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2013/02/27

『さよならファントム』 黒田研二


交通事故で負った大怪我、失意の中で妻にまで裏切られた若きピアニストはついに妻を殺害してしまう。死に場所を求めて彷徨う彼の前にひとりの少女が現れ、ふたりは連続爆弾騒ぎと全ての契機である交通事故の真相を負うことに。若きピアニストの前に現れたファントム…幻影は果たして誰なのか。まとめるとこんな話になるだろう『さよならファントム』が今日のレビューです。

発売当初、某SNSで高評価ツイートされているのをいくつか見たので期待して読みました。クロケンがやりたかったこともトリックももちろん理解、理解した上で…ラストが少し散らかってしまった印象が否めないです。こういう作品って真相(トリック)が明かされたときに「ああ、そうだったのか!」と視界が開けて清々しい気持ちになれるかどうかが重要だと思うのですが、私は本作でそこまでの快感を得られることができなかったです。

骨子になっている謎と枝葉の謎。枝葉の部分を最後にまとめようとした結果、いきなりいろんな人が登場してきて話が散らかってしまった感じ。骨子の部分は伏線もたっぷりで納得のいくものだったので、もっと凝った演出で明かしてくれても良かったのにと残念に思います。

っていうか、主人公がダメ人間すぎる。そしてクーニャは可愛い。

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2013/02/26

『命に三つの鐘が鳴る』 古野まほろ

『群衆リドル』でイエ先輩に惚れ、タイトルからしてイエ先輩シリーズに違いないと手に取った本作ですが、イエ先輩シリーズどころか天帝シリーズ番外編、新本格どころか刑事モノでした…が、とても良い作品でした。

本作の主人公は天帝シリーズに登場した二条警視正、その若かりし頃なのですが、正直天帝シリーズのことはあまり覚えておらず二条警視がどんな御方だったか記憶が定かではなのですが、本作で親友と愛した女を亡くした彼が歳を経たのなら、きっと素敵な男性になっていることでしょう。天帝シリーズ、再読してみようかしら。

そして、そんな彼が今回直面した試練とは「愛した女を殺した親友から動機を引き出すこと」なのですが…ここに極左セクトだの内ゲバだの学生運動だのが絡んでくるわけですよ。正直こういうのは嫌いじゃない。二条刑事と親友と愛した女と、三人の三角関係がこの物語の鍵になるわけですが、この運動やら思想やらそれぞれの立場やらを理解するのはとても重要かと。物語がより深くなる。

最後に二条刑事が手にした真相は…まあ、想定の範囲内ではありましたが、それってしっかり手掛かりがばら撒かれていたってことですよね。新本格好きとしては嬉しいことです。そして、真相を暴かないことが被害者の為であるか否か、それを巡ってふたりの男が静かに闘ったわけですが、私は真相を暴くことが是であったと読了後に思ったことだけをここに記しておこうかな。

期待していたイエ先輩モノではなかったけれど、とても楽しい読書の時間でした。古野ワールド抑え気味だったけれど、このくらいの方が読み易いかなあ…なーんてことを言ってみるわけです。

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2013/02/24

『記録の中の殺人』 石崎幸二

このシリーズをこれからは「DNA探偵シリーズ」と呼ぼう、そう決意したDNA探偵シリーズ第7弾『記録の中の殺人』にはまたもやDNAが事件のもろもろに絡んでいます(ネタバレ)

女子高生ばかりを狙うシリアルキラー・ミキサーをプロファイリングで追う…しかも本土(学園)で!というこれまでのシリーズとは一線を画した作品かと思いきや、

なぜ孤島に渡る\(^o^)/

もちろん連続殺人事件に巻き込まれますよ。まぁ、ノリはいつもの軽ーい感じですが。それよりもちょくちょく挟まる斉藤刑事パート(シリアルキラーを追う警察サイド)の方が魅力的かな。そしてそのふたつの物語は最後にひとつになるわけですが…え?なんでミキサーにここに現れるわけ?と思いましたよ、正直。物語としてそうなるだろうなあとは思いましたが、実際にそうなったときの説明(なぜミキサーがあの場所に現れたか、その動機)がまったく釈然としないというか私には理解できませんでした。それがシリアルキラーの思考回路だから理解できないとかじゃなくてね。それを説明してくれたのもほんの数行、しかも斉藤刑事の推測だし。

前半のプロファイリングのあたりがとても良かっただけに、孤島で起こった事件(推理ゲームの部分も含めて)残念な感じ。そろそろ孤島に行くのも止めれば良いのに…なんてシリーズの骨子を揺るがすような提案をしてみたくなります。

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2013/02/23

『乱反射』 貫井徳郎

帯に書かれた「かつてイギリスの有名なミステリー作家は、登場人物のほとんどが犯人という小説を書いた。幼児の「不運な」死に似た事件を求めるなら、そのミステリー小説しか見当たらないだろう」なんていう一文に対する印象が読書前と読書後でこんなに大きく違うなんて。第63回日本推理作家協会賞受賞の『乱反射』が今日のレビューです。

イギリスの有名なミステリー作家が誰で、登場人物のほとんどが犯人という小説のタイトルが何であるのかは本作には全く関係ありません…が、読書前はまあ、そういう作品だと期待していたわけですよ。同じ帯に「社会派エンターテイメント」って書いてあるのにね。どうやら私の目は都合の良いものしか捉えることができないようです。

そしてそれは本作に登場する「犯人たち」もなんですよね。息子を「殺された」新聞記者が自分の前に現れ糾弾してきても尚、自分の都合の良い理論、理屈、事情で身を守ろうとするわけです。別に私は父親の主張、その全てが正しいとは思ってません。彼は引っ込みが付かなくなっただけです。自分の歩みをどう止めれば良いのかわからなかっただけ。でも、やっぱり皆、少しずつ身勝手なんですよね。大なり小なり罪を犯したことのない人間なんていないんです。それが罪だと知っているか知らないかは関係なく、そこに罪悪感があるかどうかも関係なく。その些細な罪がどこかで誰かを殺すだろうなんて想像できるかどうかも関係ない。

誰もが悪く、誰もが悪くない。だから辛い。そんな作品だと思いました。

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2013/02/21

『植物図鑑』 有川浩

「咬みません。躾のできたよい子です」、そんな台詞が可笑しくてついつい拾った「生き倒れの男」。その日から始まる狩り生活と恋物語。

私が定期的に有川作品を読みたくなるのは胸をキュンキュン締め付けて欲しいからですが、本作にもしっかり締め付けていただきました『植物図鑑』。物語の始まりはありがち…創作の世界にはよくある「行き倒れている男(の子)を拾ってみました」ってやつです。現実世界ではまあ有り得ませんが、そんな有り得ない始まりからあの終わりを描きだす有川作品がやっぱり好きだなあ。

ふたりが結ばれて(恋人同士になって)ハッピーエンド、という終わり方かと思って読んでいたので「引き金」のくだりからの胸キュンは不意打ちでやられました。そしてそのあとの展開にも。イツキの正体は薄々感付いていましたが(だってエピソードが唐突すぎる)イツキがどんな気持ちであの家に戻ったのか…「午後三時」の涙に私も泣かされました。「どんだけ傷つけたんだろう」のと呟いたイツキの傷ついた顔を想像したら決壊してしまったよ。

とても良い恋物語でございました。植物図鑑としては…私はやはり街の子なのでしょうか。あまり食指が動かず、美味しくいただけるような気がしなかったのでした。

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2013/02/17

『傷物語』 西尾維新


西尾維新が贈る青春怪奇小説…とテレビCMの台詞から始めてみましたが、「傷物語」は一体いつ公開されるのでしょうか?

「化物語」「偽物語」のアニメは視聴済、そこでちらちらパンチラさせられていた阿良々木くんと忍の春休みの物語…ですが、この作品のヒロインは委員長ちゃんだろうと言いたい。

羽川かわええマジかわええ

「猫物語(黒)」も年末に楽しませていただきましたので、羽川が一筋縄も二筋縄もいかない少女であることは存じておりますが…これは阿良々木くんじゃなくても惚れる。「阿良々木暦は羽川翼に恩がある」って台詞はアニメの中でも何度も繰り返されたものですが、これは大恩だわ。

とりあえず、阿良々木くんはあのとき揉んでおくべきだったと思うよ。

そして、阿良々木くんと忍の関係も理解。これを理解した上で「つばさキャット」を読む(観る)とさらに楽しめそうですね。阿良々木くんと忍の和解の物語…さてDVDでもセットするか。

でもやっぱり「傷物語」を観たいので、シャフトは頑張ってください。

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2013/02/16

『闇の喇叭』 有栖川有栖

独立し、ロシアの統治下にある北海道と休戦状態にある日本で、禁じられた職業となった探偵、そんな探偵になろうとする少女の<始まりの物語>。

とりあえず、その世界観に唖然。実際の昭和史(WWⅡ)を改変して本作の世界観は作られているわけですが、現実を下敷きにしちゃって大丈夫?全く新しい世界観にした方が良かったんじゃないの?と余計なことが気になる次第です。でも、危うさと魅力って紙一重の表裏なんですよね。

作品のほとんど(半分くらい)はその独特な世界観と澱んだ空気の描写に使われているため、少女にとって<初めての>探偵としての活動はほんの少しです。それまで謎を解くための活動をしていたようにも読めなかったため、いきなり謎解きが始まって驚きました。けれど、謎の全てを少女が解いたわけじゃない…むしろ肝心なところで間違っていたり、罠に嵌められてみたりと少女にとって<初めての物語>はとても苦いものになったでしょう。

でも、あくまでもこれは少女が探偵になるための<初めての物語>。母親の行方も含めてシリーズのこれからがとても楽しみです。

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2013/02/15

『聖女の救済』 東野圭吾

ガリレオシリーズ5作目にして長編2作目。ドラマから内海が逆輸入されて(正確には4作目『ガリレオの苦悩』から登場していたようですが)良いアクセントになってましたね。恋心に曇る男の目と女の勘と論理と。

自宅のリビングで毒殺された男。捜査は毒の混入経路に向かうが、犯人どころか解決の糸口すら掴むことができず。内海が掴んだのは探偵ガリレオの研究室、そのノブだった…みたいな感じでしょうか?ところで、ガリレオがあまり捜査に協力的でないのは元からですが、草薙と距離を置いているってのは何が原因でしょう?未読の『ガリレオの苦悩』に収録されているのかな?それとも『容疑者Xの献身』絡みでしょうか?

本作のトリックに派手さはなく、そこにあるのはまさに「執念」としか言いようのない感情。それは物理で解き明かすことのできないものだからこそ、ガリレオにして「完全犯罪」言わしめるほどのものになったのでしょう。タイトル『聖女の救済』の意味がラストで明かされますが、それはとても深くて、潔くて、悪くないです。

ただ、私は本作に登場する女性、誰ひとりの感情も行動も理解できないんですけどね!

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2013/02/14

『≠の殺人』 石崎幸二

石崎&ユリ&ミリアシリーズの第…6弾?ですが、前作『復讐者の棺』に登場した仁美がレギュラー入りした模様。しかし、石崎を羨ましいと思えないのは何故なんだぜ。

もちろん本作も孤島で起こった殺人事件がテーマ。本人たちも「自分たちが孤島に招待されて何も起きないはずがない」なんてことを口にしちゃってるあたりメタですが、この軽い語り口がこのシリーズの良さなんですよね。初期作品だとこのやりとりににミステリ好きにしかわからないであろうマニアックネタが絡んできてにやにやだったものですが、本作にはそういうのなかったかなあ…主に石崎いじりがメインです。

そして殺人事件ですが…あれ?またDNA関係?前作『復讐者の棺』とノンシリーズの『首鳴き鬼の島』でも頁数割かれたDNAのお話ですが、今回も絡んできます。そこまで深い話ではないので疲れたりはしないのですが、同じ作者に連続してこれをやられるとちょっとお腹いっぱい。引き出しのなさが露呈しちゃってるよ、なんて毒も吐きたくなるものです。

事件の解決もね、ちょっと下世話な感じで…そこまで詳細に記述しなくても良いのにって思ったり思わなかったり。トリックとしては良くあるパターンで、登場人物に○○がいたら先ずこのトリックを疑うよねってやつです。伏字にする必要もないくらい良くあるパターン。それを料理するのかが作者の腕の見せ所なわけですが。

うーん、シリーズ次回作に期待!刊行済みで未読のものがあと3作もあるので楽しみです。辛口ですが、やっぱり私はこのシリーズが好きなので。

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2013/02/12

『隻眼の少女』 麻耶雄嵩

このミス2011、4位の本作ですが…読むのにかなり苦戦しました。

スガル様信仰の残る集落、スガル様の後継者を狙って次々と起こる首斬り殺人、水干を纏った隻眼の名探偵…これでもかってくらい魅力的な要素が詰まっているわけですが、描写があまりにも淡々とし過ぎていて物語に入り込むことができませんでした。

本当に次々と事件が起こるんですよ。そして、そこに潜む不確定な要素を名探偵である『隻眼の少女』が暴いていくわけですが…なんか地味なんですよね。暴かれる内容も地味というか、地味であるからこそ名探偵と呼ばれる人種でなければ気付けなかったと言い替えられるのだとおもうのですが、「ああ、そうだったのか!」という驚きが小さい。

それは衝撃のラストも同じで、満を持して犯人登場!というよりは唐突感の方が強いです。意外な犯人モノってのは納得感があるかどうかなんですよね。そういえばそういう描写あったよね!って膝を叩きたくなるやられた感があるかどうかなんですが、私個人は本作からそういう感想は抱けなかったのです。「そういうことね、ふーん」っていうさ。

麻耶作品であるという認識=ハードルがそうさせてしまったのかもしれませんが、個人的には微妙な読了となりました。

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2013/02/10

『謎解きはディナーのあとで』 東川篤哉

いまさら感漂ってますがいまさら読みました。ベストセラーと呼んで差し障りないでしょう『謎解きはディナーのあとで』。

ドラマは観ていたのですが…尺を延ばす為に追加された要素がことごとく要らないものであったと原作を読んで改めて思いましたとも。本作の魅力は執事・影山の毒舌(謎を前にして興奮→つい地が出ちゃうってことでよろしいか?)と安楽椅子探偵っぷりだと思うのですが、ドラマは後者の良さを完全に放棄しちゃってましたよね。現場に足を運んで捜査(推理)してたら、それもう普通のミステリと変わらないじゃんっていう。

安楽椅子モノの良いところ(であり悪いところ)は謎が至ってシンプルなところ。収録されている事件は六つですが、どれもシンプルでスマートでした。ありがちな論理の飛躍もメタもほぼ気になりませんでしたし。消去法が容易なように登場人物が少ないのはご愛敬ってことで。

続編も出ている本シリーズですが、影山と麗子のラブ展開ってのはやっぱり用意されているんでしょうかね?この作品に限ってはあくまでもお嬢様と執事なふたりが良いなあと個人的には思います。

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2013/02/09

『群衆リドル』 古野まほろ

帯には「雪の山荘」「謎めいた招待状」「ダイイングメッセージ」「見立て」「マサーグース」「密室」なんていうミステリスキーの胸躍らせるワードが並び、目次に燦然と輝く「読者への挑戦状」。期待するなってのが無理な古野まほろ氏のイエ先輩シリーズ『群衆リドル』が本日のメニューです。

古野氏の天帝シリーズはその世界観に酔わされて途中で挫折してしまったクチなのですが、本作はとても読み易く書かれています。東京(首都)を帝都と呼んだり、「天帝」という言葉が突然登場するくらいの古野ワールドは舞台装飾程度に。それよりもなによりも読者…というか私を惹きつけたのが主人公にして名探偵、イエ先輩の存在なのです。

八重洲家康。クラシックの世界に足を突っ込んだことのある者ならば知らぬ者のない天才ピアニスト…なのだけれど、現在ワケあってステージからは遠ざかっているその彼が、とても魅力的なのです。いや、彼を魅力的だと思うのはユカのような一部のマニアックな者だけで、現実世界で彼と対峙したら厭味な奴だとしか思わないと思うんですけれど。でも、ミステリの、特に本格の世界には彼のような奇人変人にして天才が似合いますよね。とりあえず私は、130頁ラストの一行にしびれた。素晴らしい。

で、肝心の内容なのですが…舞台設定は素晴らしいです。「ロンドン橋落ちた」の通りに殺されていくゲストたち。消える人形。密室のバリエーションも物理的(バリケードの)密室、雪密室、視線の密室と豊富です…が、それをやったのが○ってのはどうなのだろう。もうそれだけでバカミスと呼ばれても致し方ないよね。確かに○を使えば犯行は可能だったのかもしれないし、作中にしっかり○が描写されているのでアンフェアではないのだけれど。けれどやっぱり美しくはないかなあと思ってしまうのです。

とりあえず、イエ先輩はなぜショパンを弾かなかったのか、イエ先輩はなぜユカを抱かないのか、イエ先輩とユカのこれからがとても気になるのでこれからもウォッチするシリーズに決定ということで。

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2013/02/08

『転迷』 今野敏


転迷開悟=迷いを転じて悟りを開くこと、ならば本作で悟りを開いたのは誰なのか。隠蔽捜査シリーズ第4弾です。

先日読了したばかりの『初陣』は刑事部長の伊丹が主人公でしたが、本シリーズの主人公はあくまで竜崎。今回も竜崎の元には厄介事が舞い込みます。が、「お国の為」に働くことを厭わない彼は刑事(署長)としての仕事を全うするわけですが…この「お国の為」ってのがすごいなあといつも思うわけです。同時に、強い違和感を覚えるわけですが。果たして、国家公務員として働いている人の中に「お国の為」と思って仕事をしている人がどれだけいるでしょうか?竜崎は「お国の為」に働くことが国家公務員の義務であり、キャリアが果たすべき義務はさらに大きいと考えているわけですが…そんなこと考えて仕事している公務員を私は知りません。

そしてそれは物語の中でも(少々違う形とはいえ)問題として現れます。外務省、そして厚生省との縄張り争い…と書くと随分と堅苦しくなってしまいますが、事件を解決させるために情報が欲しい竜崎が各省庁を代表するキャラクタを相手取るわけです。キャラクタが好ましいかどうかは別として厚生省麻薬取締部の矢島とのやりとりは痛快です。そして、最後には「お国の為」に一致団結して(?)働くこと=事件を解決することの必要性を周りに認めさせていくんですよね。その意味で『転迷』したのは竜崎以外のキャラクタであって、竜崎は徹頭徹尾なにも変わらないんですよね。それが良い。

個人的には戸高の活躍が少なかったのが残念かな。戸高が追っていたヤマまで本筋の事件と絡んできたらどうしようかと思いました。さすがにそれは高望みというものです。

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2013/02/07

『万能鑑定士Q』 松岡圭祐


万能鑑定士=なんでも鑑定団がその鑑定眼で困った人たちをお助けしちゃう物語かと思い読み始めたのですが、そこはやっぱり松岡圭祐氏。スケールが桁違いでした。

物語は都内に異常増殖した「力士シール」の鑑定依頼が万能鑑定士=凜田莉子の元に持ちこまれたことから始まります…が、ストーリーはそこから急展開を迎えます。不動産契約の出来レースを暴いたかと思いきや、バナナ天麩羅作りからの泥棒逮捕、そして偽札流通からのハイパーインフレ日本経済破綻…ともはや何を言っているのかわからないと思いますが、嘘じゃないんだなぁこれが。

ただ、物語のスケールはどんどん大きくなりますが、到着地点は案外身近なところにあってみたり。最後の数十頁ですべての伏線を回収して物語が着地する様は快感です。あまりにスマートすぎて沖縄での描写のいくつかは要らなかったんじゃないか?と思うほど。まぁ、主人公の女性を「これでもかっ!」ってくらい超人的に描くのが松岡ワールドですものね。

そうそう、私が読んだのは上に表示させている単行本版なのですが、これは文庫版のⅠとⅡを合冊したものらしいので次を読むときはⅢからだよ…と自分宛にメモしてみる。

 


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2013/02/06

『はやく名探偵になりたい』 東川篤哉


烏賊川市シリーズ第6弾、5つのいかがわしい依頼を解決する短編集です。

表紙を見て「シリーズキャラクタこんなにいたっけ?全く覚えてないよー!!」と思ったのも当然、シリーズキャラクタは前列のふたりだけで、残りの皆様は犯人の方だったり重要キャラクタだったりします…が、よく考えなくてもこれってものすごいネタバレですよね。

個人的には「藤枝邸の完全なる密室」が好きかな。倒叙なので犯人が誰かは明白(というか、語り手が犯人か)ですが、この犯人が「密室の謎が破られなければ自分は捕まらない!」と思っているところがもう堪らないわけです。重度のミステリヲタですね。この発想、嫌いじゃないです。そんな犯人がなぜ犯人と指摘されるに至ったか…はお読みいただくとして、こういうユーモアたっぷりのミステリが東川ミステリだったよなあ、と改めて。

どうやら私は烏賊川市シリーズ第5弾『ここに死体を捨てないでください!』を読み飛ばしているようなので、近いうちにまた、鵜飼&戸村のふたりの活躍を読めそうな気が致します。

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2013/02/05

『初陣』 今野敏

警察キャリアの表と裏を「変人」竜崎の視点で描いた隠蔽捜査シリーズですが、今日はその3.5、竜崎の同期にして幼馴染の伊丹を主役に据えたスピンオフ作品『初陣』のレビューです。

伊丹が福島県警から警視庁に戻ってくるところから物語(時系列)はスタート。刑事部長として自分は今なにをすべきなのか…キャリアであっても迷って当然、人間だもの。ってことで、危機に直面した伊丹が頼るのは「歩く建前」「歩く正論」「変人」竜崎なわけです。

多忙なふたりを繋ぐのは基本的に電話。困り顔で事情を説明する伊丹と、それを…ほぼ100%手元の仕事を片付けながら聞く竜崎と。立場や関係は様々、それは『隠蔽捜査』 『果断』 『疑心』に詳しいわけですが、スピンオフとは言えその辺りは頭に入れた上で読んだ方が楽しめると思います。というか、そうじゃないと竜崎の快刀乱麻っぷりに付いて行けないような気がする。やっぱり私は『疑心』であれこれ悩んでみせた竜崎よりも、こういう竜崎の方が好きです…って本作は伊丹のお話でしたっけ。伊丹も好きです。人間らしくって。

実を言えば『疑心』はあまり楽しめなかったクチなのですが、「試練」を読んで『疑心』を再読するのも悪くないと思ったりもしたかな。

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2013/02/04

『千葉千波の怪奇日記 化けて出る』 高田崇史


三差路に立つ三人の老人、嘘吐き村の住人は誰?に代表される論理パズルにミステリを融合させた千葉千波くんシリーズですが、今回はパズルはお預け。怪奇現象に千波くんが挑む…のかと思いきや、千波くんがほとんど出て来ないお話もある(どころか殆ど)というのだから驚きです。

それでも起こる怪奇現象に魅力があれば良かったんですけどね。あるいはその怪奇現象を解き明かす理論が美しいか。そのどちらもが中途半端なため、物語も中途半端です。結局のところ何も解決していないお話すらありましたよね?

新キャラとしてふたりの女の子が登場しますが、にぎやかしにもなれず、どちらかと言えば不快で不要です。ぴいくんの語り口だけが変わらず素敵だったのだけが救いです。

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2013/02/03

『新参者』 東野圭吾


犯人にその手が届くまで脇目も振らずに捜査するのが刑事の仕事…というわけじゃない。日本橋署に赴任して来たばかりの「新参者」加賀恭一郎が、殺人事件だけでなく、街に生きる人たちの物語に触れ、解決していく様を描いた本作が今日のレビューです。

ドラマは観ていなかったのでどんな物語なのかは知らずに読んだのですが、殺人事件とは全く(ではないにせよ)関係のないところから物語が始まったのには驚きました。本作は九つの短編からなる連作と紹介しても良いのでしょうね。商店街に生きる人たちのドラマに触れるうちに少しずつ形作られる十番目の物語。それが主題であるはずの殺人事件だって言うのだからすごい。この形は新しい。その辺りが2010年このミス1位たる所以でしょうか。

加賀恭一郎の人情味あふれる部分とそうじゃない「キレ者」の部分と。どちらが彼の本質に近いのかにとても興味がある私としては、その両方が程良く描写されていて嬉しくなってしまいました。知らないところで暗躍していた加賀が最後に驚きの真相を語ってくれるってのも好きなんですけどね。父親に対するコンプレックス(?)を妄想できるような箇所もあって…ってのは本当に妄想が過ぎるかもしれませんが。

ところで、最後の最後に数行描かれた「加賀恭一郎が警視庁捜査一課を追い出されるに至った事件」ってのはどの作品のことなのでしょうか?まだ書かれてませんよね?いつか作品として形になる…そう信じております。

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2013/02/02

『猫柳十一弦の後悔』 北山猛邦


探偵という職業にステイタスがあり、大学に探偵助手学部なんて学部が存在する素敵世界が舞台の「猫柳十一弦シリーズ」を読みました。

北山氏と言えば「物理の北山」と呼ばれるほどの物理トリックフリーク(?)ですが、今回の…と言うかこの猫柳十一弦シリーズにおいて物理トリックは必要ありません。なんせ、この猫柳探偵、犯罪を○○○○○タイプの名探偵だから…ってことでネタバレ回避の伏字にしてみましたが意味あるでしょうか?

個人的な感想としては「とても中途半端な一冊」だと思っていて、驚くような物理トリックもなく、見立ても微妙、伏字にした猫柳探偵の特性も今回破られているし、レビュー冒頭に紹介した素敵な世界観の紹介も薄ければ全体的に文章(描写)も薄い…とあまり好印象ではなかったりします。せめてどの部分かに重点が置いてあれば少し違った印象になったかもしれませんが…もう、ラストで仄めかしてくれた恋愛描写が厚いのでも良いと思ったくらいです。っていうか、もっとわかり易く仄めかしてくれて良かったのにね。

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2013/02/01

『Another』 綾辻行人

 

アニメを観ていたので死者、トリック、結末…その全てを知った上での読書でしたが、その厚さが気にならないくらい充実した時間となりました。

呪われた三年三組、紛れ込んだ死者、死に近づく一年。否応なく「現象」に巻き込まれてしまった彼らにできることは、自らの身に死が降りかかって来ないことを祈るだけ…だったはずなのに。その年、主人公とヒロインがどんな風に「現象」を止めたのかを知ることに意味はないと思うのです。だってそこには、物語的ご都合主義ってやつが必要になってきますからね。意味があるのは「死者は誰か」ってことで、死者が誰かを知った上で読み進めた私は常時にやにやしっぱなしでした。結構あからさま…ですよね?知らないで読んで気付けたかって言われたら微妙ですが、描写はかなり大胆だと思いました。そして、記憶を消してもう一度読みたいと上質なミステリに出逢うたびに思うわけです。

あれ?これってミステリですよね?

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