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2013/02/23

『乱反射』 貫井徳郎

帯に書かれた「かつてイギリスの有名なミステリー作家は、登場人物のほとんどが犯人という小説を書いた。幼児の「不運な」死に似た事件を求めるなら、そのミステリー小説しか見当たらないだろう」なんていう一文に対する印象が読書前と読書後でこんなに大きく違うなんて。第63回日本推理作家協会賞受賞の『乱反射』が今日のレビューです。

イギリスの有名なミステリー作家が誰で、登場人物のほとんどが犯人という小説のタイトルが何であるのかは本作には全く関係ありません…が、読書前はまあ、そういう作品だと期待していたわけですよ。同じ帯に「社会派エンターテイメント」って書いてあるのにね。どうやら私の目は都合の良いものしか捉えることができないようです。

そしてそれは本作に登場する「犯人たち」もなんですよね。息子を「殺された」新聞記者が自分の前に現れ糾弾してきても尚、自分の都合の良い理論、理屈、事情で身を守ろうとするわけです。別に私は父親の主張、その全てが正しいとは思ってません。彼は引っ込みが付かなくなっただけです。自分の歩みをどう止めれば良いのかわからなかっただけ。でも、やっぱり皆、少しずつ身勝手なんですよね。大なり小なり罪を犯したことのない人間なんていないんです。それが罪だと知っているか知らないかは関係なく、そこに罪悪感があるかどうかも関係なく。その些細な罪がどこかで誰かを殺すだろうなんて想像できるかどうかも関係ない。

誰もが悪く、誰もが悪くない。だから辛い。そんな作品だと思いました。

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