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2013/07/30

『白銀ジャック』 東野圭吾


白銀のゲレンデ、舞い込んできた脅迫状、どこかに埋められた爆弾、人質はスキー客全員!という身代金ミステリにスキー&スノボをトッピングしてみた本作。犯人は誰なのか?その目的は?のミステリ要素はしっかりしている割に印象薄く、ゲレンデを滑り降りる疾走感が半端ないです。

東野氏がスノボに傾倒していく様は『ちゃれんじ?』に明るいわけですが(久しぶりに読みたくなってきた、東野氏のエッセイは笑かしてくれるので大好きです)自身の経験がフルに生きたであろう一冊ですね。私はスキーは苦手ですが、それでも○年ぶりに滑りたくなってしまいました。

ミステリ的には怪しい人は怪しくない、見えている世界をひょいとひっくり返したらあら犯人さんこんにちは、という感じなのですが驚きはないかも。冒頭にも書きましたがしっかりしている割に印象薄いんですよね。「へぇ、そうだったんだあ」で終了。もしかしたらミステリというよりはエンタテイメントな一冊かもしれない。

それにしても、主人公と千晶の行動にはらはら(むしろ、苛々)したのは私だけではないはず。

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2013/07/29

『フリーター、家を買う』 有川浩


ドラマは観ていなかったのですが、フリーターが財テクして夢のマイホームゲットだぜ!というサクセスストーリーだろうなと思い込んでいたら、母が鬱になりましてという重たいお話だった本作。

3か月で会社を辞め、働くということからも母親からも家族からも逃げて目を背けていた主人公がまっとうな人生を歩もうと努力する物語。その点からサクセスストーリーというのは間違いではないのだけれど、サクセスの度合いが身の丈にあった…というと感じが悪いけれども、彼の辿り着いた場所は「人並み」なんですよね。

でも、この「人並み」って決して悪いことではなくて、笑えなくなった母親を「人並み」にすること=新天地に引っ越すこと=家を買うこと、ができて彼は充分に満足だったはず。父親との確執…というか、プライドがエベレストな難しい父親とかその父親とうまくやれない主人公とかリアルすぎて有川浩すげー!って感じなんですが、とにもかくにも家族とは何かを考えさせられる一冊。

だから、有川作品おなじみのラブが薄い…というか、取って付けた感があるのはご愛嬌ということで。ラブがなくても充分に魅力的なお話です。

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2013/07/28

『スイーパーズ』 加藤実秋


ドラマにもなった『モップガール』の続編。あのドラマ、桃子と大友さんのやりとりが大好きで再放送をずっと待っているのだけれど、なぜやらないのだろう…北川景子かわいい。

前作が大友くん(ドラマだと大友「さん」だけど、原作だと大友「くん」か「翔」って感じ)にまつわる物語なら、本作は桃子にまつわる物語。ふたりの過去とか後付け感が半端ないけれど、それでもやっぱりふたりのこれからには期待。大友くんがもうちょっとわかりやすければ…。

前作に比べるとミステリ要素はかなり薄くなってしまったけれど、事件(現象)としては犬になっちゃう「フェアリーテイル」が一番かな。おもしろさも大変さも。視界は白黒、嗅覚パネェ敏感で勝手に振れちゃう尻尾…もとい腕とか大変以外の何物でもない。社長が地味に活躍しているのも良し。社長はブレないから大好き。今日もまた大を犬に変えるお仕事に精を出していただきたいものです。

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2013/07/25

『推理小説』 秦建日子

ドラマ「アンフェア」の原作。何故かドラマを最終回だけ観ていたため「犯人はこいつでしょ?」の思い込みがあり、良い意味で裏切られることに。ドラマ版の犯人より絶対に小説版の犯人の方が良いよ。推理小説をフェアを良しとする知識ゲームとするならば絶対。

警察そして出版各社に送られてきた「推理小説」と名付けられた犯罪記録 兼 犯罪予告。果たしてこの小説を書いたのは誰なのか。二年前に姿を消した小説家志望の大学生が犯人なのか?もし犯人が彼ではないのなら、誰がこの絵を描いているのか…とまぁ、魅力的な謎ですこと。

犯人の目指したもの、思考に関してはミステリ好きであればあるほど理解できるのではないでしょうか?ただ、リアルであること=おもしろいものという思考だけは私は理解できないかな。リアルでなくてもおもしろいものはたくさんあると思う。

破天荒な雪平夏見、彼女の活躍をまた読みたいと思わせるに充分な一冊でございました。

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2013/07/24

『百瀬、こっちを向いて。』 中田永一


恋愛小説家としての乙一、処女作がこの「百瀬、こっちを向いて。」なのだけれど、『I LOVE YOU』で読んだときは全く気付けませんでした。そして今日、改めて読んでみて…ああ、乙一らしいところあるよねえ、って。

一番らしさを感じたのは「なみうちぎわ」でしょうか。仄暗いところがまさに。そして、私の一番のお気に入りだったりもする。ちょっとミステリ入ってるからってのもあるかもしれないけれど。なんとなく本多孝好の「眠りの海」(『MISSING』収録)を思い出しました。

表題作の「百瀬、こっちを向いて。」も好きかな。主にほおずきの花言葉方面で。やっぱりどこか仄暗くて後ろ暗いところのある作品が好き。毒、といよりは、闇。乙一のそういうところから離れたくての中田永一名義だったのかもしれないけれど。やっぱり見え隠れしてしまうものなのでしょうか。

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2013/07/23

『Fake』 五十嵐貴久

テーブル上の騙し合い、ポーカーで心理戦をやるんだと期待して読んだ本作。いきなり全力でカンニングをしだして「おおう?」と思ったものですが、カンニングはカンニングでなかなか楽しめました(笑)そんなわけで、カンニングがバレて職を失った探偵(興信所)が、カンニングをバラした相手に一矢報いる物語。

なんですが、タイトルの『Fake』からして「どんでん返しものだな」って推察するに充分ですよね。主人公が仕掛けるポーカー勝負、カンニングのときに披露した盗撮テクで相手の手札を盗み見るという手法ですが、まぁうまくいくわけがなく。果たしてどんな方法で復讐は成し遂げられるのか、乞うご期待…と言えるほど美しかったかどうかは微妙。

っていうか、ポーカーの部分は読み飛ばしたしね!

個人的に主人公と加奈の関係がメインの物語より気になったわけですが(笑)あの終わり方は納得いきませんね。Fakeだと気付いた(認めた)からこそ新たな一歩を踏み出せる…わけじゃないのかい。ふたりの決断が理解できなかったので減点。もっとふたりの過去の物語も読みたかった。

とりあえず、愛すべき馬鹿親子に苛々させられた分だけ最後に気持ち良くなれる寸法だと思われます。

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2013/07/21

『サヴァイヴ』 近藤史恵


『サクリファイス』『エデン』に続くシリーズ三冊目の短編集。描かれているのはチカの物語と、『サクリファイス』で圧倒的な存在感を魅せてくれた石尾&赤城の物語。

このシリーズの主人公はやっぱりチカなのだけれど、この短編集は石尾&赤城が完全にチカを喰っている。そして、『サクリファイス』を読んだ人には絶対読んでもらいたい。

石尾にもこんな時代があったんですよ、と

エースになるべくして生まれた男。絶対的エースとか読んじゃうとどっかのアイドルグループみたいですが(笑)石尾にはこの言葉がぴったりですよね。とにかく勝ちにこだわり、そして、勝ってみせる男。ああ、『サクリファイス』をもう一度読みたくなってきた。

そんなわけで、「プロトンの中の孤独」「レミング」「ゴールよりももっと遠く」からなる石尾&赤城3部作がお薦めです。そして、チカの物語は最新作『キアズマ』で楽しみたい…って、『キアズマ』はチカの物語ってことで良いのだろうか?

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2013/07/20

『山手線探偵』 七尾与史

山手線の電車内だけに現れる神出鬼没の名探偵…なにその新しい設定!ということで読んでみた『山手線探偵』。ポプラ文庫ということでジュブナイルかと思いきや平易な文章とも言えず、ターゲットとしている読者層はどこなのか。

山手線内で起こった痴漢(冤罪)事件から謎が謎を呼んでくる歴としたミステリ…なのだけれど、ところどころトンデモが混ざるのはご愛嬌か?とりあえず、脅迫相手が四人のうちの誰かかわからないから、みんな殺しちゃえ!ってのはかなり乱暴だと思う。いや、ミステリによくあるパターンなのだけれど、本作ではその扱いが相当軽いのですよ。そんな事件あったっけ?レベルですもの。

ところどころに存在する冗長なシーン(主にコロッケ)の代わりに、メイン3人のやりとりやバックグラウンドなんかを書いてくれれば良いのにとも思ったかしら。山手線探偵に小学生助手、さらには自称推理小説家なんてなかなかのキャラクタなのに、どうも魅力が薄い。薄いというかブレブレというか。

次回作…探偵と助手の出逢いとやらは明らかになるのかな?に期待したいものです。

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2013/07/18

『アマルフィ』 真保裕一

映像化されたものは観ておらず、黒田康作はティザーからイメージしていたものよりずっと人間味のある外交官でした。

イタリアで起こった邦人少女の誘拐劇がどんでもないスケールアップを果たしていく様にぽかーんとなってしまいましたが、これこそ正統派のエンタメだろうと思います。そう、エンタメ小説なんですよね。推理小説ではないと思う。犯人は誰かを推理するよりは、物語をそのまま…例えば銃撃戦といったアクションや黒田の格好良さを楽しむための小説。うん、やっぱり映像向きだ。というか、もともと映画の話が先にあって、真保氏がノベライズしたんでしたっけ。

少女の父親の話がどこで絡んでくるのかなあ?とか、香苗がいきなり優秀な外交官になっていて吃驚とか、いろいろ突っ込みたいところはありますが、映画を観て、アマルフィの海の美しさを観てみたくなるという点では充分に役目を果たす1冊だと思います。

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2013/07/15

『三匹のおっさん』 有川浩

このタイトル、この表紙でゲロ甘なラヴストーリーだったらどうしようと思っておりましたが、このタイトル、この表紙から想像するままの勧善懲悪、痛快活劇ものでした『三匹のおっさん』。

剣道家、柔道家、頭脳派の参謀にして最大の危険人物という三匹のおっさんがご近所で起こるトラブルを解決してまわるというのがメインの物語ですが、そこに家族愛あり、甘酸っぱい青春あり、胸糞悪い虐待あり…と飽きさせません。そして、おっさんたちの魅力的なことと言ったら!これまでの有川作品に登場したおっさんもみな魅力的でしたが、今回のおっさんたちは少し毛色が違うのですよね。格好良いだけじゃなく、愛嬌もあり、アカンところもあり。

個人的にもっとも好きなシーンは「則夫・エレクトリカルパレーーーーードッ!」ですね。文庫版に添えられているイラストがまた(笑)シーンとしては笑えないシーンかもしれないけれど、あの場面でああいうことが言えるおっさんが素敵です。

そして若人たちの恋も。おっさん同士が仲良しだと別れたとき大変…とか思わないでもないですが、そんな懸念を吹き飛ばすくらい良い関係をふたりには築いて欲しいものです。あ、でも、ふたりが喧嘩してそこにおっさんが絡んでくる話も読んでみたいかも。夫婦喧嘩は犬も食わないんですけどね。まぁ、ふたりは夫婦じゃないし、おっさんも犬じゃないのでアリでしょう。

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2013/07/13

『殺戮にいたる病』 安孫子武丸

叙述モノの名作として呼び声高い本作。この名声自体が最大のネタバレであるわけですが、ディテール部分のネタバレには遭わずになんとか今日までやってきました。そして、

その名声自体が最大のネタバレだよ!と改めて感じましたとも。

気付いてしまったんですよね、そのディテール部分のトリックに。というか、本作は推理が必要な作品ではないので(≠ミステリ)、もうそこしかないよねって感じで。

本作は三者で視点を切り替えて紡がれているわけですが、この三者が全く別の物語について語っている…っていうトリックを最初は疑いました。時系列が異なる、とかね。でも、それではないことがわかってしまえばあとは三者に対する認識相違を疑うしかないわけで。疑えそうな人称は○○のそれしかないわけで。

最後、ホテルに○○が駆け付け、被害者となるわけですが、ここの部分に関する描写がもう少しあればなあと思いました。ちょっと唐突に思った…というか、なにをしに彼はあの場に現れたのか。いや、「なにをしに」は明確なのですが「どんな思いで」ってのを知ることができたら面白いだろうなあと思ったわけです。

蛇足かもしれないけれどね。

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2013/07/12

『ストーリー・セラー』 有川浩

Story Seller=物語を売る人、書く人、小説家が死と向き合うふたつの物語が収録されているのが本作『ストーリー・セラー』。

物語はSideAとSideBに分けられていて、SideAについては小説新潮別冊『Story Seller』にて発表、SideBはAに合わせて書き下ろされたものですが…

私、このお話が少し苦手。

物語の一部として死を扱ったものはこれまでの有川作品のなかにもちろんあったと思うのだけれど(記憶にあるものだけでも『塩の街』『海の底』、っていうか自衛隊3部作はどれも誰かがなくなってますよね)これまでのどの作品よりも死のにおいが色濃いというか…ここまで真正面から「死」について書かれたのは有川作品では初めてではないかと。そして本作は、有川作品に求めているのがゲロ甘な恋愛模様である私としては読むのがつらいのです。

もし、収録されているふたつの作品を、「死」を切り取ったところで比べるのならSideBの方が好きかな。お世辞抜き、ストレートに自分の作品を好きだと言ってもらえて舞いあがってしまった私の感情変化がとても微笑ましかった。そして、そんな微笑ましいところからの「死」はやはりつらいものなのです。

有川作品の異色作、私はそう思います。

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2013/07/11

『GOTH モリノヨル』 乙一

 

『GOTH』の刊行から6年、映画化の折に書き下ろされた本作。そこからもう5年が経過しているので私が『GOTH』を読んだのは10年以上前ということになるのだけれど、「僕」がどんな嗜好の持ち主で、森野との関係はどんなだったかを思い出すに充分な一作でございました。

ミステリ要素は薄いのだけれど、もっと薄味なのに250Pのノベルスで刊行されている作品がわんさかあるので充分に満足できましたとも。「僕」の推理の過程は自然で美しく、また、犯人にとても近い思考の持ち主だからこそ真相に到達できるという点が良いですね。

尚、本作は短編&写真集の形をとっているのだけれど、写真集の方はぱらぱらとだけ拝見。こちらになにか仕掛けが施されているということはないよね?

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2013/07/10

『八月の魔法使い』 石持浅海


あるはずのない工場事故報告書が巻き起こす勤め人ミステリー。たった一枚の、それも表紙だけの工場事故報告書からあれこれ想像逞しく推理してみせるそのシチュエーションは大好物ですが、如何せん「why?」の部分が弱くって残念。

「なぜこの工場事故報告書は用意されたのか」もそうだし、「なぜ魔法使いはこの告発を行うのか」も弱い。ネタバレするならば工場事故報告書は役員の追い落としのために用意されたものなのだけれど、この報告書トラップがうまいこと作動したと思えないのよね。今回の告発劇があって初めて有効活用されたような気がする。

会議室という密室で行われる役員たちの足の引っ張り合いが幼稚で面白味に欠けるのも残念。だからこそ魔法使いが今回動いたのだってことはわかっているのだけれど。

マックブックに関する駆け引きが本作の中でいちばんおもしろかったかなあ。

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2013/07/09

『リッターあたりの致死率は』 汀こるもの

 

THANATOSシリーズと言えば、アクアリスト育成テキストかってくらい蘊蓄たっぷりなことで有名ですが、本作『リッターあたりの致死率は』はそのあたり控えめ…っていうか全部ちゃんと読めましたすごい!

起こる事件は殺人&誘拐。殺人の方は「そんなのあったっけ?」状態になること必至ですが、誘拐を解決するのに一役買うので忘れないであげてください。ただ、おもしろみには欠けるかも。特に真実の方。

誘拐事件に関してはまあ、妥当な終わり方ではないでしょうか。ユキちゃんがそんな…という驚きは特にないかな。驚いたのは真樹の方で…というか湊さんの方で、彼が次回作に登場するかどうかが今いちばんの関心事です。まぁ、死神を駒として使おうとするならばあのくらいの罰を受けるのは当然でしょうかね。

ところで、THANATOSシリーズでミステリが読みたいと言ったら、これも罰を受ける対象となるのでしょうか?

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