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2013/09/26

『ゴーストハント1 旧校舎怪談』 小野不由美


基本的にホラーは苦手。小野不由美かつリライトされなかったら読もうとも思わなかったであろうゴーストハントシリーズ。元はティーンズハートなので懐かしさも覚えつつ、やっぱり怖かったとも。

ゴーストハンターと言えば巫女やら坊さんやらエクソシストやらを思い浮かべて当然だけれども、本作は怪奇現象を論理的あるいは科学的に解明しようというスタンス。幽霊の正体見たり枯れ尾花的な解説はどれも納得いくもので、小野不由美イズム(本格ミステリイズム)を感じるのだけれど、正体を知っても怖いものは怖いのよね。作中でも巫女のお姉さまがまさに同じことを言っていたけれど、この怖いものは怖いという感覚こそがホラー作品の醍醐味なのでしょう。私にはわからないけれど。

ちなみに、最後の最後でサイキック終わりになってしまったのだけはやや納得いかん。もちろん、シリーズ全体通しての伏線になっているのは承知だけれど、最後まで論理的に解決して欲しかった…と思うのは、ミステリスキーの性でしょうか。

シリーズ7作、ゆっくり読んでいくつもりだけれど、本作に登場した巫女やら坊さんやらエクソシストやらは再登場するのかしら?エクソシストはいい人過ぎるので裏があるに違いないと思っているけれど()どうでしょう?とりあえず、ジョンに関西弁を教えた人は出てくるに違いないね。私はそう信じているとも。

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2013/09/24

『QED~flumen~ ホームズの真実』 高田崇史


もうQEDシリーズは読めないと思っていたので、ミステリーの館(講談社メルマガ)で知らされたときにはそれはもう歓喜しましたとも。しかも、パーフェクトガイドブックまで収録してくれるとは…もう買うしかない!

内容に関してはいつもの「ミステリ?なにそれ美味しいの?」に加えて、

ホームズの真実っていうより紫式部の真実だよね!

って感じなのですが()『ベイカー街の問題』がおもしろかっただけに期待も大きく、これは残念。まあ、誰の真実であろうとタタルの蘊蓄大会が始まるのは変わらないわけで、問題ないと言えば問題ないのだけれど。

それよりも。『伊勢の曙光』で中途半端に終わったタタルと奈々の関係、ふたりの結婚話が読めるんじゃないかとこちとらワクワクですよ。プロローグ明け、いきなり「奈々さん、ご結婚されるんですって?」から始まったときにはどうしようかと思いましたが、

本編ではとくに進展はなく。

肩を落とし掛けたところの書き下ろし二次会ですよ!!!ちょっと奈々ちゃんが積極的過ぎるというか、こんなキャラだっけ?という方が本編にも数人いらっしゃったのですが(特に美緒ちゃん)まあとにかく私は満足です。この満足は半年くらい続くでしょう…というわけで、来春くらいにはQEDシリーズが再開してると良いなあと願いつつ。

やっぱり私はQEDが好きなのです。

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2013/09/23

『脳男』 首藤瓜於


もちろん映画は観ていない、第46回江戸川乱歩賞受賞作。

江戸川乱歩賞は結構、信頼している私ですが本作はミステリというよりも長い長い自己紹介と読まされた気分でございます。連続爆弾犯の共犯者であると疑われ、精神鑑定を為されることになった男・鈴木一郎。そんな鈴木に感情がないのではないかと推測し、彼の過去を知ろうとする精神鑑定医・真梨子。本作では真梨子が真相に近付いていく過程がおよそ7割を占めます。それがまた、おもしろいのだけれど。

現実として鈴木一郎のような男が存在するかどうかは別として。彼が彼であるためには、ああいう自我(自己)を設定するしかなかったのはとても哀しいことでしょう。哀しいという感覚は彼にはわからないそうだけれど。いつか彼が哀しいという感覚を理解する日はくるのでしょうか。夢はその手伝いをしてくれるでしょうか。シリーズ続刊が些か気になるところ。

映画の方はいくつか設定に変更があるようですが、なかなか重苦しい雰囲気で楽しめそう。なにより、鈴木が少女を助けるシーン、あれは絶対に視覚で楽しむべき。脳内で映像化するには(鈴木じゃあるまいし)限界があるものね。いつか観てみたいものです。

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2013/09/22

『必然という名の偶然』 西澤保彦


『腕貫探偵』シリーズの番外編扱いなのだけれど、腕貫探偵のことをちっとも覚えていなかったので番外編として楽しめなかった自分のトリアタマが憎い。どうやら大富豪探偵やらオヤカタやらケージがシリーズキャラらしいのだけれど、全く印象に残ってないのよね。これは腕貫探偵再読か。

収録されているのは6作。連作ミステリーなんて紹介されていたけれど、舞台が櫃洗市ってだけで特に繋がってはいなかったような?5つの物語がラストの1作で繋がるのかと思ったけれどそうでもなかったし。

個人的ベストは「突然、嵐の如く」かな。こういう後味悪いのは好きです()っていうのは軽い冗談だとしても、事件Aについて推理・検証していたら事件Bの真相を暴いちゃいました…って、なんというお得感でしょう。

全体として小粒ながらもしっかりしたミステリが味わえる、そんな短編集でございました。

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2013/09/21

『中途半端な密室』 東川篤哉


東川篤哉のデビュー作を含む初期短編集。ユーモアたっぷりな独特な語り口はデビュー時には既に確立されており、安心の東川クオリティ。むしろ、ユーモアの量と質が適度で、最近の作品もだらだらさせずにこのくらいで納めてくれたら…と思ったり思わなかったり。

個人的なベストはK島を望むS島で起こった殺人事件を題材にした「南の島の殺人」。叙述トリックに分類しても良いと思うのだがどうだろう。なにより、名探偵(?)が解決に至るそのアプローチの方法が類を見ないかと。秀逸。

「十年の密室・十分の消失」はバカミスかな。離れの小屋が消えるトリックは館モノかと思ったのだけれど(館が180°回転して違う場所に案内された)そちらの方がまだマシだと思える出来だと思いませんか?

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2013/09/20

『天使の報酬』 真保裕一


もちろん映像化したものは(ry

小役人シリーズというネーミングはどうもしっくりこない外交官・黒田康作シリーズの第二弾。サンフランシスコで行方不明になった娘を見つけて欲しいとの依頼を受けた黒田は、その父親が隠している「何か」を探るために一路日本へ。外交官として世界を飛び回る黒田にとって久方ぶりの日本、しかしそこで彼を待ち受けていたのは警視庁捜査一課と外事警察、そして外務省の高度な情報戦()だった。全てを操る黒幕は果たして誰なのか、そして外務省内にいるかもしれない裏切り者とは?

そんなお話ですが、もちろん前作『アマルフィ』に負けず劣らずのビックスケールです。謎が謎を呼び、絡まってしまった真実を黒田がひとつひとつ解きほぐしていく様は今回の方が上かな。今回もミステリではなくあくまでもエンタメ小説ですが。それにしても登場人物が勝手に事件を大きくしている感が否めなかったのが残念。いや、起こった事件(真相)は充分にでっかいんですけどね。塵も積もれば系なので、新たになる真実ひとつひとつは「で?」って言いたくなるようなものなんですよ。そのために少し緊迫感に欠けたのが残念かと。

そうは言っても第三弾も読ませていただくんですけどね。果たして松原女史は再登場するのか…見物です。

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2013/09/15

『まほろ駅前多田便利軒』 三浦しをん


直木賞という賞をあまり信用してはいないのだけれど、と書くのは5日ぶり2回目。直木賞を受賞していたとは知らず、もちろん映画もドラマも観ていない『まほろ駅前多田便利軒』だけれど、とても楽しく読ませていただきました。

東京と神奈川の境目、揺り籠から墓場まで過ごせてしまうまほろ市で便利屋を営む多田の元にかつての同級生が転がり込んできたその日から。厄介事が舞い込む…どころか、自ら首を突っ込んでいく行天に振り回されながら。ふたりで過ごした1年の記録。あらすじを書くならこんなところでしょうか。

便利屋としての仕事(厄介事)に関しては深く心に残ったものはないのだけれど。あ、バスの間引きの件は少し気になるけれど(笑)やっぱり多田と行天、ふたりの微妙な関係ですよね。もっとも心に残ったフレーズを引用するならば、

行天はべつに友だちってわけじゃない。心で反論した多田は、「そうか、この子にとっての人間関係は、まだ言葉で規定できるものばかりなんだな」と気づいた。

という一文なのですが。言葉で規定できない関係、それが多田と行天の関係で、敢えてわかりやすい関係になることをふたりがふたりとも望んでいない、とてもふわふわしたふたりの繋がりがとても魅力的な作品でした。

シリーズ続刊にも期待。そして、行天が松田龍平さんらしいので映像化したものも観てみたいものです。

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2013/09/14

『火刑法廷』 ジョン・ディクスン・カー


『グラン・ギニョール城』
のエピローグで本作について触れられており、懐かしく再読してみた。学生の頃と今と、読了感が大きく違っていてとても驚いていたりする。

先ずお伝えしたいのが、

『火刑法廷』と題されておりながら法廷モノではないということ(笑)

絶対法廷ミステリだと思うよね。でも、大丈夫、読んで損はさせません。

不死の毒殺魔に密室、死体消失と謎を魅力的にしてくれるトッピングがたくさん。けれど、その答えの在処はとてもとてもシンプル。え?そんな簡単なことだったの?と思わず膝を叩きたくなること請け合い。そして、

エピローグでひっくり返る世界観

これがたまりません。ミステリとして充分に魅力的なのに、一瞬で、たった数ページで物語は一気にホラーに。一粒で二度おいしいとはまさにこのこと。

とりあえず、読んでいる間中、すっと背中が冷たかった。漂ってくるその雰囲気に呑まれてしまった…これが学生の頃と今と、再読して大きく違ったところかな。

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2013/09/10

『月と蟹』 道尾秀介


直木賞、という賞をあまり信用してはいないのだけれど。ミステリでもないのにページを捲る手を止められなかった144回直木賞受賞作。

海辺の町、クラスに馴染めずにいる余所から来た子ども、ふたりが始めた秘密の遊び、どんな願いも叶えてくれるヤドカミ様、そして願った……という、とってもダークなお話。

道尾だけれど大仰なトリックはなし。作品通して横たわる雰囲気は『龍神の雨』に近いかな。絶望、というかどうしようもない理不尽というか。悩み、苦しむことに大人も子どももなくて。ただ、無垢な残忍さだけは時に子どもの方が上回ることがあって。互いに互いが大切だったからこそ、どうしてもすれ違ってしまうことがあって。人生経験を積んだ大人なら、もしかしたら回避できた可能性もあるけれど、小学生の彼らにはとてもとても難しいことで。なんというか、自分が幼かったころのあまり触れたくない、厭な思い出のいくつかが胸を去来して、とても複雑な気分。純文のことはよくわからないけれど、何のトリックも仕掛けられていないミステリでもない道尾だけれど、それでも私はこの作品が結構好きかもしれない。

再読するのは10年に1回で充分だけれど。それも、心が健全な時にしたいものだ。

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2013/09/09

『グラン・ギニョール城』 芦辺拓


嵐によって孤立してしまった欧州の古城グラン・ギニョール城。一癖も二癖もある客人の間に起こる諍いに、繰り返される惨劇。果たして名探偵ナイジェルソープはその謎を解くことはできるのか。そして、時を超えた現代の名探偵、森江春策もまた虚構と現実の入り混じる真のグラン・ギニョールの謎に挑む…とか書いてみましたが。趣向の凝らされた作品のあらすじを書くのは難しいですね。すぐにネタバレになってしまいますもの。

森江春策シリーズは初めまして。とりあえず傑作と名高い本作から読んでみました。うん、古き良き時代の推理小説って感じでとっても好みです。グラン・ギニョール城を舞台にした双子の殺人事件。虚構と現実、そう書くのがまさに相応しいふたつの事件がひとつになっていく様はなかなかにおもしろい(描写が充分なので「読めて」しまうため、驚けないのが残念か?)

起こった事件、肝心のトリックの部分はやや強引かつ小粒、おまけっぽいのが残念だけれど。書きたかった部分は虚構と現実を重ね合わせていく部分とエピローグではないかと思料。おいおい()と思いながらも、ミステリ好きにはたまらない設定。

たまらないと言えば。謎の中国人が登場したときにノックスの十戒を思い出したのだけれど、後々それを逆手に取ってメイントリックに組み込まれてきた時には思わずにやりとしてしまいましたとも。そのあとの○○○○○トリックはグダグダだったけれども、この着想はなかなか好みでした。

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2013/09/06

『猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち』 大山淳子

テレビドラマは(ry 

猫専門弁護士・百瀬太郎がやっかいな依頼人に振り回されながらも全てを丸く収め、大団円を迎えるハートフルな物語。

読者は物語を俯瞰で見ているので、そこでなにが起こっているのか(物語がどう絡み合っているのか)を既に知っていて、あとはそれがどう解決するのかの手腕を楽しむばかりなのだけれど、あれ?本作で百瀬はなにかしましたっけ?どうにも問題が自然に解決した感が否めない本作。それこそが百瀬の手腕なのかもしれないけれど。誰からも愛される…とまではいかないけれど、どうも憎めない、そんな人物でしょう。

いや、私は結構あちこちで苛々したのだけれど。

それにしてもラスト、テヌーを迎えに来た彼女。どこかに彼女が彼女であるという伏線があればもっと良かったのだけれど。それとも、私が気付かなかっただけでどこかにあったかしら?とにかくシリーズ続刊、ふたりの新婚生活に期待です。

あっ!ドアに悪戯書きをしているのは一体誰なんだ!?これも続刊で明らかになるのでしょうか。しかし、誰が何の為にあんなことをしているのか…百瀬の母親の件と並んで、本作最大の謎だわ。

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2013/09/01

『マドンナ・ヴェルデ』 海堂尊

『ジーン・ワルツ』と対をなす、代理母の物語。

『ジーン・ワルツ』を読了した際に、理恵が守りたかったのは赤ん坊だったのか医療だったのか…といったことを書いたのだけれど、『マドンナ・ヴェルデ』を読んで理恵が守りたかったのは医療だったのだと確信。ただ、その魔女の心は母親の手によって少しだけ、ほんの少しだけ溶けたのだけれど。

それにしても、『ジーン・ワルツ』を読んだときにはそこまで違和感を覚えなかったのだけれど、みどりの視点で代理母の話を聞くととんでもないお話だと改めて。みどりに代理母の話を持ちかけたときの理恵の思考回路がもうぶっ飛んでるというか破綻してますよね。もちろん破綻しているのは論理ではなく精神です。もう一度『ジーン・ワルツ』を読んでみようかな。

この物語には何人もの母親が登場するわけですが、最も心打たれた母親はやっぱり甘利さんだなあ、と。「ユイちゃん、まだ出てきちゃダメ。ママのお腹の中にいて。でないと死んじゃう」って凄い台詞だなあと思います。

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