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2015/12/19

『原罪の庭』 篠田真由美

建築探偵シリーズ第1部のラストを飾る名作。京介と蒼の出会いの物語。

私は読んだ本の内容をほとんど覚えられないのですが、この作品だけはどんなに忘れようとしても忘れらない。それだけ衝撃的で胸に突き刺さる1作です。大好き。

一家4人が惨殺され温室の天井から吊るされるという凄惨な事件。たったひとりの生き残りである7歳の少年は心を閉ざしてしまい、その日その場所でなにが起こったのかを語ることはできない。そして疑いの目はいつしか彼自身に。当時7歳の少年があんなにも残虐な行為を行うことはできたのか、もし彼が行ったのならその理由は何なのか、彼の心を閉ざす扉の鍵は一体どこにあるのか。そして、それを開くのは誰なのか。

(ここからすべてネタバレ)蒼が自分の母親を守るためにその力(記憶力)を使い、母が殺人を犯したという痕跡のすべてを隠したという真相。とにかく胸を打ちます。蒼が温室で血まみれになって隠蔽を行っている映像イメージはもう十何年も脳から離れてゆきません。もちろんそのときの蒼は神代が見たような笑っている顔じゃないと信じたい。そして、必ず迎えに来るからと約束した母との再会が期待したものではなかった絶望。母の顔に浮かんだ恐怖を見て、心を閉ざし続けるしかなかった蒼のこと思ったら苦しくて苦しくて。

でも、そんな蒼の心を開いたのは京介なんですよね。なぜ京介と蒼が引かれ合ったのか。それはシリーズ完結まで読んでようやくわかることなのですが、引かれ合ったのは必然でしたね。これまでまったく喋らなかった彼が自分で選んで呼んだ名前。それは一般的な、よくある選択肢ではなかったけれど、ベストな選択肢だったと思います。蒼も一度だって後悔したことはないでしょう。もちろん京介だって。

その後も数年は落ち着かなかった彼のために、京介がどれだけ献身的だったか。それを想像するだけでまた、泣けてきます。『桜闇』も読まなくちゃ。

尚、ミステリ的にも概ね満足ですが、園梨々都の思惑は理解不能です。絶対になにもしない方が良かった。完全に逆効果。やったこともどれも的外れですしね。焦っていたのだとは思いますが、○○さんが付いていながら情けない…ってあの人も大概なんでした。

いやもう本当に大好きな作品です。建築探偵シリーズ不動のNO.1。名作です。思い入れが強すぎてとても気持ち悪いレビューになりまして、申し訳ないです。でも、大好きです。

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コメント

私の読んだことのない作品が度々紹介され、
次に読む作品の参考にさせてもらっています。
これからも末長く続ことを願っています。

投稿: | 2015/12/20 23:19

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