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2015/12/30

『謎解き乙女と奪われた青春』 瀬川コウ

年末のミステリランキングにいくつかランクインしていたように記憶。ヤレヤレ系の主人公が「体質」故に巻き込まれてしまう不思議を、謎解き乙女とたのしく推理合戦しながら解決していく作品です。

(軽くネタバレします)主人公の「体質」が人為的に引き起こされた、いじめみたいなものであるという設定がおもしろかったですね。『奪われた青春』というタイトルがダブルミーニングになっているところはうまいと思いました。あとはヤレヤレ厨ニ病っぽい独白系文章と謎解き乙女の高飛車な性格が許せれば楽しく読めるのではないかと思います。なぜか毒を吐いたようになってますが、おもしろく読みました。きっと作風に引き摺られてしまったのでしょう。

ベストを挙げるなら○○トリックが使われている第5章「終わらせる方法」なのだと思いますが、もうちょっとヒントを散りばめておいてくれるとやられた感をもっと演出できる思うのですが。いくら彼らふたりの思考回路がよく似ていると前章で触れたとしても、あれは似過ぎかと。肩を掴んだあたりでトリックとその後の展開が読めたのですが、自分でもなにがきっかけだったのかわかりません。勘でしょうか。

第2弾も出てますね。青春が帰って来た彼がどんな変貌を遂げているのか楽しみです。

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2015/12/25

『桜闇』 篠田真由美

鋭意再読中の建築探偵シリーズ初の短編集です。二重螺旋四部作を収録していることに触れるべきだと思うのですが、どうしても「君の名は空の色」についてから書きたい。

「君の名は空の色」は蒼と深春の出会いを描いた作品。『原罪の庭』で蒼として生きることを選んだ少年の前に現れたのは毛むくじゃらのまるで熊のような男。京介、神代の3人での生活に深春が加わっただけで、心を乱し、また殻の中に逆戻りしてしまった蒼。そんな蒼が初めて深春の名を呼んだときのエピソードがたまりません。

蒼がかわいくてかわいくて

抱き締めるように掴んだ腕、そこにどんな想いを込めたのかと思ったら泣けてきます。その直前の、まるで夜驚症のような症状の中で京介に感情と暴言をぶつける蒼でも泣いてしまうんですが、そちらはもうつらくてつらくて。蒼もそんなことを京介に言いたいわけではないだろうに、言わずにはおれないんだろうなあと思ったら。『原罪の庭』と合わせて読んでいただきたい作品です。

その他の収録作の中では「塔の中の姫君」が好きでしょうか。絶交宣言をしておきながらも京介の真意を知りあっさりと許してしまう深春の懐の深さと、絶交なんて大したことではないように振舞っておきながら気にし過ぎの京介と。建築探偵シリーズらしいやりとり。

ところで、表題作「桜闇」で京介の○○○を描く必要はあったんですかねえ?愛すること、その重要性を説くだけでは不足だったのでしょうか。解せぬ。

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2015/12/19

『原罪の庭』 篠田真由美

建築探偵シリーズ第1部のラストを飾る名作。京介と蒼の出会いの物語。

私は読んだ本の内容をほとんど覚えられないのですが、この作品だけはどんなに忘れようとしても忘れらない。それだけ衝撃的で胸に突き刺さる1作です。大好き。

一家4人が惨殺され温室の天井から吊るされるという凄惨な事件。たったひとりの生き残りである7歳の少年は心を閉ざしてしまい、その日その場所でなにが起こったのかを語ることはできない。そして疑いの目はいつしか彼自身に。当時7歳の少年があんなにも残虐な行為を行うことはできたのか、もし彼が行ったのならその理由は何なのか、彼の心を閉ざす扉の鍵は一体どこにあるのか。そして、それを開くのは誰なのか。

(ここからすべてネタバレ)蒼が自分の母親を守るためにその力(記憶力)を使い、母が殺人を犯したという痕跡のすべてを隠したという真相。とにかく胸を打ちます。蒼が温室で血まみれになって隠蔽を行っている映像イメージはもう十何年も脳から離れてゆきません。もちろんそのときの蒼は神代が見たような笑っている顔じゃないと信じたい。そして、必ず迎えに来るからと約束した母との再会が期待したものではなかった絶望。母の顔に浮かんだ恐怖を見て、心を閉ざし続けるしかなかった蒼のこと思ったら苦しくて苦しくて。

でも、そんな蒼の心を開いたのは京介なんですよね。なぜ京介と蒼が引かれ合ったのか。それはシリーズ完結まで読んでようやくわかることなのですが、引かれ合ったのは必然でしたね。これまでまったく喋らなかった彼が自分で選んで呼んだ名前。それは一般的な、よくある選択肢ではなかったけれど、ベストな選択肢だったと思います。蒼も一度だって後悔したことはないでしょう。もちろん京介だって。

その後も数年は落ち着かなかった彼のために、京介がどれだけ献身的だったか。それを想像するだけでまた、泣けてきます。『桜闇』も読まなくちゃ。

尚、ミステリ的にも概ね満足ですが、園梨々都の思惑は理解不能です。絶対になにもしない方が良かった。完全に逆効果。やったこともどれも的外れですしね。焦っていたのだとは思いますが、○○さんが付いていながら情けない…ってあの人も大概なんでした。

いやもう本当に大好きな作品です。建築探偵シリーズ不動のNO.1。名作です。思い入れが強すぎてとても気持ち悪いレビューになりまして、申し訳ないです。でも、大好きです。

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2015/12/15

『灰色の砦』 篠田真由美

鋭意再読中の建築シリーズ第4弾。京介と深春の出会いの物語。

登場人物が少なく、そこからさらに人が減るので犯人が限られてくる上に、犯人(と○○○)の行動があからさま(あそこで深春に話しかけちゃダメだよ。そうしたかった気持ちはわかるけど)なので動機を推理して読むのが良いかと。その動機も普通に物語を読んでいれば明白なわけですが。でも、おもしろくなかったかと言われればそうじゃない。しっかり本格ミステリです。毎回言ってますが、90年代の講談社ノベルスは最高です。

京介の蒼っぽいところが出てきて少し驚きました。京介と蒼は良く似ている。差し伸べられた手を取った後、蒼の方が少し周りに人が多くて、甘やかしてくれる人も絶対的な安心をくれる人もいたから今の蒼がいるだけで。京介は蒼になれたかもしれないし、蒼は京介になったかもしれない。そんなことを考えたシーンでした。

そして、シリーズが完結し京介の過去を知ったからよりわかる京介の涙。このときどこまで京介の過去に関して構想が練られていたかはわかりませんが、再読していて本当にたのしいです。

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2015/12/08

『身元不明 特殊殺人対策官 箱崎ひかり』 古野まほろ

古野まほろ講談社復帰作。

帯に「元警察官僚がついに手掛けたリアル警察小説」って書いてありますが、決してリアル警察小説ではない。どこまでも古野まほろ流警察小説。でも、世界観は天帝ではないですね。

とにかく展開が早い。次々に登場する死体。陰陽道に見立てた装飾がなされているのは探偵小説シリーズに対するなんらかのアピールか。ただ、死体と装飾がずらされている意味は明白なので、犯人のひとりは確定。そして共犯者。これはミステリのセオリーで行くと○○でしか有り得ないので読めちゃう。残念。

箱崎ひかりの秘密を根にしてシリーズ化するのかしらん?図書館員と聞くとどうしても有川浩の図書館シリーズを連想せずにはいられないので、ネーミングはなんとかして欲しかった。キャラクタは古野作品らしく魅力的。個人的には綾瀬警部補。脳内で映像化するときは少し美化して修正しております…。

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2015/12/03

『翡翠の城』 篠田真由美

十数年前、最初に読んだ建築探偵シリーズだったと記憶。シリーズ第3弾。

和洋折衷の異形の館、名門一族の血塗られた過去、次期社長争いと交錯する思惑というミステリによくあるガジェットてんこもり。『未明の家』のレビューにも似たようなこと書きましたが、90年代に流行った講談社ノベルスらしいミステリです。もちろん大好きです。

ミステリ的は驚きどころは真理亜おばあさまの正体だったと思いますが、描写があからさまなのでまあわかるかと。そして、全てとは言わないまでも殆どが真理亜おばあさまの勘違いや思い違いなんだろうなあというのも察するのも容易かと。でも、建築探偵らしい作品をひとつ推せと言われたらこれを推すかもしれないくらい建築にもミステリにも重きを置いた1冊です。もちろん一番の名作をと言われれば『原罪の庭』ですけれど。

蒼の過去にも少し触れましたね。何も知らずに読んだ十数年前と今とでは感じ入り方が違う。蒼がなぜあのようなパニックに陥るのかがわかるのはつらい。知らなければ単純に蒼の過去が知りたい!作品化はやく!って気持ちの方が強いですから。そして、学校に通うことに決めた蒼の決断もね。いやー、『原罪』と蒼が好きすぎて自分でも感情移入おかしいのわかります。でも、好きなものは好きなんだよー。

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