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2013/11/27

『七回死んだ男』 西澤保彦

西澤保彦の最高傑作と名高い『七回死んだ男』。文庫版あとがき(1998年)で西澤氏自身が「西澤保彦の代表作といえば未だに『七回死んだ男』を推す向きが多いのも」と書いているけれども、大丈夫、15年経ってもその向きは変わっておりません。だって、名作は名作。

反復落とし穴、という1日を9回繰り返す不思議な体質の持ち主キュータロー。そのキュータローが殺されてしまった祖父を助けるためにあれやこれやと孤軍奮闘するお話。あらすじにしたらたったこれだけのお話なのだけれど、西澤氏らしい軽快な語り口と細やかな伏線が相まって読んでいてとても楽しい1冊に仕上がっております。

とりあえず、

タイトルからしてミスリード

ってことで良いのかしら?だって、本当は「もしかしたら八回死んだ男」なんですものね?友理さんがキュータローのことをヒサタロウと呼ぶことで謎解きが始まるんだろうなあ、というのは大方の予想通りで、友理さんもまた特異な体質の持ち主なのだろうと思わせるところまで西澤氏が計算していたかどうかはわかりませんが。とにかく、友理さんとキュータローのあの日の会話は間違いなく「有った」と前提すること、これが謎を解く第一歩でございます。

そこからどう推理するかは人それぞれですが、とりあえず私はこの反復落とし穴を自由に操れる人物がいて、キュータローはそれに引きずられている(付き合わされている)のだと予想。その人物とは被害者である零治郎祖父そのひとなのだけれど、祖父は反復落とし穴で自分を殺しに来ないものを後継者として指名するつもりなのでは?それが能力持ちのキュータローと友理で、ふたりが後継者として指名されてめでたしめでたし…そう考えたこともありましたとも。

登場人物たちの名前が今でいうDQNネームなのがおもしろいなあ…と、どうでも良い事まで考えて、いつかこの名前が当たり前のものになる頃まで(そんな日は来て欲しくないけれども)名作は名作で有り続けるのだろうと願うわけです。

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2013/11/25

『誰か Somebody』 宮部みゆき

『名もなき毒』でチラッチラッと触れられていた車屋さんの物語、ようやく読むことが出来ました。読書前に漠然と、『名もなき毒』を読んだときに抱いた印象よりも、もっともっと地味な一冊。車屋さん、こと運転手の梶田が自転車に轢かれて命を落としたことから物語は始まりますが、この事件自体に大きな謎やトリックが隠されているわけではなく、むしろ、とても消化不良な形で終わってしまうから驚き。

では何が主題なのか。杉村の前に現れた梶田姉妹、長女の聡美がトラウマとして胸に抱える誘拐事件なのか…と言えばそうでもない。この誘拐事件の真相については棚ボタ的に判明する上に、(聡美にすら)公表しないという結末になるため、あらあらこちらも消化不良。

ならば何が…って、ラスト50ページですよ。それまで、着メロの形で杉村が覚えていた違和感。それを明らかにしたときに見えた人間の本質。人間の薄暗い部分。闇の部分。とにかくもう、どいつもこいつも我儘で本当に苛々しましたとも。自分の都合の良いように(杉村に)動いて欲しい、都合の悪いことをされれば非難し、杉村が最も抉られたくないであろう部分を容赦なく抉る。なんていうか、気持ち悪い。でも、それが人間なんですよね。きっと、そんな人間ではないのは杉村の奥さんだけだと思います。彼女は言葉通りの意味で世間擦れしてませんから。

そんなわけでミステリではない…というか、最初からミステリではなかったのか。轢き逃げ事件を扱った作品=ミステリだと思い込んでいた私の負けだったようです。でもやっぱり、人間の悪い部分を描かせたら宮部は一級品だな、と改めて。

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2013/11/20

『ジークフリートの剣』 深水黎一郎

読書メーターの評価が高かったので読んでみました。深水作品は『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』しか読んだことがなかったためバカミス覚悟で読み始めたのですが、なんだかとってもしっかりしてる…まさか「芸術ミステリ」という分野を確立し、本作もシリーズものの一作だったとは。

あ、でも、本作も「ミステリです」と大きな顔しては言えないような気がしますね。

なんせ、謎が謎として登場したのがラスト50ページ切ってからですから。それまで謎のなの字も登場しませんで、ワーグナーのオペラについての蘊蓄があれこれ。結構読み易かったので案外楽しく読ませていただきましたが、苦痛な人は苦痛かと。

謎解きに関しては「ふむふむ」という感じで特に感慨はなし。なにせ、さっきまでそれを謎と思ってなかったので。これまで何作も読んできたミステリですが、探偵に突撃される第三者の気持ちが本作のそれでしょうか。っていうか、婚約者が死んだと言うのにすっかり第三者になってしまっている主人公ェ…。まあ、それも作者の狙い通りなのですが。

そして、さらに作者の狙い通りなのがラスト。どんなオペラになるのだろう…と引っ張って引っ張ってきた舞台で起こる奇跡。圧巻です。本当に、このラストのために書かれた作品なのだろうなあとすんなり納得できる、納得せざるを得ない。できることなら観客として観たい、そう思わせただけで深水氏にとってはしてやったりなのでしょうか。

芸術ミステリ、他のシリーズ作品も読んでみたいものです。

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2013/11/17

『体育館の殺人』 青崎有吾

2013年本ミス5位、鮎川哲也賞受賞の本作。「クイーンの論理展開+学園ミステリ」なんて帯が付いていて、冒頭の受賞の言葉に見取り図、なによりタイトルがもうアレで期待するなっていう方が無理。それでも、

最初の傘の論理は強引(というか幼稚)でちょっと期待外れかと思い掛けたんですけどね。

袴田妹や警察があそこまで天馬を信頼するに値するほど優れた推理ではなかったように思うのだけどどうでしょう。優れた…というより美しい推理を目の当たりにすると、もう何も言うことができなくなってしまうことが往々にして良くあるのだけれど、第二章の推理は決してその域に達していないんですよね。ええ、第二章の推理は、です。

第五章、解決編の推理はそれはもう美しいですよ!捜査によって得られた客観的事実を元に導き出された4つの犯人像。それを組み合わせたときに現れるたった一人の犯人の名前…美しい。こういうミステリを待ってましたとも。

そりゃ、警察がそんなに簡単に捜査に参加させてくれるわけがない、とか。仲間が被害者になったはずなのに哀しんでいる生徒が少ない、だとか(あれですか?人間が書けてないとかいうレトロな批判でしょうか?)突っ込みどころは確かにたくさんあるのだけれど。私は美しいロジックを魅せてもらえただけでもう充分にございます。

そして、作者の青崎氏は現役大学生とのことで…年下のミステリ作家がでちゃうような年齢に(自分が)なったのだなあとちょっと感慨深いものがありますね。西尾維新の存在を認識したとき並の衝撃でございました。もちろん青崎氏のこれからに期待大。

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2013/11/15

『404 Not Found』 法条遥

とりあえず、

パラメータ上げるだけのお手軽恋愛シミュレーションを私はやりたい

と大きな声で。語り部の池上裕也がゲームの登場人物であることはそうそうに理解できるのだが(それを本人が認めるまでに相当のページが費やされるのは面倒だった)果たしてそれが『ときメモ』的恋愛シュミレーションなのか、『かまいたちの夜』的サウンドノベルなのか。いや、冒頭いきなり池上が自殺している以上、『ときメモ』ってことはないので冒頭のシャウト。

もう少しネタバレをするならば、脇役は物語を物語として筋立って認識することはできず、主人公にとって必要なときに、必要なシーンにだけ登場すれば良いわけで、果たしてその間、出番と出番の間は彼らは世界のどこにいるのか、何をしているのかを垣間見る…というか、体験する一冊。不規則で不可解な世界(読書)はなかなかに不愉快なものです。

だから私たち読者は池上裕也が登場したゲームの題名も知らず、そのメインストーリーも知らず、いくつエンディングがあるのかも知らないのだけれど。とりあえずそのゲームをやってみたいと私は思わなかったので、あまり本作を楽しめなかったのかもしれない。だってパラメータ上げ(ry

なぜ「死」がリーディングシュタイナーの鍵になるのか、それを明らかにするストーリーが有ったら良かったの…か?でもそれは蛇足なのだろうね。

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2013/11/13

『見えない復讐』 石持浅海

法人に対する復讐、復讐のための企業、スケールの大きなお話になって当然のテーマが吃驚するほどミニマムなお話に。ミニマムっていうかちまちま。幽霊を演出し出したときには「こいつら大丈夫か?」と渇いた笑いが出ましたとも。ははは。

とりあえず、『玩具店の英雄』でも感じた強引さが本作でも。田島が導き出した推理・推測が絶対の正解であると信じ、一切の反論なしに納得してしまうギャラリーにものすごく違和感。そういう考えもできるよね、で落とすことは許されないのだろうか。ちょっとリドルっぽいまとめにしてくれれば尚のこと素敵なのに。

そして、これも最近の石持作品にありがちなのだけれど、動機にまったく共感できない。彼女でもなんでもない、憧れの対象にすぎなかった女性のために殺人は犯せないと思うのだが如何だろうか。いや、ひとりだけならそういう勘違い男だったと納得できないこともないのだけれど、3人だからな3人。それとも勘違い男が3人、奇跡的に集まってしまったからこその復讐計画だったのだろうか。それにしても爆弾はちょっと…。

最後の非常階段での出来事にもぽかーん。どうしてそうなってしまったのか、その心の動きをまったく理解できませんでした。これでタイム誌に選出されるほどの経営者になれるっていうんだから世の中驚き。

うーん、ちょっと辛口がすぎるだろうか?いや、このくらいは妥当な一冊。

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2013/11/11

『夜明けの街で』 東野圭吾

もちろん映画は観ていない。そして、岸谷五郎はちょっとイメージと違ったりする。

とりあえず、登場人物の誰にも共感できなかった一冊。性格悪過ぎる(悪女とは言い難い)秋葉を筆頭に、渡部にもその妻にも、マダム・カラフルにも、誰にも気持ちを寄せられなかった。

事件の真相もね。秋葉は犯人ではないと思ったし、不倫をしていたのは○○と○○だとも思ったけれど、まさか○○だとは思いませんでしたのよ。だって、そのくらいのことを警察の科学捜査が見抜けないわけないもの。力の入れ具合、角度、出血、その他もろもろから○○なら○○とわかるはず。これがもう違和感ありありでちょっと納得できないですね。

というわけで、一番楽しめたのはおまけの「新谷君の話」だったかもしれなかったり。不倫について詳しすぎると思ったんだよ、ええ。

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2013/11/09

『桜の園』 篠田真由美

『風信子の家』に続く神代教授の日常と謎シリーズ第2弾。このシリーズの楽しみったら蒼の可愛さ以外にないと言っても過言ではないけれど…

今回、蒼の出番が少ねえええええええ!
もっと蒼を出せええええええええええ!!!

収録されているのは中編2つ。そのうち表題作「桜の園」には蒼が登場しないだなんてくそう。ますます『原罪の庭』を再読したくなってしまったではないか。

謎の部分もね、面白味に欠けるというか何と言うか、ただひたすらに地味です。時効が成立しているとは言え「桜の園」の方は一応、殺人事件なんですけどね。やはり名探偵の不在が大きいか。「花の形見に」の方は殺人のようなわかりやすい事件が起こったわけではないけれど、京介が謎を解く、それだけで物語が締まったような気がするもの(まあ、偶然が過ぎるような気がしないでもないけれど。それは京介自身が指摘しているので今回は何も言うまい)

とりあえず、神代教授の日常もイマイチ、謎もイマイチではなんとも残念で残念で仕方がないので、もっとかわいい蒼を出すべきだと思うの。ああ、『風信子の家』ばりにはっちゃけたレビューを書きたかったなあ。

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2013/11/07

『名もなき毒』 宮部みゆき

別に嫌いなわけじゃないのだけれど、その重さ(物理的にも内容的にも)からどうしても敬遠しがちな宮部。別に嫌いなわけじゃないのだけれど(大事なことなので2回)そして、読みはじめればやっぱりおもしろくてページを捲る手が止まらないわけです。

もちろん今回もドラマは観ておりません…が、ストーリーテラーである杉村三郎が小泉考太郎であることは知っていたりしました。ただ、

杉村三郎シリーズが2作目で、前作『誰か Somebody』の内容をチラッチラッされることまでは知らなかったのですけれども

読了後にドラマのHPも観てみましたが、ドラマの原作はもともと2作(『誰か Somebody』と『名もなき毒』の両方を続けて制作)なんですね。あら、とても親切。

そんなわけで、前作の内容が見え隠れするのが気になりつつも文庫版598ページを読了。とりあえず、原田いずみが強烈。連続毒殺事件という現実の毒と、人の心の中に巣食う毒と。目に見えるものと見えないものをラストで繋ぎ合せるシーンには(毒殺事件の犯人が○○するシーン)ご都合主義を感じないでもなかったけれど。ご都合主義を展開した割にしあわせになっている人が少ないのが宮部らしいなあ、と思ったり思わなかったり。

とりあえず、早急に『誰か Somebody』を入手し読了したい所存。

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2013/11/03

『ゴーストハント 7 扉を開けて』 小野不由美

ゴーストハント、完結。

シリーズ通して張られていた伏線が見事に回収されていて、とても気持ち良い。ナルの正体にはただただ驚き。まさかね、そんなところまで伏線だとは思わなんだ。

そして、麻衣の恋模様ですが…

ナルじゃないと自覚する(させる)ところが凄い!

普通の少女向け小説なら「夢で助けてくれた彼はナルじゃなかったけど、でもナルにも良いとこあるし」的な感じでナルと麻衣をくっつけようとするのが定石なのに。きちんと「夢で助けてくれた彼=ジーン」が好きなのだと、そういう描写を最後まで貫いてくれたのが嬉しい。とりあえず、ずっと勘違いしたままでジーンとナルと呼んでいたこと、「そんなふうにしか、彼を呼ばなかった」と後悔する麻衣に胸が切なくなりましたとも。そして、

ジーンが言っておきたかったことっては何なんだ!!!

確かに謎の全てが解かれるわけじゃないってのはわかるんだけどさ!それが人生だって言われればそうなんだけどさ!物語の中でまでそんな殺生な!!でもそれが、麻衣とジーンが再会する伏線…にはならないでしょうね。それはそれで興醒めだもの。

とりあえず、純粋な本作の感想を述べるのなら、仲間が次々と子どもたちにとって代わられる描写がとにかく怖い。めちゃくちゃ怖かったよ。

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2013/11/02

『ゴーストハント6 海からくるもの』 小野不由美


綾子が活躍する日が来るなんて…!

これに尽きる一冊。前作『ゴーストハント5 鮮血の迷宮』レビューで綾子のことをこき下ろしたばかりだったのでもう、素直に謝罪するしかない。本当、ナルが無能をいつまでもチームの一員にしているわけないよね。そう言われてハッとしましたとも。まぁ、そんなナルは今回お荷物さんだったわけですが…!

ナルなし、完全なるチーム戦ってのもたまには良いなあと改めて。とりあえずぼーさんのリーダーシップったらないわね…惚れてまうやろ!まあ、私の好みは安原くんなわけですが(言動一致の自信家はたまりません)はてさて、麻衣(と真砂子)の恋の行方は?

次で最終巻なんですよね。ようやくナルの正体が明らかになりましたが、最終巻はそのあたりをメインに据えたお話になるのでしょうか?これまでナルは自分の力を隠してきたわけですが、今回ラストでその力を解放したことでナルを捕まえに来る輩が登場すると予想。それを麻衣を筆頭にしたチームで助けに行くんですよね?ってゴーストをハントするお話はどこに?

今回は(も?)幽霊というよりはバイオハザードなお話でしたが、登場人物の豹変ぶりが幽霊よりも怖かった。人間がなによりも怖い、そんな風に思うわけです。

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