« 『グラン・ギニョール城』 芦辺拓 | トップページ | 『火刑法廷』 ジョン・ディクスン・カー »

2013/09/10

『月と蟹』 道尾秀介


直木賞、という賞をあまり信用してはいないのだけれど。ミステリでもないのにページを捲る手を止められなかった144回直木賞受賞作。

海辺の町、クラスに馴染めずにいる余所から来た子ども、ふたりが始めた秘密の遊び、どんな願いも叶えてくれるヤドカミ様、そして願った……という、とってもダークなお話。

道尾だけれど大仰なトリックはなし。作品通して横たわる雰囲気は『龍神の雨』に近いかな。絶望、というかどうしようもない理不尽というか。悩み、苦しむことに大人も子どももなくて。ただ、無垢な残忍さだけは時に子どもの方が上回ることがあって。互いに互いが大切だったからこそ、どうしてもすれ違ってしまうことがあって。人生経験を積んだ大人なら、もしかしたら回避できた可能性もあるけれど、小学生の彼らにはとてもとても難しいことで。なんというか、自分が幼かったころのあまり触れたくない、厭な思い出のいくつかが胸を去来して、とても複雑な気分。純文のことはよくわからないけれど、何のトリックも仕掛けられていないミステリでもない道尾だけれど、それでも私はこの作品が結構好きかもしれない。

再読するのは10年に1回で充分だけれど。それも、心が健全な時にしたいものだ。

|

« 『グラン・ギニョール城』 芦辺拓 | トップページ | 『火刑法廷』 ジョン・ディクスン・カー »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/38084/53202752

この記事へのトラックバック一覧です: 『月と蟹』 道尾秀介:

« 『グラン・ギニョール城』 芦辺拓 | トップページ | 『火刑法廷』 ジョン・ディクスン・カー »