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2015/09/29

『満願』 米澤穂信

2014年、年末のミステリ関係の各賞を総なめにした米澤穂信の暗黒系短編集。この完成度の作品を推薦から外したら嘘になるもの、そりゃ受賞するわと納得の1作。

どれも良かったのだけれど、個人的には「万灯」と「関守」を特に推す。どの作品も「なぜこうなってしまったのか」を問う作品なのだけれど、why?の出処が人間の心の中なのか行動なのかで好みに差が出たかしら。「万灯」「関守」あとは「夜警」あたりは誰のどんな行動が元でこんな悲劇が起こってしまったのか、そこを解くミステリっぽさがまだあるかと。

「柘榴」「死人宿」は反対に人間の後ろ暗さがよく描かれていて、作品としてよくまとまっていておもしろくもあるのだけれど、3作品に比べると苦手か。なんだろう、理解ができないからだろうか。表題作の「満願」も理解が出来ないという点ではこちらに分類されるかな。

『儚い羊たちの祝宴』から続く暗黒系米澤穂信。おもしろいのだけれど、やっぱりミステリが読みたい!未読なのは『王とサーカス』だけになってしまったので、twitterを追いつつ新刊を切に願います。

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2015/09/25

『スノーホワイト』 森川智喜

初・森川智喜。第14回本格ミステリ大賞受賞作。

<なんでも知ることのできる鏡>というミステリにおける禁じ手をベースにし、その使用方法をどんどんテクニカルにすることで物語の難度をどんどん上げ、最後は強引さとスピード感で以てまとめあげた一冊。こんな使い方、よく即座に(ここポイント)思い付くなという感嘆。一番はやはり○の背後ですよね。

本格ものとしてじっかく謎と向き合うという作品ではなく、ドタバタハラハラとした展開と三途川理というめちゃくちゃなキャラクタを楽しむエンタメミステリ。ところで、三途川がシリーズキャラクタなんですね。第一作『キャットフード』ではまともな名探偵してるんでしょうか…してないでしょうね。それはとても楽しみです。

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2015/09/21

『儚い羊たちの祝宴』 米澤穂信

3年ほど積読していた本作。『満願』の前に読んでおこうと本棚から引っ張り出してきました。

バベルの会という読書サークルの名が作中のどこかで出てくるという僅かな繋がりの連作短編集。ジャンルはミステリ、ホラー、ブラックユーモアの融合体。死人が出た場合、誰が殺人を犯したのかは解かれるけれど重要なのはそこではない。ミステリ的に言うならwhy?の動機が肝なのだけれど、理解できるかどうかは別。理解できる人はバベルの会に入れます、入りましょう。

個人的には「身内に不幸がありまして」のラストが一番綺麗で見事だと思いました。

「山荘秘聞」は煉瓦のような塊と表現するくらいなんだから日銀大結束くらいの厚みがあるのだろうけれど、彼女はどうやってそれを手に入れたのかばかりが気になって。山に籠っていたから給金が貯まったってだけなのだろうか。

「玉野五十鈴の誉れ」は『Story Seller』で既に読んでおりましたが、五十鈴の誉れが主の命に従うことならば、既に主ではない純香の言葉に従ったのなら誉れではない。反対に五十鈴の誉れが主の命に背き、友のために赤子を見殺しにしたことなら…それを誉れと思ってしまう精神こそバベルの会なのでしょうね。

『満願』も楽しみ。でも、『犬はどこだ』の続編『流されないで(仮)』も待っています。

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2015/09/16

『一の悲劇』 法月綸太郎

ブログを始める前に読んだ新本格の名作を再読するのもいいなと今日は法月綸太郎。一度読んだのは間違いない。けれども全く覚えていなかったのでとても楽しめました。その日のうちに読了。

誘拐もの特有の緊張感でグイグイ読ませる前半。二転三転する推理劇でグイグイ読ませる後半。挙がった推理、犯人候補の誰が真犯人でも納得できるなかで一番胸糞悪い結末だったのが法月らしいと思いました。

とりあえず、久能刑事ってこんなに優秀でしたっけ。綸太郎目線だと久能刑事は結構かわいいところあるので。

あと、著者近影を引き伸ばされた綸太郎がボロクソ言われていて笑いました。法月(作者)ノリノリで書いてそうだなあ。

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2015/09/14

『密室蒐集家』 大山誠一郎

2013年本格ミステリ大賞受賞作。密室が関わる事件が起こるたびにどこからともなく現れ、あっさりと事件を解決し去ってゆく。そんな密室蒐集家が登場する5編を収録した作品集。

密室と言う言葉がタイトルになっているだけでミステリスキーにとっては喜ばしいことですが、収録されている作品のどれもが上質だなんて嬉しい。正直ちょっと無理筋だなーってのもありますが、それは登場人物の関係だったり警察のお粗末さだったりで、密室ができた過程や理由ではないので良しとしました。

個人的ベストは圧倒的に「理由ありの密室」。密室講義も嬉しい、密室蒐集家との再会も嬉しい。密室ができた理由、その着眼点が実に面白い。そしてワープロ懐かし過ぎ。若い人の中には密室ができていく様子を脳内で思い描くことができない人もいるのでしょう。密室蒐集家が何者なのか…をより効果的にしている年代ジャンプですが、それをトリックにも活かしてくるとはさすが。

これで密室蒐集家が何者なのかを明かしてくれたら大満足の拍手喝采ですが、さすがにそこまでは。まあ、シリーズ化に含みを持たせたと思えば嬉しくなるものです。

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2015/09/10

『河原町ルヴォワール』 円居挽

ルヴォワールシリーズ第4弾にして、弟・大和による落花殺しから始まる衝撃の最終巻。

落花という最強のキャラクタをあっさりと殺すのもルヴォワールらしいような気もして、まったく疑っていなかったところからの落花戻し。やられた。あの改変の記述ね。あれすら「有り得る」と思ってしまうあたりルヴォワールな世界観に入りこまされている証拠か。

これまでのシリーズ作より(物理的に)薄いような気がするのだけれど、最初から最後まで詰め込めるものすべて詰め込まれていてサービス満点。論語vs撫子の結末が若干チープなのは本流じゃないのもあるだろうし、撫子という龍師の腕にもよるだろうか。やっぱり落花には劣るよなあ。さっき読んだばかりだけれど、また落花戻し読みたくなってきたもの。vs大和の斬れ味ったらもう。

あと、流かわいい。個人的にはうゆうさんが良かったけど(まだ言うか)達也に甘える流かわいい。

まだまだ彼らの双龍会が読みたいのだけど、これ以上は蛇足なのでしょうね。

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2015/09/06

『ハサミ男』 殊能将之

十余年ぶりの再読。メフィスト賞レビューはこれで28/51。

あまりに有名な叙述トリック。忘れたくても忘れらないのでさすがの私も覚えておりました。そして、仕掛けられたトリックを知ることでまた新しい楽しみ(読み)方ができるのが良いですよね。叙述トリック大好き。

しかも、その叙述トリックが明かされる部分の描写が勿体ぶっておらず、さらりと、別に大したことじゃないんですよと言わんばかりなのだ良い。どどん!と大文字バックにしてドヤりたいところだと思うんですけど(笑)

それも、真犯人という次なるどんでん返しがある余裕なのでしょうけれど。捜査の肝の部分は読者はほとんど読ませてもらえませんからね。でも、確かにおかしいところだらけ。そのおかしさも、磯部という純粋なキャラクタを通して得た情報だからと文字通り受け取っちゃうんでしょうか。

名作は何十年経っても、何度読んでもおもしろい。ネタバレなしで読んでもらいたい1冊。

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2015/09/02

『十三番目の陪審員』 芦辺拓

裁判員制度が導入される前の1998年に、架空の陪審員制度を元にして描かれた法廷ミステリ。森江春策シリーズ第6弾。

架空の殺人事件を作り出し、冤罪で捕まった上でドキュメンタリーとしてその一部始終を発表する…そんな冤罪計画を持ちかけられ犯人役となった男が、身に覚えのない本当の殺人の罪で裁判にかけられる物語。鍵は陪審員制度とDNA。

DNAは万能という神話を崩しにきてますが、1998年から早17年、科学技術の進歩でDNA鑑定の方法(特定に至るアプローチ)も増えているだろうから、今この作品と同じものは書けないのだろうなあ。もちろん、だからこの作品がダメと言っているわけではないです。むしろ1998年に書いてくれてありがとう。単純に「そんな方法も可能なのか」と目から鱗です。それが1998年だから可能だった方法だとしても。

そして陪審員制度。森江が最終弁論で充分に示唆したとはいえ、12人の陪審員はよくあの方法を選び出せたと素直に感心。私は少しも思い浮かばなかった。パッケージの変わった煙草はマイナスに働く伏線だと思っていたので、ああいう形で着地するとは思ってなかったです。天晴。

裁判が始まってからがべらぼうにおもしろいです。一気に読みました。やっぱり法廷ミステリはいい。

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