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2016/06/30

『プロフェッション』 今野敏

STシリーズ最新刊。ドラマを見ていたので脳内キャスティングはドラマの面々ですが青山の性別を改変したことだけは未だに許せない(役者さんに罪はないです)

2時間弱で読了。さらりと読めてそれなりに楽しめるんだけど後に残らない1冊。STメンバの活躍度に大きな差があって、青山>>>>>>>>>人間嘘発見機のふたり>>赤城>>>>>>>山吹いたっけ?みたいなことになっているのが残念。個々の力を最大限発揮すると自然とチームプレイみたいなのが好きなので。

そして、百合根という潤滑油がいなくてもSTが機能するようになってきましたね。これを喜ばしいものと取るか残念と取るか。ドラマの展開が脳をちらつきます。それにしても菊川はいつから青山のおとんに。そして翠とのそれっぽい関係はすっかり鳴りを潜めてしまいましたね。作中にそれっぽい記述(恋愛感情に独身も既婚者も関係ない云々)がありましたが、そこでもふたりは無反応でしたし。残念。

犯人の○○○○○設定は正直もうお腹いっぱいです。どうして犯人は広東住血線虫などという不確かな方法で3人を殺害しようとしたのかに説明が為されてないですし(○○○○○だからで終了なのでしょう)。ちょっと乱暴だと思いました。

STの面々に等しく…なくてもいいからしっかり活躍の場がある骨太な作品が読みたい。過去作のレビューがないのでこれを機に再読してみようかしら。

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2016/06/29

『ペテロの葬列』 宮部みゆき

『誰か Somebody』 『名もなき毒』に続く杉村三郎シリーズ第3弾。テレビドラマ化もされました。

事件巻き込まれ体質の杉村三郎が今回遭遇したのはバスジャック。しかし、犯人の行動や言葉に端々におかしさを感じた杉村は事件後、犯人が償い、償わせようとした罪について調べ始める…という物語。ですが、

問題なのは驚愕のラスト(帯より)です

本当に驚愕ですよ。何せ事件とは関係ないですからね。思えば、馴染みの登場人物の過去が明らかになったり、ある人の名前が明らかになったり(笑)、某家族のその後が知れたり…とシリーズそのものを大きく動かすつもりで書かれた作品だったのかもしれません。それにしても動きすぎですが。

私はラストの彼女の懺悔?告解?言い訳?を読んで1ミリも共感できませんでした。身勝手だとしか思えない。杉村をそんな顔にしたのは誰なの?貴女と貴女を取り巻く環境でしょう?としか思えないのです。なんでこの人は悲劇のヒロインぶってるんだろうと。もし会長が表現したように城壁の外側に出たいと思ったなら、正しい手段と方法と話し合いで出ていくべき。まあ、それができないお姫様だったのだと思いますが。

出版されたばかりの第4弾『希望荘』にて探偵業を始めた杉村ですが、どんな風に彼は傷を癒したのか。傷は癒えたのか。例え癒えてなくても杉村は優しく、お人好しの姿で依頼人の話を聴くのでしょう。

そうそう、お人好しと言えば、坂本くんの態度が悪すぎて。私は絶対に杉村のような対応はできないですね。

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2016/06/26

『アンと青春』 坂木司

ベストセラーとなった『和菓子のアン』に続くシリーズ第2弾。デパ地下の和菓子屋さん「みつ屋」にやってくる人々が抱える謎と和菓子の物語。

個人的には少し残念な読了です。収録されている作品は5つなのですが、どれもこれも謎の方向性がマイナスで後ろ暗いんですよね。(ネタバレします)嫁姑問題や放射能といったテーマはこの作品の可愛らしいしい優しい感じと合わない気がします。和菓子だと思って食べたら中に詰まっていたのは辛子だった…みたいな読了感。

そして、一番気になったのがとにかく卑屈なアンちゃん。『アンと青春』というタイトルなので悩んだり苦しんだりを繰り返しつつ前に進むという作りになっているのはわかります。わかりますが、アンちゃんて結局前に進めたんでしたっけ?アンちゃん自身は成長してます。251pで椿店長が褒めたように。でも、アンちゃんは周りからの評価が欲しいのではなくて、自分が納得して認める自分になりたかったのでは?自己肯定感を得たかったのではなかったのでしょうか。その意味でアンちゃんは現状維持だと思うのですが。

そして、私は前作『和菓子のアン』の感想でアンちゃんに恋話がなかったのが良かったと書いたのですが、フラグが立ってしまいましたね。アンちゃんの成長=魅力が増したということなのだと思うのですが、恋はエッセンスとして匂わせる程度にしてあくまでもサクセスストーリーであって欲しかったという私の我儘です。坂木司の恋愛物語は好きなんですけどね。『シンデレラ・ティース』が大好きなんです。

和菓子の蘊蓄、食べ物の描写は素晴らしいです。表紙の和菓子もとにかく美味しそう。食べたい。なのでミステリ部分がとにかく残念です。フラグが立ったままということは続きが読めるということだと思いますが、第1弾のような感じに軌道修正してくれるといいなと願います。

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2016/06/24

『オレたち花のバブル組』 池井戸潤

半沢直樹シリーズ第2弾。

前作『オレたちバブル入行組』で見事栄転を果たした半沢直樹が金融庁と派閥争いというふたつの敵と同時に対峙する物語。個人的には前作でどうにも情けない男として書かれていた近藤の奮起と活躍が嬉しい。半沢パートより読み応えあったかも。

私自身、銀行で働いていたことがあり金融庁検査も何度か受けたことがあるので半沢が検査官に反論するシーンは「あり得ない…」と思いましたが、私のような下っ端はともかく本部のどこかの会議室では丁々発止の大バトルが行われていたのでしょうか。うーん、見たくないです。

ラスト、バランスを取るためという言い分で半沢に下された処分が理不尽でありリアルだと感じました。銀行に限らず会社でも学校でも派閥はあるので、皆がリアルに感じられるシーンだと思います。

それにしても黒崎検査官のオネエはすごい威力ですね。ドラマ見たことないんですが、しっかり愛之助さんで脳内再生されました。

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2016/06/20

『11枚のとらんぷ』 泡坂妻夫

泡坂妻夫の代表作と言えば『しあわせの書』か本作かで迷うところですが、前者が大掛かりなトリックを用いた人体消失マジックなら、本作は熟練の技が光るテーブルマジックでしょうか。

公民館で開かれたマジックショウの間に起きた殺人事件。被害者の周りには作中作「11枚のとらんぷ」に因んだ品物が並べられていた。果たして犯人の意図は?犯人は一体誰なのか?という作品です。

注目すべきはやはり作中作「11枚のとらんぷ」ですね。どの作品も奇術を題材にしたショートショートとして優秀です。個人的には叙述トリックとも言える「新会員のために」とユーモアたっぷりの「赤い電話機」がお気に入り。

そしてこの作中作が殺人事件を解き明かす伏線としてたっぷり機能するというのだから嬉しくなっちゃいますね。どうして犯人は死体の周りに異様な装飾をしなくてはならなかったのかについてもしっかり説明されていて良い。痒いところに手が届いてます。

唯一の難点は奇術を文字で読んで頭で理解する(映像化する)のは結構疲れる点でしょうか。目で見て騙されるのはあんなにも簡単なのに。読了後にはきっと奇術が見たくなりますよ。

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2016/06/17

『鍵の掛かった男』 有栖川有栖

ようやく読めた作家アリスシリーズ長編。2016年本ミス7位、このミス8位です。

本作読了で現在出版されている作家アリスシリーズはコンプリートです。その上で、これまで発表された作品のなかで最もアリスが活躍したお話だと言いたい。鍵の掛かった男、その過去のおおよそをアリスひとりが解き明かしました。拍手。今回はアリスと火村を意図的に対照的な存在として書いてますよね。静のアリス、動の火村。実際に各地に移動し、聞き込みをしたのはアリスですが、私はやっぱりアリスが静だと思います。静のアリスだから聞くことのできた話がたくさんあったと思うんですよね。

それでもやはり言わせて欲しい。男の過去を追うことに重点が置かれミステリらしい展開が少なかったのは残念。火村がホテルに到着し、チョコレートの件を指摘し他殺説(ミステリ)にぐいと近づいた加速感は良かったです。火村が動だと思う根拠はここですね。

あと、アリスの単独行動が多くてアリスと火村のやりとりが少なかったのも物足りなさを感じる一因ですね。アリスと火村の気の置けない会話がとても好きです。今回、笑わずにはおれなかったのは400pの火村のこんな一言。(事件の真相に触れています。ネタバレ注意) 「ヤッホー、パパだよ。嘘だと思うならDNA鑑定しよう」とかどんな調子で言ったのか。斎藤火村のバリトンで是非。

うーん、おもしろかったんだけど、もっとミステリミステリしている作品が読みたい。密室とか。『鍵の掛かった男』なんて、密室が次々に登場しアリスによる密室講義が始まってもおかしくないようなタイトルだと思いません?

それにしても意外と探偵もやれるアリスが最も近しい男に掛かった鍵を開けるのはいつなんでしょうかね。

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2016/06/14

『空白の殺意』 中町信

『模倣の殺意』 『天啓の殺意』に続く殺意シリーズ第3弾。改題前の作品名は『高校野球殺人事件』。個人的にはこちらの方がしっくりくる。『空白の殺意』はいささか大仰かと。

『模倣』『天啓』がとてもおもしろかったので、本作もそれらに匹敵する大どんでん返しがくるかと思っていたらそのまま終わってしまい肩透かしをくらってしまいました。しっかり読ませるごくごく普通の推理小説です。もしかしたら意外な犯人モノに分類できるかもしれませんが…どうかな。個人的には少し厳しい。ただ、最近はしっかり読ませてくれるごくごく普通の推理小説なんてなかなか出ないので十分に嬉しいんですけれども。

あとがきに『皇帝のかぎ煙草入れ』のような作品をと書かれているのですが(少しネタバレします)日記帳のカバーのことでしょうか? それとも猫?

個人的には文庫版あとがきに折原一が書いている「他のミステリ作家が書けば「正統の本格ミステリ」だが、中町信が書けば「異色作」になる」という言葉が実に的を得ていると思います。叙述の名手、折原一が言うのがいいよね。

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2016/06/11

『検事の本懐』 柚月裕子

『最後の証人』に続く佐方貞人シリーズ第2弾。検事の、とあるように佐方の検事時代と彼の父親について書かれた短編集。

個人的ベストはほぼ表題作である「本懐を知る」。佐方の父親についての物語であり、佐方の信念、そのルーツを知る物語。父親を良く知る弁護士から「まっとうに事件を裁かせる」というワードが出てきたときに佐方の「強さ」の根源が垣間見えた。私はこういう親子の物語に本当に弱い。

「拳を握る」はもう少し爽快な展開になって欲しかったが、そうならないのが組織であり、佐方が検察を去ったのもそのままならなさだったと改めて。

その他3編の検事・佐方貞人の物語も上質。ミステリ的どんでん返しがあるのも良い。物語が進むたびに佐方という人間に近づいていくような感覚になる構成だと感じました。シリーズ第3弾も楽しみ。タイトルが『検事の死命』なので検事もののようですが、弁護士(法廷)ものもぜひ。好きなんです。

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2016/06/07

『その可能性はすでに考えた』 井上真偽

発売当時、各所で絶賛されていた本作。『恋と禁忌の述語論理』に登場した青髪・紅いチェスターコートの探偵上苙丞が再登場です。

奇蹟がこの世に存在することを証明するため、すべてのトリックが不成立であることを立証するという趣向の本作。今回立証に挑んだのは、カルト宗教団体が集団自殺を計った際に起こった奇跡(推定)。この事件がまた本格ミステリらしい、大仰でぶっ飛んでて簡単に言えばあり得ない事件なのがとても嬉しいです。好き。

事件がぶっ飛んでるので仮説もまたぶっ飛んでます。(ここからネタバレします)死体も空を飛びます。でも、ひとつひとつの仮説はバカミスでも、ラスト、宿敵が指摘した論理は正統派です。ラスト前までに探偵が論破(証明)したトリックは3つ。その証明同士に矛盾が認められた場合、どちらかの証明は失敗していると言え、同時にその仮説は事実となるという論法。いいですね、素晴らしいです。この完璧なロジックに探偵がどう立ち向かったのかは作中で。

なにが真実だったのか、ラストに探偵が辿り着いた仮説が真実だったのかはわかりませんが(破綻はしてなくても無理は多かったと思う)鮮やかなロジックに満足の1作。すべての可能性を作中で語るのは無理として、文庫化の際には報告書の目次を挿入してくれたら嬉しい。一体どれだけの可能性を考えたのか。それらはどれだけ奇天烈なものだったのか。気になります。

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2016/06/01

『密室ロジック』 氷川透

ブログ開設前に読了した作品を鋭意再読中。氷川透シリーズ第4弾です。

タイトル通り密室ものです。氷川透は「論理がつくり出す密室」と表現していましたが、簡単に言えば3つの脱出経路のすべてに常に誰かがいたという状況です。その3つの脱出経路(A、B、C)がそれぞれどんな理由・状態で脱出不可能だったのかを説明してくれるのが詩緒里パート。そして、論理的かつまわりくどく、さらにはねちっこく(褒め言葉)密室を突き崩して行くのが氷川透パートになります。

とりあえずやっぱり氷川透シリーズ好きだなあと思ったわけであります。正直、事件が起こるまでの各人パートは読みづらい。179Pという薄い本のうち、そのほとんどが誰がどこにいてなにをしていたかが書いてあるだけ。しかも動機なんて知ったことではない。むしろ実際に犯行を行ったのが氷川透が指摘したその人なのかも作中では明らかにされないのです。怒る人は怒る。壁本かもしれない。でも、私は好きなんだよなあ。

(ネタバレします)結果的に某地点の某さんがその場を離れたから脱出できたわけですが、もしその場で電話をかけていたら物語はどう動いたんでしょうね。犯人の指摘には影響を与えませんが(某さんがその場を離れるはずだと思い込んでいた人物が犯人であり、それは1人だけというのが氷川透の根拠なので)そこだけが物語が都合よく動いた感があったので少し気になりました。あと冴子の不倫相手は誰なの。やっぱり気になる。

氷川透(作者)がtwitterからも姿を消して3年ですが、私はまだ『インサイド・アウト』を諦めていないのでどこかの出版社さまどうぞよろしくお願いします。

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