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2013/08/31

『月の恋人』 道尾秀介


もちろんドラマは観てな(ry ので、まさかミステリでないとは思わず、ぽかーんとしてしまった本作。

道尾で恋愛小説ってニーズありますか?

せめてなにか、叙述トリックでもなんでも良いので道尾らしさがそこにあれば良かったのだけれど。本当にただの恋愛小説なんだもの。蓮介のあれこれを以てして人間小説とは言いたくない。あれです、読み易いことが最大の美点だと思います。まぁ、あとがきによるとドラマとの連動企画のようなので致し方ないのかなとも思いますが。

っていうか、まだドラマの方がおもしろそうだよね!

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2013/08/30

『ストロベリーナイト』 誉田哲也

もちろん映画もドラマも観ておりません。が、菊田に西島秀俊さんってのは良いですね。そんな『ストロベリーナイト』を本日読了しました。

とりあえず、出てくる登場人物みんなに苛々しましたね(笑)主人公、ノンキャリながら27歳で警部補となった姫川玲子にもまったく共感できず、前半はページを捲る手が結構重かったです。後半、チラッチラッがうざかった玲子の過去が明らかになり、描写が事件中心になったところでようやくおもしろいと思えたかな。うん、私は玲子があまり好きではないらしい。女性受けしそうにないキャラクタだけれど、男性受けはするのだろうか?

事件に関しては良くも悪くも警察小説って感じで、推理小説ではないですね。犯人に至る手掛かりはほぼ皆無、あるのは玲子のひらめきとお金で買った情報(真相)だけ。では警察小説としてどうなのか…ってのが問題になるわけですが、玲子が如何にして男社会を切った張ったで潜りぬけていくか、キャラ小説一歩手前なので警察小説としても微妙。佐田刑事で組織としての力云々をやった割には、組織として機能してないじゃないですか、もう。

って、なぜか毒吐いてますがおもしろく読みましたとも。シリーズ続編も読みたい。

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2013/08/27

『書物法廷』 赤城毅


世に出れば国を、政治を、歴史を揺るがしかねない秘密をはらむ稀覯本を、あらゆる手段を用いて入手する書物狩人シリーズ第3弾。

本作ではシャーロック・ホームズにとってのモリアーティ教授のように、ル・シャスールにとっての天敵が登場。書物偽造の天才、ミスター・クラウン。書物を、書かれている内容を、書かれるに至った経緯を、その全てを愛してみせる書物狩人にとって、書物の偽造がナンセンスなものであることはもちろん承知なのですが、もっと深い…個人的な確執があるような気がしてならないこのふたり。シリーズ続刊にますます期待。

収録されている4作のなかでは「クイナのいない浜辺」が個人的ベスト。爆弾製造技術に優れたテロリスト・プロフェッサーが欲した一冊の書物。なぜ善良な一市民であったプロフェッサーはテロリストへとコペルニクス的転換を遂げたのか。否、遂げざるを得なかったのかを描いた作品ですが…手に入れた一冊、その最後のページに描かれていた作品が目に浮かぶようでした。

そして、書物狩人シリーズと言えば気障ったらしい物言いや仕草の数々ですが、今回ももちろん健在。「銀の川の蜃気楼」ラスト、レディ・Bとのやりとりとか定番だけどたまりませんね。

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2013/08/26

『カラット探偵事務所の事件簿 1』 乾くるみ


『イニシエーション・ラブ』や『Jの神話』に代表される乾ワールドとは一線を画した本作…っていうか、乾くるみで日常の謎だと…?って思わず呟いてしまった一作。

≪あなたの頭を悩ます謎を、カラッと解決いたします≫
がキャッチフレーズのカラット探偵事務所。事務所の採算は度外視、魅力的な謎が解ければ良いという古谷と、身体を壊して新聞社を退職したばかりの井上、このふたりが街のお悩みを解決するわけですが…謎の難易度は普通あるいは低く、なにより魅力に欠けます。

「別荘写真事件」がまあまあかな、と思いますが、ミステリ好きとしては父親に会いに行く云々よりも別荘の焼死体が誰だったのかの方に興味が…。そちらはさらっと流されて、切なくなってしまいました。

それでも。最後まで読んで良かった!と思わせてくれのが乾パワー。まさかそういうトリックが仕掛けられているとは全く思っていなかったので些か反応できずにおりましたとも。思い返せば井上がたまごクラブに明るいあたりが怪しかったのかもしれませんが、そもそも、古谷が井上に敬語なあたりで気付いたって良いのかもしれませんが、やっぱり無理だと思う。まあ、ちょっとしたお遊びってことで。それにしても文庫版の表紙…苦労されたことでしょう。

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2013/08/24

『福家警部補の挨拶』 大倉崇裕


倒叙ミステリは警察(もしくは探偵)が如何にして犯人に辿り着くかを楽しむものだけれど、本作の主役たる福家警部補の捜査はとても丁寧でシンプル。文庫版表紙の印象が強く、「女性の勘を働かせちゃう系?」とか思いこんでてすみません、と思わず謝りたくなってしまうくらい見事です。

個人的ベストは「オッカムの剃刀」。准教授はなぜに殺されるに至ったのか…の部分が凄い。ミステリを読んでいると「その動機は有り得ないだろ!」と突っ込みたくなること多々なわけですが、「オッカムの剃刀」の動機は見事かと。そしてラスト1P、福家警部補はいつから犯人を怪しいと思っていたか。差し込まれた5年前のエピソードがこういう形で効いてくるのか!と思わず膝を叩きました。この作品は本当に見事。

他3篇についても実に丁寧に描かれていて、とても好感が持てます。そして、女性が主役のミステリだとどうしても二時間ドラマに登場するようなオバサン刑事になりがちですが、福家警部補には愛らしいところが多くってこれまた好感。シリーズ続刊にも期待したいものです。

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2013/08/20

『キョウカンカク』 天祢涼

 

第43回メフィスト賞受賞作。文庫化の際に『キョウカンカク 美しき夜に』と副題がついた模様ですが、美しき夜の描写はあっただろうか?と首を傾げているところです。

『キョウカンカク』は果たして共感覚なのか強感覚なのか凶感覚なのか…といろいろ想像して手に取った本作。正解は音の色を視ることのできる共感覚、でした。この共感覚という能力、作者による造能力かと思いきや、現実に存在し、研究もされている能力なのですね。自殺願望者の吐息が青く、殺人願望者の吐息が紅いってのは設定かもしれませんが、共感覚×ミステリはなかなかおもしろい。

ただ、本作に限って言えばちょっと狙いました感がありすぎて中途半端な出来になっているように思う。殺人鬼の吐息は紅い→だったらあいつが犯人?→それだとおもしろくないから一捻り→でもやっぱりあいつが犯人で、共感覚は本当でしたって展開になるんだろうなあと思ったらその通りでした。捻るところでもう少し違う捻り方をしてくれたらきっと、もっと素敵な作品になったと思う。

個人的には廃工場で隠し部屋を見つけたみたいな展開多めの本格ミステリを読ませて欲しいと思ったかな。キョウカンカクシリーズは続いているようなので、続刊に期待。ちなみに、美夜と矢萩の計画?に関しては「ふーん」って感じです。吉野ヶ里警部が信奉者だったってのはおもしろかったけどね…って、副題の『美しき夜に』ってのは美夜の名前から取ったのか!

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2013/08/17

『逆説探偵』 鳥飼否宇


逆説といえばチェスタトン、オマージュに溢れた副題に惹かれて読んでみたのだけれど、肝心の逆説がうまくいっていたかと言うと首を傾げざるを得ないかと。

そもそも逆説ってのは「急がば回れ」みたいな一見、両立しなさそうな事柄を両立させてみることだと思うのだけれど。本作にそんな内容あったっけ?それとも私の認識が誤っているのだろうか。

だったら、短編ミステリとして楽しもうじゃないか!と気持ちを入れ替えてみても。12もの事件を収録する都合上、事件のあらましに9割、解決に1割というなんとも物足りない作りになっていて、どうしたって消化不良。「13人の申し分なき重罪人」は誇大広告だと思うの。

ついでに言うならじっとくの正体もね、気付かない人がいるもんですか。

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2013/08/16

『有頂天家族』 森見登美彦

アニメ視聴からの『有頂天家族』。矢三郎と地の文がすべて櫻井ボイスで再生される、嬉しい。

森見ワールドにあまり馴染めずにいた私だが、今回ばかりは引き込まれた。それもこれもアニメ(と櫻井ボイス)のおかげだと自己診断しているのだけれど、森見作品の楽しみ方は語り口の妙ってことでよろしいか?

京の都、連綿と続く人間と狸と天狗の三つ巴。そんな大きな車輪の中でぐるぐると走り回る狸の物語は、どこまでも与太と法螺ばかり。内容がないのがまた「らしく」、内容を求めるのは阿呆の所業か。いや、阿呆であろうとする物語であったか。

それぞれに愛すべきところのある四兄弟(&お母様)であるけれど、個人的に矢二郎兄さんの哀愁に感じ入るところがあったなあ。己を責め続け、いつしか狸であったことを忘れ、井の中の蛙で在り続けた彼が魅せたラストの疾走にほろり(とはならなかったけれど)

有頂天家族のその後の物語はないのでしょうか?彼らに幸、多からんことを!

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2013/08/14

『ガリレオの苦悩』 東野圭吾


既におなじみ、ガリレオシリーズ。収録作はどれもドラマ化されていて、視聴済みだったため結末は知っていたのだけれど。それでも細かな相違点があったり、逆に実験の様子を脳が映像として補完してくれたりと二倍楽しめた感があるかも。

抜きん出て優れた作品はなく、どれも一定の水準を満たした佳作といった印象。物理?なにそれ美味しいの?度が一番強いのは「操縦る」かな。これはドラマで観ておいた方が良いかも。「密室る」で「とじる」と読むのはミステリ好きとしてドキドキ。「攪乱す」は生瀬さんのイメージが強すぎ。

レギュラーとして定着した内海刑事は原作の方が格好良いですね。女の勘、悪くないです。

それにしても、本作の湯川には随分と人間臭い描写が目立って残念。もちろん狙って書かれていることは承知なのだけれど、変人ガリレオでいて欲しかったと思ったり思わなかったり。どことなく格好良さげに描かれている湯川だけれど、本当は冬彦さんだったはずじゃない。

ああ、でも、『聖女の救済』に続き『容疑者Xの献身』を思い出させる記述があったのには、にやり。湯川にとってどうしても忘れられない事件だったのだなあと改めて。

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2013/08/12

『のぼうの城』 和田竜

 

もちろん映画は観ていない『のぼうの城』。まさか「でくのぼう」の「のぼう」だとは思わなんだ。

時は戦国、豊臣秀吉の小田原攻めの最中に石田三成が落とすことを命ぜられたのは忍城。本当ならばこの城、無抵抗で落ちるはずだった…にも関わらず、開戦することになったのは「のぼう様」、成田長親の英断があったから。果たしてこの「のぼう様」、真にただのでくのぼうなのか…それとも?

読了した今も長親がただのでくのぼうだったのか判断に迷う。ラスト、三成(正確には正家か)に喰い下がった長親と、丹波に甲斐姫への気持ちを問われ小さく頷いてみせた長親と。ああ、こうやって自分の気持ちを殺せる人なんだなあって思ったら、それまで描写されてきた長親の行動、言葉、その全ての裏を探ってみたくなる。

そして、三成。私の中で三成は「全てが裏目に出る可哀想な人」というイメージなのだけれど、本作でもそんな感じでしたね。自己評価が正しくない、過大なんだよなあ。能力がないわけじゃないだけに虚しい。三成だから忍城を落とせなかった、じゃなくて、三成だけど落とせなかったであれば良いと思う。

とにかく、長親が(私の中では三成も)愛すべき殿様(御屋形様)であったことは間違いない。問題は愛すべきバカ殿であったかどうか。映画ではどんな風に描かれているのかな?野村萬斎とか見るからに腹の中にひとつもふたつも含んでそうなんですけど(笑)そして、三成が上地雄輔…だと…?


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2013/08/10

『ウィンター・ホリデー』 坂木司

小学5年生の息子と初めて過ごす冬。クリスマスにお正月、バレンタインにホワイトデー、互いを知らなかった時間を取り戻すかのように楽しんで過ごせる…のか?というわけで、『ワーキング・ホリデー』続編です。

やっぱり私は「お母さん」との異名を持つ進が年相応…どころか、むしろ幼くなっちゃう瞬間が好きなようで、ふたりで意地を張り合ったお正月の喧嘩にほっこり。ようやく出来たお父さん、ようやく会えたお父さんを独り占めしたくなっちゃう気持ち、わかります。

だから、バレンタインのコンビニで大和が言った言葉も好き。「『お父さん、迎えにきて』。それだけ言えば充分なんだよ」は名言。家族だから、お父さんだから、息子だから許される、信頼が省略させる会話って本当に素敵だなあ。

現在家族は「お父さんと進」と「お母さんと進」の二世帯。果たしてこの二世帯が一世帯になることはあるのか…は次のホリデーに期待でしょうか。

ところで、本作に登場した元ヤンのサクライさんって『和菓子のアン』に登場した桜井さんってことでよろしいか?学生結婚したんですね、おめでとう!

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2013/08/09

『ワーキング・ホリデー』 坂木司

『ウィンター・ホリデー』を読む前に再読してみた。そう、間違いなく再読なのだけれど、内容はすっかりこってり忘れていたのでとても楽しめました。

ある夜、ホストクラブ・ジャスミンに現れたのは小学生の男の子。その子が言う、「初めまして、お父さん」から新米お父さんの最高の夏休みが始まる。というお話なのですが、とりあえずミステリ脳な私はお父さんがお父さんじゃない展開を予想しましたとも。いつそんな展開になるのかと、最後の最後まで疑っていましたとも。感動が台無しですね!

それにしてもラスト。「帰りたくない」「だめだ」からの進の涙にやられましたとも。どんなにしっかりした子でも、いや、しっかりした子だからこそ。我儘とわかる自分の気持ちを素直に表現することに勇気が必要で、怖くて、だからこそこんな風に泣いちゃうんだろうなあと思ったら切なくてね。

でも大丈夫!ふたりには冬休みがあるから…ということで、今から『ウィンター・ホリデー』に取りかかります。こちらは間違いなく未読。さて、ふたりはどんな冬休みを過ごすことになるのでしょうか楽しみです。

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2013/08/08

『吉祥寺の朝日奈くん』 中田永一


恋が始まるまで、あるいは、始まることなく終わってしまった恋の物語が詰まった短編集。

個人的にベストだったのは「ラクガキをめぐる冒険」でしょうか。どの作品にも謎解きがエッセンスとして振り掛けられているのだけれど、どうして遠山くんに会いたいのか…の部分をフェイクにしてうまく魅せてくれた本作がいちばん綺麗だったと思う。ラストのまとめ方もいちばん救われた感じだったし。

表題作も好き。まさか全てが○○だったとは。けれど、人の気持ちと言うのはシナリオ通りにいかないもので、その気持ちの振れ幅がまるで小さなものであるかのような淡々とした描写に改めて乙一すげーと思いました。まる。

そういえば、『箱庭図書館』のときにも思ったのだけれど、乙一の文章ってこんなに句読点多かったっけ?「三角形はこわさないでおく」が特に顕著で、ちょっと読み辛かったです。まる。


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2013/08/05

『魔神館事件 夏と少女とサツリク風景』 椙本孝思

十二宮で館モノとかなんて素敵な作品なのでしょう。表紙を開いてページをめくり、そこに見取り図があったときの胸のときめき。たまりません。

11年前に事故で亡くなった父親の代わりに呼ばれた「魔神館」の落成式。そこに集められた異なる星の元に生まれた12人。高校生、画家、医師、料理人にメイド、そして世界最高の知性。閉ざされた台風の山荘。常人のものとは思えない方法で殺されていく人々。欠けゆく十二星座のモチーフ。果たして犯人は誰なのか?

と、思い付くままあらすじを書き出してみましたが、館に天才に密室に『そして誰もいなくなった』のインディアンにとミステリ好きが好みそうなものをとにかくぶっこんでみました!という感じですね。肝心のトリックがちょっとアレなので(アンフェアとまではいかないけれど、ちょっとヒントが少なすぎる)名作!感動!とまではいかないけれど、ワクワク感だけは充分に味わえます。

そして、そのワクワク感に色を添えるハテナの存在。果たして彼女は本当に世界最高の知性…犬神の創ったロボットなのか。黒彦が彼女の鼓動を聴く描写がありましたが、だからってロボット説が否定されるわけじゃありませんからね。そのあたりはシリーズ続刊に期待でしょうか。

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2013/08/02

『天地明察』 冲方丁


もちろん映画は観ておらず、実を言えばどんなお話なのかも知らずに読み始めた本作。暦を作る話だったのね。

ただ、私のなかの本作のピークは春海が関という男を知り、彼がためだけにつくった設問が無術だとわかった瞬間だったりする。暦作りよりも算術の方が、下手をすれば暦作りよりも碁の方がおもしろそうだと思ったり。

そもそも、暦作りだってほぼ人脈作りですからね。人と人との関係、繋がり合い、助け合いに感じ入るべき一冊だと思われます。淡々と描写され、淡々と進む物語。残念ながら私のページを捲る手も淡々でございました。

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