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2015/05/29

『天空の蜂』 東野圭吾

おすすめ東野作品としてタイトルが上がることが多いので以前から読みたいと思っておりましたが、その厚さ故に尻ごみしていた1冊。映画化と聞いてようやく重い腰を上げました。

内容よりもなによりも、この作品が1995年に書かれたことに驚きを隠せません。原発に対する国民の姿勢、意識をテーマに描かれている作品ですが、事件が起こってからの人々の反応が震災以降の世間の反応そのままです。そして天空の蜂(犯人たちが名乗った犯行グループ名)の最後の声明文。私は今だからそのメッセージの中身を理解できますが、発売当時…いや、震災前にこの作品を読んでいたとして彼らの放ったメッセージを理解できたかどうか自信がありません。

それにしても、この作品を今になって映画化するってのはチャレンジですね。江口洋介は個人的に湯原というより三島のイメージですが。

そういえば、本作は犯人グループの動機、事情、心情の描写がとても薄いです。書かれていないわけじゃない。でも、最近の社会派東野作品に比べるとかなりあっさりした書き方だと感じます。意図的かな?でも、今の東野圭吾がこの作品を書いた場合、読者が犯人に感情移入するように(もっと言えば同情するように)書くんじゃないかなあという気がします。

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2015/05/26

『致死量未満の殺人』 三沢陽一

第3回アガサ・クリスティー賞受賞作。毒はどうやって盛られたのかを問う直球ハウダニットですが、

タイトルでネタバレしてます

これ良いの?若干なりとも推理してミステリを読むタイプの読者ならほとんどの人がHOWを解けると思うんだけど…読ませどころはそこじゃないのか?

作中でもハウダニットのあとにフーダニットに移行してますが、大抵の読者がラストのコンダクターの存在まで気付けますよね…。じゃあ、どんでん返しを果たせなかった本作は駄作かっていうとそんなことはなく、最近のトンデモかガッチガチかの2択しかないミステリ界において(ひどい言い種だ)安心して読める良作かと。

ミステリ入門編としてお薦めしたい1作。そして、次回作にも期待。

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2015/05/24

『御手洗潔の挨拶』 島田荘司

玉木ミタライ(カタカナが正しいのよね?)意外と良かったですね。そのとき改めて『占星術』や『斜め屋敷』といった代表作は読んでいるけれど、読み落としているものも多いと感じた御手洗シリーズを今年は重点的に読もうかと思います。映画化もするしね!

本作は『挨拶』がわりに御手洗という人物の様々な面に触れる短編集。紅茶(珈琲)、犬なんかがキーワードかと。あとはギターね。結果的に抽斗多すぎて御手洗という人物がさらにわからなくなったわけだけれど。

作品としては「紫電改研究保存会」が個人的ベスト。かなりホームズの「赤毛組合」です。

さて、次はどの作品を読もうか。順に読んで行くのなら『異邦の騎士』。映画化作品を拾っておくなら『星籠の海』。さらっと読みたいなら『御手洗潔のダンス』か。

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2015/05/19

『しあわせの書』 泡坂妻夫

語られる宗教団体のお家騒動に特筆すべき点はありません。(作中の)しあわせの書が食べられるのも、鷹狩が○○なのも想定の範囲内。

では、なにがすごいってしあわせの書すべてのページに仕掛けられている驚きのトリックですよ。文章の運びに違和感があるのは出版年月が古い所為だと侮ってました。すみません。

とにかくネタバレなしで読みたい1冊。このトリックはどうあったって忘れることはできません。ネタバレなしに読めたとき、この本は本物のしあわせの書になるでしょう。

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2015/05/18

『光秀の定理』 垣根涼介

なぜか光秀が名探偵として活躍する話だと思い込んでいて、とてもたのしみにしていた1冊。普通に歴史小説でした。でも、おもしろい。

光秀がなぜ本能寺の変を起こしたのか。信長をとにかく憎んでいたとか、唆されたとか、いろいろ言われていますが、本作は問題の本能寺の変を書くことなく、時代や背景などの歴史学的に語るでもなく、ふたりの友垣が光秀という人物を懐かしく想うという新しい視点で描いていたりします。そして、そのふたりがとても魅力的。

3人が出逢うきっかけともなった愚息(すごい名前)の賭け事。椀の理。ようするに確率の問題なわけですが、あれがあの場面で活きてくるとは思わず、恥ずかしながら少し興奮しました。「光秀 長光寺城」で検索してもヒットしないので創作かと思いますが、とても良いエピソードでした。

個人的にはラストでふたりに仇を取ってもらいたかったです。

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2015/05/14

『蟻の階段 警視庁殺人分析班』 麻見和史

『石の繭』に続く警視庁殺人分析班シリーズ第2弾。

殺人現場に残された意味ありげな装飾。ヴァニタス画にインスパイアされたその装飾にどんな意図が隠されているのか。メッセージを読み解くことが犯人への道標となる…のかと思いきや、解決への近道はやはり足で稼ぐ地道な捜査だったようです。

個性的なキャラクタが揃う殺人分析班ですが、今回は鷹野以外は目立たず。主人公の塔子もまったく。前作が塔子のための事件、物語だったのでその反動だとしても、もう少し活躍の場が欲しかった。

本作の特殊な点は現場の装飾を犯人が行った理由、ですよね。(ネタバレします)装飾にメッセージなんてないんですよ。いや、メッセージは確かにあったのかもしれないけれど、そのメッセージを残したのは本件の犯人じゃないんですよね。犯人はそのメッセージを警察に解いて欲しかった。同様に警察(OB)に接触してみせた理由も同じ。捜査の進展を知りたかった。警察に殺したい相手を探させた。この部分はとてもうまいと思いました。

シリーズ続刊がたのしみです。次は殺人分析班の誰が活躍してくれるのか。トクさんを希望。

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2015/05/12

『パラドックス13』 東野圭吾

3月13日13時13分、13人の男女を残して世界から人々が消えた。P-13現象と名付けられた予測不可能な現象に巻き込まれた13人が元の世界に戻るため、この世界で生きていくために思考錯誤し、もがき苦しむ物語。

あらすじを読んだ時にはP-13現象を論理数学的に解き明かす謎解き小説かと思ったのですが、

サバイバル小説でした

結局のところP-13現象がなんだったのかわからず(なにが起こったのかはもちろん理解していますが)、揺り戻しに関してもその瞬間になにかをする必要があったわけではなく、鍵となったのは生きること。まあ、元の世界で13秒の間に死んだ人間が集められた世界があの世界だったので、戻るために必要なのが死の反対である生であるというのは理解できるのですが。そして、最後まで誰よりも生きようとしていた誠哉が生きられなかったのはよくある展開だとしても納得できない気持ち。

おもしろかったのだけれど、読了後になぜかなにも残らない1冊。それはきっと彼らの心にもなにも残らなかったからだと思うのだけれど。とりあえず、そのうち映画化されるんだろうなあと()

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2015/05/11

『連続殺人鬼 カエル男』 中山七里

タイトルがすごいですよね。でも、中身もすごいんです。カエル男による凄惨な連続殺人が起こり、街からは人が消えた。あいうえお順による無差別殺人だと報道された瞬間に暴徒化する市民、挿入される胸糞悪い虐待の記録、果たしてカエル男の正体とは?という一冊。

カエル男(実行犯)の正体については早々に看破できるのではないでしょうか。(ここからちょっとネタバレ)ナツオがまるで男の子のように(誤認を狙って)描かれていますが、まあ女の子ですよね。では、物語に登場する女性とは一体誰でしょう?という簡単な消去法。伏線も堂々と張られていますしね。ただ、さらにその先の存在がいるとは思いませんでしたが。

ラスト数行は思わずにやりとしてしまいますよね。因果応報。

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2015/05/07

『マスカレード・ホテル』 東野圭吾

死体とともに謎の数字が残された連続殺人事件。その暗号を解いた先にあったのは一流ホテル。警察は、そしてホテルスタッフはそこで第4の殺人を阻止することはできるのか?という1冊ですが、肝の部分は最近の東野ミステリ同様チープです。

犯人が誰か…はさておき(犯人の○○について言いたいことがないわけではないけれど)、事件の画と言いましょうか、4つの事件が別のものであることは読者なら一発で見抜けると思うんですよね。そもそも、第3の事件の犯人は自首ですからね。なにその置いてけ堀感。

いや、ホテルで起こる第4の事件がこの物語の肝であり、読ませたい部分だってのはわかります。むしろ、ホテルで起こるトラブルにスタッフたちがどう対応するかの部分がおもしろい。これだけで1冊書いて欲しいくらいですが、浅田次郎にありそう()

おもしろいです。ただし、ミステリ以外の部分が。初期の東野ミステリ好きにとっては悲しい感想なので、もっと骨太な作品をどうか。

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2015/05/06

『柩の中の狂騒』 菅原和也

嵐の孤島に「透明標本」を生業とする異端の学者、名探偵に密室殺人とミステリスキー大喜びのガジェットてんこもり。

ただ、物語を純粋に楽しめたのは名探偵が殺害されたところまでかしら。そこからはもうミステリではなく『バロル・ロワイアル』だし、ピタゴラスイッチだし、名探偵殺しとかなんという麻耶雄嵩。

とりあえず、怒れる名探偵・榧ヶ原涼が個人的に好みだったので、彼の過去を記録したミステリシリーズを始めてみてはどうでしょうか。読みたい。

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2015/05/03

『丸太町ルヴォワール』 円居挽

祖父殺しの罪を着せた初恋の女を見つけるためだけに私的裁判“双龍会”の被告となる…といういろいろおいしい設定の本作。設定だけでなく○○トリックもてんこもりですが、ちょっと盛り過ぎた印象。

どんでん返し大好きな私ですが、ちょっとサービスし過ぎでしょうか。どんでん返して返して元に戻ったと思ったら思ってもみないところから真相が現れ、やっと初恋の女の正体がわかったと思ったらやっぱりフェイクで…という展開には少々疲れました。もう少し読み易ければ良かったのかもしれませんが。雰囲気作りに一役買っているのはわかりますが、もう少し読み易い文章をお願いします。

双龍会というシステム、個性的なキャラクタたち、彼らが織りなす丁丁発止のやりとりは大好物ですのでまた読みたい。『ルヴォワール』と名のついた他の作品はシリーズ続編なのでしょうか。リサーチです。

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