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2013/11/25

『誰か Somebody』 宮部みゆき

『名もなき毒』でチラッチラッと触れられていた車屋さんの物語、ようやく読むことが出来ました。読書前に漠然と、『名もなき毒』を読んだときに抱いた印象よりも、もっともっと地味な一冊。車屋さん、こと運転手の梶田が自転車に轢かれて命を落としたことから物語は始まりますが、この事件自体に大きな謎やトリックが隠されているわけではなく、むしろ、とても消化不良な形で終わってしまうから驚き。

では何が主題なのか。杉村の前に現れた梶田姉妹、長女の聡美がトラウマとして胸に抱える誘拐事件なのか…と言えばそうでもない。この誘拐事件の真相については棚ボタ的に判明する上に、(聡美にすら)公表しないという結末になるため、あらあらこちらも消化不良。

ならば何が…って、ラスト50ページですよ。それまで、着メロの形で杉村が覚えていた違和感。それを明らかにしたときに見えた人間の本質。人間の薄暗い部分。闇の部分。とにかくもう、どいつもこいつも我儘で本当に苛々しましたとも。自分の都合の良いように(杉村に)動いて欲しい、都合の悪いことをされれば非難し、杉村が最も抉られたくないであろう部分を容赦なく抉る。なんていうか、気持ち悪い。でも、それが人間なんですよね。きっと、そんな人間ではないのは杉村の奥さんだけだと思います。彼女は言葉通りの意味で世間擦れしてませんから。

そんなわけでミステリではない…というか、最初からミステリではなかったのか。轢き逃げ事件を扱った作品=ミステリだと思い込んでいた私の負けだったようです。でもやっぱり、人間の悪い部分を描かせたら宮部は一級品だな、と改めて。

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» 「誰か Somebody」 宮部 みゆき [日々の書付]
宮部みゆきさんの最新推理小説。 私は、宮部さんの時代小説の方のファンで、今までミステリーはまだ読んでいなかったのだけれど、これは、面白かった。 主人公は、普通のサラリーマン編集者でグループの社内報を手がけており、妻と一人娘を愛している。ただ、普通のヒトとちょっと異なる点は、妻の父親が今多コンツェルンという大企業の会長であるということだけだ。 義父のお抱え運転手であった梶田という人物が自転車でひき逃げをされ、殺される。 梶田の2人の娘のうち、妹の梨子は、父を轢いた犯人に遺族の気持ちを伝... [続きを読む]

受信: 2013/11/26 10:48

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