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2013/04/06

『エデン』 近藤史恵


『サクリファイス』の続編、ロードレースの本場とも言えるヨーロッパに渡りツール・ド・フランスに出場することになったチカの物語が本作『エデン』です。

正直、いつ殺人事件が起こるのだろう?と思って読んでいたのですが(笑)殺人なんて起こらなくてもおもしろかった!一瞬の判断が明暗を分けるレースの世界、エースを勝たせるためのアシストとして走ることを誓ったチカですが…勝負人だもの、勝つ可能性があるときに勝ちたいと思うのは当然。そんなチカの葛藤だとかチームメイトとの関係だとか、なによりレース描写だとか、とにかく興奮しっぱなしの2時間(読書時間)でございました。

ラルプ・デュエズのステージ優勝をチカに飾ってもらいたかったなぁとは思ったのだけれど。それだとチカがチカじゃなくなるからなあ…なんて、残念に感じながらも納得も出来ちゃう、一番印象に残ってるレース展開はここです。

ちなみに、ミステリ的展開もあるのよ。フランス期待の星、若手エースのニコラに掛かったドーピング疑惑。初めてのツールでマイヨ・ジョーヌ(レーストップの証)を着るほどの活躍を魅せる彼の実力は本物なのか…もちろん気になるところですが、まあ、おまけですとも。そのおまけだって綺麗にまとめられているのだから凄い。

このシリーズは他に短編集『サヴァイヴ』が出ていますが、やっぱりロードレースの長い駆け引きを楽しむのには長編が適していると思うので新しいチカの走りに期待したいところです。

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2013/04/05

『本日は大安なり』 辻村深月

辻村作品なのにハッピーエンドとはこれ如何に(笑)でも、そう首を捻りたくなるほど文句のつけようのない大団円が待ち受けておりました『本日は大安なり』。

舞台は老舗結婚式場アールマティ。大安のこの日、四組の結婚式が行われる予定のこのホテルで…まあ、思惑が交錯するわけです。そうでなければ物語は始まりません。一卵性の双子は入れ替わりを決行し、トラブル続きの花嫁とウエディングプランナーの元にはやはりトラブルが。少年は花婿による花嫁殺害計画を阻止しようと画策し、不倫男はホテルに火を付けようと灯油を持って忍び込む…ここまでバラエティに富んだトラブルが正面からやってくれば大安も逃げたくなるんじゃないでしょうか。

個人的には双子の結婚式の行方が一番気になったかな。辻村作品らしいどろっとした感情の渦を垣間見ることもできたし。しかし、ややこしいのが好きとは言っても、あれはややこしずぎるのではないでしょうかね?次点はウエディングプランナーと花嫁の泥沼…我ながら泥沼が好きね(笑)でも、収束したときの爽快感はこのふたりの物語が一番だったと思います。

そして辻村作品のお約束、いつもの「アレ」ですが、本作には狐塚と恭司が登場。おお、懐かしい。彼らは変わらず夜と遊んでいるのでしょうか?ええ、とても楽しそうでしたとも。

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2013/04/04

『虚構推理 鋼人七瀬』 城平京

アニメ「絶園のテンペスト」を楽しく拝見し、原作者に興味を持って読んでみた本作…良かった!

一眼一足あやかし共の知恵の神となった少女と、くだんと人魚の力を得た青年と。登場キャラがぶっとんでますが、その挙動もぶっとんでますが、うん、確かにミステリでした。ただし、虚構の。

都市伝説にすぎなかったアイドルの亡霊に力と実体を与えたのは誰なのか、果たしてその目的は…で話が進むのが普通のミステリかと思いますが(そしてそこに現実的、論理的な解決が求められるのがミステリ)本作はその都市伝説から生まれた「事実」を「虚構」でぶっ飛ばすまでを描いているのだから興味深い。なんせ、ミステリは真実はいつもひとつ!真実が虚構に負けるはずがない…が前提のはずなのだから。

実際、岩永の張り巡らした四つの虚構は少し弱かったのだけれど。最後の一言、死んでいる人間は別として、生きている人間の誰にも迷惑をかけない最後の一言で本当にひっくり返したなあという印象。あれは惹かれる。あのまとめサイトにリアルでかじりついていたならば、あの一言には納得せざるを得ないだろうなあと素直に感心しましたとも。

そして、ぶっとんだ登場人物…少女と青年のこれからも私、気になります。最後のね、九郎のさらっとした告白がとても良かった。なので、是非とも続編を!また虚構の世界に引きずり込んでもらいたいものです。

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2013/04/03

『メルカトルかく語りき』 麻耶雄嵩

銘探偵、それは記念碑的に価値のある名探偵。自らをそう讃えるメルカトル鮎の前に並べられた五つの事件。果たして銘探偵はそれらをどのように解決するのか…を楽しむのがミステリを読み際の楽しみ方のひとつですが、本作はそうはいきません。なんせ、

解決しませんからね(笑)

いや、解決します。解決しますとも。ただ、その解決が納得のいくものであるかどうかは別問題です。「論理的であること=納得できる」が成り立たない、まさに銘探偵の所業。

個人的には「九州旅行」と「密室荘」が好きかな。「九州旅行」は唯一ミステリとして成り立っているし(笑)「密室荘」とかもう、シリーズものの探偵がやることとは思えません。普通ならメルカトル違いの叙述トリックを疑うところですが、冒頭でセメント頼んでるしなあ…と思ってたらきちんと不条理なまま終わらせてくれましたとも。っていうか、これを出版しようってのが凄いよね。

どうか、これからミステリを勉強(?)するぞという若人が手に取りませんように。

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2013/04/01

『オチケン!』 大倉崇裕

読書メーターで見掛け、気になって読んでみた一冊。大倉氏とは初めまして。まだまだ読んでないミステリがたくさんあるのは嬉しいものですね。

本作はあれよあれよと「落研」こと落語研究会に入部することになってしまった「オチケン」こと越智健一が巻き込まれたふたつの事件を描いたミステリです。事件と言っても人は死なず、サークル同士の部室争いがメインなのですが、謎を解決するのに古典落語が絡んでくるんですよね。

私は落語に明るくないので(まんじゅう怖い、くらいしか知らない)落語ネタを丁寧に解説してもらえるのも嬉しい。好きな人にしてみたら「聞けよ!」ってことになるのかもしれませんが…その時間はミステリを読むことに充てたいと言ったら怒られるだろうか。でも、巻末のエッセイで大倉氏も書かれていますが、ミステリと落語は確かに似てますよね。オチが肝心、オチが全て。最後に「やられた!」と思えるかどうか、その快感は何冊ミステリを読んでも止められないものです。

ところで、落研在籍のふたりの先輩が何者なのかと、なぜに新入部員はオチケンだったのか。このふたつって明かされたようで明かされてませんよね?シリーズ続刊で徐々に明らかになってくるのでしょうか(本作で解決済ってことにされてたらどうしよう!)

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