決する」が良かった。やはり法廷ものが好き。逆転劇があれば尚更。それにしても○○仲間である男に偽証を頼むなんて迂闊というか阿呆すぎるでしょうよ。

本作は『検事の本懐』から続いている部分があり、短編「業をおろす」などはまさに「本懐を知る」の続きなんですが、私が注目したのはしっかり借りを返してくれた南場です。南場の発破とそれに応える捜査員たち、そしてその情報をしっかり活かし権力に屈することなく起訴に持ち込む佐方。正しい仕事をしていると次第に仲間が増えていく感じがとても良いです。

これで佐方貞人シリーズの既刊分は読了。検事・佐方の仕事ぶりを2冊読んで改めて『最後の証人』を読みたい気分。弁護士・佐方ももっと読みたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016/07/10

『ダンガンロンパ霧切4』 北山猛邦

本格×ダンガンロンパの煽りは伊達じゃない。よくぞここまでダンガンロンパな世界観を壊さずにスピンオフが書けるものかと感心します。発売のたびに北山氏の株がぐんぐん上がるダンガンロンパ霧切、第4弾です。

1、2巻はまだ単独で読めましたが、3巻からはもう完全に続きものですね。組織から届いた12の挑戦状。うち6件は3巻で(ほぼ知らぬうちに)解決。残り6件を6人の仲間で分担します。そう、仲間が増えました。正直、前巻(武田幽霊屋敷の事件)の内容をほとんど覚えていないので3人の探偵が現れた時には「??????」だったわけですが、それでも読めます。大丈夫です。

そして、今回解決された事件は2つ。そのどちらも難易度は高くないです。そう、高くないんです。私にもわかったくらいですし。でも、霧切が向かった双生児能力開発研究所事件のコストは5億超なんですよね。ここの部分のハッタリが実にうまいです。敵が霧切&結のふたりだけなら犯人の目論見はうまくいったに違いない…かな?ふたりだけでも諦めなかったとは思いますが。

それにしてもラスト。果たしてどうなっちゃうんでしょうか。彼女の生存は疑ってませんが、どうピンチを切り抜けるのか…楽しみです。

そして、どうにも読めないリコルヌの思惑。ただでさえ、残りの3つの事件(リコルヌの分はおそらく描写もされずに終了したのでしょう)+霧切のピンチ+組織(龍造寺月下)との対決を次巻1冊で書ききるのは難しそうなのにリコルヌの件までとなると…あと3巻は必要でしょうか。まだまだ続くのは嬉しいけれど、待つのはつらい。おもしろいだけにつらい。贅沢な悩みです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016/07/09

『恩讐の鎮魂曲』 中山七里

御子柴シリーズ第3弾。大好き。

(基本的にネタバレしてます)前作『追憶の夜想曲』の衝撃のラストで弁護士を続けられるかどうかの危機に陥った御子柴ですが、苦しみながらも活動継続しておりました。むしろ、死体配達人としての過去を合法的(弁護士的)脅しに使う豪胆っぷりです。しかし、今回の依頼人であり少年院時代の恩師である稲見の前では御子柴の仮面も剥がれる剥がれる。ダークヒーローっぷりは成りを潜め、ただただ恩師を救いたい一人の人間です。新鮮。

これまでの作品でも依頼人=仲間とは限らない…というか依頼人=敵でしたが、今回は過去最大の敵です。なにせ依頼人が無罪を望んでいない。犯した罪に適正な罰を、それが依頼人の望みであり人生なんですよね。でも、御子柴は恩師であり父親とも言える稲見を救いたくて仕方がない。歪んだ証言の先にある真実を暴けば、きっと稲見を救えると信じて突き進む。それが稲見の傷を抉ることになっても。うん、こういうの好きです。

帯ではどんでん返しを謳っていますが、それほどでもないかな。稲見が気づいていなかったとしてもそこまでの驚きはなかったと思います。それよりも量刑ですが、言わばヒーローである稲見の望みがそのまま通ったという形でしょうか。筋の通った、人生を掛けた稲見の主張は実に自然で受け入れやすかったです。

ラスト、自らへの攻撃では捨てようとも思わなかった弁護士バッチを外そうとした御子柴。そんな彼を救ったのは一通の幼い手紙でした。果たして次に御子柴が救うのは誰なのか。個人的には事務員の洋子あたりかと思っているのですが。第4弾に早くも期待。とても楽しみです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016/07/08

『ST 警視庁科学特捜班 毒物殺人』 今野敏

鋭意再読中のSTシリーズ第2弾。サブタイトル通り、毒物殺人事件が起こりますが捜査のポイントはそこじゃありません。

STメンバの活躍度は山吹>>青山>>>>>翠=黒崎>>赤城ってところでしょうか。ついに山吹の時代が来ましたが、専門の薬学からのアプローチではなく、僧侶という宗教の専門家として思想・思考から事件に迫ります。

物語のキーパーソンである女子アナの前に唐突に現れ、存在感を増していく自己啓発セミナー代表。もちろん怪しい。この男が事件に関わっていないはずがない。と読者もSTの面々も思うわけですが、百合根の嗅覚に引っかかってこないのはあくまでも百合根が未熟だからなのか。百合根はバランサーだとずっと思っていたのですが、菊川の方がそれっぽいですよね。山吹がようやく活躍してくれたので、次は百合根に期待。

結局のところ動機は愛憎でしたね。どうしても女子アナと近しい関係になりたいという気持ちはわかるのですが、もっとやり方あっただろうに…としか思えないのですが如何でしょうか。

スマートにまとまっているとは思えず、読了にも時間が掛かってしまいました。ST5人の魅力は変わらずなんですけどね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016/07/03

『ST 警視庁科学特捜班』 今野敏

さっそく再読してみましたSTシリーズ第1弾。

『プロフェッション』でSTの面々も丸くなってきた…みたいな印象を受けたのですが、別に最初から尖ってなかったです。周りに迎合しないから変人に思われる(扱われる)だけで、彼らは自分の役割はきちんと果たすし、求められれば丁寧にわかりやすく説明できるんですよね。STを使う警察側(顕著なのは菊川)に問題があって、彼らと協力して事件を解決する姿勢さえ見せれば捜査は何倍もスムーズになるんだと改めて。

今回の5人の活躍度は青山>>>>>翠>>黒崎>>赤城>>>>山吹って感じでしょうか。山吹さんにもっと出番を。黄のファイルを読むしかないのか。

それにしてもマフィアの抗争なんかが絡んでくるあたりが90年代ミステリっぽくて実に懐かしかったです。馳星周が流行った時代ですよね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2016年6月 | トップページ | 2016年8月 »