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2013/03/31

『0番目の事件簿』

人気ミステリ作家11人のデビュー前原稿を無修正で公開するという「メフィスト」の企画をまとめた一冊。とりあえず、人気ミステリ作家の面々が本当に人気ミステリ作家なんだから凄い。

事件簿と銘打ちながらも、ミステリじゃない作品が含まれていたり、ミステリだったとしても展開が強引すぎてぽかーんとしちゃうものがあったりするわけですが、そういうところを楽しむのがこの本の本来の楽しみ方でしょうか。あとはエッセイね。人気ミステリ作家が思う存分「言い訳」を書き連ねたエッセイがおもしろくて読み応え有り過ぎ。でも、帯に書かれている綾辻の言葉「粗削りで瑕だらけ。しかしながら作家本来の資質や志向性がくっきり」がまさに!なんですよね。

とりあえず、私が「らしいなあ」と感心したのが有栖川とこるものさんでしょうか。西澤保彦もらしかったですね、作品の意図はよくわからなかったけれどそこが西澤作品らしいなあ、と(笑)逆に法月作品は収録された作品の中で一番好きな作品なんだけれど、法月らしくないというか麻耶雄嵩っぽいと思ったり思わなかったり。あと、村崎友の「富望荘で人が死ぬのだ」が最も正統派のミステリだと思ったのですが、村崎作品を未だに読んだことがないので「らしさ」は分からず。でも、これを機にお付き合いしてみたいなあと思いました。

しかし、綾辻だけレベルが違いますなあ。

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2013/03/30

『僕と『彼女』の首なし死体』 白石かおる

読書メーターで見かけ、そのタイトルに惹かれて読んでみた第29回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作。

物語の始まりは僕=白石かおるが渋谷のハチ公前に生首を放置するシーンから。自宅の冷凍庫で首なし死体を保管し、終には話し掛けるという常軌を逸した行動を取る白石は一体なにを考えているのか…というお話ですが、もちろんサイコパスものではないのでその行動に意味はあります。

あるというか、その理由が直近に読んだ作品(ネタバレ防止、スクロール厳禁)と同じだったのであっさり推測できてしまい個人的に残念な読書に。白石を襲った襲撃者の特定も容易で、そうすると事件の全貌を見通したことになるわけですが…それでも白石に前に現れたふたりの協力者、その物分かりの良さには「?」でしたけどね!

だからこそ、それまでの「白石かおるとはどんな人物か」の描写だったことはわかるのですが。作者と主人公の氏名が同一という趣向は嫌いではないのですが、キャラクタ側が異常に持ち上げられていたりすると少し冷めますよね。そうする理由はあるのだろうし、それが巧いことトリックとして活きていると途端に嬉しくなっちゃうのですが。

ミステリとしての難易度は低いですが、破綻はしていないので楽しめる一冊だと思います。続編があるのかな?そちらも読んでみたいものです。

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2013/03/29

『第四の男』 石崎幸二

孤島DNA探偵シリーズと呼ぶに相応しい一冊。ここまでDNAネタを引っ張るのはネタ不足なのか故意なのか半信半疑でしたが、さすがに確信しましたとも。ネタ不足ですね(キリッ

というユリ&ミリアのようなボケはさておいて、今回も孤島&DNAネタなわけですが謎解きとしては小粒ながらもよくまとまっていて、伏線も綺麗に回収され気持ちの良い読了でした。予定調和といえば予定調和なんですが、よく練られたミステリほど大団円に向かってご都合主義的に進んでいくものです。

警察に送られてきた脅迫状の謎、お馬鹿な犯人の狙いも見事(納得のいくもの)でしたし、第四の男が誰なのか…それもうまく描写してありましたしね。文句を付けるとするならば「孤島に渡る必要はあったのか」ってところですが、石崎に対する優しさ、サービスだと言うならば及第点でしょうか。

もう少しボリュームのある形で読んでも良かったかなあと思えるほどうまくまとまった、綺麗なミステリでした。孤島DNA探偵シリーズをここまで褒めるのは我ながら珍しい(笑)

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2013/03/28

『千年ジュリエット』 初野晴

ハルチカシリーズ第4弾、今回はたのしいたのしい文化祭のお話。

今回はどの作品も読みどころがあって好き。「エデンの谷」で明かされた遺言には思わず笑ってしまったし、解錠の後、知った真実には胸が熱くなったし、なにより草壁先生の過去に少し踏み込んでくれたのが嬉しい。あとは日野原会長と萩本兄弟のやりとりがたまらなく好きです。

ミステリ的観点なら「決闘戯曲」を推したいところ。右目が見えず、左手も使えないという圧倒的不利な状況で決闘に勝つことができたのは何故なのか。「決闘法で三つのルール改定が通れば、盾が守ってくれる」とはどういう意味なのか。脚本担当の一年生が姿を晦ましたのは何故なのか…とまあ、こんなお話なのですが、決闘に勝てた方法というのがくだらないけれど巧いんですよね。そもそもの戯曲のおもしろさと演劇部の面々の濃い味が相まって読み応えのある一作。

それでも「失踪ヘビーロッカー」の巧さには負けるけれど。この作品、なにが巧いってタイトルが巧いんですよね。読了後ににやりとできる名タイトル。この「失踪ヘビーロッカー」が表題作「千年ジュリエット」に繋がるわけですが、そこは個人的には微妙かな。

そうそう、『千年ジュリエット』はまだ文庫化していないのでハードカバー版を表示しているわけですが、文庫版よりハードカバー版の装丁の方が素敵だと思いませんか?

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2013/03/27

『一月は合格祈願×恋愛成就=日常の謎』 霧舎巧

書店で「まさか未だ続いていたとは…」と呟いてしまった私立霧舎学園ミステリ白書、今月の主題は「日常の謎」です。

が、私は「いつ日常の謎が提示されるんだろう」と思っていたんですよね、最後まで。そして、あとがきで各章に小さな日常の謎を潜ませた連作短編集を気取っているみたいなことが書かれていて吃驚。どこに謎があったのだろう…各章でひとつずつ謎が提示されていたということは8つの謎があったってこと?嘘だろ?とまあ、割と本気で思いましたとも。

言われてみれば確かにお賽銭が消えたりといった事件はあったかもしれませんが、探偵が「推理する」という場面がなかったように思うんですよね。観察者(キャラクタ)が状況を確認しただけでなにが起こったのかは明白じゃないですか。どこに謎があったというのか。

キャラクタと言えば大団円に向けて新キャラ(高天原マヤ)が登場しましたが、これまで登場した既存キャラだけでもう誰が誰だか状態なのでお腹いっぱいです。これが毎月発売の大河ノベルだったなら多少登場キャラクタが多くても許されたのかもしれませんが…四月が出たのは何年前だっけ?そして三月はいつ出るのかな…あまり期待しないでいようと思います。そうすれば傑作に出逢えるかもしれないからね!

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2013/03/26

『仙台ぐらし』 伊坂幸太郎

伊坂のエッセイを読んだのは初めてだけれど。伊坂の頭の中はどうなっているのかといつも不思議に思っていたので→読了後、ますます不思議に思う結果に。だって心配性だったり自意識過剰だったり仙台が大好きだったりと意外と「普通」なんだもの。それがどうしてあんな物語だったりフレーズだったりを紡ぎだせるのか。見ている世界が違うのかと思ったら見ている世界が同じだったときの衝撃。

あんなことがあっても、見えている世界が皆おなじであったら良いと改めて。

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2013/03/25

『玩具店の英雄 座間味くんの推理』 石持浅海

『月の扉』の座間味くんが美味しいものに下鼓を打ちながら既に解決したはずの事件に隠されていた裏側を読みとる…すっかり定着したパターン、7つの推理が冴えわたる短編集です。

が、相変わらず強引ですね。短編という「容量の制約」だと思いますが、果たして座間味くんが解き明かした裏側は本当に真実なのでしょうか?確かに座間味くんが指摘する「違和感」、それには納得しきりなのだけれど。そして、違和感がある以上、そこから事件の核心に迫っていくのは当然なのだけれど。果たして座間味くんが到達した地点が唯一の正解なのだろうか?と思わされること数々。

きっと、本作から登場した津久井操という女性、彼女が異常なまでに座間味くんを褒めて上げるからなのだろうけれど。座間味くんの推理を、発言を、彼女は全面肯定してしまうんですよね。それが「座間味くんだから」という理由で。きっと「容量の制約」がなく、座間味くんの推理にひとつでもふたつでも反論するページ数の余裕があればこう思うこともなかっただろうけれど。それでもやっぱり『月の扉』から始まる座間味くんシリーズが好きなので残念です。

ただ、「傘の花」はあまり強引さがなく綺麗だと思いました。逆に、表題作は「なぜ表題作になったのか?」と思ってしまったほど強引。きっと、座間味くんを指して「英雄」としたかったのだろうけれど。けれど、座間味くんほど「英雄」から程遠くに身を置きたい人はいないのだよ。

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2013/03/24

『さよならドビュッシー』 中山七里

タイトルがあまりに綺麗でずっと気になっていた第8回このミス大賞受賞作『さよならドビュッシー』。音楽とミステリと、どちらかがお座なりになってるんじゃないかなんて心配は杞憂、しっかり両立…ってか、まさかの○○トリック。

ピアニストを目指す女子高生がある夜、巻き込まれた火事。祖父と従姉妹、皮膚と声を失った彼女に残ったものはピアノへの情熱だけだった。天才ピアニスト・岬洋介とともにコンクール優勝を目指す彼女の周りで起こる不可思議な事件はいつしか殺人に発展。果たして犯人は誰?その狙いとは?

みたいな一冊ですが、もちろん読了後に気になる箇所のいくつかを確認させていただきましたとも。若干アンフェアに感じる箇所もありましたが(肝心の○○○○入れ替えに必然性がない。箸が転がっても笑える若さだと言われればそれまでだけれども)基本的に嘘は書かれてないので最終判定はフェア。読了後にようやく気付いた「そうか、一人称だったんだ」が全てを物語っているでしょうか。ヒントは存分、とりあえず、遥の音楽知識があまりに乏しいと感じた違和感からもう少し考察してみれば良かったと後悔。

どうやら本作は岬洋介シリーズとしてシリーズ化されているようなので、そちらも読んでみたい。タイトルは相変わらず秀逸ですね。そして、映画化もされているとか…橋本愛ちゃん好きなのでこちらも観てみたいです。

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2013/03/23

『和菓子のアン』 坂木司


読書メーターで話題になっていたので読んでみました『和菓子のアン』。『シンデレラ・ティース』みたいなお話かな?と思っていたら、やっぱり『シンデレラ・ティース』から恋話を引いた…それでいてとても甘いお話でした。

何となく始めた和菓子屋さんでのアルバイト。デパ地下という場所柄、やって来るお客様は千差万別。その中には不可解な行動や不可思議な言動を繰り返す人もいて…という有りがちな舞台設定ですが、物語に添えられる和菓子の蘊蓄というか和菓子トリビアがまさに「いい味」出してるんですよね。

ミステリとしては表題作の「和菓子のアン」が一番良かったかなと思うけれど、正直、謎解きよりも和菓子に関する描写の方が印象に残ってます。というか、美味しい和菓子が食べたい。大福よりは上生菓子をいただきたい気分。今ならきっとその和菓子にどんな趣向が凝らされていて、どんな風に楽しんだら良いか…最終的には美味しくいただけば良いのだけれど、とにかくいろいろ考えを膨らませつつ楽しいおやつの時間にできると思うのです。

そうそう、本作はアンちゃんに恋話らしい恋話を用意しなかったこと。それがとても良かったのだと思います。

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2013/03/22

『空想オルガン』 初野晴

『退出ゲーム』『初恋ソムリエ』に続くハルチカシリーズ第3弾。今回もミステリの成分は薄め。4作収録されているうち、謎らしい謎を解決したのは2作。あとはハルチカが勝ち進む吹奏楽コンクールの様子…かと思いきや、それらの描写は極力抑えるって宣言しているのが斬新。

正直に申し上げると惹かれた作品が一作もなく。うすーく描写されたコンクールの様子が一番楽しめました。草壁先生が壇上で魅せた笑顔とかね。

間違いなく狙ったであろう表題作「空想オルガン」の○○トリック(?)は気付いてしまったので楽しめなかったのだと思いたい。これで○○トリックが使われてなかったら作品として締まらないわ…とか思いながら読書をするのは作品を純粋に楽しめない(驚けない)から良くないなあ、と改めて。

最後に新たな仲間を手に入れたハルチカにどんな未来が待ち受けているのか。これからが楽しみなシリーズであることは間違いないです。片桐先輩、お疲れ様でした。

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2013/03/21

『長い廊下がある家』 有栖川有栖


作家アリス短編集。収録されているのは表題作含め4作ですが、火村&アリスが活躍するのが2作、あとは火村とアリスが単独で謎と向き合う異色作。

個人的には火村が危機に陥る「ロジカル・デスゲーム」が好きかな。三つあるグラスのうち、ひとつには毒が入っているという状況で貴方ならどのグラスを選びますか?というよくある(?)シチュエーションで火村なりの解決法を見せてくれます。でも、この作品の火村は犯罪を憎み犯罪者を憎まずに見える。私の読み違いだろうか。本来の火村は逆ですよね。犯罪者をただただ憎んでいる。引き返した者として…の台詞はどの作品だったか。

あとは「雪と金婚式」が好き…というよりは綺麗だと思いました。ロジックも、雪が降る描写も。

ただ、火村&アリスの活躍という意味では少し物足りなく思ったので、ここらで作家アリスの長編が読みたいものです。

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2013/03/20

『鬼談百景』 小野不由美

百景と言いつつも収録されているのは九十九の怪物語。どうやら『残穢』と合わせて百物語が完成する趣向になっている様子。百物語はきちんと終わらせないと良くないことが起こるんだったような…と思いながら、読書中もあまり怖いと思えなかったのは一編一編が短い所為か。描かれているその先、恐怖に辿り着くのに想像力が必要になるんですよね。私、想像力が皆無で良かった。

九十九の物語、読んではすぐに忘れたものの方が多いわけですが、個人的に「軍服」と「たぶん五匹」が好きかな。どちらの作品も怪奇話に若干のユーモア…物語的おもしろさを足した印象。どんなに短い作品であっても、物語として読ませる工夫があるものに惹かれます。

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2013/03/19

『麒麟の翼』 東野圭吾


映画にもなった加賀恭一郎シリーズ『麒麟の翼』。加賀の所属は『新参者』と同じく日本橋、なぜ被害者は日本橋にいたのか…足を棒にして下町を巡り、忍耐強く捜査にあたる加賀が手にする事件の真相とは?

という一冊ですが、ミステリー色はあまり強くなく。ラストの方であれよあれよと犯人が明かされる感じで、ミステリーというよりは人情劇、刑事モノというよりは加賀恭一郎モノといった感じでしょうか。まあ、この加賀恭一郎モノというのも『新参者』あたりから描かれるようになった色なわけですが。

今回、加賀は従弟の松宮と捜査を共にしますが、私、この松宮に関する記憶がほとんどないんですよね。看護師の金森についても。どうやら『赤い指』に登場したようですが、加賀と父親との確執、そのあれこれを読者が知っている前提で描写されているので順に読むことをお薦めします。順に読んでも私のように綺麗さっぱり忘れてしまえば意味がないんですけれど。

加賀のキャラクタがシリーズ当初から比べるとかなり変わってきているな、という印象。昔はもう少し柔らかい部分というか、冗談のひとつやふたつは言えるスマートな感じだったと思うのだけれど。最近の加賀は実写化され、キャスティングされた阿部寛に敢えて近付けようとしている気がする。それに少し違和感を覚えます。

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2013/03/18

『謎解きはディナーのあとで 2』 東川篤哉


大人気シリーズ第2弾、謎も毒舌もさらにライトになった感じかと。

6話収録されてますが、正直あまり記憶に残らないというか…トリックが秀逸であるとか、お嬢様と執事の掛け合いがたまらないとか、そういうお話がない。だからと言ってバカミスとも言い難い…帽子の使い方だけはどうかと思ったけれど。雪密室のトリックもどうかと思ったけれど。あれ?バカミスか?

あ、でも、「ウケる~」にくすっとしたかな。ウケる~。

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2013/03/17

『箱庭図書館』 乙一

乙一が貴方の没原稿をリメイクします、という「オツイチ小説再生工場」を書籍化した一冊。乙一自身があとがきで「小説のアイデアがなかなかおもいつかない人間」であると書いているのですが、小説ってアイデアだけでもダメだし文章力だけでもダメだし、売れるかどうかには運も関わってくるし…本当に一握りの人だけがなれる職業が作家なのだなあと改めて思った次第。

そして、乙一が作家たる所以を如何なく発揮し、とにかくもう大好きな作品になったのが「ホワイト・ステップ」です。乙一自身も「自分が過去に書いた作品にちょっとだけ雰囲気が似ているような気がして」と評しているように、優しい方の乙一作品のかほりがします。雪の上、残された足跡が紡ぎ出す優しい物語。次に外を歩くときにはちょっと変わった足跡を探してみよう…そう思ったわけですが、外はもうぐっちゃぐっちゃのべっちゃべちゃなのです。春ですね。

暗い方の乙一では「小説家のつくり方」が好きかな。こういう救われたのか救われていないのかよくわからない感じが実に乙一らしいなあ、と。彼が小説家になった理由、モチベーション、それがとても人間らしくて好きです。嘘だらけの理由よりも余程、理解ができる。

そうそう、読んでいてとても気になったのが漢字とひらがなの割合なのですが、乙一作品っていつもこうでしたっけ?それともwebで公開することを前提に、ひらがな多めにしているのかな?

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2013/03/15

『少女不十分』 西尾維新


作家になって十年、「誇りを持って変人であってきた」僕が小説を書き続けていられるのはある事件があったから。トラウマとも呼べるその事件、大学生の男が小学生の少女に誘拐・監禁されるというその事件を描いた西尾維新の私小説的(?)物語。

なわけですが、いやあ冗長だった。不十分な少女がなぜ不十分なのか、彼女を彼女たらしめているのは何なのか、それがわかる…つまりは終盤はかなり楽しめるのだけれど。それまでがとにかく冗長だった。きっと三分の一…いや、五分の一くらいの長さに出来ると思うのよね。まあ、その「くどさ」が西尾「らしさ」なのかもしれないけれど、こんなだったっけ?というのが率直な感想。

もう少し巧かったような気がするのだけれど。変わったのは発信する側か受信する側か。不自由帳の件がとても納得できておもしろい…と言ってしまうのは乱暴だけれど、それだけに、そこに到達するまでの詰まらなさが残念でたまらない一冊でした。

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2013/03/14

『幽女の如き怨むもの』 三津田信三

読み始めたら止まらず、トイレに行くのに難儀したこのミス2013第4位『幽女の如き怨むもの』。物語の9割はきっとホラー、でも残りの1割、第四部で全てが現実のものとなるさすが。

舞台はタイトルからもお察し、遊女…花魁が下働きを行う遊郭。戦前、戦中、戦後の三時代で起こった不可解な3×3=9件の連続身投げ事件。花魁たちを誘う「何か」をいつしか人は幽女と呼び、恐れ、不思議を不思議として処理する。けれど、その不思議を説明可能な現実にしてしまうのが刀城言耶なわけです。

物語の9割はホラーで遊郭(遊女)の歴史みたいなものなので、興味のない人にはキツイかもしれない1冊。ただ、伏線がさりげない形であちこちに張り巡らされているので頑張って読んでいただきたい。無駄な描写はありません。あれもこれもそれも伏線。そしてその伏線を「どうだ!」ではなく「さらっと」明かす姿勢が潔いです。さらっと。

あっ、でも、個人的に9件の身投げ事件のうち2件目だけはちょっと不合理というか強引な気がするかな。

結末は相変わらず救われているようで救われていない感じ。犯人の人生はどこで狂ってしまったのか…は聞くまでもない質問ですが、しあわせな時が少しでもあったように祈るだけです。

そういえば、刀城言耶シリーズお決まりの謎列挙がありませんでしたね。少し寂しい。

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2013/03/13

『ジーン・ワルツ』 海堂尊

産婦人科医・曾根崎理恵。冷徹な魔女とも揶揄される彼女に代理母出産供与の疑惑が持ち上がる。果たして彼女は法に触れたのか。彼女が手掛ける5人の妊婦は無事に出産を終えることができるのか。遺伝子のワルツが踊り始める…みたいなお話。

魔女が守りたかったものが赤ん坊だったのか医療だったのか。きっとどっちもだったのだろうと思うし、そういった野望を持てる女性だったのだと思うのだけれど。けれど彼女の行いはやはり違法で、正しくない…のかな? きっと作者が言いたいのは「社会が間違っている(違法である)」ということだと思うのだけれど。けれど、最後…どころでなく一生、自分が産み育てている子どもが「誰の子どもなのかを知らずに」いるだろう一人の登場人物のことを思うと、やはり魔女が犯したのは犯罪だと思うのです。

ラスト、命をまるでゲームの手札のように、切り札のように使った魔女を見て。やっぱりなにが正しいのかわからなくなった一冊でした。

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2013/03/12

『絶海ジェイル』 古野まほろ

『群衆リドル』に続くイエ先輩シリーズ第2弾、舞台は絶海の孤島、世界から隠蔽されたその島で行われる脱獄劇の再現。果たして八重洲家康は幻のショパニストである己の祖父を超えることはできるのか。

というわけで、その独特な世界観にすっかり中てられてしまいましたとも。脱獄劇の再現、只のゲームかと思わせておいて本気なんだもの拷問が。でも、現代と懐古が入り混じる古野ワールドの中でならこういう特殊環境もあり…なわけがないけれど、強引に読ませてしまう辺りがさすがといったところでしょうか。

肝心の脱出劇については…前作の○に続き○○○○○についてはいただけないかなあと思いましたが、ひとつの無駄もない行動、言動、思考、それまでばら撒かれ続けていた伏線が自然と回収されゆく様は爽快にございました。実現性はともかくとしてね。
 
今回もイエ先輩の過去は明らかにされず。それどころかイエ先輩とユカの仲も進展…してないですよね? 酔い止めごときで満足する私ではありませんことよ。まだまだ謎の多い本シリーズ、天帝シリーズに比べれば一般向けなはずなので、これからも展開してくれることを願って。

ところで、なにがどう「Kの悲劇」なんですかね?

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2013/03/11

『踊るジョーカー』 北山猛邦

引きこもりのニートだけれど推理力抜群の名探偵。坂木司を連想せずにはおれない設定の音野順シリーズ『踊るジョーカー』が本日のレビュー作。

収録されている謎は五つ。人が死ぬお話もそうでないお話もあるけれど、とりあえず「物理の北山」らしさはあまり見られないかな。表紙を飾る片山若子の柔らかい世界観がまさにぴったりの一冊で、推理の過程を楽しむといった読み方は相応しくないかも。

それならば、音野とその助手・白瀬の関係とか音野の内側=犯罪に対するスタンスやそれを解決できる自分の力をどう考えているのか…なんてのを読み解いて楽しもうかと思ったのだけれど。もしかしたら本人も考えていないのか気付いていないのか、あまり描写はない。それでも、流されているようにしか見えない音野が謎だったり犯罪だったりに真摯に向き合っていて、自分のできることをやろうとする優しい子だということはしっかり伝わってきました。

さて、この引きこもり二―ト探偵の未来は果たしてどんなものなのか、社会復帰(?)はできるのか、シリーズ続刊に期待です。

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2013/03/10

『キングを探せ』 法月綸太郎

このミス2013、第8位の本作。とにかくもうタイトルが秀逸。これだけでレビューとして事足りるんじゃないかってくらい「やられた!」感いっぱいの読了に満足。

推理小説において交換殺人ものは鉄板で「無関係な二者(事件)をいかにして結びつけるか」がその醍醐味ですが、本作における交換殺人は四者で行われるっていうのだから繋がりなんて見つかるわけがない。というか、交換殺人を疑うきっかけとなった事故の部分には少しご都合主義を感じないでもなかったのだけれど(○○に気付いた時点で冷静に行動できていれば良かったわけで…まあ、殺人を犯したばかりの人間にそれを望むのは酷というものだけれど。だからこその正露丸だったわけですし)とにかくもう最後のくだり、タイトルに絡んだあたりの謎解きが秀逸すぎてそのあたりのことは忘れましたとも。

ミステリとしてはまあ普通? 法月らしい論理の世界…というよりは叙述…とも言い難いし、とどう表現するのが適切かわからないのだけれど、タイトルに仕掛けられた罠に気付かされたときの爽快感がたまらなかった一冊。こういう瞬間があるから本を読むことが止められないわけです。

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2013/03/09

『ゆず、香る』 有川浩


本作は何年か前にドラッグストアで購入したもので、30ページほどの文庫本と入浴剤がセットになった企画商品。有川浩の他に森見とかあさのあつこもラインナップされていたのだけど、第2弾にお目にかかれなかったことを考えると売れなかったのだろう。コンセプトは悪くないと思うのだけれど、期待に沿ってお風呂で読んだ人は果たしてどれくらいいるのかっていうね。ちなみに私は炬燵。

描かれるはゆずのように甘酸っぱい恋物語。有川氏の本領発揮というところですが、なんせ30ページと薄いのでちょっと物足りないかも。でも、なぜか、炬燵で読んだのに鼻腔にはゆずの清々しい香りが届いたのだから不思議。昨日読んだばかりの初野晴『初恋ソムリエ』じゃないですが、記憶を呼び起こすのに香りが重要なファクターになることを思うと、今後ゆずの香りを嗅いだときにはこの作品のことを思い出すのかもしれません。

作中の彼女がこれから、ゆずの香りを嗅ぐたびに故郷だけじゃなく…彼のことも思い出してはしあわせな気持ちになるように。

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2013/03/08

『初恋ソムリエ』 初野晴


私が高校生だった頃、周りにこんなウィットに富んだ会話ができる友人がいたかどうかを考えて想い出に浸ってみる。『退出ゲーム』に続くハルチカシリーズの第2弾です。

ミステリというよりは青春もの、恋物語よりはブレーメンの音楽隊といった感じで当初の狙い(あらすじとして紹介されるような物語)からは遠くへ来てしまったような気がするけれど、夢中になれるものがあって、ともに目標に向かって歩んでくれる仲間がいて、そんな仲間がどんどん増えていって…のサクセスストーリーは大好きなので大歓迎です。

本作に収録されているのは4作。いずれもちょっとした謎を扱ってはいるけれど、読者に推理をさせようというものではないので突然の解決シーンには少し拍子抜けするかも。ミステリ的観点から好きなのは表題作の「初恋ソムリエ」で、物語として好きなのは「周波数は77.4MHz」かな。あのラジオは必聴だわ。

きっともっと増えていくだろうハルチカの仲間たち。シリーズ続刊でどんな破天荒なキャラが登場しているのかとても楽しみ。ハルチカが身を置く三角関係については…うん、ちょっと背伸びしたいことってあるよね。若人、頑張れ。

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2013/03/07

『完全犯罪研究部』 汀こるもの

推理小説研究部とは名ばかり、完全犯罪を研究し成し遂げようとする5人の高校生…と書いたところで気付いた。彼ら、完全犯罪する目指してないよね。むしろ過激派…ってくらいタイトル詐欺な『完全犯罪研究部』が本日のレビュー。

ミステリ…ではないかな。殺人事件は確かに起こっているけれど、その犯人を突き止めるために彼らが積極的に何かをしたわけでなし(「なりきり」は「何か」だったかもしれないけれど、犯人がその餌に喰いつくかどうかは賭けだったわけだし)犯人が余計なことをしなければまさにあちらの殺人が完全犯罪だったかもしれない…って、完全犯罪の定義は「犯罪が起こったことすら気付かれないこと」かな?その意味で彼らのしたことは完全犯罪でもなんでもないですね。

本作を分類するならば青春ものになるのかな。かなり厨ニ方向に傾いているけれど。姉を失った悲しみ(?)をうまく表現できない少女と自分を失くした少年と、そんなふたりを見守る仲間の物語…書いていて違うような気もしたけれど、それでもタイトルから連想する物語よりもこちらの説明の方が相応しい気がします。

そうそう、THANATOSシリーズの某キャラが登場していて再読を決意する効果がありましたわよ。

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2013/03/05

『サクラ咲く』 辻村深月

表紙があまりにラノベでしばらく辻村作品だと気付ず読み逃していた本作『サクラ咲く』。どうやらジュニア向け(進研ゼミで連載)なようで、文章は平易…というか、平易すぎると思ったのだけれど今の中学生にはこれくらいが丁度良いのでしょうか?

収録されている作品は3作。もちろん作品同士に関連を持たせる辻村イズムは健在。個人的には嬉しい未来が垣間見える「世界で一番美しい宝石」が好みかな。というか、残る2作は文章だけでなく物語も平坦であまり楽しめなかったわけです。

人間関係がもう少しどろどろしてくれると嬉しかったのだけれど、そうするとジュニア向けでなくなるという判断なのだろうか。でも、人間関係に最も悩む時期がこの時期=思春期だと思うわけです。その点でいけば本作で描かれた人と人との繋がりは綺麗過ぎると思わないでもなかったり。この点からしても新聞部の部長が悪い意味でいい味していた「世界で一番美しい宝石」に軍配を上げたくなるわけです。

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2013/03/04

『Jの神話』 乾くるみ


なるカテゴリがあったなあ…と未読メフィスト賞に手を伸ばしてみました。

『Jの神話』はエログロと聞いていたのでこれまで避けてきたのですが、ええ、本当にエログロでした。ただし後半だけね!前半…というか、謎の在り方はとっても素敵だったのですよ。全寮制の名門女学校、麻里亜さまと呼ばれ全生徒から慕われていた女生徒の突然の死、そして彼女の死の原因は…流産による出血死であったという。果たして彼女を妊娠させた「ジャック」なる者は一体誰なのか? とまあ、とても魅力的な謎。

これが現実的に解決したならね!

いや、私は○○○に詳しくないので現実的でないと断言することはできないのですが(作中で○○○について説明してもらいましたが当然斜めに読んだ)でもやはりJが意思を持った存在として独り歩きを始めるってのは非現実的だと言わざるを得ないかな。本作がファンタジーとして独自の世界観を持っている体ならまだしも、そういう書かれ方はしていないしね。着想はおもしろいかもしれないけれど、有り得るか有り得ないかで論じるならばやはり有り得ないのです。まあ、ミステリの設定なりトリックなりに有り得ないものが混じるなんてのはよくあり過ぎることなんですけれど。

後半だけ現実路線で書き直された本作があったなら是非とも読んでみたいです。きっと傑作になると思う。それくらい魅せられた謎でした。

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2013/03/02

『水魑の如き沈むもの』 三津田信三

水魑様信仰の残る山中の村、雨乞いの儀式の最中、湖に浮かぶ屋形船の上で殺された神男。衆人環視という視覚の密室と続く神男連続殺人の謎に挑むのは刀城言耶…なんてあらずじになるのかしら『水魑の如き沈むもの』。

刀城言耶シリーズはまずその(物理的な)厚さに驚かされるわけですが、本作は厚さなんて気にならないくらい読み易いです。
水魑様を祀る水利組合が仕切る閉鎖的な村なんて特殊な舞台もなんのその、登場するキャラクタも多いですが物語が自然と頭に入ってくる。さすが。

そして、次々と事件が起こるわけですが…最後には刀城言耶による疑問点の箇条書きがありますからね!これまでの振り返りができるだけでなく、ミステリ好きのテンションを上げてくれるという素敵効果付き。疑問点の数が多ければ多いほど「これが今から解決されるわけか…!」と嬉しくなっちゃいます。

しかも本作、探偵が皆を集めてさてと言い…を始めてから真相が二転三転どころか四転もするわけで。この残りページでもう一回ひっくり返すか!?と驚きが隠せません。そして終章…基本的にミステリにおいて犯人は捕まるべきであると思っている私ですが、本作は動機が動機だけにたった2ページの終章に救われたものです。

ところで、刀城言耶の父親・冬城牙城の名前が出てくるんですけど…まったく記憶にないのですがどんな因縁があったんでしたっけね?これは過去シリーズ再読の必要ありかね?

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